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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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ハーケン会戦~特務支援課、介入~

~ハーケン平原・上空~



ガルガンチェア1号機への攻撃を開始したアルセイユとレボリューションはまずは兵装を無力化する為にミサイルポッドや対空砲を狙って攻撃し、対するガルガンチュアはアルセイユとレボリューションに対して反撃をしたが起動力は完全に劣っている為肝心の主砲は役に立たず、ミサイルと対空砲も二手に分かれた船を狙う事でそれぞれに向かう攻撃の頻度が半減されている事でほとんどが回避され、命中してもそれぞれの障壁に防がれた事で無効化され、その攻撃手段もアルセイユとレボリューションによる攻撃によって次々と破壊された事で次々と使用不能となり、ミサイルポッドと対空砲が半分程破壊されるとほぼアルセイユとレボリューションによる一方的な攻撃(ワンサイドゲーム)のようになり、次々とアルセイユとレボリューションの攻撃がガルガンチェア1号機の機体に命中し続けていた。



~カレイジャス・ブリッジ~



「お願い……()めて……母様を殺さないで……」

「アリサさん………」

「ガルガンチェア1号機、レボリューション、アルセイユへはまだ繋がらないの!?」

「ダメです……!3隻とも全てこちらの通信を拒否し続けて繋がりません……!」

「ハッキングの方はどうだ、ティータ!?」

「ご、ごめんなさい……!ハッキング対策が一番緩いガルガンチェア1号機に絞ってハッキングをしているんですが、戦艦の情報があまりにも多くて、わたし一人で短時間で通信機関にハッキングする事は……!」

映像端末に映るアルセイユとレボリューション、ガルガンチェア1号機の空中戦を見ていたアリサは涙を流して両手で顔を覆ってうわ言を呟き、アリサの様子をエマは辛そうな表情で見つめ、必死な表情を浮かべたトワの問いかけに通信士を務めている士官学院生は悲痛そうな表情を浮かべて答え、アガットの問いかけに対してハッキングをする為に端末の前に座って端末を動かしていたティータは泣きそうな表情を浮かべて答えながら必死に指を動かし続けていた。

「くっ……このままでは、イリーナ会長とシュミット博士が……!」

「空もそうだが、地上もこのまま放置しておけば、学院長がリィン達に討たれるぞ……!?」

「ど、どうすれば……」

「このまま戦艦が破壊される様子を見守る事しかできないのかよ、クソがっ!」

ラウラとユーシスは焦った様子で声を上げ、エリオットは不安そうな表情で呟き、アッシュは悔しそうな表情で声を上げた。



「………エマ様、セリーヌ様。”わたくしだけをガルガンチェア1号機の甲板に転位で送る事”は可能でしょうか?」

「………ぇ………」

「シャ、シャロンさん……?一体何を……」

「!まさかあんた一人で戦艦に潜入してイリーナ会長とシュミット博士をあの戦艦から連れ出してくるつもり!?」

その時目を伏せて考え込んでいたシャロンは決意の表情を浮かべてエマとセリーヌに問いかけ、シャロンの問いかけにアリサが呆けている中エマは困惑し、シャロンがやろうとしている事を察したサラは血相を変えて声を上げた。

「いえ……連れ出すにしても一人が限度ですから、皆さんにとっては遺憾でしょうが”シュミット博士は見捨ててイリーナ会長の救出のみに絞りますわ。”」

「……ッ!!」

「シュ、”シュミット博士は見捨てる”って……」

「……だが、状況を考えればそれが彼女にとっての限界なんだろう。」

「理解はしていますが、それでも”民間人を見捨てる”という選択肢は遊撃士(わたしたち)にとっては本当なら受け入れたくないやり方ですね……」

「い、幾らシャロンさんでも無茶ですよ……!」

「戦艦に潜入したときに妨害してくる正規軍の軍人達をたった一人でどうやって無力化するつもりなの~?」

シャロンの非情な答えを聞いたサラは目を見開いて唇を噛み締め、アネラスやジン、エレインはそれぞれ複雑そうな表情で呟き、マキアスは信じられない表情で指摘し、ミリアムは疑問を口にした。



「……状況が状況ですから、わたくしも”手加減はできませんので、無力化はしませんわ。”」

「”手加減はできないから、無力化はしない”ってまさか……」

「……潜入の最中に遭遇した正規軍は全員殺すつもり?」

ミリアムの疑問に対するシャロンの答えを聞いてある事を察したシェラザードは信じられない表情を浮かべ、フィーは複雑そうな表情で訊ねた。

「……はい。勿論運よく急所を逃れた方達に関しては”止め”は刺さず、放置するつもりですわ。」

「――――――ダメです!シャロンさん一人だけを攻撃を受けている戦艦に潜入させてイリーナ会長を救出するなんていうあまりにも無謀な作戦……許可できません!」

「作戦内容があまりにも無謀な事もそうだけど、今まで”不殺”を貫き、身内は全て助けて来た紅き(わたしたち)の信念を破る事にもなるから、どうか考え直してください、シャロンさん。」

「というかそれ以前に甲板に転位した瞬間にアルセイユとレボリューションの爆撃や砲撃に巻き込まれる可能性が高いから、そんな危険地帯に転位をさせられないわよ……」

シャロンの答えを聞いたその場にいる全員が血相を変えている中トワとアンゼリカは真剣な表情でシャロンに指摘し、セリーヌは疲れた表情で指摘した。

「ですが現状で会長を救うとすればこの方法しか……」

「――――――どうか考え直す事、私からもお願いする、シャロンさん。Ⅶ組の皆の言っている事もあるが……何よりも万が一失敗してしまえば、アリサ君は両親に加えて再び自分の元に戻ってきてくれた”貴女という家族”まで失ってしまう事になる。もし、そんなことになれば……彼女は完全に立ち直れず、最悪は連合――――――いや、リィン君達を恨み、憎むかもしれない。――――――かつて”母”を失った私はセドリック達がいたお陰で立ち直れたが……もし、セドリック達が生まれていなかったら私は立ち直れず、父を恨み、憎んでいたかもしれなかったからね。」

「オリビエ……」

「兄上……」

「お願い……いかないで……シャロン……貴女まで死んだら……私……」

「………お嬢様………」

シャロンが反論しようとしたその時オリヴァルト皇子がシャロンに頭を下げた後アリサに視線を向けて辛そうな表情で答え、オリヴァルト皇子の様子をミュラーはとセドリックは辛そうな表情で見つめ、アリサはシャロンの片腕を抱きしめて懇願し、アリサの懇願に対してシャロンは辛そうな表情を浮かべた。



「!カレイジャスに向けて通信が来ています!」

「何……っ!?」

「ガルガンチェア1号機からか……!?」

するとその時通信が来ている事に気づいた通信士を務めている士官学院生が報告し、その報告を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中クロウは驚きの声を上げ、ガイウスは真剣な表情で訊ねた。

「い、いえ……相手はメルカバ(きゅう)号機と出ています!」

「ふえ……?メ、”メルカバ”って確かケビンさん達”守護騎士”専用の……」

「守護騎士――――――”星杯騎士団”がこの状況でカレイジャスに通信ですって……!?」

「相手は当然”守護騎士”でしょうけど、ケビンさんじゃないですよね……?」

「ああ……メルカバはそれぞれの守護騎士の”位”に応じた番号が振られているとの事だからな。」

「”玖号機”って事は守護騎士の”第九位”とやらだと思うが……一体誰だ?」

士官学院生の報告内容を聞いたティータは首を傾げ、サラは困惑の表情で声を上げ、不思議そうな表情を浮かべているアネラスの疑問にジンは頷き、アガットは真剣な表情で考え込んでいた。

「殿下、いかがなさいますか?」

「すぐに繋いでくれ!」

「は、はい……!」

アルゼイド子爵に判断を委ねられたオリヴァルト皇子が指示をすると映像端末にワジが映った。



「やあ、一月ぶりくらいと言った所かな?」

「あ、貴方は”空の女神”の一族の護衛をしていた……!」

「確か”蒼の聖典”とやらだったわね。……まさかとは思うけどリィン達に協力している守護騎士はアンタなのかしら?」

「そ、そういえばさっきレン皇女殿下が守護騎士がリィン達に協力しているって言っていたよね……」

「まさか貴様もアルセイユとレボリューションと共にガルガンチェア1号機を撃墜するつもりか……!?」

ワジの軽い挨拶に対してエマは驚きの表情でワジを見つめ、目を細めたセリーヌの言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情を浮かべてワジを見つめ、ユーシスは厳しい表情でワジを睨んだ。

「やれやれ。状況が状況だから僕の事を疑うのも仕方ないけど、”僕達”はむしろ”撃墜されようとしているエレボニア帝国軍の旗艦を助けてあげる側だよ。”」

「……ぇ……」

「!?おい、さっきまで攻撃していたアルセイユとレボリューションが急に攻撃を中断しやがったぞ……!?」

「しかもガルガンチェアの動きは完全に止まっちまったが、一体何が起こっているんだ……!?」

溜息を吐いたワジは疲れた表情で答え、ワジの答えを聞いたアリサが呆けたその時アルセイユとレボリューションに攻撃されているガルガンチェア1号機の状況が変わった事に逸早く気づいたアッシュとクロウが驚きの表情で声を上げた。

「―――――その件もそうだが、ワジの件も併せて俺達の方から説明させてもらうよ。」

「君達は……!」

「”特務支援課”……!」

するとその時映像端末はワジからロイド達へと変わり、それを見たオリヴァルト皇子とミュラーは驚きの表情で声を上げた。



~少し前・ガルガンチェア1号機・ブリッジ~



「何が起こった!?何故ガルガンチェアが動かない!?」

「”ハッキング”です!戦艦の制御が奪われました!」

一方その頃、ガルガンチェアのブリッジではハッキングによって戦艦の制御が奪われた事で混乱が起こっていた。



~メルカバ玖号機・ブリッジ~



「ハッ、エレボニア帝国軍の最新式の戦艦もこのヨナ様にかかれば、大した事ねーな!」

「調子に乗り過ぎです、ヨナ。早急に制御を取り返されない為にも手を止めないでください……!」

「大丈夫だよ!今度はキーア達もいるから、ヨナがミスしても大丈夫だよ♪」

「えへへ、一緒に頑張ろうね、フラン!」

「はい!ロイドさんやお姉ちゃん達、それにⅦ組の皆さんの為にも頑張りましょう~!」

同じ頃、メルカバのブリッジでは元エプスタイン財団出身の情報屋の少年――――――ヨナ・セイクリッドとティオ、現在と未来、それぞれのキーア、そしてノエルの妹でクロスベル警察に務めているオペレーターであり、そしてヴァイスの側妃の一人でもあるフラン・シーカーがそれぞれ端末を操作してガルガンチェア1号機のハッキングをしていた。



~レボリューション・ブリッジ~



「ティオやソバカス君の仕業とはいえハッキングで戦艦(ガルガンチェア)を止めた事は賞賛に値するけど……この状況でレン達の攻撃を中断させてまで”警察”の貴方達が何の為に介入してきたのかしら、ロイドお兄さん?」

ティオ達がハッキングをしている中レンは映像端末に映る通信相手――――――ロイドを真剣な表情で見つめて問いかけた。

「それは勿論俺達”特務支援課”に出された”緊急支援要請”――――――”反逆罪の容疑がかけられているラインフォルトグループ会長イリーナ・ラインフォルトとゲルハルト・シュミット博士の緊急逮捕”の為だ。」

「ちなみに”緊急支援要請”を出した人物はヴァイスハイト皇帝で、その緊急逮捕の為にこの”大戦”に介入する”許可証”もちゃんと発行してもらっているわよ。」

「…………”緊急支援要請”………反逆罪………緊急逮捕………――――――アハハハハハハハッ!まさか、”そう来る”とはね……!――――――やるじゃない。貴方達特務支援課が介入する理由を考えた事もそうだけど、許可証の発行の提案も”叡智”のお姉さんの仕業かしら?」

ロイドとロイドの隣で書状を広げたエリィの答えに呆けた表情で呟いたレンは全てを察すると可笑しそうに腹を抱えて声を上げて笑ってロイド達の手腕に感心した後気を取り直してロイド達に訊ね

「”仕業”だなんて人聞きの悪い言い方はしないでもらいたいわね。――――――私はあくまで、ロイド達に”ヒント”をあげただけで、”答え”に辿り着いたのはロイド達自身よ。」

レンの問いかけに対してロイドの傍に現れたルファディエルは静かな表情で答えた。



~同時刻・アルセイユ・ブリッジ~



「そういう訳で申し訳ないがこれ以上のガルガンチェア1号機への攻撃は控えてもらいたい。勿論、ガルガンチェア1号機は俺達クロスベル帝国軍による占領まで特務支援課の”協力者”達によるハッキングで制御を奪い続けてもらう事で行動不能状態を保つ事はクロスベル双皇帝の一人である俺――――――ヴァイスハイト・ツェリンダーの名において保証する。」

「……了解しました。王国軍(こちら)としては”どのような形であろうとも”ガルガンチェア1号機によるハーケン門の突破を阻止する事ができればいいのですし、何よりも女王陛下達も不要な殺戮は心から望んでいません。――――――ガルガンチェア1号機の占領、どうかよろしくお願い致します。」

同じ頃ユリア准佐はヴァイスと通信で話していた。

「ああ、任せておけ。それとこの戦争が終わったら、”影の国”で協力したメンバーがほぼ勢揃いしたのだから、それを記念しての”再会パーティー”を開こうと考えているから、その時は当然ユリア准佐やクローディア王太女も招待するから是非ともクローディア王太女と共に参加してくれ。勿論そのパーティーでギュランドロス達の事を改めて紹介したいからギュランドロス達にも参加してもらう……というか、あいつらの場合こっちが言わなくても勝手に参加するだろうし、アドルとフィーナの娘の”空の女神”にも参加してもらうつもりだ。”影の国”に巻き込まれたフィーナは既に”空の女神”を身ごもっていた訳だから、ある意味”空の女神”も”影の国”で共に戦ったメンバーでもあるだろう?」

「フフ、史上初の豪華な面々が揃ったパーティーになるでしょうね。その時が来れば殿下共々喜んで参加させて頂きます。――――――どうかご武運を。」

ヴァイスが戦後考えている予定を知ったユリア准佐は”影の国”の時の事を思い浮かべて懐かしそうな表情を浮かべた後すぐに表情を引き締めてヴァイスに応援の言葉を送り

「そちらもな。」

「―――――これよりアルセイユは味方軍の支援に回る!」

「イエス・マム!!」

ヴァイスとの通信を終えると新たな指示を出し始めた。



~カレイジャス・ブリッジ~



「イ、イリーナ会長とシュミット博士を”反逆罪”で”緊急逮捕”ってどういうことだ……!?」

「エレボニア帝国人のイリーナ会長とシュミットの爺ちゃんをクロスベル帝国の警察の君達が”反逆罪”で捕まえるって色々とおかしくない~?」

「それに二人の”反逆行為”とは一体……」

ロイド達から説明を聞かされたマキアスは困惑の表情で声を上げ、ミリアムは疑問を口にし、ラウラは真剣な表情で考え込んだ。

「”反逆行為”……エレボニア……クロスベル……!そうか……そういう事か……!」

「アンちゃん、一体何に気づいたの?」

考え込みながら呟いてある事に気づいて声を上げたアンゼリカが気になったトワは不思議そうな表情で訊ねた。

「トワ達も覚えているだろう?”連合によって占領されたルーレは戦後、クロスベル帝国の領土に帰属する事が決定している話”を。」

「う、うん……勿論覚えているけど………――――――あ……っ!」

「”ルーレ市に戸籍がある会長とシュミット博士は戸籍が変更されていない以上、戦後クロスベル帝国人になるという扱い”になりますから、その”クロスベル帝国人である会長達がエレボニア帝国軍に協力する事はクロスベル帝国に対する反逆行為”という事ですか……!」

「そして皆さんはその”ガルガンチェア1号機に乗船している反逆行為を行った二人を逮捕する為に、アルセイユとレボリューションにガルガンチェア1号機への攻撃中止の要請をして”、その要請にレン皇女殿下達が応じてくれたということですか……!」

アンゼリカの確認の言葉に頷いた後すぐに察しがついたトワは声を上げ、シャロンと共に驚きの表情で呟いたセドリックはアルセイユとレボリューションが攻撃を中止した理由を推測した。



「ええ。予めイリーナ会長達の緊急逮捕の為にヴァイスハイト皇帝からこの大戦に介入する許可証を発行してもらったから、それを提示したからというのもあるでしょうけどね。」

「ハアッ!?ヴァイスさんが……!?」

「よくあのハーレム皇帝にそんな許可証を発行してもらえたよね?確かメサイアの話だと、”国の利”にならない事は応じない性格だって聞いているけど。」

エリィの答えを聞いたシェラザードは驚き、フィーは目を丸くして疑問を口にした。

「ああ、勿論それがあるからこそ、ヴァイスハイト陛下は”イリーナ会長達の緊急逮捕という緊急支援要請”を特務支援課(おれたち)に出してくれた上、許可証も発行してくれたんだ。」

「え……か、母様達の逮捕で国――――――”クロスベルの利”が生じるってどういう事なの……!?」

ロイドの説明を聞いたアリサは呆けた声を出した後困惑の表情で訊ねた。

「それは――――――」

そしてロイド達はアリサの疑問について説明し始めた。



~数日前・クロスベル帝国・帝都クロスベル・オルキスタワー・34F・皇帝執務室~



「”戦後戸籍上クロスベル帝国人になるイリーナ会長達の反逆行為に対する緊急逮捕”か。――――――確かにお前達”特務支援課”が数日後に控えている大規模作戦に”介入する理由”としては十分だが……”クロスベル皇帝”の一人として、その為だけにイリーナ会長達が乗船している戦艦(ガルガンチェア)への攻撃を控える判断は選べないな。”警察”であるお前達にとっては受け入れたくない判断と思うが、そんな”反逆行為を犯した犯罪者達は敵軍ごと葬った方が国としてのメリットが大きいからだ。”」

「ええ……陛下の性格を考えると、そういうと思っていました。――――――ですから、その判断を覆す為に”イリーナ会長達を逮捕した際のクロスベル帝国としての利”を考えてきました。」

数日前、ロイドとエリィは特務支援課を代表してヴァイスと面会してイリーナ会長達の逮捕の件を説明し、それを聞いたヴァイスが冷酷な答えを口にするとヴァイスの答えを聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた後落ち着いた様子で話を続けた。

「何?”クロスベル帝国としての利”だと?」

ロイドの口から出た予想外の答えを聞いたヴァイスは眉を顰めた。

「”クロスベル帝国としての利”は二つあります。一つは戦艦――――――ラインフォルトグループが開発した新型の戦艦を占領する事で、完成済みの戦艦を一隻、最小限のコストでクロスベル帝国軍の戦力として組み込める事です。………私達が戦艦に侵入する際、別働隊を戦艦の制圧に充てれば戦艦に乗船しているエレボニア帝国軍は私達と別働隊の制圧の為に戦力を分散させざるをえないでしょうから戦艦の制圧は容易かと思われます。」

「フッ、”俺達クロスベル帝国軍を巻き込む事”を前提の逮捕とは考えたな。」

「ですが、実際エリィさんの仰る通り戦艦の占領の為に進軍する我々とイリーナ会長達の逮捕の為に潜入―――いえ、強制捜査をする特務支援課の対処の為に当然敵軍は戦力を分散させるでしょうし、開発や量産の為に莫大なコストがかかる戦艦を一隻、最小限のコストで入手する事は”クロスベル帝国としての利”になりますね。」

エリィの説明を聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべ、ヴァイスの傍で控えているリセルは納得した表情で呟いた。



「………”クロスベル帝国としての利は二つある”と言ったな?もう一つは何だ?」

「もう一つの利とは……―――――”ラインフォルトグループの掌握”です。」

「”ラインフォルトグループの掌握”だと?”ラインフォルトグループの掌握”まらルーレ占領後に既に終えている事を理解していて言っているのか?」

自分の質問に対して答えたエリィの答えに眉を顰めたヴァイスはエリィにある指摘をして問いかけた。

「ええ。ですが、それは”イリーナ会長不在による掌握”――――――つまり、”ラインフォルトグループの社員達にとってはクロスベル帝国によって正当ではない方法で掌握されている”と感じていると思われます。―――半年前の内戦時、ハイデル・ログナー元取締役がイリーナ会長を幽閉してラインフォルトグループを掌握した時のように。」

「それは………」

「………続けろ。」

エリィの指摘に反論できないリセルが複雑そうな表情で答えを濁している中ヴァイスは真剣な表情を浮かべて説明を続けるように促した。

「過去の戦争―――メルキア帝国時代の戦争で数多の国を占領し、統治した陛下でしたら重々ご理解されているでしょうが占領された国の民達は当然ですが、占領した国に対して祖国が自分達を虐げるような政策をしていなければ良い感情を抱かない事がほとんどです。」

「そうだな。そしてそんな民達に反乱を起こさせない為―――つまり俺達による占領を受け入れてもらう為にも占領前よりも税を軽くしたり、治安を良くしたり等と言った”民達の生活を占領前より良くして占領した国の民となる事を受け入れるようにすることが占領した側の義務でもある。”――――――例えば、”百日戦役”でユミルを始めとしたエレボニアの一部の領土を占領したメンフィルのようにな。」

「そういえばリィンやエリゼさん達は元々エレボニア帝国人でしたけど、メンフィル帝国に対して思う所があるような様子は一切ありませんでしたね……」

エリィの話に同意したヴァイスは静かな表情で答え、二人の話を聞いたロイドはリィン達の事を思い浮かべた。

「はい。そしてそれは”ラインフォルトグループという一企業”も同じだと思うのです。”イリーナ会長自身がクロスベル帝国の意向に従った事実”と、”イリーナ会長不在の際にラインフォルトグループを掌握し、更にはイリーナ会長を事故に見せかけて口封じした事実”………どちらが”ラインフォルトグループで働いている社員達にとってクロスベル帝国の為に働く事が受け入れ安い”かは明白かと。――――――陛下達が共和国侵攻時、”首都陥落の責任を取って自害して命を絶ったはずのロックスミス大統領を治療して蘇生させた”のも共和国の民達をラインフォルトグループの社員達のように戦後クロスベルによる支配を受け入れやすくする為だったのでしょう?」

「………!」

「……どこでその話を耳にした?メンフィル側で知っているのはリウイ達――――――上層部でも限られた者達のみの為リィンどころかレン皇女やプリネ皇女ですら知らされていない上、幾らリウイでもお前達――――――いや、ルファディエルと繋がっているチキにその情報を話をするとは思えないが。」

エリィの口から出た非常に限られた者達しか知らないはずの重要な情報を耳にしたリセルは目を見開いて驚き、ヴァイスは目を細めてエリィに訊ねた。



「セティ達――――――”工匠”の技術に興味を抱いていて支援課のビルを訊ねてきたエイフェリア元帥閣下と一緒に来たリューンさんがお互いが持つ技術の情報交換をした際にポロリと口にしたんですよ……”魔導巧殻”とやらの中でも”癒し”を得意とするリューンさんが共和国の首都陥落時、陛下達の指示によってロックスミス大統領を治療し、蘇生した話を。」

「リューン様………」

「情報漏洩の原因はよりにもよって俺達の身内か……―――――話を戻すがつまり、将来ラインフォルトグループの社員達がクロスベル帝国の為に働く事を嫌ってストライキや大量自主退職等を防ぐ為にお前達が逮捕したイリーナ会長に対して俺達は”司法取引”を持ちかける――――――要するに”無罪放免と引き換えにラインフォルトグループがクロスベル帝国に従う契約書にサインさせれば、ラインフォルトグループは俺達クロスベル帝国の事を受け入れる可能性が高い事”が”クロスベル帝国にとっての利”だと言いたいのだな?」

ロイドの説明を聞いてそれぞれ冷や汗をかいたリセルは疲れた表情で頭を抱え、呆れた表情で溜息を吐いたヴァイスは気を取り直してエリィに訊ねた。

「その通りです。」

「……ちなみにイリーナ会長が”司法取引”を断った場合については考えているのですか?」

ヴァイスの問いかけにエリィが頷くと、ある事が気になっていたリセルは訊ねた。

「その時は”会長職を濫用してラインフォルトグループを利用してクロスベル帝国への反逆行為をした事に対する責任を取らせる”という名目でイリーナ会長を弊職に追いやり、新たな会長にクロスベル帝国政府か皇家の関係者を就かせればラインフォルトグループの社員達は複雑な思いは抱えるかもしれませんが、それでもクロスベル帝国の為に働く事を受け入れるでしょうから結果は同じかと。――――――少なくても、”一代でラインフォルトを大企業へと育て上げた女傑として多くの社員達から尊敬されているイリーナ会長が不在の間にラインフォルトグループを掌握し、更に事故に見せかけて口封じした”際にラインフォルトグループの社員達が抱くであろうクロスベル帝国に対する疑念や不満を考えれば余程いいかと思います。」

「フッ、違いない。ちなみにシュミット博士もイリーナ会長のように司法取引を持ち掛けて、今後はクロスベル帝国の為にその知識を奮ってもらうといった所か?」

「はい。ただ問題はシュミット博士の性格は自分の研究と知的好奇心を満たすことにしか興味がないとの事ですから、そちらに関しては陛下達の交渉次第になりますが……」

リセルの疑問に答えたエリィの答えと指摘に反論がないかのようにヴァイスは静かな笑みを浮かべて同意した後更なる疑問を問いかけ、その疑問に対してエリィは頷いた後困った表情を浮かべて答えた。



「まあ、その件に関しては”交渉”のプロのルイーネ達もそうだが、同じ技術者であるエイダあたりに任せておけば大丈夫だろう。」

「では、俺達による”イリーナ会長達の緊急逮捕”を認めてくれるんですね……!?」

エリィの疑念に対して全く気にしていない様子で答えたヴァイスの様子を見たロイドは明るい表情を浮かべて訊ねた。

「その前に3つ……いや、2つ確認しておく。お前達がガルガンチュアに潜入する方法は大方ワジのメルカバだろうから省くとして、イリーナ会長達が乗船しているガルガンチュアを足止めする事に関しては考えているのか?状況を推測するとガルガンチュアは間違いなくリベールへの侵略の為に動くだろうから、幾ら”クロスベルにとっての利”があるとはいえ、その為にガルガンチュアの侵攻を許せば被害を受けるのはリベールで、当然その件に対して俺達クロスベルが負う事になるのだぞ?」

「それに関しては大丈夫です。メルカバからティオやヨナ達のハッキングで戦艦の制御を奪ってもらい、戦艦を完全にその場で足止めしてもらう予定です。勿論既にメルカバの件も含めてワジからも了解は得ています。」

「なるほどな…………」

「もう一つは何でしょうか?」

自身の疑問に対して答えたロイドの答えを聞いたヴァイスが納得している中、ある事が気になったエリィは続きを訊ねた。



「もう一つの確認したい事は………――――――幾ら”紅き翼”と交流を深めたとはいっても、自分達の身内でもない者達の為に特務支援課(おまえたち)は何故”そこまで”するんだ?」

「それは………――――――”俺達が特務支援課だからこそ”です。」

「何?」

自分の問いかけに答えたロイドの答えの意味がわからなかったヴァイスは眉を顰めた。

「特務支援課の業務内容は『市民や組織団体からあらゆる依頼を引き受け、解決を尽くす』こと。今回の場合、”イリーナ会長達を救う依頼を出す側”はイリーナ会長達同様クロスベルが占領したルーレに戸籍があるアリサ・ラインフォルトさんとシャロン・クルーガーさんになります。……本人達の了承も得ていませんから、少々無理がある”建前”ではありますが。」

「そして俺達”特務支援課”の役目とはみんなで力を合わせてクロスベルの”壁”を乗り越える事……今回の”壁”とは将来発生するかもしれないクロスベルとラインフォルトグループの間にできる”壁”にして未来のクロスベルの民達にとっての”壁”……―――――それが俺達が今乗り越えるべき”壁”です!」

「…………………………」

「………………クックックッ………ハハ………――――――ハハハハハハハハッ!」

決意の表情を浮かべたエリィとロイドの主張にリセルは思わず呆け、リセルのように呆けていたヴァイスはやがて大声で笑った。

「そうだったな……お前達”特務支援課”とは”そういう存在”だったな。だからこそ、多くのクロスベルの民達もそうだが、様々な勢力の者達もお前達を気に入り、時には協力してくれるのだろう。――――――どうだ、リセル。これがかつて俺とアル、そしてエルファティシアもいた場所だ。」

「フフ、ヴァイス様やアルちゃんもそうですが、あのエルファティシア様が彼らの事を気に入ったのも今ならわかります。」

やがて笑う事を止めて口元に笑みを浮かべてロイド達を見つめたヴァイスはリセルに話を振り、話を振られたリセルは微笑みながら答えた。

「―――――いいだろう。クロスベル双皇帝の一人である俺からの”緊急支援要請”という形でイリーナ・ラインフォルト並びにゲルハルト・シュミットの緊急逮捕をお前達”特務支援課”に要請するように手配しておく。勿論逮捕に必要な”令状”の発行の手配もな。」

「あ……ありがとうございます……!」

「陛下、緊急支援要請や令状の手配もそうですが、私達”特務支援課”が”緊急支援要請”を執行する為に数日後に控えている大規模作戦の地となる”戦場”に介入しても問題ないように”許可証”の発行も忘れないようにお願いします。」

ヴァイスの答えを聞いたロイドは明るい表情を浮かべて感謝の言葉を口にし、エリィは微笑みながらヴァイスにある要求をし

「フッ、あのルファディエルに鍛えられただけあって、(したた)かになってきたじゃないか。」

エリィの要求に対してヴァイスは静かな笑みを浮かべてエリィの成長に感心していた。



~現在・レボリューション・ブリッジ~



「ガ、”ガルガンチェア1号機をクロスベル帝国軍に奪わせる事とラインフォルトグループの完全掌握”と引き換えに”イリーナ会長達の緊急逮捕の為に大戦に介入する事を認めてもらった”って……戦艦の件はともかく、ラインフォルトグループの件に関しては僕達――――――いや、アリサとシャロンさんに話も通さず君達だけの判断で勝手に決めるのは幾ら何でも不味くないか……?」

ロイド達から事情を聞いたマキアスは複雑そうな表情でアリサとシャロンに視線を向けて疑問を口にし

「ああ……勿論それに関しては重々承知している。だけど、陛下から情報漏洩によって今回の大戦の作戦を失敗させない為にも作戦実行前にイリーナ会長達の逮捕の件を教える事もそうだが、君達に連絡する事も禁じられていたんだ。」

「それと介入のタイミングは最低でも”第三段階”が成功してからという条件も付けられていたのよ。」

「そして条件通りカシウス中将の作戦の内、”第三段階”まで成功し”最終段階”まで来た事で特務支援課の皆さんも介入できるようになった為、こうして私達に連絡してきてくれたのですか……」

「だったら、何でガルガンチュアがアルセイユとレボリューションに攻撃される前に介入しなかったの~?そしたらボク達もイリーナ会長達の件で焦る事も無かったのに。」

「ミ、ミリアム……幾ら何でもそれは言い掛かりだよ……」

「ああ。せっかく彼らのお陰でガルガンチェア1号機への攻撃は止まったのだから、その彼らを攻めるのは”筋違い”だ。」

マキアスの指摘に対して答えたロイドとエリィの答えを聞いたエマは複雑そうな表情で呟き、ミリアムのロイド達に対する不満を聞いたエリオットは冷や汗をかいてロイド達を気にしながら指摘し、エリオットの意見にラウラは真剣な表情で頷いて同意した。

「無茶言うなっつーの。メルカバ(こっち)の兵装だけで、まともな方法で”戦艦”を相手に潜入できる訳がねぇだろうが。特務支援課(おれたち)は紅き(おまえたら)と違って”騎神”もねぇんだぜ?」

「……つまり、連合や王国軍が戦艦にある程度のダメージを与える事で潜入できる機会を待っていたんだ。」

「実際、今のガルガンチェア1号機はアルセイユとレボリューションの攻撃で兵装の6……いや、7割は既にやられているから、今のガルガンチェア1号機への潜入は容易だろうな……」

ミリアムの不満に対して呆れた表情で答えたランディの指摘を聞いたフィーは静かな表情で呟き、ミュラーは様々な兵装がある部分から煙をあげているガルガンチェア1号機の状況を見てガルガンチェア1号機の状態を分析した。

「ええ。そしてそれはあたし達だけじゃなく、”敵艦の占領を目的とするクロスベル帝国軍”にも言える事です。」

「!おい、クロスベル帝国軍の戦艦がガルガンチュアにぶつかったぞ……!?」

そしてミュラーの言葉にノエルが頷いて答えたその時、ガルガンチュアに近づいたクロスベル帝国軍の戦艦がガルガンチュアに横付けする形で軽くぶつかる様子に気づいたアッシュが声を上げた。



同日、AM11:50――――――



~ハーケン平原・クロスベル帝国軍本陣~



「―――――わかりました!なら早急にガルガンチュアの占領を終わらせてください!それと当然ですが占領したらすぐにこちらに連絡しなさいよ!?――――――ああもうっ!予定外の行動を行うならせめて、行動する前に私達に予め連絡する事を何故しないのですか、あの女タラシ皇帝は!」

一方その頃通信相手――――――ヴァイスからの通信に対して怒鳴り声を上げて通信を終えたエルミナは頭を抱えて疲れた表情で声を上げ

「そんなの特務支援課の介入に反対する可能性が一番高いお前の説得に時間をかけたくなかったからに決まっているだろう?それにしても、このタイミングで正当な理由を作った上ヴァイスを味方にして介入するとはやるじゃないか、特務支援課!しかもヴァイス達も参戦するとは面白くなってきたじゃねぇか、だぁっはっはっはっ!――――――なら、オレ様もこんな所でいつまでもルイーネ達や盟友達の戦果を待っている訳にはいかねぇよなぁ?」

エルミナの傍でエルミナの通信内容を聞いていたギュランドロスは豪快に笑った後獰猛な笑みを浮かべ

「ギュランドロス様!?まさか……!」

ギュランドロスの様子を見て嫌な予感がしたエルミナは表情を引き攣らせた。

「今すぐ俺の機体の用意と、俺と共に来る精鋭部隊を集めろ!俺達もシュバルツァー達と同じ”敵の総大将の首”を狙うぜぇっ!!」

そしてギュランドロスは不敵な笑みを浮かべてエルミナに指示を出した。



~同時刻・ガルガンチェア1号機・甲板~



同じ頃、クロスベル帝国軍の戦艦の甲板から潜入用の桟橋がガルガンチェア1号機へ次々とかけられ、それを使ったクロスベル帝国軍の部隊がガルガンチュアの甲板に次々と乗り込み始めた。

「全く……幾ら”クロスベルにとっての利”になるとはいえ、”軍”を動かしてまで予定外の作戦を行わせる必要性はないでしょうに。それこそ、全部”特務支援課”にやらせればいいのに、ヴァイスハイト(あの男)も随分甘くなったわね。」

「そう文句は言いつつ、結局ヴァイス達に協力しているナフカも他人(ひと)の事は言えないのでは?」

クロスベル帝国軍が次々とガルガンチェア1号機の甲板に潜入している様子を見守りながら呆れた表情で呟いたナフカにアルは指摘し

「ハア?ちっ……やっぱり貴女、あの男の悪影響を受けているわね。」

「ええい、止めないか、お前達。鬱憤は戦場で晴らせ!」

「そうですわよ!やれやれ、どれだけ長い年月が経とうと、転生しようとも、3人とも相変わらず手がかかる妹ですわね!」

アルの指摘に対して舌打ちをしたナフカはアルを睨み、その様子を見た深紅の髪の魔導巧殻―――ベルは注意し、ベルの注意にリューンはやれやれと言った様子で肩をすくめて答えた。するとその時ナフカ、アル、ベルはそれぞれ黙ってリューンを見つめ

「今回の作戦を行う羽目になった”元凶”の貴女だけには言われる筋合いはないわ。」

「同感だ。そもそもこの中で一番手がかかるのはリューンの方だろうが……」

「”人の振り見て我が振り直せ”とは、まさにリューンの事を指すのでしょうね。……まあ、リューンは”人”ではなく、”魔導巧殻”ですが。」

「んなっ!?あーんもぉぉぉぉおッ、3人共今頃”反抗期”なんですの~~~~!?」

やがて口を開いた三人はそれぞれリューンに指摘し、指摘されたリューンは驚いた後疲れた表情で声を上げた。



「やれやれ、本当に変わらないな、あの4人は。」

「ナフカ達も生まれ変わってもなお、生まれ変わる前同様幼い顔と貧相な身体つきのままのエイフェリア元帥にだけは言われる筋合いはないと思うが?」

一方リューン達の様子を見守りながら苦笑しているエイフェリアにオルファンは口元に笑みを浮かべて指摘した。

「なんじゃと!?そういう貴様こそ、何一つ変わっておらぬではないか!」

「二人とも止めぬか。そういう事は勝利の後の宴あたりにしておけ。」

オルファンの指摘を聞くとオルファンを睨んで反論するエイフェリアの様子を見た鍛え抜かれた肉体に甲冑を纏わせている老将――――――ガルムス・グリズラーは静かな表情で指摘した。

「ハハ……」

「?どうかされたのですか、ヴァイス様。」

オルファン達の様子を見て静かな笑みを浮かべて小さく笑ったヴァイスに気づいたリセルは不思議そうな表情でヴァイスに訊ね

「何……かつてはそれぞれの方針が異なった事で分かれ、争った”メルキア四元帥”は機会があればいつでも”意志”を一つにする事ができる程お互いの”絆”があった事に思わず笑っただけだ。」

「そうですね……とは言っても、様々な隠し事があったお父様に関しては色々と反省すべき点もあると思いますが。」

ヴァイスの答えを聞くとリセルは微笑んだ後すぐに表情を引き締めてオルファンを見つめて呟いた。



(フッ、変わらないのはお互い様だな。)

オルファンに厳しい様子のリセルを見たヴァイスは苦笑したがクロスベル帝国軍の兵士が自分達に近づいてきた事に気づくと表情を引き締めた。

「陛下、ガルガンチュア占領部隊の全員のガルガンチュアの甲板への潜入が完了しました。いつでも作戦を開始できます。」

「わかった。」

兵士の報告を聞いて頷いたヴァイスは整列して自分の命令を待っているクロスベル帝国軍の兵達の前に出た。

「―――――これよりガルガンチェア1号機制圧作戦を開始する。戦況は我らの優勢だが決して油断はするな!敵軍は腐ってもゼムリア大陸ではメンフィルに次ぐ軍事国家と恐れられていた国の兵達だ!戦況を変えるために言葉通りまさに”死に物狂い”で迎撃してくる可能性がある上”相打ち”覚悟の捨て身の特攻や自爆を仕掛けてくる事も考えられる!クロスベルに――――――ゼムリアに訪れる”新たな時代”に俺達と共に歩んでもらう為にもこんな所で”無駄死に”する事は決して許さん!戦友達との連携を決して忘れるな!総員、突入!!」

「イエス・マイロード!!」

「オオオオオォォォォォォオオオオオオ――――――ッ!!」

ヴァイスの力強い号令に対して力強い答えを返したクロスベル帝国軍は次々と艦内へと突入して行き

「さて……ユン・ガソルの”三銃士”達がこの”大戦”で存分にその力を”ゼムリア大陸という世界”に見せつけている。―――ならば”三銃士”の好敵手たる我ら”メルキア四元帥”も我らの力を世界に見せつけてやろうではないか、オルファン、エイダ、ガルムス!」

「クク、生まれ変わってから”メルキア四元帥”の”意志”が一つになるとは皮肉な話だな。」

「全く、そういう暑苦しい事は”戦鬼”の担当分野じゃろうに、仕方ないな。」

「カッカッカッ、言うではないか、小童(こわっぱ)が!――――――儂らを乗せる発言をしたからには遅れるでないぞ、ヴァイスハイト!」

ヴァイスの呼びかけに対してオルファンは口元に笑みを浮かべ、エイフェリアは呆れた表情で呟いた後口元に笑みを浮かべ、ガルムスは豪快に笑った後不敵な笑みを浮かべてヴァイスに指摘した。



「お主は先行し過ぎる事によって孤立して妾達に手間をかけさせるでないぞ、老いぼれが。」

「フン、そういうお主こそ体力不足で足手纏いになるなよ、小娘が。」

「フッ、我々も魔導巧殻(ナフカたち)の事は言えんな。」

そしてそれぞれお互いに対する皮肉を口にして睨み合っているエイフェリアとガルムスの様子にオルファンは苦笑した後クロスベル帝国軍の後を追い

「俺達も行くぞ、リセル!」

「はい、ヴァイス様!」

更にヴァイスとリセルもエイフェリア達に続くように戦艦内へと突入した。

「こ―――らぁぁぁぁぁっ、”メルキア四元帥”が”魔導巧殻”のわたくし達を置いて先に行きやがるなですの~~っ!!」

「まあ、正確に言えば私は”魔導巧殻”ではありませんが。」

「ええい、今はそんな細かい事を気にしている場合ではないだろうが、アル!それとリューン!戦場で大声を出す悪い癖はいい加減直せ!」

「貴女もリューンの事は言えないわよ、ベル。――――――低能のゴミ共の分際で私達相手に”悪あがき”をした所で無駄である事を思い知らせてやるわよ。」

更にリューン達”魔導巧殻”の面々やアルもヴァイス達に続くように戦艦内へと突入した――――――

 
 

 
後書き
今回の話でお気づきかと思いますが、ロックスミス大統領はこの物語では助かった事になっています。なので黎篇でも登場予定です。なお、ロイド達登場時&ロイド達によるガルガンチェア1号機攻略時のフィールド並びに戦闘BGMは零の”守りぬく意志”だと思って下さい♪ 
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