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桃源郷

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第三章

「始皇帝が死んですぐにな」
「あちこちで乱が起こってな」
「そうだったか、しかしな」
 男は馬と陳の話を聞いて述べた。
「秦の後の漢や魏のことはな」
「あんたは知らなかったな」
「そうだな」
「この村の誰も知らない」
 二人に真顔で答えた。
「どちらの国もな」
「秦の頃から四百七十年以上経った」
「もう大昔だ」
「始皇帝も死んでな」
「秦なんてとうの昔だ」
「そうか、外の世はそこまで変わったのか」
 男の口調はしみじみとしたものだった、そうした話をしてだった。
 馬と陳はもうそろそろ家に帰ろうと思い男にこれでと話した、すると男は干し肉を多く持たせてそれを土産とした。
 二人で男に礼を言って彼の前と村を後にした、そしてだった。
 穴を潜って山の麓に出てだ、馬は陳に言った。
「また来たいな」
「そうだな」
 陳もそれはと頷いた。
「ではこの辺りに目印を付けておくか」
「他の場所にもな」
 馬も応えた。
「幾つかの場所に付けて」
「そうしてまた来るとしよう」
「いい場所だった、穏やかでな」
「また来たいしな」
「ならそうしよう」
「そしてまた来るとしよう」
 二人でこう話して村に戻った、船で戻る途中で魚を釣り忘れていたことを思い出したが干し肉を代わりにすることでよしとなった。
 二人は村に帰りこのことを話した、すると太守の耳にもその話が入り。
 そしてだ、太守は二人がいる村に来て二人に問うた。
「お主達が話したこと偽りではいな」
「はい、これがです」
「偽りではありませぬ」
 二人は太守に真顔で話した。
「その証拠に干し肉を持って帰りました」
「これが山で手に入るでしょうか」
 こう言ってその干し肉の残りを差し出した。
「こちらですが」
「如何でしょうか」
「これは羊の干し肉だな」
 太守は二人が差し出した干し肉を見てすぐに何の肉かわかった。
「山に羊なぞおらぬ」
「左様ですね」
「これでおわかりですね」
「しかもこの村にも羊はおらぬ」
 太守はこのことも話した。 
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