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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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ハーケン会戦~始まる大戦の”裏”~

 
前書き
更新が遅れて申し訳ありません…… 

 
~カレイジャス・ブリッジ~



「あっ!ヴァイスさんにリセルさん……!」

「軍を率いて戦艦内に突入した事を考えるとヴァイスの旦那達の目的は間違いなく戦艦の”占領”だろうな。」

「……もしかして貴方達がイリーナ会長達の”逮捕”の為にヴァイスハイト皇帝達―――――クロスベル帝国軍を巻き込む事を考えてヴァイスハイト皇帝達に提案した結果、その提案が受け入れられたの……!?」

「はい。幾ら何でも特務支援課(おれたち)の戦力だけで多くの軍人達が乗船している戦艦に潜入するような無謀な事はできませんので。」

映像端末に映る戦艦に潜入する様子のヴァイス達を目にしたティータは声を上げ、ジンはヴァイス達の目的を推測し、驚きの表情を浮かべたエレインの推測にロイドは頷いて答えた。

「――――――そういう訳で俺達もイリーナ会長達の”逮捕”の為に今からあの戦艦に突入し、”強制捜査”を開始する。特務支援課(おれたち)の目的は”保護”ではなく”逮捕”で、そしてその結果”ラインフォルトグループ”はクロスベルに完全に掌握されることになるから今まで”第三の風”としてそれぞれの利害関係を無視して”身内”を保護してきたⅦ(きみたち)もそうだが殿下達にとっては思う所はあるかもしれませんが……これが”特務支援課(おれたち)なりのやり方での紅き翼への協力”です。」

そしてロイドが複雑そうな表情で答えたその時

「どんな形でも母様を――――――私達ラインフォルト家にとってかけがえのない”家族”を助けられるのなら”ラインフォルトグループ”はどうなってもいいわ!だから、お願い――――――母様を助けて……!」

「わたくしからもお願いします。どうか、会長を皆様の御力でお救いくださいませ……!」

「私からも”どのような形”であろうともあの二人が無事の状態で連れ出す事、お願いする、特務支援課の諸君。”ラインフォルトグループ”やシュミット博士の知識がクロスベルに掌握されることを看過する事はアルノール皇家として失格かもしれないが、そもそも戦後アルノール皇家もそうだがエレボニア帝国も存続できるかどうかもわからない上、既にルーレ占領後のエルミナ皇妃達との交渉で”アルノール皇家はラインフォルトグループとの関係を切らされた”から、君達が私達エレボニアやアルノール皇家の事を気にする必要はないよ。」

「僕達に代わりお二人を連れだす事、どうかよろしくお願いします……!」

アリサとシャロンはそれぞれ頭を深く下げてイリーナ会長達の事を頼み、オリヴァルト皇子とセドリックも二人に続くように頭を下げてロイド達にイリーナ会長達の事を頼み

「了解!!」

アリサ達の頼みに対してロイド達は力強い答えを返した。

「ま、そういう訳でイリーナ会長達の件は安心して構わないよ。―――ああ、そうそう。例の”灰色の騎士”達に協力している”守護騎士”の件だけど、協力している守護騎士は2名の上その2名の守護騎士は2人とも君達も知っている”第八位”の”直弟子”の上、殲滅天使が雇った”裏解決屋(スプリガン)”とやらもその”第八位”の”裏弟子”だからもし対峙する事になったら、守護騎士の2人は当然として、”裏解決屋”にも気を付けておいた方がいいよ。」

「な――――――それじゃあ守護騎士が二人もリィン達に協力しているの……!?」

「しかもその二人に加えてレン皇女が雇った”裏解決屋”という存在もバルクホルン神父の”弟子”か……」

「それも”裏解決屋”はあの”白銀の剣聖”のように”裏弟子”か……」

「ちなみにあのクソガキが雇ったその”裏解決屋”について他に知っている事は何かあるか?」

ロイド達から通信を代わったワジの説明を聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、ガイウスとラウラは真剣な表情で考え込み、アガットは真剣な表情でワジに訊ねた。

「そうだね……あとは”灰色の騎士”達に協力している守護騎士達がその”裏解決屋”の事を”アークライド”と呼んでいた事から、その”裏解決屋”の本名か偽名かは知らないけど、”アークライド”という名前くらいだね。」

「…………ぇ――――――」

アガットの疑問に答えたワジの答えを聞いた一瞬固まったエレインは小さな声で呆けた声を出してその場で呆然とし

「――――――それじゃ、今からあの戦艦に突入するから僕達もこれで失礼するよ。」

周りの者達がエレインの様子に気づいていない中ワジは通信を切った。



「おし……っ!特務支援課の連中のお陰で俺達はリィン達が学院長を討つ事を阻止する事に集中できるな……!」

「ええ……!可能な限り安全かつ迅速なルートでリィン達に追いつくわよ!」

「――――――待ちなさい。今からリィン達を追うのはいいけど、リィン達の目的――――――トールズの学院長の討伐を阻止できた場合のこの”大戦”を終結させる方法――――――要するに”剣聖”が考えた作戦の”代案”はあるのかしら?もしその”代案”が無ければ、それこそ”剣聖”もそうだけど連合や新生軍が一番望んでいない結末――――――どちらかが殲滅されるまで両軍が最後まで殺し合いを続けるという”最悪の結末”の”原因”をアタシ達が作った事で最悪その責任を連合、新生軍、そして王国軍に対してアタシ達が負う事になるかもしれないわよ。」

「……今まではヴァイスラント新生軍に対する義理で僕達の事を見逃してくれましたけど、”事実上の決戦”――――――それも双方の被害を抑えるために考えた作戦を台無しにされれば、ミルディーヌ公女達――――――ヴァイスラント新生軍も戦後のエレボニアの立場を少しでも良くする為にさすがに僕達を庇う事はできない――――――いえ、もしかしたら”切り捨てる”かもしれませんから、連合軍や王国軍から”戦犯”扱いされる恐れは十分に考えられますね……」

「それは……」

ワジが通信を終えるとクロウとサラは士気を高めて自分達の今後の行動を口にしたがセリーヌが制止して指摘し、セリーヌの指摘にセドリックは辛そうな表情で同意し、二人の話を聞いたアンゼリカは複雑そうな表情を浮かべて答えを濁した。

「……”代案”ならあるよ。」

「ほ、本当ですか……!?」

「一体どんな方法?」

その時その場で少しの間考えていたトワが静かな表情で答え、トワの答えを聞いたその場にいる全員が血相を変えている中マキアスは驚きの表情で声を上げ、フィーは真剣な表情で訊ねた。



「簡単だよ。”学院長自身にエレボニア帝国軍が降伏する宣言”をしてもらえばいいだけだよ。……ただ、この方法はルーレでアンちゃんのお父さん――――――ログナー侯爵を陥れた時みたいに”本来のわたし達のやり方”じゃない方法なんだけど……」

「が、”学院長自身にエレボニア帝国軍が降伏する宣言をさせる”って、どうやってですか……!?現に学院長は僕達や殿下達の説得を無視して、しかもエレボニア帝国軍が完全に劣勢の状態に陥ってもなお、ハーケン門の突破を諦めていませんのに……」

「……”ログナー侯の時のように本来の俺達のやり方じゃない方法”という言い方から察するに恐らくはリィン達との戦闘で疲弊していると思われる学院長を無力化した後、無力化した学院長に”暗示”の類をかけて降伏宣言をさせるのではないか?」

「あ、”暗示”って事はまさか……」

「”教授”がヨシュアを”暗示”で操ってヨシュア自身の手でエステルを殺させようとしたように、”ヴァンダイク元帥を暗示で操って降伏宣言をさせる”って事か……」

トワは答えた後複雑そうな表情を浮かべ、トワの答えを聞いたエリオットが困惑している中察しがついたユーシスは重々しい様子を纏って呟き、ユーシスの推測を聞いたアネラスは不安そうな表情を浮かべ、アガットは複雑そうな表情で呟いた。

「はい………その為、”暗示”ができるクロチルダさんかエマちゃんの協力が必要不可欠なんだけど……」

「……問題は”灰獅子隊”メンバーによる足止めか。」

「ええ……今までのようにあたし達の内の何人かは足止めメンバーの相手をする必要があるでしょうけど、例の”白銀の剣聖”の担当は協力者――――――つまり、子爵閣下達の足止めでしょうから、当然その中にはあたし達に協力している”蒼の深淵”達元結社の連中も含まれているでしょうね。」

「ハッ、確かにあの女剣士はとんでもねぇ化物女だが、今の俺達にはあの化物女に対抗できる”エレボニア最高の剣士”がいるから、歌姫の姉ちゃんくらい抜けても大丈夫なんじゃねぇのか?」

「殿下達の為、そして其方達の為にも私も全力を持ってその”白銀の剣聖”という者の相手をするつもりではあるが、それはリィン達も想定済みであろうから、過信は禁物だ。」

「そうですわね……しかもワジ様の話によりますと”守護騎士”が二名リィン様達に協力しているとの事ですから、恐らくですが最低一人はわたくし達の足止めを担当しているかと。」

「守護騎士には守護騎士のトマス教官に対抗してもらいたいけど、トマス教官は殲滅天使達の暗躍のせいで連合軍関連との戦闘が発生した時は守護騎士としての力は振るう事を禁止されているからね~。」

アガットの言葉に頷いたトワは複雑そうな表情でエマに視線を向け、複雑そうな表情で呟いたミュラーの推測に同意したサラはシズナを思い浮かべて苦々しそうな表情を浮かべ、鼻を鳴らしたアッシュに視線を向けられたアルゼイド子爵は意見を口にし、アルゼイド子爵の意見にシャロンは同意し、ミリアムは疲れた表情で呟いた。



「……………………わかりました。それによって学院長の命が助かるのでしたら、その場に姉さんがいなくても私が学院長に暗示をかけて降伏宣言をさせます。」

「エマ……」

決意の表情を浮かべて答えたエマの様子をセリーヌは複雑そうな表情で見つめた。

「よし、そうと決まったらすぐにでも着陸ポイントの散策を―――――」

「―――――少しいいかい?」

そしてアンゼリカが今後の方針を口にしようとしたその時オリヴァルト皇子が口を開いた。

「どうかされたのですか、殿下?」

「ああ。一人でも多くの犠牲者を減らす為にも私は、このカレイジャスを使って今も戦い続けているエレボニア帝国軍に降伏を呼びかけをするからすまないが今回は今までのように君達に加勢する事はできないと思って欲しい。」

「オリビエさん……」

ユーシスの疑問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたティータは辛そうな表情を浮かべたが

「―――――そういう訳で、レン君のように”ハッキング”でエレボニア帝国軍の飛行艇と強制的に通信を繋げる為にも君の力を貸してもらえないだろうか、ティータ君。この通りだ。」

「ふええっ!?あ、頭を上げて下さい……!わたしは元々お手伝い出来る事があれば何でもするつもりでしたし、軍用飛行艇へのハッキングでしたら、戦艦の時よりも難易度はかなり下がりますから任せて下さい……!」

オリヴァルト皇子に頭を下げて嘆願されると慌てた様子で頭を上げるように口にし、そして決意の表情を浮かべてオリヴァルト皇子の嘆願に応える事を口にした。

「……ならば俺もこの艦に残ろう。王国軍が優勢とはいえ、未だ戦闘が続いている”戦場”の空を飛び回るカレイジャスには指揮も必要だろう。艦長の子爵閣下もそうだが艦長代理のハーシェル君も”戦場”に出る以上、カレイジャスを指揮できる人物は必要だろうからな。」

「へ……ミュラーさん、飛行艇の指揮もできるんですか?」

「”アルセイユ”で”リベル=アーク”や”幻影城”に乗り込んだ時も”砲術士”を担当していたが……」

オリヴァルト皇子に続くようにカレイジャスに残る事を申し出たミュラーの申し出を聞いたアネラスは呆け、ジンは不思議そうな表情で訊ねた。

「ああ。”第七”の軍事演習等で戦車もそうだが、飛行艇の指揮も一通り教わり、実際に行った事もある。それに何よりもそこの戯けの”お守り”として、そこの戯けの仕出かすかもしれない阿呆な事を阻止する必要があるからな。」

「やれやれ、幾ら私でも今回は”人の命”がかかっているのだから冗談抜きでエレボニア帝国皇子として真面目に活動しないといけない事は理解しているのに、信用されていないとは悲しいねぇ……いや、そこまで期待されていると、むしろ期待に応えて通信越しにエレボニア帝国軍の諸君に私が歌う”琥珀の愛”を聞かせてあげるべきかな?」

二人の疑問に答えたミュラーの話を聞いて疲れた表情で溜息を吐いたオリヴァルト皇子だったがすぐにその場でリュートを取り出していつもの調子で答えてその場にいる全員に冷や汗をかいて脱力させた。



「……………………」

「このスチャラカ演奏家は……」

「ハハ、この状況でもなおいつもの調子を保っていられるとは、さすがは皇子だな。」

「ハア………少佐のようにそこのスチャラカ演奏家の”お守り”をする訳じゃないけど、あたしもカレイジャスに残るわ。――――――エレボニア帝国軍が降伏の呼びかけに応じた際、王国軍や連合軍に対して降伏に応じたエレボニア帝国軍にこれ以上攻撃しないように要請する為にも”中立の立場”である遊撃士は一人は残っておくべきでしょうし、万が一この艦が戦闘に巻き込まれて墜落や撃墜の危機に陥った際、アガットの代わりにティータちゃんを連れて脱出する役目もあるでしょうからね。」

我に返ったミュラーは顔に青筋を立てて黙り込み、アガットはジト目でオリヴァルト皇子を睨み、ジンは苦笑し、溜息を吐いたシェラザードは気を取り直して自分もカレイジャスに残る事を口にした。

「シェラさん……」

「……いいのか?ティータの件は俺がエリカ達に任されている件だから、本来は俺が残るべきだが。」

シェラザードの意志を知ったティータは複雑そうな表情でシェラザードを見つめ、アガットは複雑そうな表情で訊ねた。

「ええ、それに戦力面で考えてもその方が適正だからよ。”白銀の剣聖”を始めとした”灰獅子隊”の足止めメンバーとの戦闘はほぼ間違いなく発生するのだから、それを考えたらあたしより白兵戦に優れているアンタがジンさん達と一緒に紅き翼に協力すべきよ。」

「……わかった。だったらコイツもお前に預けておくぜ。」

シェラザードの説明に頷いたアガットはシェラザードにレンからもらった”帰還の耳飾り”を手渡した。



こうして……紅き翼はリィン達灰獅子隊によるヴァンダイク元帥討伐の阻止の為に動き始めた。



~少し前・ガルガンチェア1号機・艦内~



紅き翼が動き始める少し前、ロイド達を乗せたメルカバがガルガンチェア1号機の甲板に着地するとメルカバからロイド達特務支援課の面々に加えてリーシャが現れた後艦内へと突入するとある光景を目にした。

「なっ!?あの人形達は”黒の工房”の本拠地で戦った……!」

「ミリアムさんやアルティナさん達”OZシリーズ”の人造人間(ホムンクルス)のデータを参考にして作られた人形兵器――――――”OZミラージュ”……!」

「な、なんであの人形達がこの戦艦にいるの~!?確か”黒の工房”は本拠地は爆破された上、残りの拠点も全部リィンさん達が壊滅させたって話だよね……!?」

ある光景――――――黒の工房の本拠地で現れた人形達の残骸を目にしたユウナは驚きの声を上げ、セティは真剣な表情で声を上げ、シャマーラは困惑の表情で声を上げた。

「……恐らくですが私達が黒の工房の本拠地に突入する前の時点で量産されていたのをこの戦艦の警備用として配置していたのでしょう。」

「それと確か黒の工房の本拠地を襲撃した際に持ち帰ったデータにメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国の戦争が勃発した時点でラインフォルトグループと黒の工房の繋がりを示すデータもありましたから、それを考えると……」

「工房や結社から取り入れた技術をテストする為に戦艦そのものが黒の工房による”実験戦艦”という事ですか……」

「ったく、”戦艦が実験台”とかスケールがデカすぎだろ……」

「話には聞いていましたが、D∴G教団どころかクロイス家の魔導技術も遥かに上回る技術力のようですね、”黒の工房”は……」

「ええ……しかもその黒の工房は”教団”やベル達”クロイス家”の技術も取り込んでいるとの事だから、それこそ教団や”クロイス家”の技術が関わっているもの――――――悪魔や魔導人形達がこの戦艦に配置されているかもしれないわね……」

エリナとティオの推測に続くようにノエルは疲れた表情で答え、二人の話を聞いていたランディは溜息を吐き、真剣な表情で呟いたリーシャの意見に同意したエリィは複雑そうな表情で呟いた。するとその時銃声や様々な魔法が発動する音、剣戟や更には多くの(とき)の声が聞こえてきた。

「フッ、こちらの狙い通りブリッジの目は局長やクロスベル帝国軍に向いているようだね。」

「ああ。――――――特務支援課並びに協力者一同、強制捜査を開始する!この”大戦”によって新たに立ちはだかろうとするクロスベルの”壁”を乗り越える為にも、各自全力を尽くしてくれ!!」

静かな笑みを浮かべて呟いたワジの言葉に頷いたロイドは号令をかけ

「おおっ!!」

ロイドの号令に力強く答えたエリィ達はハッキングによって知ったイリーナ会長とシュミット博士がいる場所に向かい始めた。



~同時刻・リベール王国領・ロレント市郊外・ブライト家~



ロイド達がガルガンチェア1号機の攻略を開始したその頃、エステル達の実家――――――ブライト家にギルバート率いる結社の猟兵達とレクター少佐率いる情報局の局員達が近づいてきていた。

「ふっふっふっ、ついにあのエステル・ブライト達に吠え面をかかせる時が来たようだね。――――――一応確認しておくけど、本当にエステル・ブライト達の母親と弟がはロレントの避難民達の中にいなかったんだよな?」

「まあな。だが、今もあの家にいる事は保証しないぜ。”剣聖”が奥方達を人質に取られる可能性やエレボニア帝国軍によるロレント占領に巻き込まれる可能性を考慮してリベール侵攻が始まる前に既にロレントから避難させている可能性も――――――」

勝ち誇った笑みを浮かべたギルバートに尋ねられたレクター少佐は静かな表情で自身が知る情報を答えた後ギルバートにある忠告をしようとしたが

「総員、突入~~!”剣聖”の妻と息子を必ず確保して、リベールやエステル・ブライト達から受けた屈辱を纏めて返してやるぞ――――――ッ!!」

了解(ヤー)!!」

ギルバートはレクター少佐の忠告を無視して猟兵達に号令をかけてブライト家に押し入った。



「ったく、こっちの忠告を最後まで聞く事すらもしないとか、結社もよくあんな奴を”部隊長”として採用したもんだぜ。――――――で?戦況はどうなっている?」

ブライト家に押し入るギルバート達の様子を見て呆れた表情で溜息を吐いたレクター少佐は気を取り直して自分に同行している部下にある事を訊ねた。

「……空挺部隊は既に半壊、唯一生き残っていたガルガンチェアにもクロスベル帝国軍の戦艦が衝突後クロスベル帝国軍が艦内へと突入し、地上の部隊も王国、連合、ヴァイスラントに挟み撃ちにされた所に側面からの複数の猟兵団と元情報部司令のアラン・リシャール率いる王国軍の別働隊による奇襲によって大混乱に陥り、既に指揮はほとんど機能していない上、更にハーケン門の突破の為にヴァンダイク元帥閣下自らが精鋭部隊を率いての”特攻”を開始したとの事です。」

レクター少佐の疑問に対して部下は暗い表情を浮かべて答えた。

「おいおい……自軍が大劣勢の状況であるにも関わらず総大将自らが”特攻”って、血迷ったのか、ヴァンダイク元帥は?………――――――!(なるほど……………………”そういう事”かよ。)」

「……少佐。元帥閣下は精鋭部隊を率いてハーケン門の突破をしようとしているとの事ですが、例えハーケン門を突破できてもロレント市近郊の街道には既にメンフィル帝国軍の大軍勢が待ち構えているのですから、既に元帥閣下の”特攻”は破綻しているのでは……」

「それに例え”剣聖”の奥方と息子を人質に取れたとしても、リベールを封じる事はできてもメンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント新生軍には何の影響も与える事はできないのですから、意味がない上この”大戦”でエレボニアが”敗戦”してしまえば”剣聖”の動きを封じるために”人質”を取る意味も……」

報告を聞いて困惑していたレクター少佐だったがすぐにヴァンダイク元帥の目的を悟ると重々しい様子を纏っている中別の部下達が暗い表情を浮かべてレクター少佐にある指摘をした。

「……それ以上は言うな。それに、まだ”本命の作戦”はまだ失敗した訳じゃないのだから諦めるのは早いぜ。」

「それはそうですが……」

「今までの事を考えると連合――――――いえ、メンフィル帝国はその”本命すらも想定した上での対策を取っている”気がするのですが……」

部下達の指摘に対して静かな表情で答えたレクター少佐は士気が下がっている部下達の士気を高めるために表情を引き締めてある指摘をしたが部下達の士気を取り戻す事はできなかった。

「気持ちはわかるがそれは幾ら何でも心配し過ぎだ。現在メンフィルの主戦力は”英雄王”達も含めて全員”大戦”に参加している事は確認されているのだから、今のメンフィルの大使館の防御は相当薄いはずだ。(とはいっても唯一の”懸念”であるクロスベル方面――――――”嵐の剣神”達の情報が入って来ていない事が不安要素なんだよな……ったく、幾らクロスベルに潜んでいる情報局(おれたち)を一人残らず狩りつくす為とはいえ”特務支援課”はともかく他国(メンフィル)の諜報員達にも協力してもらうとか、非常識過ぎだぜ、”六銃士”の連中は……)お、どうやら戻ってきたようだな。」

部下が口にしたある不安に対して答えたレクター少佐はセリカ達を思い浮かべて苦々しげな表情を浮かべたその時、ギルバート達がブライト家から出て来た事に気づいた。



「おい、どういう事だ!?あの家には標的はおろか人っ子一人いなかったぞ!?話が違うじゃないか!?」

「こっちの話を最後まで聞かずに行ったんだから文句を言われる筋合いはないぜ。……それよりも、やはり奥方達は既に避難済みか。こっちの作戦は”達成不可能”だな。そうとわかった以上長居は無用だ。総員、すぐにこの場から離れるぞ――――――」

ギルバートの文句に対して呆れた表情で答えたレクター少佐が部下達に新たな指示を出そうとしたその時

「――――――敵国の”将”の身内とはいえ、そんな大勢を投入してまで”民間人”を人質に取ろうとするとは、”大陸統一を謳う軍事大国”が聞いて呆れますわね。」

フェミリンスの声がその場に響き渡った後レクター少佐達の目の前にエステル、ヨシュア、ミント、ケビン、リース、ルフィナ、そしてフェミリンスがフェミリンスの転位魔術によって現れた!

「なっ!?き、貴様らは――――――」

「遊撃士協会史上初SS級正遊撃士――――――”ブレイサーオブブレイサー”エステル・ファラ・サウリン・ブライトにその娘、Sランク正遊撃士”黄金の百合”ミント・ルーハンス・ブライトだと……!?」

「しかもAランク正遊撃士”漆黒の牙”ヨシュア・ブライトと”黄金の女帝”フェミリンスまで……!」

「おまけに”星杯騎士”――――――それも守護騎士(ドミニオン)までいるだと……!?」

エステル達の登場に猟兵や情報局の局員達はそれぞれ信じられない表情で声を上げた。



「オレ達は”おまけ”かいな。――――――それにしても、”蛇”の下っ端兄さんとこんな所で再会する事になるとはな。一応”影の国”ぶり以来やな?」

「”部隊長”に就任しているのですから、あの時の別れ際の宣言通り”出世”はしているようですね。」

「あ、あわわわわわわわわわ……ッ!?エステル・ブライト達に加えて何でお前達”星杯騎士”までこんな所にいるんだよ……っ!?」

自分達を”おまけ”呼ばわりした情報局の局員の言葉に疲れた表情で溜息を吐いたケビンは苦笑しながら、リースは静かな表情で表情を青褪めさせて自分達を見つめて叫んだギルバートに声をかけた。

「あら、”蛇”の手先の割には”ブライト家”は私達”星杯騎士”――――――いえ、”七耀教会が絶対に守らなければならない存在”になった事を知らないようね?」

「まあ、結社は強化猟兵達には不必要な情報は与えませんので……」

「というかそもそもその”結社”も”盟主”さん達がセリカさん達に抹殺された事で既に崩壊している上、結社が崩壊してもなおまだ結社に残っていた”執行者”の人達もついに結社に見切りをつけて、みんな結社から離れたらしいものね~。」

「なあっ!?」

「バ、バカな!?結社にまだ残っていた”執行者”達が全員結社から離れただと!?」

「そ、そんな……それじゃあ俺達はどうなるんだ……?」

ギルバートの反応に意外そうな表情を浮かべているルフィナにヨシュアは静かな表情で指摘し、ミントは苦笑しながらギルバート達にとっての驚愕の情報を口にし、ミントの話を聞いたギルバートは驚きの表情で声を上げ、猟兵達はそれぞれ信じられない表情や絶望の表情を浮かべていた。



「ま、ギルバート達の”往生際の悪さ”は”今更”だからどうでもいいとして……この期に及んで父さんの動きを封じるためにお母さん達を攫おうとしたあんた達も今頃メンフィル帝国の大使館を襲撃している”黒の工房”の連中同様ホント往生際が悪いわね。」

「な――――――」

「あ、ありえん……!何故貴様らがその件を……!」

「クソッ……今までの事を考えると”最悪の可能性”がありえる事も想定したが、やはり”最悪の可能性”――――――”本命すらも想定されていた上対策までされていた”のかよ……!だが、こっちもその可能性も考えて猟兵王に加えてこっちの最大戦力も”本命”を襲撃しているから、幾ら”嵐の剣神”が”本命”の防衛に回っていようとも、猟兵王とこっちの最大戦力には敵わないぜ……!」

呆れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情で睨んで来たエステルの言葉を聞いた情報局の局員達がそれぞれ驚いている中レクター少佐は厳しい表情で呟いた後不敵な笑みを浮かべた。

「”情報局――――――エレボニアの最大戦力”……?――――――まさか……!」

「”鉄血宰相”ギリアス・オズボーン――――――いえ、もしかしたら”黒の騎神”も使ってくるかもしれないわね。」

「おいおい、トップ自らが襲撃に参加するって、リウイ陛下達並みのフットワークの軽さやんか………ただまあ、”黒の騎神程度”でセリカさん相手に勝てると思っている時点であんた達はセリカさんの”力”を全然わかってへん証拠やな。」

「そもそも、かの者の”正体”すらも知らない彼らがかの者の力を推し量れる訳等ありえませんわ。」

レクター少佐が口にした情報を聞いて事情を察したリースは驚きの表情を浮かべ、ルフィナは真剣な表情で推測を口にし、ルフィナの推測を聞いたケビンは疲れた表情で溜息を吐いた後苦笑し、フェミリンスは静かな表情で呟いた。



「何………?(ギリアスのオッサンが襲撃に参加していると知ってもなお、全く動じていない連中のあの態度……まさか、マジで”嵐の剣神”はオッサン――――――いや、”黒の騎神すらも凌駕する力を持っているのか”……!?)――――総員、連中の相手をまともにする必要はない!この場からの離脱を最優先とせよ――――――」

ケビンとフェミリンスの話を聞いて眉を顰めたレクター少佐は全く動じていない様子のエステル達を見て”最悪の想定”をした後情報局の局員達に指示を出したその時その場に巨大なドーム型の結界が展開された。

「なっ!?こ、これはまさか……!?」

「逃げ場を無くすための”結界”か……!それもこんな大規模な”結界”を一体誰が……!」

「――――――それは私ですよ。」

結界を目にした状況を察したギルバートは信じられない表情で声を上げ、レクター少佐が厳しい表情で声を上げたその時その場にエイドスの声が響いた後アドル、エレナ、ナユタ、ノイ、クレハがエイドスの転位魔術によってエイドスと共にレクター少佐達の背後に現れた!



「なああああああっ!?お、お前達は”影の国”の時の……!」

「アハハ……まさかこんな所で貴方とまた会う事になるとは思いませんでした。」

「?もしかして彼も”影の国”の時の仲間なの?」

「全然違うの。私やナユタは直接被害には逢わなかったけど、その男は”影の国”を探索していた私達のメンバーの足を何度か引っ張った”お荷物”なの!」

ナユタ達に気づいて驚きの表情で声を上げたギルバートの様子にナユタが苦笑している中、ナユタとギルバートが顔見知りである事に不思議に思ったクレハの推測にノイはジト目で答え

「まあ、”お荷物”という程足を引っ張られた訳じゃないけどね……」

「というか今更ですけど、あの後ちゃんと人形兵器達を振り切った上、あの場にいなかったのに崩壊間近だった”影の国”から脱出できたんですね……」

「ギルバートは渋とさ”だけ”はゴキブリ並だから心配する必要なんてないわよ。」

「ア、アハハ……さすがにゴキブリ並みは言い過ぎだと思うよ、ママ~。」

「ま、まあまあ……”幻影城”への突入の時に彼も”汚名返上”をしたのだから、そこまで彼の事を悪く言う必要はないと思うよ。」

ノイの言葉に対してヨシュアは静かな表情で答え、エレナは苦笑しながらギルバートを見つめ、ジト目でギルバートを睨んだエステルの言葉にミントは苦笑しながら指摘し、アドルは苦笑しながらヨシュア達に諌めの言葉をかけた。

「ああ、なるほど。という事は貴方がお母様達の話に出てきた”典型的な三下キャラ”のギルバートさんですか!」

「エ、エイドス!?幾ら事実で敵であろうと、本人を目の前にして言っていい言葉じゃないわよ……!?」

一方ナユタ達の会話を聞いてギルバートの事を察したエイドスは納得した様子でギルバートを見つめて声を上げ、エイドスの言葉に表情を引き攣らせたフィーナはエイドスに注意したが

「フィーナさんも何気に彼に対する失言をしていますよ……」

「しかも”彼に関する事以外の失言”もしているよね……」

「あ。」

それぞれ苦笑しているエレナとアドルの言葉を聞いてすぐに状況を察すると呆けた声を出した後冷や汗をかいた。



「……………………へ。エ、”エイドス”……?ま、ままままままままままま、まさか……ッ!?」

「あの女が”空の女神本人”だとっ!?」

「バカなっ!?”女神”等空想上の存在なんだから、存在している訳がないだろうが!?」

「だ、だが現にたかが一民家の迎撃の為だけに遊撃士共はともかく、星杯騎士――――――それも守護騎士までいる事を考えると……!」

一方ギルバートは呆けた後混乱した様子でエイドスを見つめ、ギルバート同様猟兵や情報局の局員達もそれぞれ混乱し

「やれやれ……こんな大規模な”結界”を一瞬で展開した事もそうだが俺達の目の前にいる女が空の女神(エイドス)本人という推測に対して教会の連中が否定の言葉を一つも口にしない事を考えると、冗談抜きで”本物”みてぇだな。ったく、カレル離宮やクロスベルの件といい、”黄昏”が発動してから”異能”が肝心な時に限って全然仕事してねぇせいでとことんついてねぇじゃねぇか……待てよ?そういえば、ゲオルグの奴が霊脈の流れが次々と遮断されていて”黄昏”の世界への影響が次々と切り離されて”想定外過ぎる”と言っていたが、まさかとは思うが俺やクレアの”異能”が肝心な時に限って仕事をしない事といい、霊脈の件といい、全部アンタの仕業なのか!?」

レクター少佐は疲れた表情で溜息を吐いた後ある事に気づくと驚きの表情でエイドスを見つめて問いかけた。

「貴方達の”異能”の件は知りませんが、”霊脈”については心当たりはありますね。”黄昏”の影響を受けないようにエレボニア以外の各国の霊脈に結界をかけた後はサザ―ラント以外のエレボニアの各地を回って各地の霊脈を私達が遮断しましたから。」

「!!」

「バ、バカな!?”霊脈の遮断”だと!?そんな化物じみた芸当、”魔女”や”黒の工房”ですらもできるはずがない……!」

「だ、だが……実際”霊脈”に何らかの”異常”が起こった事で日が経つごとにエレボニアの地の一部の地域での”黄昏”の影響が突如消えたという”黒の工房”の報告があった事を考えると、実際にそんな化物じみた芸当を行った訳だから、そんな化物じみた芸当を行える存在は……」

「”女神”……」

エイドスの説明を聞いたレクター少佐は目を見開き、情報局の局員達はそれぞれ信じられない表情でエイドスを見つめた。



「フフ、そういえばまだ名乗っていませんでしたね。――――――私の名はエイドス。エイドス・クリスティン・ブライト。現代では人々から”不本意ながらも空の女神と呼ばれている”24歳の”ただの新妻”です♪」

「って、こんな時でも”ただの新妻”の方を名乗るんじゃないわよ~!」

「お願いしますから、少しは時と場所を考えてください……」

「しかも何気に大幅に鯖を読むなんて大人げなさすぎよ!」

「ク、クレハ、今はそこを気にしている場合じゃ……」

「ううっ、クレハ様のエイドスやエステルの悪影響化がどんどん進んでいっているの……」

笑顔を浮かべて名乗ったエイドスの名乗り方にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エステルはすぐに突っ込み、ヨシュアは疲れた表情で指摘し、顔に青筋を立ててエイドスに指摘する様子のクレハにナユタが冷や汗をかいて指摘している中ノイは頭を抱えて疲れた表情で溜息を吐いた。



「…………………………」

「あ、ありえん!”ブライト”だと!?」

「ま、まさか”空の女神”は”剣聖”や”ブレイサーオブブレイサー”達と何らかの関係があるのか……!?」

「(チッ、やっぱり”見えねぇな。”どうやらマジでオッサンや黒の工房もそうだが、”黄昏自体も追い詰められている状況のようだな。”)……ったく、幾ら”剣聖”達と何らかの関係があるとはいえ、”女神”自身が俺達の戦いに介入していいのかよ?確かアンタの”眷属”の連中は”盟約”とやらで”至宝”に関する出来事に対して介入できないみたいな事は聞いているぜ。」

エイドスの名乗りを聞いたギルバートが驚きのあまり口をパクパクさせている中情報局の局員達は信じられない表情でエイドスやエステル達を見つめ、レクター少佐は”黄昏”を利用しての”異能”を発動しようとしたが何も起こらなかった事に舌打ちをした後厳しい表情でエイドスを睨んで問いかけた。

「あら、私が”何も知らない”とは随分と侮られたものですね。――――――”焔”と”大地”が既に”別の至宝――――――空の女神(私)が生み出した至宝(もの)とは全く別の至宝(もの)”になった以上、”焔と大地に関する盟約”は解かれたも同然の状態の上、そもそも眷属(レグナート達)にかけた”盟約”は空の女神(私)自身の判断でいつでも解く事は可能ですし……―――――何よりも”ただの新妻”の私にとっては”盟約”なんて何の関係もありませんので♪」

「いやいやいやいやっ!?最後のは幾ら何でも無理がありすぎるでっ!?」

「そもそもご自身で”盟約”の事を持ち出しておきながら、”関係がない”なんて矛盾しているにも程がある発言ですよ……」

「いい加減、少しは”貴女自身が今のゼムリア大陸にとってどれ程の影響を与える存在”なのかを自覚しなさい……!」

(七耀教会の信徒の一人としてエイドス様に対してこんなことを思うのは不敬だと理解しているけどエイドス様の場合、”自覚していてわざと自分の思うがままに行動していらっしゃっている”ようだから、性質が悪いのよね……)

エイドスの答えにその場にいる全員が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ケビンは思わず突っ込み、リースは疲れた表情で指摘し、フェミリンスは顔に青筋を立ててエイドスを睨んで指摘し、ルフィナは疲れた表情で頭を抱えた。



「――――――そういう訳で、”空の女神(私)や私の仲間達がした事まで無駄にしようとした事”で私の”逆鱗”に触れた貴方達エレボニアに”お仕置き”をする為もそうですが、”終焉”を防ぐ為にもエステルさん達やリウイ陛下達メンフィル・クロスベル連合に協力しているんですよ。」

そしてエイドスは異空間から自身の得物である”神槍ウル”を取り出して軽く一振りした。すると膨大な神気がエイドスやエイドスの得物からさらけ出された。

「う……あ……っ!」

「こ、これが”本物の空の女神の力”……!」

「くっ……どうしてこんなことに……!」

「こんな……こんな圧倒的戦力による敗北が宰相閣下に忠誠を誓った我らへの”女神の裁き”による結末だというのか……」

エイドスやエイドスの得物の神気に圧された情報局の局員達や猟兵達は本能で感じた恐怖によって思わず恐怖や絶望の表情を浮かべながらエイドスを見つめたり既に自分達の敗北を悟り始め

「だから何でもかんでも私のせいにしないで下さい!――――――コホン。それじゃあエステルさん、そろそろ始めましょうか?」

「はいはい。――――――という訳でギルバートに結社の猟兵達、それに”かかし(スケアクロウ)”と情報局の人達!あたし達の大切な家族に手を出そうとした挙句、あたし達の家を踏み荒らした事も含めてエイドス達と一緒にたっぷり”お仕置き”してあげるわ!リウイ達と違って、生かした状態で王国軍に引き渡すから感謝しなさい!みんな、行くわよ!!」

「おおっ!!」

顔に青筋を立てて反論したエイドスはエステルに号令を促し、エイドスの言葉に疲れた表情で頷いたエステルは号令をかけ、エステルの号令に仲間達は力強く答えてギルバート達やレクター少佐達に襲い掛かり

「クク……これが俺達の”年貢の納め時”って奴ってか……?――――――ふざけんじゃねぇぞ、クソッタレがあああああぁぁぁぁ――――――ッ!!」

レクター少佐は皮肉気に笑った後自暴自棄になって情報局の局員達と共に襲い掛かってきたエステル達の迎撃を開始した。



~同時刻・メンフィル大使館~



一方その頃メンフィル大使館の周囲に広がっている森に”転位”で現れたオズボーン宰相が駆る黒の騎神――――――イシュメルガ、アルベリヒ、ゲオルグ、ルトガー、レオニダス、そしてシャーリィ率いる赤い星座の猟兵達とニーズヘッグの猟兵達がメンフィル大使館に迫ろうとしていた。

「フン、リベールへの援軍に戦力を充て、自身の守りには見張りの兵すらも配置していないとは愚かな。」

「油断は禁物だよ、アルベリヒ。今までの事を考えるとメンフィルは僕達の襲撃すらも想定して罠をはっている可能性は十分に考えられるよ。」

大使館に見張りの兵がいない事に鼻を鳴らして嘲笑したアルベリヒにゲオルグは真剣な表情で指摘し

「ま、街道にはあれだけ大勢の軍を展開しておきながら、肝心の大使館には門の前にすら兵の一人も配置していなかった事を考えると、どう考えても罠だろうな。」

「……だが、今回は”罠ごと食い破る圧倒的な戦力”がいるのだから、どんな罠がはられようと罠ごと食い破るのみだ。」

「うーん……そう上手くいくかな~?近づくごとに嫌な予感がどんどん強まってくるんだよね~。」

ゲオルグの指摘に同意するかのように肩をすくめたルトガーの言葉に続くようにレオニダスは静かな表情で呟いて黒の騎神に視線を向け、シャーリィは疲れた表情で溜息を吐いた。

「フフ……それでは始めようか――――――乾坤一擲となる”大戦”の”裏の戦い”を。」

そしてイシュメルガの操縦席にいるオズボーン宰相が号令をかけたその時

「―――――今だ!二人とも放て!!」

「はいっ!――――――逃がしません、三連制圧射撃!!」

「逃がさないよ~!二連制圧射撃!!」

大使館の屋上の物陰に潜んでいたパントが指示を出し、パントの指示によって物陰から姿を現したルイーズとフィアはクラフトによる矢の雨をイシュメルガ達目掛けて降り注がせ

「くっ……やはり”罠”を張られていたか……!」

「フン、小癪な真似を……!」

自分達目掛けて降り注ぐ矢の雨を見たゲオルグとアルベリヒはそれぞれが操る戦術殻に結界を展開させて自分達の周囲を守ったが

「ガッ!?」

「ぐふっ!?」

「おいおい……あの程度も避けるか防ぐ事もできないとか、ニーズヘッグの連中はともかく”星座”のレベルも随分下がったんじゃねぇのか?」

「しょうがないでしょ~。パパに加えてガレス達古株の隊長クラスもみんな死んだ事で、大半の腕がいい人達は”星座”に見切りをつけて他の”団”に移籍したんだから~。シャーリィはパパ達みたいなリーダーシップはないし、去る人達をわざわざ追って引き留めるみたいな面倒な事はしない主義だからね~。」

結界の範囲外にいたニーズヘッグや赤い星座の猟兵達の一部は回避や防御ができなかった為、降り注ぐ矢の雨に命中した事で絶命し、それを見て呆れた表情で溜息を吐いたルトガーの指摘にシャーリィは疲れた表情で答えた。

「我々も続くぞ、ルシティーネ卿、ユリーシャ殿、サリア殿、レシェンテ殿、ミルモ殿、リザイラ殿!――――――二つ回廊の轟雷!!」

「は、はいっ!大地の力よ、全てを圧し潰せ――――――歪界重力波!!」

「了解しました!かの者達に聖なる炎の裁きを――――――セナケリブの光霞!!」

「任せてください~!御雪さん~、お願いします~!!」

「妾に任せるがよい!消え失せよ――――――ケルト=ルーン!!」

「切り裂け――――――重ね旋刃!!」

「地の精霊達よ、愚か者達に怒りの刃を――――――豪破岩槍撃!!」

「ぐぎゃあああああああ……っ!?」

「があああああああああ……っ!?」

更にそこにパント、リリカ、守護天使ユリーシャ、サリア、レシェンテ、ミルモ、リザイラによる魔術の一斉攻撃が放たれた事でそれらに命中した猟兵達は悲鳴を上げて次々と絶命していった。



「フッ、高所からの待ち伏せによる一斉攻撃の罠とは考えたものだが……その程度で我らを退けられるとは侮られたものだな……!」

パント達が放った魔術が地上で炸裂している中イシュメルガを駆るオズボーン宰相はパント達の策に感心した後反撃の為にイシュメルガを跳躍させて屋上にいるパント達に攻撃を叩き込もうとしたその時

「―――――いいや、その者達は貴様らの事を決して侮って等いないだの。何せ”セリカ達に加えてこの我をも迎撃の為の戦力に組み込んだからだの。”」

「!?」

パント達の背後から現れたハイシェラが跳躍してイシュメルガの目の前に現れ、ハイシェラの登場にオズボーン宰相は驚いた。

「どれ、まずは挨拶代わりだの――――――紅燐舞華斬!!」

「ぬ――――――おおおおおおお……っ!?」

そこにハイシェラが”溜め”から放たれる強烈な一撃をイシュメルガ目掛けて叩き込み、ハイシェラの攻撃を受け止めた瞬間イシュメルガはそのまま勢いよく地面に叩き落とされた。地面に叩き落とされたイシュメルガは倒れることはなかったが、ハイシェラの攻撃を受け止めた衝撃によって地面に叩き落された瞬間地面に後ずさりの足跡を残しながら後退させられた。



「な――――――」

「ありえない……!生身で騎神を―――――それも”黒の騎神”を吹き飛ばすなんて……!?」

それを見たアルベリヒは絶句し、ゲオルグは信じられない表情で声を上げた。するとその時アルベリヒ達の左右からそれぞれ転位による光が現れ

「!団長……!」

「やれやれ……囲まれちまったか。」

「みんな、散って――――――!」

転位の光に気づいたレオニダスは真剣な表情で声を上げ、ルトガーは溜息を吐き、シャーリィは猟兵達に指示をした。すると右からはサティアの転位術によってサティアと共にセリカ、ロカ、メティサーナが、左からはフルーレティの転位術によってフルーレティと共にジェダル、マリーニャ、シュリが現れ――――――

「殲鋼――――――双肢乱!!」

「二の型――――――星光疾風!輝け!!」

「薙ぎ払え――――斬!!」

「空を斬り裂け―――ッ!斬!!」

「遊んでやろう――――――業禍汲斬!!」

「フフッ、切り裂いてあげる――――――空間歪曲!!」

「狙いは外さないよ――――それっ!」

「氷の弾丸よ、弾けなさい――――――凍結拡散撃ち!!」

「ギャアアアアアアアアア――――――ッ!?」

「う、うあああああああ………っ!?」

セリカの飛燕剣とサティアの八葉の剣が、ロカの槍とメティサーナの大鎌が、ジェダルの剣技とフルーレティの空間を切り裂く魔術が、マリーニャの短剣とシュリの二丁の魔導銃による拡散撃が次々と猟兵達に襲い掛かり、それらを喰らった猟兵達は絶命して地面に倒れていった。



「貴様らは太陽の砦とカレル離宮でそれぞれ阻んできた……ッ!」

「やれやれ、復帰早々アンタとやり合う事になるとはな。」

「何か勘違いをしているようだが、”俺の相手はお前達ではない。”」

セリカ達と共に現れたジェダルに視線を向けたレオニダスは厳しい表情を浮かべ、ルトガーは苦笑しながらジェダルを見つめた。

「何……ッ!?」

ジェダルの言葉にレオニダスが驚いたその時ジェダル、フルーレティ、シュリ、マリーニャはアルベリヒとゲオルグ、シャーリィと対峙し、セリカ、サティア、ロカ、メティサーナはルトガーとレオニダスと対峙した!



「―――――今回の貴様らの相手は俺達だ。」

「セリカと私、そしてエステル達の未来の為にも貴方達の目的は徹底的に叩き潰させてもらうわ。」

「世界を”終焉”に導こうとする愚か者達についたその罪、我が主神マーズテリアに代わりその身に裁いてあげましょう。」

「メティの裁きを直々に受けられる事、光栄に思うがいい!」

「くっ……あの”劫焔”――――――それも火焔魔人化した奴を相手に終始優勢に戦った”嵐の剣神”か……!」

「クク、高所の連中といい、”黒の騎神”を相手しているとんでもねぇ女といい、相変わらず徹底的に俺達を潰そうとしているねぇ。どうせその様子だと、他の猟兵の連中の対策は高所にいる連中だけじゃねぇんだろう?」

対峙したセリカ達に武器を向けられたレオニダスは自分達が劣勢である事に唇を噛み締め、ルトガーは口元に笑みを浮かべて呟いた後苦笑しながらセリカ達に問いかけた。



「その通りだ。――――――リリエム、リ・クアルー!!」

「イルザーブ!!」

ルトガーの言葉に答えたセリカとロカはそれぞれが契約している使い魔達――――――睡魔リリエム、ナーガ族のリ・クアルー、権天使イルザーブをそれぞれ召喚し

「お前達は高所から支援するサリア達と協力して猟兵達を殲滅しろ。」

「イルザーブ、貴女もリリエム達と協力して猟兵達の殲滅を。」

「はーい!こんなにいっぱい”ご飯がいるんだから、誰から食べようか”、ボク、迷っちゃう♪」

「フッ、精気を吸い取るのに夢中で目的を忘れるなよ。」

「承知しました、ロカ様。」

セリカの指示に元気よく答えた後嬉しそうに猟兵達を見回すリリエムにリ・クアルーは苦笑しながら指摘し、ロカの指示にイルザーブは恭しく会釈をして答えた。

「貴女もリリエムさん達を手伝ってください、シュベルトライテ~!」

「―――――よかろう。”ヴァルキリー”の裁きを愚か者達にその身に刻んでやろう。」

更にサリアに召喚されたシュベルトライテがリリエム達の傍に降りて来て猟兵達と対峙し

「くっ……次から次へと新手が……!」

「怯むな……!相手はたった4人で、それも女ばかりだ……!」

「高所からの攻撃に注意しつつ、数の差を利用して制圧するぞ……!」

リリエム達と対峙した猟兵達はそれぞれ士気を高めて戦闘を開始した。



「フッフッフッ……!アルスターでは暴れられなかった分も含めて今回は派手に暴れてやろうではないか……!」

「ハハ、意気込みが高いのはいいけど、ほどほどにしてくれよ?幾ら”魔神”による結界があるとはいえ、”古神”の君が”本気”を出せば大使館の被害も洒落にならない事になりかねないからね。」

屋上から不敵な笑みを浮かべて猟兵達を見下ろしながら両手に膨大な魔力を収束しているレシェンテにパントは冷や汗をかいて苦笑しながら指摘した。



~メンフィル大使館内~



「結界……展開するだけ……楽ちん………」

「グルルルル……」

一方その頃大使館内で多くのメンフィル兵達が迎撃態勢を取っている中メンフィル兵達の最後尾にいるナベリウスは傍に自身の使い魔であるケルベロスを控えさせた状態で結界を展開し続けていた。



~メンフィル大使館・外~



「俺は赤い髪の女の相手をする。フルーレティとセリカの”使徒”達は残りの二人の相手だ。」

「了解~!シュリ、後ろからの援護は任せるわよ!」

「はい、支援はお任せ下さい!」

「ふふっ、”黒の工房”だっけ?貴方達は”黒の騎神”とやらを”絶対的な力”として見ているようだけど、貴方達が妄信している”力”は所詮は”偽物”であって、”本物の絶対的な力はあんな鉄屑では到底及ばない事”を私が教えてあげるから、感謝してね。」

ジェダルの指示に答えたマリーニャはシュリと戦術リンクを結び、フルーレティはアルベリヒ達を見つめて嘲笑し

「黙れ、想定外(イレギュラー)共があああああぁぁぁぁぁ――――――ッ!!想定外(イレギュラー)の分際でイシュメルガ様の力を侮る等どれ程愚かな行為なのか、イシュメルガ様に代わりその身に刻みつけてやってくれる……!」

「君達想定外(イレギュラー)によって負け続きだった地精としての汚名を返上する為にも……そしてこれ以上君達によって僕達の計画を狂わせない為にも、何としても切り抜ける……!」

「アハハッ!あの猟兵王の片目を奪ったお兄さんの腕前、どれ程凄いのか、シャーリィもたっぷり味わわせてもらうよ!」

フルーレティの挑発に対してアルベリヒは怒り心頭の様子で答え、ゲオルグは厳しい表情でフルーレティ達を睨み、シャーリィは好戦的な笑みを浮かべてジェダルを見つめた。



「フフ、まさか英雄王達以外にも生身でイシュメルガに――――――騎神に対抗できる者が他にもいるとはな。だが、幾ら生身で騎神に対抗できる力を持っているとはいえたった一人で騎神達の中でも”最強”である”黒の騎神”相手に挑む等、些か無謀だとは思うが。」

ハイシェラと対峙したイシュメルガの操縦席にいるオズボーン宰相は苦笑した後不敵な笑みを浮かべてハイシェラに指摘したが

「クク、この我が”挑む”だと?貴様はあの”鋼の聖女”とも並ぶ達人との事だが、想定外の出来事や敗戦続きで、武人としての勘が狂ったかだの?」

「何?」

不敵な笑みを浮かべて指摘し返したハイシェラの指摘に困惑した。するとハイシェラは全身から膨大な魔力や闘気をさらけ出し始めた!

「……ッ!これは………」

「”我が貴様に挑む立場ではない。貴様が我に挑む立場だの!”――――――我が名はハイシェラ!”地の魔神”にしてセリカの”永遠の好敵手にして盟友”なり!クク、我やセリカ達が関われば、”もはや相克とやらを気にしている場合ではない事”を我自身の手によってその身に直に思い知らされることを光栄に思うがいいだの!」

ハイシェラがさらけ出す膨大な闘気や魔力にオズボーン宰相が驚いている中ハイシェラは好戦的な笑みを浮かべて宣言をした後イシュメルガに襲い掛かった――――――!



 
 

 
後書き
という訳でようやくエステル達やセリカ達を登場させられました……なお、エステル達の戦闘やリリエム達による猟兵達の虐殺シーンはめんどいのでカットします。(おいっ!)ちなみにエステル達の戦闘BGMは空シリーズの”銀の意志”、ジェダル達の戦闘BGMはグラセスタの”閃光交わり轟く戦場”、セリカ達の戦闘BGMは天秤のLadeaの”戦女神 Second half Loop”、ハイシェラの戦闘BGMは戦女神ZEROの”魔神来たりて天地を征す”だと思ってください♪ 
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