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コーヒーは自分で煎れる

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第一章

                コーヒーは自分で煎れる
 八条フード岡山支社管理部第一課長小此木俊彦は元自衛官である、高校を卒業してから海上自衛隊に三年いて転職して今の仕事に就いている。
 長身で長方形の顔をしていて半分白くなった短い髪の毛に細く小さな目を持っている、痩せた身体をしていて薄い唇から感情を伺うことは難しい。
 趣味はゴルフに水泳それにサウナ通いだ、元自衛官らしく時間には五月蠅く真面目で折り目が正しく清潔だ。
 いつも仕事をしている時コーヒーを飲んでいるがそのコーヒーは。
「あっ、煎れますけれど」
「ああ、いいよ」 
 小此木は課の若手のOL佐藤睦美黒髪をショートにしてきりっとした大きな目と顎の先が尖った面長の顔に一六九の背のすらりとしたスタイルの彼女に笑って返した。
「僕はいつもこうしてるからね」
「コーヒーは自分で、ですか」
「他の自分のこともだけれどね」
「コーヒーもですか」
「会社ではね」
「そうですか」
「自分のものは自分で煎れる」
 そうするというのだ。
「そして飲んでいるんだ」
「そうですか」
「だからいいよ」
「それでは」
 睦実はそれならと下がった、そしてだった。
 自分の紅茶を煎れて飲んだがここでだった。
 先輩の高橋万里子一五二程の背でやや茶色がかった髪をロングにしていて睫毛の長いきらきらした目で色白でスタイルのいい彼女に言われた。二人共会社の制服である膝までのダークグレーのタイトスカートと白のブラウスに青と黒のチェックのベストという恰好だ。
「課長はああしてなのよ」
「コーヒーはですか」
「ご自身でね」
「他のご自身のこともで」
「そうされるのよ」
「やっぱり元自衛官だからですか?」
 睦実はそれではと万里子に言った、今は昼休みで二人で一緒に会社の近くのカレーのチェーン店に入ってそこでカレーを食べている。睦実はチキンカレーで万里子は海老フライカレーをそれぞれ食べている。 
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