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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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待ち受ける者たち(大空翔、小泉純一)
  純一:冬の寒い日に

慧音と純一は居間に通された。
居間に据えられた炬燵《こたつ》の上に3人分のお茶と籠に入ったみかんが置かれている。


霊夢「今日は何か用事があって来たの?」

純一「ええ、まあ。上白沢先生から“外界人の青年が博麗神社に住んでいる”と伺ったので是非お会いしたいと思いましてね…。して、彼はどこへ?」

霊夢「敏久ならルーミアと遊びに行ったわよ」


そう言って霊夢はお茶をすする。
霊夢はお茶が好きで、暇さえあればいつも飲んでいる。本人曰く「お茶を1日も欠かさず飲まないと辛くて死んじゃう病」にかかっているらしい。
つまりはそれだけお茶が好きだということである。


慧音「まったく、敏久はどこまで人がいいんだか。私だったらこうして炬燵で丸くなっているよ」

霊夢「別にいいじゃない。そこがいいのよ」

純一「心優しい青年なんですね。霊夢さんのパートナーにぴったりなんじゃないですか?」


純一の言葉に霊夢は赤面する。


霊夢「なっ…⁉︎敏久とは一昨日会ったばかりよ!会ってまだ一週間も経ってないのに好きになるわけないじゃない!///」

慧音「ふむ…これが“つんでれいむ”というものか。面白いな」

霊夢「ちょっと、慧音まで何を言い出すのよ…////」


慧音がからかうと霊夢の顔は更に赤みを増した。


慧音「まあ、彼は優しくて礼儀正しいしな。皆に好かれるのも当然だろう」

紫「そうそう。それに彼はイケメンだもんねー。好きになるのも無理ありませんわ」


・・・。


3人:Σ( ̄□ ̄;)


いつの間にか炬燵の空いた場所に八雲紫(やくも‐ゆかり)が座っていた。
彼女は「境界を操る程度の能力」を持つ幻想郷最強の妖怪で、境界を弄る(といっても実際には“スキマ”と呼ばれる空間を展開するだけだが)ことによってあらゆる場所への移動を可能にする。ちなみに名目上の幻想郷の管理人でもある。


霊夢「いつからそこにいたの?しかも湯呑み持参で…」

紫「“別にいいじゃない”のあたりからずっといたわよ?」

霊夢「まさに神出鬼没ね…」

純一「紫さん、どうもお久しぶりです」


純一が紫に深々と頭を下げた。
数年前、純一が幻想入りして最初に会った人物が紫である。これがそれ以来の対面だった。


紫「小泉さんもお元気そうで何よりですわ。その後、お変わりなくて?」

純一「はい。おかげさまでこうして元気に過ごさせてもらっとります。店も繁盛してきましたしな」


それはよかったわね、と紫が微笑んだ。


霊夢「ところで紫。あんたが敏久を連れてきたんでしょ?」

紫「あら、嫌だった?」

霊夢「い、嫌じゃないわよ?そうじゃなくて、連れてきた理由を訊いているの」

紫「単に暇だったからよ。最近、異変すら起きないから何か刺激が欲しかった…ただそれだけですわ」


そう言って紫は扇子を広げ、怪しげに笑った。


紫「ちなみに女の子も一人連れてきたわよ。彼女がいまどこにいるかまでは知らないけど…。いずれ情報が入ってくると思いますわ」

慧音「ほう、それは初耳だな」

純一「今度、その子にも会ってみたいですね」

霊夢「それも退屈しのぎが理由なの?」

紫「ええ、もちろん」

霊夢「その子も大変ね…」


霊夢はまだ見ぬ少女に同情した。



ーー
ーーー


『さて、私はそろそろお暇しますかな。』
そう言って純一が腰を上げたのは午後3時のことだった。
博麗神社に4時間ほどいたものの、ついに敏久は帰ってこなかった。


純一「松上君に会えなかったのは残念ですが…そうだ、これを彼に渡して下さい」


純一は鞄から革製の名刺入れを取り出し、中の名刺を一枚抜いて霊夢に渡した。
名刺には『八百屋「八百長」店主(元 日本政府第87・88・89代内閣総理大臣) 小泉 純一』と書いてあった。

前述の通り、純一はもともと外の世界で政治家をしていた。その名残で今も名刺を持ち歩いている。
ちなみに霊夢や紫や慧音は初対面の時点ですでに名刺を渡されていた。


純一「あと、これは私から彼への引越し祝いです」


そう言って純一は人里で買った紅白饅頭を炬燵の上に置いた。


霊夢「ありがとう」

慧音「私も帰るとしよう。見送りはしなくていいぞ」

霊夢「分かったわ。紫はどうするの?」

紫「私は敏久に用事があるので、ここで彼の帰りを待ちますわ」

霊夢「そう?まあ好きにしなさいな」

純一「霊夢さん、今日はありがとうございました。それでは、また」

霊夢「ええ。またいつでも来なさいね」




ーーー今にも雪が降りだしそうな空模様のなかを純一と慧音は帰っていった。
 
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