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仮面ライダーAP

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最終話 平和である証

「……なぜあなた達は、今になって現れたのですか」

 戦士達の汚れを洗い流すかのように、さめざめと雨が降り始めた頃。全ての力を使い果たした明智天峯は、仰向けに倒れたまま天を仰いでいた。
 そんな彼を見下ろしている遥花、隷、駿、ガルバの4人は、その問いに答えられずにいた。天峯が言わんとしていることを理解しているが故に、掛ける言葉を見つけられずにいたのだ。

「かつて某国の外人部隊に属していた私達は、日本人であることを理由に無謀な任務を押し付けられてばかりでした。世界共通の大敵だったシェードのルーツは当時の日本政府にあったのですから、当然のことでしょう」
「……」
「そんな時に当時の政府から、改造手術を受けないかと誘われたのです。シェードに対抗するための改造人間部隊を新設したいと。私達は二つ返事で引き受けました。謂れなき差別に晒されている祖国の名誉を取り戻す、絶好のチャンスなのだと信じて」

 独り言のように自らの過去を語る天峯。その言葉の「続き」を知る遥花達は、敢えて遮ることなく静かに見守っていた。吐き出さずにはいられないのだろうと、慮って。

「……私達3人の手術だけは、奇跡的に成功しました。突然変異などと言われる程度にはね。しかし……他の者達は皆、誰の得にもならない失敗作にしかなれなかった。シェードの真似事を無理矢理しようとした結果が、あのザマだった」

 その頬を伝う雫は、雨粒なのか。涙なのか。それはもう、天峯自身にすら分からない。

「私達は軍を抜け、行く先々で助けを求めた。しかし誰もが私達を醜悪な化物と罵り、迫害した。……私達の他にも、そんな『元人間』は大勢居た。シェードが消滅しても、仮面ライダーが世界を救っても、改造された人間達が元通りになるわけでもないのに。世界は勝手に戦いを終わらせて平和の到来を謳い、私達をいない者として扱おうとした。だから被験者達の救済プログラムも大々的な動きにならず、こぼれ落ちる者達が後を絶たなかったのです」
「……それで、ノバシェードか」
「元は単なる被験者同士の自助組織だったのですよ。今のように本物の怪人になろうなどと考える者達なんて、数えるほどもいなかった。……3年近くも見過ごされるようなことがなければ、そのまま平和な集まりでいられたのでしょうね」

 かつての構成員だった駿が、その一言を絞り出すと。天峯はまだ闇に堕ちていなかった頃を振り返り、懐かしむように目を細める。

「私達は、諦めざるを得なかった。シェードはもういない。人間達の輪にも入れない。無効化手術の順番は、一向に回ってこない。もう、誰にも頼れない。故に、私達が作るしかなかったのですよ。この時代に取り残された改造人間達だけの新組織、ノバシェードをね」
「明智天峯……」
「……そうなる前に、あなた達が我々の前に現れていれば。あなた達が言うように……そんな道に走る必要などなかった。しかし、シェードが生み出してきた科学力を以てしても、時を巻いて戻す術はない。何もかもが、手遅れだったのです。どちらが優勢であろうが、結局私達はこの地で戦う運命だったのでしょう」

 自分を打ち倒した遥花と視線が交わった瞬間、彼は観念したように両手を空に向かって突き上げる。その様子を見つめながら歩み出した遥花に、隷はそっと手錠を差し出した。

「……遥花お嬢様、これを」
「うん……ありがとう、芦屋さん」

 それを受け取った遥花は物憂げな表現のまま、天峯の両手に手錠を掛けていく。

「本当……何で、今なのかしらね」

 一つでも何かが違っていれば、違う道もあったのだろう。しかし彼らは、ノバシェードという自ら築いた地獄への道に踏み込んでしまった。ならば仮面ライダーとして、警察官として、自分達は責務を果たさねばならない。
 せめて、化物などではなく。あくまで人間として、彼らを人間の法で裁く。それが遥花をはじめとする、この時代の仮面ライダーならではの救済であった。

 やがて、駿とガルバに両脇を抱えられた天峯が、やっとの思いで立ち上がった頃には。他の場所での戦いを終えた者達や、意識を取り戻した者達も、この場に集まり始めていた。

 仮面ライダーティガー、道導迅虎。
 仮面ライダーパンツァー、翆玲紗月。
 仮面ライダーG-verⅥ、水見鳥清音。
 仮面ライダーケージ、鳥海穹哉。
 仮面ライダーオルバス、忠義・ウェルフリット。
 仮面ライダーΛ−ⅴ、明日凪風香。
 仮面ライダーアルビオン、東方百合香。
 仮面ライダーイグザード、熱海竜胆。
 仮面ライダーオルタ、静間悠輔。
 仮面ライダーUSA、ジャック・ハルパニア。
 仮面ライダーGNドライブ、上福沢幸路。
 仮面ライダーターボ、本田正信。
 仮面ライダーEX、久我峰美里。
 仮面ライダーヴェノーラ、薬師寺沙耶。
 仮面ライダーボクサー、南義男。
 ライダーシステムtype-α、一二五六三四。
 パトライダー型式2010番type-000、日高栄治。
 仮面ライダー炎、天塚春幸。
 マス・ライダー、山口梶。

 そして、彼らに拘束されている武田禍継と上杉蛮児。その2人と顔を突き合わせた天峯は、互いに気まずげな表情を浮かべていた。

「……一つだけ、聞かせてください。私達は、今でも……人間なのですか?」
「さぁな。……グロンギの俺に言わせれば、どちらも大して変わらんぞ」

 やがて、隣に立つガルバからその答えを貰った天峯は。力無く笑みを溢し、天を仰ぐ。

「……そうですか。どちらも大して、変わりませんか」

 いつの間にか、雨は上がっていたらしい。彼が見上げる青空には、七色の虹が掛かっていた。

 ◆

 ――その後。明智天峯をはじめとするノバシェードのトップ3は正式に逮捕され、数々のテロ行為を追及していく裁判が開始された。

 ノバシェードが創設されるに至った経緯に関する情状酌量もあったが、最終的には世論と検察側が切望した通りに死刑判決が下された。しかし宣告を受けた男達の表情は、まるで憑き物が落ちたかのように晴れやかであったという。
 改造人間という「怪物」として、人間らしい「死」すら許されなかった彼らは。ようやく、人としての一生を終えることが出来るのだから。

 一方、司令塔である天峯達を失った海外のノバシェードは、急速に勢いを失い始めていた。その好機に乗じて彼らを全員捕縛するべく、テスト装着者達はスーツを修繕した後、日本を離れ世界各地を転戦した。
 アメリカ、中国、ロシアのような大国だけでなく。アジアやヨーロッパの各国に、南米やアフリカの各地、さらにはオーストラリアに至るまで。ありとあらゆる国に巣食うノバシェードを撲滅するべく、新世代の仮面ライダー達は海を越え、全世界を駆け巡ったのである。

 それから約2年後の2021年には、ついにノバシェードが完全に壊滅し、テスト装着者達もその任を解かれた。2022年現在の彼らは一介の警察官として、あるいは1人の人間として、それぞれの日常を過ごしている。

 ノバシェードの壊滅という大役を果たした彼らのスーツは、その頃にはいずれも修繕不可能とされるほどにまで損耗しており、ほどなくして「解体」が決定された。今はすでに、マス・ライダーをベースとする制式量産機の部品として再利用される形で、この世から消滅している。
 改造人間の犯罪に対処し、無辜の人々を守る仮面の戦士は、やがて普遍的な存在として社会に浸透し。「仮面ライダー」と呼ばれる英雄像は、遠い過去の伝説として扱われるようになっていた。

 さらに天峯達の逮捕を契機に、長らく見過ごされていた改造被験者達の窮状が改めてクローズアップされるようになり。無効化手術を推し進める大々的な動きが、全世界を席巻し始めていた。
 その世論の動きが功を奏し、2022年現在においては全被験者の95%が処置済みとなっている。過去には改造人間として差別されていた者達も、職や家庭を得られる社会。そんな未来はすでに、夢物語ではなくなっているのだ。

 この世界にはもう、「仮面ライダー」も「怪人」もいない。しかし、それでいいのだろう。仮面ライダーがいない景色は、世界が平和である証なのだから。

 ◆

「……ふふっ。顎部分(クラッシャー)を着脱出来るようにして、戦闘中でもカップ麺が食べられるようになったって……何よそれ。芦屋さんったら、相変わらず変な機能ばっかり付けたがるんだから」

 ――そして、あの戦いの後。無効化手術を受けて人間と変わりない生活を送れるようになった、番場遥花も。2022年を迎えた今では20歳の新人ナースとして、大戸島(おおどしま)の小さな診療所で平和な毎日を過ごしている。

「あははっ……皆も美味しそうに食べちゃってさぁ。まるで部活帰りの男子達みたい。世界を救った『仮面ライダー』としての自覚がないのかしら?」

 かつての仲間達からの近況を報せる手紙と写真に目を通していた彼女は、軽口を叩きながらも懐かしむように頬を緩めていた。その豊満な肉体はナース服が張り詰めるほどに成長しており、島中の男達を魅了する色香を纏っている。今の彼女が東京の都心部に繰り出せば、すぐさまスカウトマンに完全包囲されてしまうことだろう。

「番場さーん、そこのカルテ取ってもらっていい?」
「あっ、はーい! 先生、今行きますねっ!」

 自分を救ってくれた医療従事者達への憧れから、この道に進んだ彼女は1人のナースとして。島に常駐しているただ1人の医師――南雲(なぐも)サダトと共に、島民達の健康を守るべく日々働いていた。
 彼に呼び出され、豊穣な爆乳を揺らしながら慌てて立ち上がった彼女は、カルテを手に敬愛する医師の側へと駆け寄っていく。

 そんな彼女が向かっていたデスクに飾られている写真立ては、窓辺から吹き込むのどかな涼風を浴びていた。その1枚に写る22人の笑顔は、今もなお彼女を見守っている――。
 
 

 
後書き
 今話を以て、外伝「ライダーマンG&ニュージェネレーションGライダーズ」はめでたく完結となりました! 本編最終話にも繋がるラストシーンで締めつつ、この物語の本筋はとうとうこれにて終了となります。いやー……長かったですね。想定よりも大分長くなりました。それでも読了して下さった読者の皆様! 最後の最後まで応援して頂き、誠にありがとうございましたっ!٩( 'ω' )و
 次回はちょっとした番外編をお届けする予定ですので、機会がありましたらそちらもどうぞよしなに(*´ω`*)

 ライダーも怪人もいない世界を築き上げた読者応募ライダー達の頑張りもあり、この世界にもやっと真の平和が訪れた。今回はそんな感じのラストで締めさせて頂きました(о´∀`о)
 「仮面ライダーW」のように仮面ライダーと怪人の戦いはこれからも続く! という締めもイイなーとは思うのですが、拙作においてはやはり、これ以上続けようがないラストにしてスッパリ締めたいという思いがありまして。本作においては、このような結末とさせて頂いておりまする(´-ω-`)
 ではではっ、最後まで読み進めて下さった読者の皆様! 応援誠にありがとうございました! いずれまた、どこかでお会いしましょうー! 失礼しますっ!٩( 'ω' )و



Ps
 昭和ライダーってしょっちゅう海外に出張するんですよねー。というわけで、読者応募ライダー達にも世界に羽ばたいて貰いますた(*'ω'*) 
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