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ウルトラマンカイナ

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女傑編 ウルトラバークファイト

 
前書き
◇今話の登場メカ

◇BURKライフル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型突撃光線銃。従来の光線銃を遥かに上回る威力を持ち、エレーヌが携行する。

◇BURKアルマータ
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型主力戦車。山を突き崩すほどの強力な主砲を搭載しており、イヴァンナが指揮を取る。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURKビートル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。自動操縦(オートパイロット)による乗員不足の補助も可能であり、駒門琴乃(こまかどことの)が搭乗する。

◇BURKイーグル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。高火力のレーザー砲を搭載しており、アメリアが搭乗する。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURK爆龍(バオロン)
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型爆撃機。強力な対怪獣爆弾を搭載しており、凛風(リンファ)が搭乗する。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURKハイドランジャー
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型潜水艦。対怪獣用の対地ミサイルを搭載しており、オリヴィアが指揮を取る。


 

 
 恐竜戦車地球降下事件に端を発する、6年間にも渡って繰り広げられた侵略者達との戦争。
 その真の元凶たるテンペラー軍団が6人のウルトラ戦士とBURKによって撃滅されたことで、地球に恐れを成した他の侵略者達はその星を自然と避けるようになっていた。長い戦いの果てに、地球はようやく平和への第一歩を踏み出したのである。

 ――だが。人類がその戦果を地球に齎したのは、ウルトラ戦士が居たからに過ぎない。6人の戦士達が地球を去った今、恐れるものなど何もない。
 一部の異星人達の中にはそんな「勘違い」を是正する機会もないまま、愚かにも地球侵略を企てる者達も居た。人間標本の収穫に勤しんでいたダダ達の他にも、そのような愚か者達が牙を研ぎ澄ましていたのである――。

 ◇

 とある山岳地帯の地下深くに存在する、謎の秘密基地。その最奥にある薄暗い一室で、白衣を纏った男達が下卑た笑みを浮かべていた。

「ククク……栄光あるBURKの皆様、ご気分の程はいかがですかな?」

 そのうちの1人の男が厭らしく嗤う先には――アイソレーション・タンクのようなカプセルがあった。妖しい輝きを放つカプセル内の薬液には、3人の爆乳美女があられもない姿で浸されている。

「……最悪だな、キル星人。洗脳用の薬液だと聞いているが、私達が受けて来た耐毒訓練はこんなものの比ではなかったのだ。思い通りに行かず、残念だったな……!」
「私達に手を出したこと……絶対に後悔させてやるわ。もう謝ったって、手遅れよ……!」
「BURKを無礼(なめ)た代償は、高く付くわ……! 今に見てなさい、このゲス共ッ!」

 駒門琴乃、アメリア、凛風。彼女達はそのカプセル内に仰向けで浸されたまま、キッと鋭い眼差しで男達を睨み付けていた。頬は羞恥の色に染まっているが、その眼は気高いBURKの隊員としての誇りに燃えている。

 ――某山岳地帯の地下に、地球侵略を目論むキル星人が潜伏している。その情報をキャッチした琴乃達3人は威力偵察のため潜入を試みていたのだが、キル星人の罠に嵌められ捕らえられてしまったのだ。
 だが、人間の理性を数秒で溶かすという洗脳用の薬液に浸されながらも、彼女達はBURKとしての誇りを頼りに己の尊厳を保ち続けている。すでに薬液のカプセルに入れられてから1時間以上が経過しているというのに、彼女達は全く屈していない。

「ふっふっふ、それならそれで結構……。簡単に屈してしまっても、それはそれでつまらないですからねぇ?」
「ですが、あなた達に勝ち目はありませんよ……耐性があると言っても、無力出来るわけではないのです」
「なので……私達はここで、あなた達が隷従を誓う瞬間をゆっくり待つとしましょう。ふふふっ……」
「くッ……!」
「こ、このッ……調子に乗ってッ!」
「絶対に、絶対に許さないからッ……!」

 一方、琴乃達を捕らえている男達――キル星人の科学者達は、そんな彼女達の姿を虚勢に過ぎないと侮っていた。

 彼らは得意げな笑みを浮かべてカプセルに歩み寄ると、琴乃達の肉体から漂う甘美な雌の芳香を鼻腔で堪能しながら、その下顎を指先でくいっと持ち上げている。彼女達の瑞々しい柔肌を味わうように、白い頬を粘ついた舌でべろりと舐め上げる者もいた。
 柔肌をなぞり上げて来る指の感触。頬を這い回る厭らしい舌先。体臭を嗅ぎ回って来る鼻先の動き。その全てに女傑達は激しい屈辱と嫌悪、そして憤怒を覚えていた。

 洗脳薬液への耐性の強さは本物のようだが、それも所詮は時間の問題。今に自分達に従順な奴隷となり、地球侵略の尖兵として働いてくれるようになる。キル星人達は皆、それを確信しているのだ。

「……ふんっ、どこまでも詰めの甘い奴らめ。今のBURKの主力が、私達だけだとでも思ったか?」
「何ィ……?」

 それでも、琴乃達は諦めない。彼女達にはまだ、頼れる仲間がいる。キル星人達がそれを思い知ったのは、それから間も無くのことであった。

「……ッ!? な、なんだこの揺れはッ! 地震かッ!? ええい、地震大国はこれだから……!」
「ち、違います……! これは砲撃ですッ! BURKの砲撃がこの基地の上にッ!」
「な、なんだとォ!?」

 突如、この地下秘密基地に強烈な振動が襲い掛かって来たのである。先ほどまで余裕綽々といった様子で琴乃達を見下していた科学者達は、予期せぬ事態に慌てふためいていた。
 そして、振動の弾みでカプセルが倒れてしまい――琴乃達の白く豊穣な肉体が、薬液の外へと放り出されてしまう。Lカップ、Kカップ、そしてGカップの双丘が、たわわに躍動していた。

「……私達を、BURKを無礼(なめ)た。それが貴様らの、最大の敗因だ」

 反撃の機は熟した。爆乳を揺らしている女傑達の鋭い眼光が、そう語っている。

「……ふんッ!」
「はぁあッ!」
「とりゃああッ!」
「ぐはぁあッ!? き、貴様らッ……!」

 そしてカプセルの外に転がり出た瞬間、地を踏み締めて飛び出した琴乃達の美しい回し蹴りが、科学者達の延髄に炸裂した。その反動で、女傑達のむっちりとした巨尻もぷるんと弾んでいる。
 鮮やかな弧を描くように放たれた、白く肉感的な美脚による強烈な一撃。それを急所に浴びてしまった科学者達は瞬く間に意識を刈り取られ、その場に倒れ伏してしまった。

 彼らが着ていた白衣を素早く奪い取り、白く豊満な柔肌の上に羽織った女傑達は――これまでの屈辱を怒りに変えて、恐れ慄くキル星人達を睨み付ける。



「貴様ら……もうタダでは済まさんぞッ!」
「ひ、ひぎゃあぁーッ!」

 彼女達の白く艶やかな脚と、ピンと伸びた優美な爪先が再び弧を描き。この一室にいるキル星人達を1人残らず叩き伏せるまで、そう時間は掛からなかった。
 白い爆乳と巨尻を揺らして蹴りを放つ彼女達の華麗な脚技は、邪悪な異星人達をものの数分で叩きのめしてしまったのである。この一室につながる自動ドアが開かれたのは、その直後のことだった。

「琴乃様、アメリア様、凛風様! ご無事でしたかッ!?」

 雄の情欲を煽る、扇情的なボディライン。白くたたわな双丘に、安産型のむっちりとした巨尻。
 その全てをありのままに浮き立たせている、極薄の新型戦闘服に袖を通したエレーヌが、新型突撃光線銃「BURKライフル」を抱えてこの一室に駆け付けて来たのである。

 琴乃達の定時連絡が途絶えたことから状況を察した彼女達が、救出作戦を実行していたのだ。
 フランス支部が新たに開発したという、携帯性に秀でたブルパップ型の新型光線銃。そのBURKライフルを抱えている彼女は、混乱に乗じて一気にこのフロアまで突入して来たのである。白兵戦に秀でている彼女との合流を果たした琴乃達は、その心強さに安堵の表情を浮かべていた。

「エレーヌ、よく来てくれた! 無事とは言い切れんかも知れんが、問題はない! アメリア、凛風、直ちに脱出するぞッ!」
「了解っ! ……ちょっと蹴り足りなかったけど、この辺で勘弁しておいてあげるわ」
「……跡形もなく消えちゃうんじゃあ、蹴りようもないわね。最後の最後まで、忌々しい連中だわ」

 エレーヌから副兵装(サイドアーム)のBURKガンを受け取ってすぐに、白衣を翻して走り出していく琴乃。そんな彼女に続き、アメリアと凛風もその場を後にする。絶命に伴い消滅していくキル星人達を、汚物を見るような眼で一瞥しながら。

 ◇

 白い爆乳と巨尻をばるんばるんと弾ませ、汗ばむ肉体から甘い匂いを絶えず振り撒き。くびれた腰を左右に振りながら、地上に続く螺旋階段を駆け登っていく琴乃達。
 そんな彼女達の眼に、あるものが飛び込んで来た瞬間――4人の女傑は、思わず息を呑んでいた。

「あれは……!」
「……私も潜入する途中であれを見付けた時は、驚かされました。キル星人め、まさかあんなものまで……!」

 基地の格納庫で眠っている、キル星人達の「切り札」。それはまさしく、6年前に地球に飛来して来たものと同じ――恐竜戦車だったのだ。

「き、貴様らいつの間に……ぐはぁッ!?」
「失せなさい下衆共、私達の邪魔はさせませんッ!」

 行手を阻むキル星人の兵士達をBURKライフルで矢継ぎ早に撃ち倒しながら、琴乃達を連れて地上を目指しているエレーヌも、恐竜戦車の巨躯を前に険呑な表情を浮かべている。絶命と共に消滅していくキル星人達を冷たく見下ろしている彼女は、素早くグリップの後ろにあるエネルギー弾倉を再装填(リロード)していた。

「おのれッ……地球人の雌豚共がッ! こうなればもう一度全員ひっ捕らえて、2度と逆らえなくなるまで徹底的に嬲り尽くして――がはぁあッ!?」
「皆様、急ぎましょう! あの怪獣の始末は、私達が脱出した後ですッ!」
「……そうね、今はここを出るのが先決だわ。行くわよ皆ッ!」

 白く柔らかなEカップの乳房と、戦闘服の上からでもはっきりと形が分かる豊穣な巨尻は、エレーヌが引き金を引く度にその反動で何度もぷるぷると弾んでいた。張り詰めた胸元の谷間からは、しとどに汗ばんでいる彼女の甘い匂いがふわりと広がっている。だが、その芳醇な汗の香りに惑わされたキル星人の兵士達は、女だと侮る暇もなく眉間を撃ち抜かれていた。
 彼女の言葉に背を押されたアメリアと凛風は、白衣をはためかせてさらに地上へと駆け上がって行く。一方――琴乃は、恐竜戦車の禍々しい姿により険しい表情を浮かべていた。

(……恐竜戦車、か。6年前はウルトラマンカイナに頼るしかなかった我々だが……あの時とは違うぞッ!)

 ウルトラマンカイナと共に地球に現れた()の怪獣は、6年間にも渡る戦争の象徴とも言える存在。琴乃にとっては、因縁の相手でもあるのだ。

 ――やがて琴乃達が地下秘密基地の外へと脱出し、陽の光に照らされる場所まで辿り着いた瞬間。キル星人達の潜伏先となっていた山岳は、彼らと恐竜戦車を丸ごと押し潰すように崩落してしまうのだった。
 琴乃達の無事が確認された瞬間、BURKによる「本気」の砲撃が始まったのである。山すら突き崩すほどの砲弾を叩き込まれた山岳の崩落は、凄まじい轟音を天に響かせていた。

「やった……! さすがにあの大きさの山で生き埋めにして仕舞えば、恐竜戦車でもイチコロですねっ! 任務完了ですっ!」
「……あぁ、そのようだな」

 琴乃様を無事に救出し、キル星人のアジトも恐竜戦車もろとも壊滅させることが出来た。作戦は大成功と言ったところだろう。
 その成果を目の当たりにしたエレーヌは、溌剌とした笑顔でガッツポーズを決めている。素肌の上に白衣を羽織っている琴乃達も、ほっと胸を撫で下ろしていた。

「……!? ねぇ見て、あれッ!」
「な、なんだと……!?」

 だが、その時――崩落した山の中から、なんと恐竜戦車が咆哮を上げて這い出て来たのだ。大量の岩石を掻き分けるように顔を覗かせて来た怪獣の姿に、琴乃達は思わず目を見張る。

「あれで死んでなかったっていうの……!? いえ、むしろ目覚めさせてしまったのかしら……!」
「とにかく、迅速に奴を倒さねば市街に甚大な被害が出てしまうぞッ! 6年前の二の舞だけはなんとしても、なんとしても阻止せねばッ……!」
「琴乃……!」

 6年前の戦いで、壊滅的な被害を被ってしまった街の光景。それを思い起こした琴乃は、血が滲むほどにまで強く拳を握り締めていた。

(我々が、我々がやるしかないのだ……! もうこの地球に、ウルトラマンは居ないのだからッ……!)

 彼女がそれほど意気込んでいるのは、「不安」の裏返しでもあるのだ。ウルトラマンカイナですら一度は敗れたあの恐竜戦車を、自分達の力で本当に倒せるのか、と。
 過去の経験があるからこそ、その恐怖を拭いきれずにいる。そんな彼女の胸中を慮る女傑達は、心配げに顔を見合わせていた。

 ――恐竜戦車地球降下事件を皮切りに始まった、6年間にも渡る戦乱の日々において。地球防衛の一翼を担って来たBURK日本支部の戦いは、常に「ウルトラマンとの共闘」だった。
 琴乃達も決して、ウルトラマンの力にばかり縋って来たわけではない。それでも戦いの「主役」は常に、彼らの方だった。少なくとも今の世間は、そう認識している。

 そして、そのウルトラマンとしての使命を帯びていたのはいつも――成人すらしていなかった、10代の若者。まだ遊びたい盛りの、学生ばかりだったのである。

 1年前、ウルトラマンジェムこと荒石磨貴(あらいしみがき)が初めて変身した時。彼はまだ、16歳の高校1年生だった。
 2年前、ウルトラマンアークこと八月朔日要(ほずみかなめ)がその使命を帯びたのも、彼が16歳になったばかりの時だった。
 3年前、ウルトラマンエナジーこと覇道尊(はどうたける)がその力を託された時、彼は17歳の高校2年生だった。
 4年前、ウルトラマンザインこと椎名雄介(しいなゆうすけ)が初変身した時。18歳の大学生だった彼は、民間人としての日常を唐突に奪われた。
 5年前、ウルトラアキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)が戦士として選ばれた時も。彼は19歳を迎えたばかりの、ただの大学生だった。
 そして6年前、ウルトラマンカイナこと風祭弓弦(かざまつりゆずる)が、恐竜戦車との戦いに立ち上がった時も。彼はまだ、16歳の高校1年生だったのである。

 誰1人として、本来「矢面」に立って良いような人間ではなかった。ウルトラマンとして選ばれた者だからと言って、恐ろしい怪獣や異星人達に、平気で立ち向かわせても良いような者達ではなかった。

 自分達BURKが、大人達が率先して、その「矢面」に立たなければならなかったのに。真っ先に「子供」を戦わせるような真似など、許されるはずがないというのに。
 とうとう、最後の最後まで。彼ら6人がテンペラー軍団を撃滅したその時まで、琴乃達はその許し難い図式を変えることは出来なかったのである。

 代われるものなら、いくらでも代わりたかった。なぜ彼らでなければならないのだ、なぜ彼らを戦わせねばならないのだと、何度も自分の非力さを責めた。彼らを選んだ、光の国を責めた。
 もちろん、頭では理解している。6人の青年達は皆、真っ直ぐな正義感と熱い闘志を胸に秘めた、勇気ある若者達ばかりだった。彼らはきっと、「なるべくしてなった」ウルトラマンなのだろう。

 だからこそ。琴乃の胸中には常に、彼らへの激しい罪悪感と劣等感が付き纏っているのである。
 泣く子も黙る鉄血の女傑として、決してそれを表に出すことはなかったが。その重みはいつも、彼女の心を締め付けていたのだ。

 選ばれてしまっただけの子供を戦わせて、何がBURKだ。何が地球の守護者だ。彼女は毎年のように、鏡に向かって悔し涙を浮かべながら、そう叫んでいた。

 ――そんな中でも。前隊長の弘原海(わだつみ)は、毎年のように入れ替わるウルトラマンの変身者達と、親子のような良好な関係を築き続けていた。時には励まし、時には叱るその姿は、さながら彼らの父親代わりのようだった。
 地球の平和のために戦う男同士として、通じ合うものがあったのだろう。ウルトラマンの変身者達と肩を組んでいた頃の彼は、腹の底から笑っているようだった。

 琴乃もそんな彼に続き、変身者達に対しては姉のように、あるいは母のように接していた。だが決して、弘原海のように心の底から笑えていたわけではない。彼のように、この図式を受け入れていたわけではない。

 ――もう、戦うべきではない者達を巻き添えには出来ない。何としても、BURKの力だけであの怪獣を仕留めねばならない。
 例え、あの恐竜戦車が相手であろうとも。ウルトラマンカイナですら、一度は敵わなかった相手であろうとも。

(私がやらねば……私が……!)

 そう意気込む余り、周りを見失いかけていた琴乃は、緊張する拳をわなわなと震わせていた。
 今戦っているのは、彼女独りではないというのに。

「琴乃、アメリア、凛風、エレーヌ! すぐに乗ってください、奴を追います! ……今こそ、我々BURKの進化を証明する時です!」
「イ、イヴァンナ……!?」

 そんな彼女の目の前へと、BURKの新型主力戦車――「BURKアルマータ」が駆け付けて来る。E-100戦車のシルエットを彷彿とさせる、漆黒の大型戦車だ。
 つい先ほどまで山を砲撃していたのは、その戦車を指揮しているイヴァンナの部隊だったのだ。76mm口径の主砲を搭載した指揮官仕様車に搭乗している彼女の後ろには、より強力な大口径の主砲を搭載した部下達の車両が何台も続いている。

 BURKアルマータによって構成された戦車隊の砲撃によって、キル星人達のアジトは山もろとも壊滅してしまったのだ。そのハッチを開いて身を乗り出して来た彼女のIカップの爆乳は、車体の上でむにゅりと形を変えている。

「さぁ、早く! 不可能を可能にする力は、ウルトラマンだけの特権ではありません! 我々人類にも、その可能性があるはず! その答えに辿り着くための、6年間だったはずですッ! 違いますか、琴乃ッ!」
「……ッ!」

 琴乃が経験した6年前の死闘を知っているイヴァンナは、今が過去の雪辱を果たす時なのだと戦友を鼓舞する。「同じ悔しさ」を味わった者達の1人として、彼女は普段の物静かな佇まいからは想像もつかないほどにまで、語気を強めていた。

 イヴァンナだけではない。アメリアも、凛風も、エレーヌも、今ここには居ないオリヴィアも。彼女達は皆、ウルトラマン達の圧倒的な力に畏敬の念を抱く一方で――自分達の非力さを、ひたすら悔やみ続けて来たのだ。

 1年前、パリの上空から怪獣が飛来して来た時。当時14歳の士官候補生だったエレーヌは、初めて間近で目の当たりにした怪獣の脅威に失禁してしまい、ウルトラマンジェムが駆け付けて来るまで同期達を連れて避難することしか出来なかった。
 2年前、ブライトンの沖に怪獣が出現した時。当時14歳の艦長補佐官だったオリヴィアは、艦砲射撃が通じない怪獣に腰を抜かして失禁してしまい、ウルトラマンアークが到着するまで艦隊の後退を進言することしか出来なくなっていた。
 3年前、上海(シャンハイ)の黄浦江に怪獣が発生した時。当時16歳のエリートパイロットだった凛風は、爆撃をものともせず友軍機を次々と屠る怪獣に恐れ慄き、恥も外聞もなく失禁。ただ泣き縋るように、ウルトラマンエナジーの救援を待つしかなかった。
 4年前、モスクワ川から突如怪獣が這い出て来た時。当時19歳のエリート戦車兵だったイヴァンナは、戦車砲が一切通用しない怪獣の外皮硬度に恐れをなして失禁。ウルトラマンザインが現れるまで、撤退を余儀なくされていた。
 5年前、ハドソン川に現れた怪獣がニューヨークの市街地へと侵入した時。当時19歳のエースパイロットだったアメリアは、怪獣の圧倒的な火力によってエリートとしてのプライドを粉砕された挙句、撃墜されかけた恐怖のあまり失禁。海を越えて急行して来たウルトラアキレスが怪獣を撃破するまで、ほとんど逃げ回ることしか出来なかった。

 強く気高く、そして美しい彼女達5人には――「怪獣」という「絶対的な破壊者」により、女傑としての尊厳と誇りを徹底的に蹂躙された過去があるのだ。それでも彼女達はその悔しさと絶望をバネにして、ここまで這い上がって来たのである。
 だからこそ。より成長した彼女達はテンペラー軍団の恐ろしさを承知の上で、かつて自分達を救ってくれたウルトラマン達のために、海を越えて日本まで駆け付けていたのだ。過去に味わった屈辱と挫折すらも糧にして、受けた恩に報いるために。

 ――その「ついで」に。戦闘中での失禁という、「人生最大の恥辱」の瞬間を目撃していた当時の変身者達に、男としての「責任」を取らせるために。

(イヴァンナ、皆ッ……!)

 そんな女傑達の1人であるイヴァンナの言葉に琴乃が気高く顔を上げたのは、それから間も無くのことだった。剣呑でありつつも、どこか落ち着きを取り戻したようにも見える彼女の貌に、イヴァンナはふっと微笑を浮かべる。

「……あぁ、そうだな! 行くぞ皆、直ちに追撃だッ!」
「了解ッ!」
「オッケー、そう来なくっちゃねッ!」
「皆様、急ぎましょうッ!」

 そして、琴乃の心が前を向いたことに安堵する女傑達は。彼女と共に白く豊満な乳房を揺らして、イヴァンナが乗っているBURKアルマータへと乗り込んで行くのだった。巨大な車体をよじ登る女傑達の巨尻は、何度も左右にぷるんと揺さぶられている。

「んっ、んんっ、んふぅっ……!」
「ちょっ、ちょっとこれ、入り口狭くないっ……!? 大丈夫なんでしょうね、この戦車っ!」
「……聞き捨てなりませんね、凛風。我がロシア支部が総力を上げて開発したBURKアルマータに、欠点など存在しません。単にあなたが太り気味なのでは? 特に、この尻が」
「んなっ!? い、言ったわねイヴァンナッ! だいたいあんただってさっきハッチから出て来た時に、ちょっと乳が引っ掛かってたでしょうがっ!」
「……そ、それは違います! 今日はたまたま、胸を抑えるブラのホックが壊れてしまったというだけで……!」
「お前達、こんな時に何を揉めている! 何でもいいからさっさと入れッ! こういう時はな、腰を捻るんだ腰をッ!」
「いーだだだだ!? ちょっ、下から引っ張らないでよ琴乃っ! 壊れちゃう壊れちゃう! 私のお尻、壊れちゃうぅっ!」

 ハッチの穴に引っ掛かりがちな爆乳と巨尻を、なんとか通すために。
 女傑達は時に悩ましい声を上げ、時に言い争いながら。くびれた腰を前後左右に艶めかしく、扇情的にくねらせていた。三角木馬のような立ち乗り構造の戦車長席に座しているイヴァンナは、その様子をじっくりと静観している。

「……よし、全員搭乗しましたね。我々はこれより、恐竜戦車の追撃に向かいます。全車両、全速前進ッ!」
「あ、あうぅ……お尻、私のお尻がぁあ……」

 やがて全員を乗せた指揮官仕様のBURKアルマータは、一気にキャタピラを猛回転させると、山岳地帯を抜けようとする恐竜戦車を追跡し始めて行く。火力に特化した部下達のBURKアルマータも、隊長の車両を追うようにキャタピラを回転させていた。
 そして。イヴァンナの命令を忠実に遂行するべく、運転席に座している女性隊員は全力でアクセルを踏み込んでいる。

 汗だくになっている5人の爆乳美女を乗せた大型戦車の車内は、雄の情欲を掻き立てる芳醇な匂いで充満していた。同性すら魅了しかねないその濃厚な香りに、運転手の隊員はごくりと生唾を飲み込んでいる――。

 ◇

 ――追跡開始から、約10分。
 イヴァンナが指揮を取るBURKアルマータは主砲を連射しながら、不安定な山岳地帯を全速力で爆走している。その指揮官仕様車に続くイヴァンナの部下達も、キル星人達のアジトを破壊した火力特化仕様車の主砲を、恐竜戦車の背後に叩き込んでいた。

 だが、山を崩すほどの威力を持つ砲弾を立て続けに浴びても、恐竜戦車は全く止まる気配がない。琴乃もハッチから身を乗り出してBURKガンを撃ち込んでいるのだが、まるで効いていなかった。
 火力特化仕様のBURKアルマータによる集中砲火を以てしても、この怪獣を駆逐するには足りないというのか。その光景を目にした琴乃はBURKガンを握ったまま、悔しげに唇を噛み締めている。

「……ダメだ、イヴァンナ! BURKアルマータの戦車隊だけでは、奴を倒せる火力には届かないぞ! なんとか増援が到着するまで、奴を食い止めねば……!」
「その必要はありません。……準備は既に整っております」
「な、なに……!?」

 だが、三角木馬状の戦車長席に座しているイヴァンナは、一切動じることなく車内の通信機を手に取り、「合図」を発信していた。
 次の瞬間――自動操縦(オートパイロット)によって飛来して来た3機のBURK製航空機が、BURKアルマータの頭上に現れる。

「あれはBURKビートルと……各国支部の試作兵器!? この日本支部にも回されていたのか!」
「……さっすがは梨々子(りりこ)のパパ、綾川(あやかわ)司令官ね! なかなか太っ腹じゃないっ!」

 「凶暴怪獣」アーストロンを撃破した実績もある、メタリックイエローとシルバーを基調とする日本支部の新型戦闘機「BURKビートル」。
 両翼部のレーザー砲と、シルバーを基調とする全長18mのボディを特徴とする、アメリカ支部の新型戦闘機「BURKイーグル」。
 そして全長38.5mにも及ぶ深緑のボディを持ち、機体下面に搭載された強力な対怪獣爆弾を最大の武器とする、中国支部の最新大型爆撃機「BURK爆龍(バオロン)」。

 実戦配備されて間も無いBURKビートルだけでなく、試作段階であるはずのBURKイーグルとBURK爆龍までもが今、琴乃達の真上を飛行しているのだ。BURK日本支部の綾川司令官が、彼女達のためにと事前に各国支部と交渉し、手配していたのである。
 琴乃達の「力」が最も発揮される条件。その全てを揃えて来たイヴァンナは、彼女達にむっちりとした巨尻を向けたまま、不敵な笑みを浮かべていた。

「布石はすでに打ってある、ということです。……試作段階での実戦投入など褒められた手段ではありませんが、そんなことを気にするあなた達ではないのでしょう?」
「……ふふんっ! さすがイヴァンナね、よく分かってるじゃない! 琴乃、こうなったらやるしかないわよッ!」
「あぁ……分かっているッ! アメリア、凛風、行くぞッ!」

 そんな彼女の言葉に強く頷いた琴乃は、身を捩らせてハッチから外に出ると――頭上の機体から垂らされていたワイヤーを握り締めた。アメリアと凛風も琴乃に続き、艶かしく腰をくねらせてハッチの外へと這い出て行く。彼女達の豊かな爆乳と巨尻は、狭いハッチから解放された反動でばるんっと弾んでいた。

「……言っておきますが、この車輌には車体後部にもドアが付いています。そちら側からならば、上面ハッチよりは楽に出入り出来るはずですよ」
「先にそれを言いなさいよッ!?」

 そんなイヴァンナの一言に、アメリアと凛風が目を丸くして噛み付いた後。3人はそれぞれのワイヤーを握り締め、BURKアルマータから飛び出して行く。
 琴乃はBURKビートルへ、アメリアはBURKイーグルへ、そして凛風はBURK爆龍へ。彼女達は各々の機体に素早く乗り込むと、即座に操縦桿を握り締めるのだった。

「さぁ……私達BURKの攻撃は、ここからが本番だぞッ!」

 そして、力強い笑みを浮かべた琴乃の言葉に、アメリアと凛風が深く頷いた瞬間。彼女達を乗せた3機の航空機は、バーニアを噴かして一気に加速して行く。

「自動操縦なんて普段は頼りないものなんだけど、今回ばかりはそれでラッキーだったわね! 心置きなく、こいつと戦えるわっ!」
「同感っ! こんな格好、部下の皆には見られたくなかったものっ!」
「アメリア、凛風! 余計なことは考えるな、今は目の前の敵だけに集中しろッ!」

 レーシングバイクのシートのような構造となっている、BURKイーグルとBURK爆龍の操縦席。そこに跨るアメリアと凛風は、その白く豊穣な巨尻をぷりんっと後方に突き出していた。弓なりに背を反って前のめりになっている彼女達は、その柔肌を辛うじて隠している白衣を激しくはためかせながら、愛機をさらに加速させている。

 今回は3機共、自動操縦機能で乗員不足を補っている状態なのだが、結果的にはそれで正解だったのだろう。もし後部座席に隊員達が居る状況だったならば、今頃は後ろから白衣の下が「丸見え」になっていたところだ。

「さぁ、まずは私達からだ! 行くぞアメリアッ!」
「オッケー! ぶちかましてやるわよ、琴乃ッ!」

 スピードに秀でているBURKビートルとBURKイーグルは、全ての神経を眼前の恐竜戦車のみに注ぎ、一気に急上昇する。
 そして頭上の「敵」に気付き、上空を仰いだ恐竜戦車の両眼から迎撃のレーザーが照射された瞬間――2機の戦闘機は、同時に急降下を仕掛けるのだった。

「甘い甘いッ! そんなので墜ちるBURKイーグルじゃあないんだからッ!」

 加速に秀でた流線型のボディを持つBURKイーグルは、BURKビートルをさらに凌ぐスピードで迎撃レーザーを回避している。もう昔の自分ではない、と言わんばかりの勝ち気な表情で、アメリアは自信満々に操縦桿を握り締めていた。
 前のめりになる余り、その白い巨尻はぷるんっと浮き上がっている。Kカップの白い爆乳も、シートにむにゅりと押し付けられていた。

 BURKアメリカ支部の司令官――チャック・ギャビンからその将来を嘱望された、同支部きってのエースパイロットとして。アメリアはむっちりとした巨尻を仰け反るように突き出しながらも、真摯な貌でただ前方のみを見据えている。

「よし……射程圏内だアメリア、仕掛けるぞッ!」
「分かってるわよッ!」

 地上から乱れ飛ぶ、恐竜戦車による迎撃レーザーの嵐。その真っ只中を掻い潜るように翔ぶBURKビートルとBURKイーグルは、同時に両翼部のレーザー砲を連射していた。その反動で琴乃の爆乳が激しく揺さぶられ、アメリアの巨尻がたわわに弾む。

「これまでの分のお返し……たっぷりと味わいなさいッ!」
「我らBURKの、人類の底力……思い知るがいいッ!」

 琴乃とアメリアの絶叫と同時に、両機から放たれたレーザーが恐竜戦車の外皮を焼く。そして――水平飛行の姿勢から僅かに機首を下げ、空を裂く轟音と共に突撃して行く凛風のBURK爆龍も、爆撃を敢行しようとしていた。
 凛風はGカップの爆乳を押し潰すように前のめりになり、背を反って安産型の爆尻をぶるんっと弾ませている。攻撃に集中するあまり自分の格好が自覚出来なくなっているのか、彼女は真剣な貌のまま、むっちりとした白い爆尻を恥ずかしげもなく後方に突き出していた。

「あの時とは違うわ……! もう私達は、無力なんかじゃないッ! それをこれから、証明し続けて行くッ! そのための……BURK爆龍なんだからッ!」

 恐竜戦車の車体から放たれる機関砲を真正面から浴び、機首先端部のレドームを破壊されながらも。BURK中国支部の誇りを背負った彼女の愛機は、怯むことなく前進し続けている。砲身と砲塔本体が一体化されている、機体上面の格納式板状無人高角レーザー砲も、絶えず火を噴き続けていた。
 両翼下部に搭載されているミサイルも、出し惜しみは無しだと言わんばかりに連射されている。コクピットの後方にあるミッションコントロール区画も、戦闘の苛烈さを物語るように激しく揺れ動いていた。

「私達BURKを無礼(なめ)たこと……地獄で後悔させてあげるわッ!」

 やがて、彼女のけたたましい雄叫びと共に。特大の対怪獣爆弾が、BURK爆龍の機体下部から投下されて行く。

「いい加減にッ、くたばれぇぇえーッ!」

 そして、空と地を裂く凄まじい衝撃音が天を衝き。97cmもの爆尻をばるんっと弾ませた凛風の絶叫と、呼応するかの如く。その弾頭が勢いよく、恐竜戦車に直撃するのだった。

 天を衝くほどの激しい爆炎が広がる直前に操縦桿を引き上げた3人の愛機は、それぞれ3方向へと離脱して行く。しかし、まだ終わってはいない。

「ちッ……さすがはウルトラマンカイナを負かした怪獣ね! そこらの怪獣なら、今の1発で骨も残らないのにッ……!」

 BURK爆龍の爆撃により、恐竜戦車は「満身創痍」となっている。だが、まだ倒れてはいなかったのだ。
 レーザー掃射と爆撃により外皮を吹き飛ばされた恐竜戦車は、あらゆる箇所の内部機構が剥き出しにされている。そのような状態になりながらも前進を続けている姿は、さながら生ける屍のようであった。

 サイボーグ怪獣故の尋常ならざるタフネスを目の当たりにした凛風は、白くむっちりとした爆尻をぷるぷると震わせながら、悔しげに舌打ちしている。それは、対怪獣爆弾の威力を知る琴乃とアメリアも同様であった。

「ええいッ……何という頑強さだ、確かに効いているはずだというのにッ! こうなれば、もう一度総攻撃を――」
「――その必要はありませんよ、琴乃。奴を確実に仕留められるデータは、すでに揃っています」
「なんだと……!? イヴァンナ、どういうことだ!?」

 だが、それでも全く焦っていない者が居た。イヴァンナだ。
 彼女がBURKアルマータのコンピュータで、何らかの「データ」を送信した瞬間。各機に搭載されている通信機から、聞き慣れた仲間の声が響いて来る。

「……オリヴィア。怪獣の位置及び移動速度のデータを送信しました。後はよろしくお願い致します」
『情報提供、感謝しますわイヴァンナ様。不躾な侵略者の皆様には、この地球を攻め落とすことなど不可能であることを……その身を以て理解して頂きましょう』

 その穏やかで気品に溢れた声色は、まさしくオリヴィアのものだった。山岳地帯から遥か遠方――東京湾付近の「海上」に居る彼女は今、新型潜水艦「BURKハイドランジャー」の艦長として、その指揮を取っているのだ。
 全長は約50m、潜行時の最高速度は26ノットを凌ぐというイギリス支部の最新兵器。海上に現れているその鈍色の船体は今、燦々とした陽射しを浴びて眩い輝きを放っていた。船体の各部にある無数の「発射口」が、その殺意を鋭利に研ぎ澄ましている。

「オリヴィア……!? まさか、『BURKハイドランジャー』がもう完成したのか!? あらゆる怪獣を一撃で粉砕し得るという、あの新型潜水艦が……!」
『ご名答ですわ、琴乃様。あなた様が提供してくださった6年間の戦闘データを基に、研鑽を重ねて開発したBURKイギリス支部最強の巡航ミサイル潜水艦「BURKハイドランジャー」。少々実戦配備を急ぎ過ぎてしまいましたが……その甲斐はあったようですわね。ここからは、我がイギリス支部に任せてくださいまし』

 恐竜戦車を追跡しているイヴァンナのBURKアルマータから、その位置情報のデータを受信した彼女は、確実に怪獣を葬れる「正義の矢(ミサイル)」を放とうとしていたのである。琴乃の問い掛けに頷くオリヴィアは、深窓の令嬢の如き穏やかな微笑を浮かべていた。

 一歩踏み出す度にぷるんと揺れる巨尻と、歳不相応に実っているFカップの巨乳。その膨らみをありのままに主張させている新型戦闘服を纏った彼女は、甘い匂いを振り撒く金髪を優雅に靡かせている。
 白く扇情的な彼女の肉体から醸成される甘美な芳香には、艦内の女性乗組員達もごくりと生唾を飲み込んでいた。16歳とは到底思えない完成された色香は、部下達を瞬く間に虜にしている。

「うふふっ……では、栄光ある乗組員(クルー)の皆様。BURKイギリス支部の誇りに賭けて、優雅に美しく……憎き仇敵を骨も残さず殲滅すると致しましょうか」

 やがて――艶やかなブロンドのロングヘアと、Fカップの豊満な果実を弾ませて。全ての準備を整えた彼女は淑やかに右手を掲げると、乗組員(クルー)達に攻撃の開始を命じる。

「……目標、恐竜戦車ッ! 対地殺獣ミサイル全門斉射ッ、()ぇぇぇえッ!」

 華やかでありながらも、勇ましく凛としているその叫びが、艦内に反響する瞬間。BURKハイドランジャーに搭載されている、対怪獣用の対地ミサイルが全ての発射口から射出された。

 発射口を包む猛煙を突き破り、天高く飛び上がるその無数の弾頭は、怪獣の外皮硬度を研究し尽くしたイギリス支部が、確実にその防壁を貫くために開発した必殺兵器なのだ。
 鋭い矢の如き弾頭は怪獣の頑強な外皮をも容易く貫き、その内側から粉々に対象を粉砕するのである。

「……! おぉっ……!」
「恐竜戦車が……!」

 ――それは、ウルトラマンカイナを一度は撃退した恐竜戦車といえども、例外ではない。
 内部機構が剥き出しになっている箇所へ、無数の鋭利な弾頭の豪雨を浴びせられた恐竜戦車は。その弾頭内の爆薬を全て「体内」で起爆され――「内側」から跡形もなく消し飛ばされてしまったのである。

 まさしく、オリヴィアの宣言通り。骨も残さないほどの、徹底的な「殲滅」であった。
 琴乃が「あの日」から積み重ねて来た6年間が、ついに実を結んだのである。

 その瞬間を目の当たりにしたBURKアルマータの戦車隊は、事件の収束を悟り静かに停車する。3機の航空兵器も、その近くへと着陸して行くのだった。

「……終わりましたね、琴乃。我々人類はもう、ウルトラマンに縋るだけの弱い生き物ではない。今日の戦いはきっと、それを証明するための試練だったのでしょう」
「……ふっ、確かにそうなのかも知れんな。そして我々は今日、その試練を乗り越えたということなのだろう。地球は我々、地球人類の手で守る。それが本来、あるべき姿なのだからな」

 勝利に沸き立つ他の仲間達を背に、それぞれの兵器から降りた琴乃とイヴァンナは、肩を並べて微笑を向け合う。

 ウルトラマンに頼らずとも、この地球を守り抜いていく。その理想にようやく辿り着いた琴乃は、過去を振り切るように穏やかな笑みを浮かべていた――。

 ◇

「そういえば琴乃って、ウルトラマンの変身者達と毎年一緒に戦ってたのよねぇ。いいなぁ、私も5年前の……ウルトラアキレスだった頃の嵐真に直接会ってみたかったわ。私だったら絶対、その場でガンガンアプローチしてるもの!」
「私も私も! 3年前、ウルトラマンエナジーだった頃の尊がどんな感じだったのか、凄く気になるわ! その時からあんなに強くてカッコ良かったのかしら……! あぁっ、一度で良いから手合わせしてみたかったわっ!」
「ウルトラマンザインとして戦っていた、4年前の椎名殿……ですか。きっと、その当時から非常に勤勉な殿方だったのでしょうね。仮定の話に意味はありませんが……私ならば恐らく、彼を支えるためとあらば己の全てを捧げていたのでしょう……」
「あぁっ……2年前の要様はウルトラマンアークとして、一体どのようなお気持ちで戦っていらしたのでしょう……。もし私がその場に居たなら、毎晩彼のために紅茶をご用意していましたのに……!」
「1年前、ウルトラマンジェムとしての使命を帯びていた頃の磨貴様は、金髪の不良……だったのですよね。そんな磨貴様も、ワイルドで素敵ですわっ……! あぁ、磨貴様磨貴様っ……!」
「……良いわけがあるかぁあ! ウルトラマンカイナだった弓弦だけはほとんど手が掛からなかったが……後の5人の面倒を見るのは、本当に、本っ当に大変だったんだぞっ! 嵐真は美女に化けた敵性宇宙人に何度も騙されてはアキレスアイを盗まれる! 雄介は家庭教師のアルバイトにかまけて私達の緊急呼び出しにも出ない! 尊はそろそろ休めと何度言っても剣の素振りを続ける! 要はいつも学生気分で基本的にぶったるんどる! 磨貴に至っては怪獣と戦う前から街の喧嘩で怪我をして来る始末だ! この数年間、私や弘原海前隊長が一体どれほどフォローに奔走したことか……! お前達、『恋は盲目』と言っても限度があるぞ! ウルトラマンだった頃のあいつらだと!? 見せられるものなら見せてやりたかったわッ!」
「オ、オーケイ……落ち着いてちょうだい琴乃、ストレスはお肌の敵よ?」
 
 

 
後書き
 
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