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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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第十五章
  15-⑴

 年が明けて、元旦の朝。食卓には、海老の塩焼き、鰤の照焼と数の子の小鉢が並んでいるだけだった。僕は、今までと違って、少し戸惑っていた。そして、お雑煮のお椀を並べながら、美鈴が

「ゴメンね 蒼 いつもと、違うでしょ 少なくて・・」

「いや そんな・・」

「私達ね 毎年、こんなものなのよ それでも、今年は、鰤を足したのよ お雑煮だけの年もあったわ だから、いきなり、贅沢すると申し訳なくて・・」

「そうかー 良いよ 上出来 美鈴とお父さんと 健康で こうやって、居られるだけで幸せだよ」

 僕達は、3人で新年を祝った。この後、美鈴と僕の実家に行く予定だった。

「ワシは 銭湯に行くから、ゆっくりして来いよ 向こうのご両親も楽しみにしているだろうから 夜もワシはローストビーフあるから、チビチビやるから、心配するな」と、お父さんが言ってくれた。

「お父さん それが、心配なのよ あんまり、飲み過ぎないでね」と、美鈴は、いつも釘をさすのだが・・。

 実家に行くと、お母さんが待っていたかのように迎えてくれた。

「お父さんと二人だけだと、張り合いが無くてね 待っていたのよー」

「すみません お母さん 遅くなってしまって・・」と、美鈴が謝っていたが

「いいの いいの 気にしないで 入ってちょうだい」

 食卓の上には、お重が並んでいて、お父さんはTVを見ていたのだが

「美鈴ちゃん あのね 小紋の着物 用意したんだけど・・ いえね 着なくても、いいのよ だけど、着付けも教えるから、持って帰って そーしたら、必要な時、自分でも、着れるでしょ どう?」

「そんなー すみません じゃぁ お願いします」と、美鈴だって断れないじゃぁないか、でも、僕は、知らんぷりして聞いていた。

 ふたりで、和室にいって、しばらくして、出て来た時、美鈴は着物姿だった、白地の小紋で、化粧も少し変えていたみたいだった。

「ウン 美鈴は、着物の方が似合うのかも知れないな」と、僕は、お父さんが言う前に言っておいた。

「お出掛けしても良いようにって 履物なんかも用意してくださったんです ありがとうございます」

「いいの 娘なんだから、楽しみなんよ それに、それは私のお下がりで申し訳ないんだけど、美鈴ちゃんに着てもらえたら、うれしいわよー」

「私は、着物って 自分がキリツてする感じで好きなんですよ」

「そう でも、もう、あの振袖も卒業よね 美鈴ちやんに着てもらえて、良かったわ」

「あのー お母さん 良ければ、私・・ 着てもらいたい娘居るんです 譲ってもらえませんか?」

「別に 良いわよ 美鈴ちゃんにと、思ったものだから 思うようにして まだ、役立つんだったら」

 その後、僕は、1時間程寝てしまったんだが、その間に、美鈴はもう着物を着換えていて、お母さんと、ちらし寿司を作っていたみたいで、キザミ穴子を混ぜ込んだ僕の好物だ。

「おいしい 去年はこれ無かったからな」と、僕はうなったら

「去年は、なんだか、せわしなかったからね でも、ちゃんと美鈴ちゃんに教えておいたから、いつでも、作ってもらいなさい」

「お母さん 私 まだ、同じもの作れるかどうか・・」

「大丈夫 そんなに難しいもんじゃぁないから・・」

 もう8時になろうかという時に、僕達は戻ってきたんだが、お父さんは、まだ、起きていた。美鈴が貰ってきた、ちらし寿司を頬張りながら

「明日 清音が来るんだろう? 豚バラの角煮をつくっておいたんだよ 食べさせてやろうと思ってな」

「お父さん 昼からよ 午前中は3人で、お稲荷さんにお詣りに行くんだからね」

「あー そうだったな ワシも行かんとダメかー?」

「そうよー みんなで行くんだからね とぼけないでよ」と、美鈴は念押ししていた。



 
 

 
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