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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  九十八話 妹の不安

 
前書き
はい!どうもです!

今回は第六巻の冒頭部に当たるシーンですw

まだ本戦には入りませんが、ご了承ください。

では、どうぞ! 

 
「ふー……」
朝。少し大きめ息を吐いて、涼人は家の前に立ち止まる。ゆっくりと伸びやらストレッチ等のクールダウンをした後、庭へと入る。

本日。2025年12月14日 現在時刻午前6時58分。
朝ダッシュを終え、家に戻った涼人は何時ものように家に入ると、適当に汗を流しつつ、脱いだジャージを洗濯機に……

「せいっ!」
ワザと離れた場所から投げ入れる。

「ナイスコントロール」
「……何してるの?」
バカやって一人で楽しんでいると、後ろから突然声が聞こえて涼人はビクリと跳ねた。


「んん!?あぁ、スグか何でも無い何でも無い」
「ふぅ〜ん……の割には随分楽しそうだったけど」
言いながら手をブンブン振った涼人に、直葉はニヤニヤと笑いながら返す。「はっはっは」と誤魔化すように笑ってから、涼人は言った。

「て、またかお前。さっさと入れい」
「はーい。あ、」
またしても、直葉はその手に大量の洗い物を抱えていた。だから前日に出せと言っているのに……
と、そんな彼女は警戒したように涼人に言う。

「また横から手、出したりしないでよね」
「あぁ?あー、あん時……って一年近く前だろうが」
言われた涼人は1月の事を思い出して、拳を手のひらに、ポンっと乗せる。そのまま苦笑して返すが……

「…………」
直葉は疑うような目で涼人を睨んでいる。

「ったく……わあったよ。出さなきゃ良いんだろ?」
そう言うと、涼人は両手を上げて頭の後ろで組んだ。

「これでいーですか」
「よろしい」
そう言うと、直葉は洗濯物をポイポイと投げ入れ始める。そして……

「ほっ」
「なっ……!?」
投げたブラジャーが、突き出された涼人の右足の先に引っかかっていた。しかも的確に、以前と同じブラだと……!?

「っま。手はなくとも足は出るのだよ妹……」


――バシィン!!――

涼人にはその後数分の記憶が無い。

――――

「ぉはよう」
「おう。おはようさん」
その一時間程後、起きてきた和人はどうやら眠いらしく、目を擦りながら、足取り重く歩いてきた。

「ちゃんと寝たか?」
「あ、あぁ……いや、正直あんまり……」
一瞬苦笑して誤魔化すような顔をしたが、直ぐにそれが涼人に対して意味を持たない事を思い出したのだろう。頭の後ろを掻いて苦笑する。

「さよか……ま、無理に寝ろとは言わねえけどな。夜にゃ本戦だ、ちゃんと体力蓄えとけよ?」
「あぁ。分かってる」
コクリと少し緊張気味な顔で頷いた和人に、涼人は面白がるような顔をすると……。

「分かってる、ねぇ……そんな気ぃ張ってたら、休まるもんも休まらねえからな?気持ち緩め気持ち緩め」
「うぐ……分かった……」
図星を突かれて言葉に詰まった彼は、頭を掻いて少し俯き加減になる。それを見ていつものようにニヤリと笑うと、

「んじゃま、庭で顔でも洗ってこい。あ、スグにもう直ぐ飯だっつっといて」
「ん。了解」
テクテクと歩いていく和人の背中を見ながら、涼人は苦笑して朝飯作りを再開する。ちなみにメニューは厚切りベーコンを乗せたピザトーストだ。先程のお詫びとして直葉に作らされる羽目になり、ピーマンが無かったため(スグはピーマンが無いと駄目だと言い出すから困る)近くにあるコンビニまで(スーパーは時間的に開いて居ない)自転車(ママチャリ)を全速力で走らせ、スーパーと比べると遥かに高いピーマンを“自腹”で買ってくる羽目になった上に成り立つ、涼人の金と涙の結晶である。

「ま、思い出っつーには質悪過ぎだわな」
和人が眠れなかった理由は、まあ大体察しが付く。おそらくだが、昨日出くわしたラフコフメンバーの事から、あのギルドその物の事や、あの、討伐戦の時の事を思い出して居たのだろう。
そして或いは、彼自身があの世界から消し去った一人……否、二人の事を。

「……ふぅ」
六枚のパンにケチャップを塗り終え、涼人は溜息を吐くと冷蔵庫からベーコンとチーズを取り出す。先に輪切りにして置いたピーマンを載せると、次にベーコン。

「…………」
正直、なるべくならばあの世界で和人/キリトに殺しをさせたくは無かった。
殺人は、一度でも犯したならば、未来永劫に向き合って行かなければならない、言わば突き刺さった楔のような罪だ。
和人や自分は、あの世界で有ったが故に裁きを受けず、また罰される事無く、一見「罪と向き合う」必要は無いように思えるが、それは否だ。
例え状況がどうあれ、環境がどうあれ、自分が“人を殺した”のだという意識は自分の中から無くすべきではないと涼人は思っているし、向き合わなければならないとも思う。


そう思うからこそ、涼人は和人に、リョウはキリトに殺人をさせたくは無かったのだが……

「させちまったんだよなぁ……」
チーズを乗せつつ呟くように言う。
ラフコフとの戦闘状況を見て、後方からアスナとの話を無視して前に出たあの時。
残念ながら、アスナを庇って半ば理性を飛ばした状態で走り込んだキリトが一人を殺す事を止めるには、リョウの敏捷値は足らな過ぎた。
結果とその後の事は……読者諸君も知っての通りである。

あの時の事を思い出していたと有れば、成程、寝不足も頷ける。そう言う涼人はと言えば、相も変わらず嫌になるほど何時も通り。昨晩もまたぐっすりと眠れた。

「参ったね……」
六枚全てを作り終え、三枚を桐ヶ谷家自慢(と言うか翠叔母さん自慢)のちょっと大きなオーブントースターにぶち込んで摘みを捻る。ヴーンと言う独特の唸るような稼働音と共に、内部がオレンジ色の光を放ち出した。

「荒れるかもなぁ……」
楽な依頼かと思えばこれだ。自分や和人の巻き込まれ体質に辟易としながら、涼人は一人呟いた。

――――

「おにーいちゃんっ」
さて、それから数時間が経ち、昼飯時。
和人と直葉が買い物から始めて作った本日の昼食であるシーザーサラダとシーフードピラフをがっついて居ると、一部の……戸籍上同一の一家に分類され、自身が第一子や二子で有る場合にそれ以下の欄に子供として記載される女性。を非常に好む方々が聞いたなら卒倒しそう(勿論喜びで)な言葉を発し、とびきりの笑顔を浮かべながら和人の方を向いた彼女に対して、明らかに顔の端がピクリと引きつった和人は、恐らくは自身の日頃の行いがお世辞にも良いとは言えない事を自覚しているのであろう。ピタッとミニトマトを口に運ぶ手が止まった和人を視界に収めつつ、しかし涼人は何も言わずにもう一口を口に運ぶ。

「と……突然なんだよ。スグ?」
明らかにどもっている物の、ひとまず平常心な顔(少なくとも、本人はそのつもりの筈だ)で返した和人に対して、彼の向かい側。涼人から見ると右側に座る直葉は自分の右隣の椅子から一枚の……ちょうどA4サイズのコピー用紙を取り出して、和人に見せた。と言うか突き付けた。

「あのね、あたし今朝、ネットでこんな記事見つけたんだけどね?」
チラリと見ると、それはどうやら現在日本最大のVRMMO総合情報サイトである、《ニュー・ワールズ・ストーリー》……略称を《ニュース》と言うのだが(ちなみに、MMOプレイヤーの間では最早テレビや新聞のアレよりも先行していたりする)、それのトピックスコーナーのハードコピーのようだった。
太字のラインには、[ガンゲイル・オンラインの最強者決定バトルロイヤル、第三回《バレット・オブ・バレッツ》本戦大会出場プレイヤー三十人決まる]と書かれている。爪を切りそろえた直葉の指は、その内の一カ所を差していた。其処に[Fブロック一位:Kirito(初)]と言う文字が書いてある。吐き掛けた溜息を飲み込んで、涼人は和人をチラリと見る。
しかしまあ有る意味当たり前だが、直葉のそれは和人だけで止まらなかった。

「ほら、りょう兄ちゃんも見て見て」
今度は涼人にそれを突きつけてくる。しかも指は別の場所を差していて其処には当然と言うべきか。はっきりと[Eブロック一位:Ryoko(初)]と記入されている。

「ん。おう」と気のない返事をして、ピラフに夢中になっているふりをすると、涼人はもう一度和人を見る、彼は相変わらず引きつったように笑うと……、

「へ、へえ。似たような名前の人が居るもんだなぁ」
何という虚しい抵抗だろうか。せめてもう少しマシな返し方は無かったのか。対して直葉は……

「似てるって言うか、全く同じだよね」
そう言って一蹴した。ちなみに顔は笑顔だ。超笑顔。

「…………」
その無言の笑顔で空気の圧力が増すのだから、全く、笑顔の可能性は無限大だと思う。

……とは言え、まあ別に和人と直葉や、或いは万に一つの確率で直葉と自分の間に喧嘩が勃発すると懸念している訳では、涼人とてない。
元々涼人と和人、或いは涼人と直葉はSAO前から仲が良かったし、この世界に帰還してからの一年間は、和人と直葉もそれこそSAO前は一体何だったのか(日の会話すら禄に無かった)と言いたくなる位に仲が良く、彼等の父親である峰高氏が拗ねてみせる程だ。

それにもし仮に弟妹喧嘩が勃発してしまったなら、涼人が止めれば良いだけの話である。
喧嘩ならもやしの和人は問題にならないし、直葉はまぁ……流石に高一からいきなりインターハイと玉竜旗の団体レギュラーに選ばれるだけの事もあって、体力面だけならば普段からある程度のフィジカルトレーニングを積んでいる筈の涼人に勝るとも劣らない。
が、残念ながら「喧嘩」と言う枠組みになれば、その特有の“何でもあり”な戦い方をよく理解して居る涼人に勝つことは不可能だ。無論、彼女の土俵である剣道となったらこれはもう涼人は竹刀にシーツでも括り付けて振らねばなるまいが。

「……ま、まあ、同じかな、ウン」
と、和人は相変わらず虚しい抵抗を続けているようだった。
無理がある態度でコピー用紙から目を逸らし、プチトマトを口の中に放り込む。

「で、でもまぁ、ありがちな名前だしな。俺だって本名の省略なわけだし、きっとそのGGOキリトくんも、きり……霧ヶ峰藤五郎とか、そんな名前なんだよ。ウン」
クーラーか時代劇かよと突っ込みたくなったが、やめておいた。今は余計な口は挟まない方が良い。と、視界の端で斜め隣の和人の瞳に、恐らくは最愛の妹に明らかな嘘を付いて居る故であろう罪悪感の光を見止めて、涼人は少しだけ陰鬱とした気分になる。
何故和人や涼人が直葉に今回の事を隠すのかと言われれば、第一に、ALOから自分達がコンバートした事を彼女に伝える事で彼女を傷つける事が躊躇われたからだ。そして第二に、それを打ち開けたとしてその理由を問われれば、自分達は彼女にそれを打ち開けなければならないだろう。とは言え、今回は人死にがかかわっている事件である。流石にそうそう直葉に全てを打ち開ける気にもなれない。
まして、SAOにおける自分達ラフコフの因縁に、彼女を巻き込むなど論外だ。
軽いシスコンは二人して自覚済みだが、しかしそこを譲る気には矢張り二人ともなれなかった。

と、そんな幾つかの思考を、直葉の小さな声が遮った。

「お兄ちゃん、また怖い顔してる」
と、直葉の気使わしげな声が脳裏に響いて、涼人は思考を戻す。見ると直葉が、和人の眼を不安げな光を瞳に湛えて見つめていた。
幸い、自分自身の方はピラフを食べる手を止めたいでいてくれたようで、少しだけ涼人は安堵した。

卓上にコピー用紙を置くと、直葉は和人を……否。涼人と和人を見つめたまま小さな子で言いだした。

「あのね、あたし、ホントは二人が……《キリト君》と《リョウ》が、ALOからGGOにコンバートした事知ってるんだ」
「…………!」
今度こそ、涼人は眼を見開いて停止した。和人は明日奈とユイにはその事を伝えた筈だが、しかしそれ以外にリョウコウとキリトがALOから消えた事を知る者はいない筈……
そんな事を思っていると、直葉はどこか大人びた微笑みで此方を見ながら言った。

「フレンドリストから二人が消えてる事、あたしが気づかない訳無いでしょ」
「んな、無いでしょってなぁ……」
「あ、あぁ。リストなんて、そんな毎日見るもんじゃ……」
「見なくても、感じるもん」
はっきりと言いきった直葉に、涼人は呆れとも感嘆とも……そして嬉しさともつかぬ感情を抱く。自分の勘が、直葉にもうつったのだろうか?否。あるいは……

それから、直葉はぽつぽつと語った。
昨日の夜、リョウコウとキリトがフレンドリストから消失している事に気付いた事。
すぐに和人の部屋に突撃を掛けようとして、しかし和人や涼人が自分に何の相談も無くALOから消えるなどあり得ないと思い直し(こう言った妹の信頼は兄二人としては本当に嬉しく、照れくさい)、先に明日奈に連絡を入れ、今回の依頼について聞いた事。

「……そう、か……」
コンバートした事の後ろめたさか、直葉から目を逸らす和人と、頭の後ろを掻く涼人の前で、直葉がカタン。と小さな音を立てて立ちあがる。
机をはさんでいては、分からない事もあると悟ったのだろうか?そのまま彼女は、ゆっくりと和人の後ろに付いた。しゃがみこむように和人の顔の横に自分の顔を寄せて、内包した不安を絞り出すように小さな声を漏らす。

「お兄ちゃん……」
囁き声の語尾が、少しだけ震えているのを涼人は敏感に感じ取る。

「アスナさんは、『いつもみたいに二人でGGOに行って、ちょっと暴れてからすぐ戻ってくるよ』って言ってた。でも、本心では不安に思ってるみたいだった。あたしもそうだよ……だって……だって、昨日遅くに帰って来た時、お兄ちゃん取っても怖い顔してた……りょう兄ちゃんだって……」
そこで、直葉は少しだけ言葉を詰めた。まるで、口に出すことを恐れるような……

「ほんの少しだけ……怒ってるみたいだった……」
「っ……!」
反射的、と言うべきか。和人は涼人の方を窺うように見た。
涼人は、苦笑していた……

「参ったぜ……」
「……やっぱり……」
不安そうに涼人の方を見た直葉は、やがて語りかけるように、和人に問いかける。
それは、いつもの彼女と比べるととても弱弱しく、その瞳の奥には確かに、恐怖の光が見て取れた。

「ね……、危ない事、何もないんだよね……?嫌だよ、またどこか遠くに行っちゃったりしたら……」
その先を言う事を恐れたのか、彼女はそこで言葉を区切った。
それに対し、キリトは小さく、そしてどこか嬉しそうに微笑む。

「……行かないよ」
はっきりとした声が、静かな部屋の中に響いた。

「約束する、今夜の、GGOイベントが終わったら、ちゃんと帰ってくるよ……ALOと、この家に」
「なっ?」といって、それを確認するかのように自分を見た和人を見て、涼人は何時ものようにニヤリとした笑みを浮かべると、軽く頷いた。

「あぁ。楽勝だ。安心しろよ……此奴の事は、ちゃんと連れて帰ってくるからよ」
そう言った涼人に、直葉は少しだけ安心したように微笑する……しかし、その顔をすぐに真剣な物に戻すと、頼むような重い声で言った。

「お兄ちゃんだけじゃないよ……ちゃんと、りょう兄ちゃんもリョウも帰って来てくれなきゃ、嫌だから」
その言葉に、涼人は再び驚いたように目を見開く。しかしやがて、もう一度笑った。
今度は、いつもの企むような彼の笑みとは違う。優しく、柔らかな微笑み。

「あぁ。勿論だ」
本当ならば、自分達がSAOにとらわれたことで大きな心痛を与えてしまった妹に、こんな不安を再び与えるなど、絶対に許されない話だろう。
しかし、依頼をキャンセルする事は、今となっては難しい。いや、出来ない。

アイリや、闇風との約束を反故にする事はリョウのポリシーに反するし、何より《死銃》がラフコフの一味であると判明した今、涼人と和人には……リョウコウとキリトには、果たすべき責務が出来た。

《剣士 キリト》として。あるいは《刃 リョウコウ》として。あの時の、決着を付ける。その時は再び、桐ケ谷涼人と、和人として、この家に帰ってくる事が出来るだろう。

「ぜってえ帰ってくる。約束してやるよ。ほれ、それよかさっさと食わねぇと、冷めるぞ?」
再びニヤリと笑った涼人に、直葉はようやく普段の元気な笑顔を取り戻したようだった。「……うんっ」と歯切れのよい返事をすると、自席に座ってピラフをハグッとひと山食べる。

「ほーひへあ、おひぃはん(そーいえば、お兄ちゃん)」
「……何だって?」
「食ってから話せ」
言うと、直葉は即座に咀嚼したピラフをごくりと飲み込んだ。

「アスナさんから聞いたんだけど、今回の《お仕事》、すっごいバイト料出るんだってね?」
「うっ……」
ちなみに、今回の菊岡の出す報酬300K(三十万)ほどで有る。涼人も和人も、それを利用して最新スペックのPCを買う予定だった。
悪戯っぽく笑って言った彼女に対し、和人はぎくりと体を震わせると、少し考えた後、どんっと胸を張って叩いた。

「お、おう。何でもおごってやるから楽しみにしとけよ」
「おぉ、太っ腹だなカズ」
涼人が感嘆したように呟くと、和人は眼を向いた。その顔は明らかに、「えっ!?手伝ってくんないの!?」と言っているが、誰が手伝うと言ったのだ。

「やった!あのね、あたし、前から欲しかったナノカーボンの竹刀が有るんだ!」
それは最早“竹”刀では無いのではあるまいか、と思いながら聞いて居ると、直葉が目ざとく此方を向いた。ふむ……強欲はいかんと教えるのも兄の仕事か。

「そういや、金と言えばトンキーの時の借金、いつになったら……」
「さ、さぁ!食べよ!冷めちゃう冷めちゃう!」
残念ながら、直葉が涼人に金の要求が出来るのは当分先のようだ。

────

「さて……」
涼人は小さく呟くと、スニーカーを履いて家を出る。乗るのは車。扉を開けると、持っていた紙袋を助手席の下に置いた。
荷物を運転席のわきに置き、ボタン式のキーを入れる。

「行きますかね」
アクセルを踏み込むと、車はなめらかに動きだした。

────

これから向かうのは東京都、御茶ノ水……だがその前に、涼人は湯島に寄ろうと思っていた。
以前美幸と共に詩乃の家に行った後、美幸から偶におかずでも作って行くと言う提案が出たのだ。詩乃の方はやたら遠慮していたが、そんな事で美幸が止まる様子は無く、結局、時折、気が向いた程度の頻度で料理を涼人と美幸が持っていく事に、今はなっている。

そして今日は、涼人も丁度すぐ近くの御茶ノ水まで出掛けるため、出かける前に軽く逸品作って、詩乃に持っていこうと考えたのだ。自分のレベルアップした料理スキルの実戦も兼ねている。
川越街道から、池袋を通過して春日通りへ。文京区に入ると、目的地の湯島はすぐそこだ。
住宅街に入り、涼人が緩やかに車を走らせていると、前方に小さな公園が見えた。と……

「お?」
その公園に、見慣れた後ろ姿が見えた。間違いない、詩乃だ。
そしてその横に……

「ほっほぉ……何だ?デートか?」
新川恭二が、立っていた。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

最後、少し荒れそうにw
ま、まぁそれは次回で。

今回は妹と兄ーズのお話の回でした。
ちなみに、まだ借金は返せてませんw全額返済はいつになるやら……

ではっ! 
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