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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  九十七話 予選を終えて

 
前書き
はい!どうもです!

案外短くまとまったので一気に書いてしまいましたw

これでとりあえずGGO編二章は終了ですw

では、どうぞ! 

 
さて、予選が終わり、総督府ホール内でどうやら自分達を待っていたらしいアイリの賑やかな(一人なのに賑やかとはこれ如何に)祝福を受け取った後、リョウは総督府前まで出てそのままログアウトした。長時間付き合わせた安岐さんに、ほぼ同タイミングでログアウトしてきた和人と共に丁寧に礼を言って、既に薄暗くなった病院内の廊下を歩く。
ホラゲーにでも有りそうなシチュエーションだな。等と考えつつ、エレベーターで下へと下る涼人は、ログアウトする寸前のアイリと闇風の台詞を思い出す。

――――

『それじゃ、明日は私とも戦おうね!それまで負けちゃ駄目だよ!』
『へーへーわあったよ!』
苦笑しながら大声で返すと、アイリはニコッと笑って跳ねるような声で……

『負けないからね〜!じゃ、頑張ろうね!また明日!』
『おう。明日な』
そう言って、彼女はログアウトした。と、後ろから。

『ほーう。好かれてるわねぇ……』
『あのなぁヤミ……つか、誰にでもああなんじゃねぇの?彼奴』
首を傾げて言ったリョウに、闇風が返す。


『ま、そう言われればそうなんだけどね』
『だろ?』
『でもなんて言うか、アンタは特別っぽいと思わない?』
『はぁ?』
思わず、疑問符に疑問符で返してしまう。

『何だそりゃ』
『別に?何となくよ。あ、今ので変な勘違いして、あの子に手、出したら承知しないからね』
睨み付けるように自分を睨んだ闇風に、リョウはプラプラと手を振って返す。

『しねぇって。どんな勘違いだそりゃ。発情期か』
『せめて思春期って言いなさいよ……ま、なら良いけどね。けど注意しなさいよ〜?』
ニヤリと笑いながら自分に言った闇風に、リョウは首を傾げる。

『あ?何が』
『明日。あの子と戦うんでしょ?気を付けた方が良いわよ?あの子戦いになると性格変わるから』
『っほー……そりゃ怖えぇな。んじゃ少なくともお前に注意するよりは注意しとこう』
カチンッと音がしそうな勢いで闇風がリョウを睨む。

『はぁ!?何よそれ!アタシは取るに足らないって事!?』
『ついさっき負けた身で言ってもなぁ……』
ニヤリと笑ったリョウを横から見上げるような形で睨みながら闇風が地団駄を踏む。

『アンタねぇ……絶対明日その物言い後悔させてやるから!』
『へへっ、返り討ち返り討ち』
『言ってなさい!』
そう言うと、闇風は怒ったように乱暴にウィンドウを出現させると、さっさとログアウトしてしまった。

――――

「やれやれ。明日もしんどくなりそうだなこりゃ……」
言いながら、リョウは大きく伸びをする。
闇風には正直ああは言った物の勝つか負けるかギリギリの勝負だったし、アイリに関しては未知数ながら先のNPC戦を見ていた限り弱いと言うことは先ず無いだろう。
明日の戦闘に関しては今から少し憂鬱な。しかしそれ以上に期待を感じてニヤリと笑いながら涼人は停止し、扉の開いたエレベーターから出て歩く。と、後ろのキリトが、先程からちっとも喋らない事に気がついた。

「そういや、お前はどうだったんだよカズ。予選Fブロック、トップ通過だったんだろ?」
「え?あ、あぁ。まあ、なんとかなったかな」
歯切れ悪くそう話す和人に、涼人は首を傾げる。

「おいおいなんだよ。やけにテンション低いじゃねえか。あのシノンって嬢ちゃんに勝ったんだろ?」
「嬢ちゃんって……そんな呼び方するとシノン怒るぞ」
苦笑しながら和人は言うが、その笑顔にもやはりどことなく力がない。
いよいよもってくるりと振り返ると、涼人ははっきりと聞いた。

「なんか有ったのか?」
「……お見通し、か」
苦笑しながら言った和人に、涼人は声を上げて笑う。

「っはは!今のお前の沈んでんの見りゃ、俺やアスナじゃ無かろうが分かるっての」
「うぐ……ま、まぁ良いけどさ……」
拗ねたように口を尖らせた和人にニヤリと笑ってやると、彼は軽く頭を掻いた後、幾らか控えめな声で話し出す。

「今日……さっきの予選のインターバルの時……おれ、多分死銃に会った」
「な、にぃ!?」
予想外の発言に、涼人は自身の声が上ずるのを感じた。慌てて和人の方に振り向き。

「で、どうだったんだ?事情聴けたのか?」
「い、いや……」
「ありゃ。何だよ。接触したならちゃんと聞かねぇと不味いだろ?どんな奴だったんだ?ン名に話しかけずらい感じの奴だったん?」
「…………」
そこまで聞くと、またしても和人が俯いて黙りこむ。そうして、数秒の間何かを迷うように顔を伏せた後、顔を上げて話しだした。

「顔は、なんかスカル系のマスクをかぶってた。声はボイスエフェクター使ってて分からなかったけど……ボロボロのマント着てたな……」
「へぇ。また雰囲気作ってる感じだなぁ……」
苦笑しながらおどけたように涼人は首をかしげる。が……和人の表情はなおも険しいままだ。

「何だ?それ以上が有るって顔だな……どした?」
「そいつの腕に、タトゥーが有ったんだ……」
「タトゥー?スコードロンかなんかのメンバーだったのか?」
「スコードロンじゃない……ギルドだよ」
「ギルドぉ?」
首をかしげて、涼人は聞き返す。あのGGOにギルドは無いはずだ。一体何を言っているのだと和人の顔をみ返すが、和人はますます顔色が悪くなるばかりで、涼人は余計に困惑する。

「何だよ。そのタトゥーが何だって?」
「……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)」
「……あン?」
「ラフィン・コフィンの、タトゥーだったんだ」
「な……」

涼人はようやく、和人がこんなにも顔を蒼くしている理由を理解した。

「……確かか?」
低い声で聞いた涼人に、和人はコクリと頷く。

「他のマークならともかく、少なくともあのマークだけは……見間違えたりは、しないっ」
「だろうな……分かった」
そう言って、涼人は正面に振り返ると、ゆっくりと歩き出す。

「明日は開始から全力でそいつを探すぞ」
他の、特に関連性も無い一般人が相手であるならば、涼人もまだガセの可能性を考慮出来た。しかし残念ながら、確信が持ててしまった。
相手がラフコフのメンバーであると言うのなら……残念ながら、彼らが何らかの方法を使ってVRMMOを絡めた殺人を犯すであろうことに、確信が持ててしまったのだ。

「あ、あぁ……」
少し緊張したような声と共に、和人は涼人を追って歩き出す。

『討ち洩らしとはな……迂闊だった。まさかこっちに戻ってまでやるとはな。あのイカれポンチ共は……』
内心でほぞを噛みつつ、涼人は病院の出口へと歩く。
とにかく、明日何かが起こる事はこれで殆ど確実だ。なるべくならば、そうなる前に阻止したいが……
小さく舌打ちをして、リョウは歩くスピードを上げる。そうして、安岐さんに教えてもらった裏口から、外に出た。少し歩くと、駐車場が見えて来る。と……

「な、なぁ!兄貴……」
「んん?」
不意に、和人が声をかけてきた。
振り向くと、少し離れた場所で、真剣な……けれども何かを恐れるような顔をして立つ、従兄の姿が有る。涼人は首をかしげた。

「何だ?」
「……あの、さ……」
和人はそれを口に出すその瞬間まで、何かに従順するような表情を見せていたが……やがて、意を決したように口を開く。

「……兄貴は……」


「自分があの世界で消した人間の事……どれくらい、覚えてるんだ?」
「…………」
冷たく乾いた風が、涼人と和人の間に駆け抜けた。

「…………」
数秒の間、色々な事を恐れるような、しかし、聞いた事に後悔は無いと言った様子の和人と、完全に表情を消した涼人の顔が、一つの明るい街灯を挟んで向き合っていたが……やがて涼人が、いつも通りの調子で口を開く。

「どれくらい……か……そうだなぁ……」
それは本当に、いつも通りで、何の変哲も無い言葉。けれども……




「“50人”を超えてからは、殺した人数も数えてねぇよ」
「……っ!!!」
圧倒的な、“重み”を孕んだ言葉。

その重みに押しつぶされそうになって、しかし踏ん張るように、和人は全身に力を入れていた。その重みは、涼人にある意味では“そうさせたのかもしれない”自分達の背負うべき重さだからだ。
そうして、ふたたび冷たい風が枯れ葉を巻き込んで吹き去る。
それを待っていたように、涼人は口を開いた。

「軽蔑してくれてかまわねぇぞ。それだけの事したんだからな」
「…………」
涼人の言葉に、無言のまま、しかしはっきりと、和人は首を横に振った。
それを見て、涼人は小さく、しかし優しい弟分を慈しむように微笑む。

「そうか」
そうして振り向きながら、もう一言。

「ありがとな」
まるで街灯の向こうの闇に溶けて行くように歩いて行く涼人の背中を、和人は唯、見守っていた。

Second story 《彼等は言葉と弾丸を交える》 完
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

最後はちょっとダークな感じに終えましたw
まぁ、ラフコフや殺人云々がかかわってくるGGO編ですとやはりこの類の話も上がって参ります。

この先もちょくちょくジンではなく、“刃”関係の話が上ってくる予定です。

ではっ! 
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