実はおっさんだった

　　　　　　　　　　　　　　　実はおっさんだった
　高梨隆夫はこの時あるブイチューバーに夢中になっていた、それで大学でもいつもそのブイチューバーの話をしていた。
「いやあ、宮城白百合ちゃん最高だよ」
「今話題のブイチューバーだよな」
「何でも美少女だっていう」
「そうだよな」
「ああ、キャラは黒髪ロング清楚な大和撫子でな」
　それでというのだ、見れば一八〇近い長身で丸々としていて体重は優に百キロを超えている感じだ。色白で夷さんみたいな顔立ちで黒髪は短く全体的に大福を思わせる外見だ。
「声は美少女声優さんみたいでな」
「しかもトークも面白い」
「そんな娘なんだな」
「そうだよ、だから毎日の配信が待ち遠しくてな」
　高梨は大学の教室の中で話した、八条大学のキャンバスは今日も平和だ。
「それで観たらそれだけでな」
「幸せか」
「そうなんだな」
「お前としては」
「そうなんだよ、白百合ちゃん最高だよ」　
　こうも言うのだった。
「本当にな」
「リアルの娘好きになれとは思うけれどな」
「まあお前が幸せならいいか」
「別に犯罪じゃないしな」
「二次元に萌えるのもな」
「二次元の娘相手に犯罪も出来ないしな」
「三次元の娘なんてめじゃないぞ」
　高梨は笑って言い切った。
「もうな」
「それが宮城白百合ちゃんか」
「ブイチューバーの」
「一体どんな娘か気になるな」
「ちょっと俺達も観てみるか」
「ああ、是非そうしろよ」　
　高梨は笑顔で推奨した、そして彼の友人達もだった。
　宮城白百合のチャンネルを観た、そして。
「最高だな」
「ああ、最高のブイチューバーだよ」
「可愛過ぎるだろ」
「もう三次元の娘なんてめじゃないぞ」
「高梨っちの言う通りだな」
「トークも面白いしな」
「ゲーム実況もいいだろ」
　高梨はそちらの話もした、ネットの定番の一つだ。
「こっちも」
「上手とかじゃなくてな」
「解説とか実況上手だな」
「丁寧で作品への愛情も出ていて」
「いい実況だな」
「これはいいな」
「そうだよな」
「ああ、だからな」
　高梨はさらに言った。
「これからもな」
「そうだな、宮城白百合ちゃんラブだ」
「俺達は白百合ちゃん一筋だ」
「俺達のアイドルはあの娘だ」
「あの娘以外にいないぞ」　
　友人達もこう言ってだった。
　宮城白百合を応援していった、毎日の彼女の配信をライブで楽しむのが日課になっていた。そしてそのライブが終わると。
　彼等は明日もとなった、これは宮城白百合のファン全員がだった。
　そして彼もだった。
　ライブが終わってだ、サラリーマンの武藤健次郎四十八歳家族は妻と二人の娘家では反抗期の娘達に邪険にされていて健康診断では常に肥満と血糖値とプリン体のことが言われ脂ぎっていて髪の毛は前からつむじのところまで逝去してしまっている彼がだ。