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氷水

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第三章

「すぐにな」
「わかりました、では」
「ああ、頼むわ」
 店員にこう言ってだった。
 彼は最初に来た氷水を一杯一気に飲んだ、だが。
 それでは喉の渇きそれに暑さは癒されずだった。
「もう一杯な」
「もう一杯ですね」
「おかわり頼むわ」
「わかりました」
 若い女性大学生位の年齢の店員がだった。
 頷いておかわりを持って来た、そのおかわりもだった。
 彼は一気に飲み干した、そしてまた言った。
「もう一杯」
「はい」
 店員はまた頷いてもう一杯飲んだ、そして気付けばだった。
 五杯飲んでいた、それでかき氷を出した店の親父が言ってきた。
「お客さんまた随分と」
「ああ、この暑さやろ」
 花田はカウンターの中の親父に笑って応えた。
「それでや」
「お冷やをですね」
「飲ませてもらったわ、五杯もな」
「やっぱりそうですね、今日は暑いですからね」
「ああ、お店には悪いけどな」
「五杯だからですか」
「一杯なら兎も角な」
 それがというのだ。
「五杯になるとな」
「悪いってなりますね」
「幾らただでもな、もうこれはお金必要か」
「ああ、お金はええですよ」
 親父は笑って応えた。
「お冷やはただですから」
「そやからか」
「はい、お代はかき氷のだけで」
「これのやな」
 花田は今度は自分が注文したそれを見て応えた、銀色に輝く細かく刻まれた氷の上に赤がかったピンクのシロップがかけられている。
「そやな」
「はい、じゃあ召し上がって下さい」
「そうさせてもらうな、こうした時こそな」
「かき氷ですよね」
「これが一番や、ほなもらうな」
 こう応えてだった。
 花田はかき氷を食べた、冷たく甘いそれはこの日はこのうえなく美味かった。
 そのかき氷を食べると彼は勘定を払って店を出てだった。
 家に帰った、すると妻の由利は彼の顔を見て言った。丸い顔で小さな垂れ目と黒く短い波がかった髪の毛の小柄な女性だ。 
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