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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第十二幕その三

「凄いとか本物とかな」
「そういうのじゃないんだ」
「そうなんだ」
「そういうものじゃなくて」
「必死なだけだったんだ」
「そやねん、私なんて立派ちゃうわ」
 こうも言うのでした。
「高校はそうやって途中で放校なってコーヒーばかり飲んであちこち彷徨ってな、だらしないしな」
「ご自身の作品の人達みたいに?」
「そうだから?」
「立派じゃないの?」
「私の作品は大阪のそうした人達も書いてるけど」
 それだけでなくとです、織田作さんはお話しました。
「けどな」
「織田作さん自身もなんだ」
「作品の中に書いているんだ」
「投影させているのね」
「そうなんだね」
「作品はどうしても自分が入るからな」
 書く人自身がというのです。
「そやからな」
「それでだね」
「織田作さん自身も入っていて」
「織田作さんもだらしなくて彷徨っていたから」
「それでなんだ」
「そや、私は全く偉くも立派でもない」 
 このことは強く断るのでした。
「ほんまに何もないな」
「そうした人なんだ」
「織田作さんは」
「偉くなくて」
「だらしない人なんだ」
「そや、それでな」 
 さらに言うのでした。
「かみさんおらんとどうしようもないし」
「そのこともあって」
「それでなんだね」
「もうだね」
「偉くとも何ともないんだ」
「大阪の何処にでもおるおっさんや」
 ご自身のことを笑って言いました。
「この街と人とかみさんが好きなだけでな」
「それだけなんだね」
「ううん、僕達織田作さん好きだけれど」
「先生から聞いてこうしてお会いして」
「そうだけれどね」
「好きになってくれたら嬉しいけどな」
 それでもというのです。
「私は何ともないで」
「奥さんとのことは凄いけれど」
「そのまま恋愛ドラマだけれど」
「それでも偉くない」
「そうなのね」
「そやで」
 織田作さんの言葉は変わりませんでした。
「ほんまにな」
「そう言えることがいいかと」
 先生はここでこう織田作さんにお話しました。
「世の中織田作さんの作品でも出ない様な酷い人がこの世で一番偉いと思ったりしますからね」
「ずっとやな」
「はい、働かず自分だけで尊大でそれでいて何も知らず何もわからず何も出来ず」
「能無しやな」
「それでいてです」
「天狗になってるんか」
「この世で一番偉いと」
「そういう奴もおるな」
 織田作さんは首を傾げさせて言いました。 
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