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赤ちゃん象の名前

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第一章

                赤ちゃん象の名前
 アメリカのある動物園でのことです。
 象の飼育係の一人であるボブ=マカーシーさん初老のアフリカ系の男の人でとても背の高いこの人は生まれたばかりの雄の象を見て周りの人達に言いました。
「この子の名前はケニーにするか」
「ケニーですか」
「何でその名前にしたんですか?」
「いや、何となくな」 
 それでというのです。
「思い浮かんだんだ」
「そうですか」
「それで、ですか」
「ケニーですか」
「駄目か?」
 マカーシーさんは他の人達に尋ねました。
「その名前で」
「いいんじゃないですか?」
「可愛い名前ですし」
「俺はいいと思います」
「私もです」
「よし、じゃあお前の名前はケニーだ」
 マカーシーさんはそのアジアゾウの赤ちゃんに笑顔で言いました、こうしてです。
 ケニーと名付けられた赤ちゃん象は飼育係の人達にです。
 お母さん象に可愛がられてすくすくと育っていきました、ですがその中で。
 マカーシーさんはケニーを見てよく笑顔で言いました。
「ケニーまたお母さんと一緒か」
「パオン」
 ケニーはマカーシーさんに嬉しそうに鳴いて応えました、見れば今もお母さん象の傍にいてとても甘えています。
「子供はそうして育つからな、好きなだけ甘えろよ」
「パオオン」
 ケニーはマカーシーさんにまた鳴いて応えました、ケニーはマカーシーさんが大好きでよく懐いていますが何といってもです。
 お母さんが大好きです、とても甘えん坊でお母さんから離れようとしません、そんな彼を見てでした。
 ふとです、マカーシーさんはあることを思い出して言いました。
「前に大きなサーカスが解散したな、動物の虐待が問題になって」
「あっ、ありましたね」
「そんなことが」
「特に象への虐待が問題になって」
「三十年で二十頭も死んでいて」
「象の寿命を考えると尋常じゃないですからね」
「問題になってな」
 それでというのです。
「その調教の内容がな」
「ええ、一ヶ月四本の足縛って立たせて」
「座ることも許さないで」
「それで意識壊して」
「服従する様にして」
「教えるにも鉤爪が付いた棒で痛い部分叩いてな」
 その様にしてというのだ。
「象は只でさえ敏感なのに」
「凄く痛いですよね」
「もう信じられない位に」
「そうですよね」
「しかも見世物の時以外は檻の中でな」
 狭いその中でというのです。
「じっとさせてな」
「満足に動けなくさせて」
「そして無理に芸をさせる時だけ出して」
「そんなのですね」
「そんなとんでもない状況だからな」
 それでというのです。
「もうな」
「像がどんどん死んで」
「何か事故も起こって」
「物凄い抗議がきて」
「動物を使った見世物止めて」
「そうしたらお客さんが来なくなって」 
 そうなってというのです。 
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