| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

アパッチ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「大変やさかい」
「それでやな」
「そやねん、もうお昼も夜も」
「飯の種があれば」
「やっていかんとあかんさかい」
「それでやな」
「そうやってこ」
 こう夫に言った。
「これからは」
「わかった、まずは飯を食って」
「おうどんの材料も買う」
「そうしていこな」
 こう話してだった。
 夫婦は夜に大阪城の方に行った、すると。
 鉄くずがこれでもかとあった、明日川はその鉄くず達を見て妻に言った。
「これをやな」
「そや、持って行ってな」
「それで売るんやな」
「売る場所はもうあるし」
「そこで売ってやな」
「そしてや」
 そのうえでというのだ。
「お金儲けるねん」
「それと米と交換もか」
「してるねん、ほなな」
 妻は手に金槌やらを出して言った。
「警察に気をつけて」
「ああ、かっぱらいになるか」
「実は。他にもやってる人おるけどな」
「捕まらん様にしてか」
「稼ごうな」
「犯罪してでも食うていかなあかんか」
 明日川も道具を出して言った、妻に持たされたものだ。
「今は」
「人様のもん盗む訳でも人殺しでもないで」
「それやとか」
「しゃあないやろ」
 今はとだ、妻も話した。
「そやさかい」
「ここはか」
「そや、ここは」
 本当にと言うのあった。
「こうするしかないわ」
「そうなんやな」
「おうどん屋さん再開する為にも」
 是非にと言うのだった。
「頼むで」
「ほなな」
 こう話してだった。
 二人で鉄くずを手に入れていった、だが。
 その間周りにも鉄くずを手に入れている者達がいた、妻は必死に鉄くずを手に入れながらそのうえで明日川に話した。
「周りは気をつけて」
「警官が来るとか」
「急いで逃げるで」
「かっぱりやからやな」
「そやねん、ただ今も警察も人おらんから」
「復員してる最中やな」
「あんたと一緒でな」
 戦争に出ていた者が戻っている最中でというのだ。
「人おらんし警察の中もごたごたしてるらしい」
「日本全体がそやな」
「そうやさかいな」
 その為にというのだ。
「警察もそんなんや」
「そやねんな」
「そやから今のところはあまり来んわ、ただ来たら」
「逃げるんやな」
「鉄くず持って、ほな」
 そうしてというのだ。
「兎に角今は」
「鉄くず集めるんやな」
「そうしていこ」
 こう言ってだった。
 妻が夫に教えて鉄くずを集めた、持てるだけ持つと夜の闇に紛れて家に帰った。そうして次の日だった。 
 その鉄くずを店で売って交換もしてだった。
 金と米他の食べものや調味料も手に入れた、咲子は昼飯の闇市の横流しで作った粥を食べつつ言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧