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DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
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関東大会

 
前書き
Aqoursで野球小説書こうかと思ったけど果南がチートになりそうな気がする。 

 
第三者side

それから試合は順調に流れていき、最終回の攻防を迎えていた。

「莉愛!!明里に繋いでね!!」
「はい!!」

1アウトランナー一塁で打席に入る莉愛。マウンドに上がっているのは前の回から瑞姫の後を引き継いだ結月。二年生である彼女もこれといった決め球がなく前の回は苦戦していたが、下位打線から始まるこの回は先頭をサードゴロに打ち取った。だがその直後に四球を与えてしまい球審を務める真田は眉間にシワを寄せながら試合の流れを見定めている。

(投手が代わってから大味な試合になってしまったが……収穫も十分にある試合だった)

陽香の後を投げた瑞姫は進学後初マウンドとは思えないほどの落ち着いた投球で二回を完璧に抑えてみせた。ヒットこそなかったものの栞里の投球をアジャストしていい打球を放ち、守備にも安定感があった紗枝。そして彼の目の前で今打席に入っている少女。

(瑞姫はすぐにでも試合に出せる。紗枝と莉愛は経験を積ませれば新チームには間に合うだろう)

その他にも気になる少女たちが出てきてくれたことに彼は感謝していた。上級生たちには大きな進歩が見られなかったことに少し残念さをかんじてはいたものの、それを補って余るほどの収穫と言えたのだろう。

(明日からの試合で少しずつ経験を積ませていく。2試合目なら相手も力を落としてくるだろうし)

そんなことを考えていると莉愛は難しいボールに手を出してサードへのファールフライを放ち2アウト。打席には前の打席で結月からヒットを打っている明里。

(明里も変に気負わなければもっと上の打順を任せたっていいのに……まぁ仕方のないことだけど)

実力はあるが頭でっかちになりがちな彼女を見て頭を悩ませる。この試合は優愛から煽られたからかスイングに力が戻っているが、いざという時に序盤のような打撃をされると計算が難しくなってしまうのが彼女の難点。

その考えを知ってか知らずか明里は初球を捉えると打球は空高く舞い上がる。しかし、あらかじめ深めに守っていたセンターがこれを捕球しゲームセット。紅白戦は陽香と莉子が率いるチームが中盤の大量得点を生かし勝利を納めた。

「よし!!お疲れさん!!陽香、明日の試合もあるから今日はクールダウンして上がらせろ」
「わかりました」

整列が終わるや否やそう指示を残してバックネット裏の本部席に向かう真田。彼から指示を受けた陽香は全員に聞こえるように声を出す。

「ピッチャーとキャッチャーはキャッチボールしてからアイシング。他は伊織を中心にストレッチ始めておいて」
「「「「「はい!!」」」」」

すぐにそれぞれの動きを見せる少女たち。それを見ていた真田はノートを取りながら笑みを浮かべている。

「明日からの試合に向けてモチベーションも高いし、試合数自体も多いしな。できるだけ全員出してやるか」

球審として間近で選手たちの動きを見ていた彼はそのことを思い出しながら、明日からの試合の構想を練っていく。

「陽香に一試合完投させるか。次の日はリリーフで連投の練習もさせて……瑞姫を何回投げさせるかだな。まだ無理させるには早いか?」

今までも練習試合では多くのプランを持って挑んでいたが、イマイチ控え選手たちが力を発揮できず公式戦ではほぼ固定されたメンバーを使うことしかできなかった。そのため、これだけ悩みながら選手の起用ができることに彼は喜びを感じていた。

「莉愛と瑞姫を組ませてみたいけど、あのフォークを捕れるか?もう少ししてからでいいか?」

ブツブツと独り言を呟きながらそれぞれの試合のテーマを決めメンバーの選定を行っていく。時間を忘れてしまうほどのめり込んでいた作業は、日を跨ぐ寸前まで行われたのだった。















その頃、明宝学園を破り関東大会へと進出していた東英学園はその力を遺憾なく発揮していた。

「力入りすぎた!!リラックスしていけ!!」

マウンド上で余裕の表情を浮かべながら打者と対峙しているサウスポー。その少女の力を前に顔が青ざめている少女に対しベンチから声が飛ぶ。

「リラックスして力が抜けるなら誰も困らないけどね」

監督からの指示を受けて打者は一度構えを解き深呼吸をしていた。再度構えた彼女を見て後藤はニヤリと笑みを浮かべている。

(全く……余計なこと考えてるな、あいつ)

各都県の上位二校が出てくる関東大会。そこにプラスして開催地区の三位の高校も出場し計17校が参加する。東京都大会で優勝した東英は他の地区の二位の高校との試合になるが、そのためなのかエースの後藤は気が抜けている様子。大河原はそれを見て不満げな表情を見せながらサインを出した。

(カーブだ。外れていいぞ)
(おけまる)

投球に入ったエースを見てニヤリと笑みを浮かべる大河原。強い踏み込みと腕の振りから放たれた緩いボール。その軌道を見た瞬間、投じた少女と後ろを守る二遊間の少女たちの表情が変わった。

((甘い!!))
「やばっ」

真ん中に吸い込まれていくカーブ。緩い上に甘いそのボールを打者が見逃すはずもなくフルスイングで捉える。

「レフト!!後ろ!!」

打球が打ち上がった瞬間、まるでわかっていたかのようにすぐさま指示を出す大河原。だがレフトに入っている背番号17の選手はその声よりも早く後方へダッシュしており、落下点に入ったタイミングですぐさま振り向きボールを捕球していた。

「ナイスキャッチ」
「ありがとうございます」

センターの鈴川から声をかけられた彼女は帽子の唾に手を当てながら答える。内野に返すボールも綺麗な回転がかけられており、真っ直ぐな軌道で相手の胸元へと届く。

「理沙!!」
「!!」

投手へと返球されたタイミングで大河原が大きな声を出す。後藤は彼女に目をやると、先程打球が飛んだ方を指さしているのを見て決まりが悪そうな顔をしている。

千紗(チサ)!!ナイキャッチ!!」

手で大きな丸を作って答える背番号17。理沙はそれを見てから大河原の方へと向き直る。

(瞳の奴……わざとカーブを要求したな?)

ベンチから見ていた町田はすぐに大河原の意図に気が付いていた。試合は五回の表で点差は12。コールドがほぼ確定している試合であるため、後藤の集中力が切れ始めているのがわかったから、それを引き締めるために抜けると真ん中に集まりやすいそのボールを要求し、あえて大きな当たりを打たせた。もちろんアウトになることが前提だが、多少点を失ってもいいくらいの気持ちがあったのだろう、とにかくエースの気持ちを引き締めさせることを優先した要求だった。

(レフトに打たせたのがまたイヤらしいよな、理沙の奴めっちゃ気にしてるし)

この試合が初出場になる少女のところにあえて難しい当たりを打たせてなおかつアウトにしてもらう。ただ、後藤に対してはそれだけではないようではあるが……

(あと二人三振に仕留めてやる)

前の回から少しずつ落ち始めていた闘志がここに来て最高潮まで上がっているのが目に見えてわかる。大河原は狙い通りになる単純な彼女を見て笑みを浮かべながらサインを次のボールを要求する。

「ストライク!!」

スピード、コントロール、キレ、全てが求めていた通りのボールを受けた左手に痺れが残る。それを投じた少女も手応えを感じていたようで口元を緩めていた。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
長かった紅白戦も終了です。練習試合は端所りながら書こうかなと思ってるので気長に楽しんでください。 
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