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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第二百六十七話

2月中旬早朝。

「さて話を聞かせてもらおうか」

ランニングがてらうちに寄って、いきなり話がしたいと押しかけられた。

あいては阿良々木火憐。

ファイヤーシスターズの実戦担当だ。

「三日前、撫子ちゃんを呪った男子が自首してきた。
呪い返しの呪いを解いてほしいってな」

「虫のいいはなしだね」

「ああ。だが貝木の被害者に変わりはねぇ。そいつをぶん殴ったあと、気功を使って蛇を無理やり引っ剥がしたよ」

蛇切縄を引き剥がすほどの干渉力か。

恐ろしい成長速度だな。

「その時、その男子が気になる事を言っててな。貝木を仕留め損ねた、織斑一夏に邪魔された。織斑一夏は貝木と協力関係にあるってね」

殺気の乗った視線が俺を真っ直ぐに貫く。

たぶんNOって言っても見破られるだろうなぁ。

わざとらしくホールドアップ。

「わかったわかった。白状しますよ。俺は貝木とつながっている。
半年前もファイヤーシスターズの動向を時折リークしていた」

次の瞬間、目の前に殺人級の蹴りが飛んできた。

槍を突き出すような鋭い蹴りだ。

憂さ晴らしも兼ねた軽いパフォーマンスだろう。

わざわざ一回立ち上がった上で大きな予備動作と共に放っているので当然障壁で防げる。

予備動作が大きかっただけあり、その威力は絶大だ。

もう少しで音速を超えていただろうな。

「動向をリークしていたのは貝木にこの街から手を引かせるため。
追手がすぐそこまで迫っているぞ、ってね。
それでも引かないものだから俺はあなた達ファイヤーシスターズと暦さんを差し向けた」

障壁を消す。

「それに囲い火蜂を治療したのも俺だったでしょ?
俺が貝木側だったら貴女を治療するはずないじゃない」

貝木が本物かどうか調べておきたいという気持ちも無くはなかったがな。

「一応言っておくけど貝木がこの街に来たのは俺が呼んだからじゃない。
いやもしかしたら俺が居たことも要因かもしれないけど、主目的としては駿河と直木の顔を見に来たんだろうね」

彼女がゆっくりと足を引き、ソファに再び腰掛ける。

「なんで、貝木とつながっているんだ」

「善と悪。秩序と混沌。悪と秩序は矛盾せず、善と混沌も矛盾しない。
秩序の側に悪があるなら、秩序の側の善か混沌の側の悪をぶつけるしかない」

「わかりやすく言ってくれ」

「俺は誰でしょーか?」

そう問いかけると火憐さんは質問の意味がわからないという顔をした。

「織斑一夏?」

結果出てきたのは、一番単純な答え。

そして正解でもある答えだ。

「その通り。織斑。かのブリュンヒルデ織斑千冬の弟。
全ての女性の旗頭にして世界最強の女性。
その完全無欠なブリュンヒルデの唯一無二の欠点だ。
罪なき一般市民は俺の事なぞ気にも止めない。
でも政治団体は違う。
そう政治団体。この国の秩序に属する一部の者たちは何が何でも俺を葬り去りたいんだよ。
肉体どころか俺が存在したという事実を消すために戸籍さえも。
もちろん俺だってやられっぱなしじゃいたくない。
だけど俺は見ての通りただの子供だ。
だから大人を頼ったのさ。貝木泥舟という、最高最悪の詐欺師にね。
毒を以て毒を制す。基本中の基本だよ?」

今回の中学生をターゲットにした事件とは全くの無関係である事を事細かに説明して納得してもらった。

が、火憐さんとしては悪に対抗するために悪を使う事には納得できていないようだ。

彼女が帰ったあと、箒が階段を降りてきた。

「何の用だったんだ?」

「千石を呪ったアホが居ただろ? そいつが自首してきたってさ。
そんでそのアホが殺人未遂してたから止めに入ったんだが、その被害者が貝木だったからチクったらしい」

「その、千石を呪ったという男は馬鹿なのか?」

「このあいだ俺が邪魔したじてんで蛇切縄に胸辺りまで巻き付かれたからな。
それに耐えきれなくなって自首したんだろ。
まぁ人を呪わば穴2つ。俺としてはザマァ以外の感想はないな」

「同感だ。流石に死ねとまでは思わんが友人を呪った相手が同じ目にあったというのは多少スッとするな。
それでも私はその男を許す気は無いがな」

千石が呪われた時静かにキレてたもんなこいつ。

「まぁいい。朝食にしよう一夏」

「リクエストは?」

「任せる」







箒とのんびりしていると唐突に暦さんから電話が入った。

「もしもし暦さん? そっちからかけてくるなんて珍しいね」

sound onlyの表示されたホロウィンドウに話しかける。

『一晩でいいから火憐と月日と育を預かってくれないか?』

「なるほどそうきたか」

ということは憑物語は今日か。

別のホロウィンドウでコタンジェントの持っている携帯電話の位置を特定すると既にこの街にいる。

ふむ。一応用意はしてあるし問題ないな。

「本当に申し訳ないけどその頼みは聞けない」

『…理由は?』

電話越しで伝わるほどひっくいドスの利いた声で言われた。

暦さんからの信頼は地に落ちている事だろう。

「暦さんがそうしようとしているのと全く同じ理由さ。
月日をこっちに預けたいってことは影縫さんとコタンジェントが来るってことだろ?
俺は暦さん以上に吸血鬼の力を自由意志で使っているし、そもそも影縫さんと奏には因縁がある。
月日以上に、俺は今この街に居られなくなったと言うわけだ」

加えて手織正弦も来るとなればなおさら。

俺は臥煙派の外部協力者という立場で手出し無用の通達が出ているが手織正弦には関係ない。

あと一応箒は伏見稲荷所属とお触れが出ていると臥煙が言っていた。

『そうか…』

「それより俺は暦さんが相談してくれなかった事を残念に思うよ。
お前が、いやお前らが言うなという文句は受け付けないから悪しからず」

『本当に君達の言えたことじゃないね』

「とりあえず駿河の家にでも預けるといい。俺が街に居られない今、暦さんに次ぐ実力者は駿河だけだ。
アイツには籠手を貸しっぱなしだからいざという時は頼れる筈だ。
こっちから連絡しとこうか?」

『ああ。よろしく頼む』

「心得た。じゃぁ今から連絡するよ」

『ありがとう』

駿河の部屋はつい先日片付けに行ったから問題なかろう。

通話が切れたのでそのまま駿河にコール。

『神原駿河だ! 織斑一夏のエロ奴隷だ!』

「うるせぇよブチ犯すぞ」

『それは願ってもないことだな!』

「話が進まんから本題だ。暦さんのところの女子を一晩預かって欲しいそうだ」

『ほう。育先輩とファイヤーシスターズをか?』

「そうだ。今街にいる人とは何が何でも会わせられないそうだ。
その人と暦さんが合う間、お前に護衛してほしい。
そのためであれば籠手の使用を許可する」

『私は問題ないが、御主人様がやった方が確実じゃないのか?』

「いやー。俺も、というか奏もその人とは浅からぬ因縁があってな。
俺達も街に居られないんだわ。
それに少し国外でやることがあるからこの機に済ませようかとね」

『うむ。委細承知。では報酬は一晩御主人様を好きにする権利でいいだろうか!』

「ふざけんな。美少女3人泊まらせる時点でお前にはプラスだろうが」

『むぅ』

駿河に承諾させた後、俺と箒は神社の地下のラボのその更に下の地底湖港に来ていた。

この街から一旦離れるためだ。

俺としては手織正弦には会ってみたいし、あの世がどうなっているのか知りたいという気持ちがある。

そうすればサイコフレーム関連の理解がより深まるはずだ。

だが面倒なことになる可能性も捨てきれないので会わないほうがいいだろう。

故に、俺は好奇心か身の安全と今後の保険を天秤にかけ後者を選択した。

「狭いかもしれんが我慢してくれ」

「それは構わんが…本当にコレで行くのか?」

「そうだけど?」

箒が怪訝な顔で見つめる先でプカプカと浮いているのは一機の戦闘機だ。

F4EJ改。50年にわたって日本の空を守り続けた機体だ。

2020年に全機退役している。

これはそのうちの1機だったのだろう。全くどこから持ってきたのやら。

「もう一度聞くぞ。本当にこれで行くのか?海の中を?」

「いやこれ中身全然ちがうから。ちゃんと海空宙で動くから。理論上は」

もちろん旧日本軍残党が保有していたまんまではない。

中身は現行の戦闘機を遥かに凌駕する物だ。

というか戦闘機の形をしたISと言ってもいい。

改良は主にOTM(Over Technology of Macross)を主軸としているが変形機構はない。

変形する意味ないし。

しかし可変機構がない分スペースに余裕があるため戦闘機としての性能はセカンドステージより高いし色々と積んでいる。

「本当に大丈夫なんだろうな」

「大丈夫だって。ちゃんと惑星上でのフォールド実験は成功してるから」

飛行服変わりのムーバルスーツを来て、複座のコックピットに乗り込む。

「旅程としては地底湖から海に出て一旦セルピニシア近海にフォールド。その後トレイターに乗り換えて目的地に。OK?」

「ん。それなら私はセルピニシアに残ろう」

「よし。じゃぁ潜航開始」

キャノピーのガラス越しに、水がせり上がる。

完全に海中に没したのでトレイター用の出口から海に出る。

暫く潜航したまま進んでから、セルピニシア近海にフォールド。

なぜ直接フォールドしないかと言えば、誤差が生まれる可能性を捨てきれないからである。

フォールドクォーツがあるとはいえ、念には念をというやつだ。

浮上してトレイターが停泊している地上港に着岸する。

「じゃぁいったんここで」

「ああ。スカウト頑張ってこい。一夏」

お互いパレードで変装し、俺は近くのトレイターへ、箒は迎えに来ていたロジコマの上に乗って地上施設へ。

タチコマじゃなくわざロジコマにしたのはオプション切り替えが可能で建設補助重機兼警備用兼治安維持用に作ったからだ。

いざという時は盾やバリケード代わりにする予定だった。

しかしロリsにタチコマの画像を見せるとタチコマの方がかわいいと言っていた。

確かにロジコマはタチコマより物々しい機体だ。

難民受け入れを開始したら増産して治安維持用に使う計画だったが、少し修正してタチコマを作る事にした。

箒のケツを見送ってトレイターのブリッジに向かうと、なんか不機嫌そうな束さんが艦長席に座っていた。

「私あの子きらい」

と今からスカウトしにいく人物に思うところがあるらしい束さん。

「面白い人だから会ってみようよ。ね?」

「いっ君がそう言うなら…」

ムッとしていた束さんの膝の上に乗る。

家畜のゴーストを憑依させて更に大きくなった体に包まれる。

「トレイター、潜航開始!」

束さんの一声でトレイターが動き出す。

セルピニシア経由ではるばる向かった先は中東だ。

「こんにちは羽川さん。こんな所で奇遇ですね」

崩れかけた廃墟の一室。

焼け落ちた学習塾跡の廃墟よりもひどい有様のそこに、彼女は身を潜めていた。

「いや、絶対に奇遇ではないでしょ。ここがどこだと思ってるの一夏くん」

「どこって…紛争地帯?」

やや内陸に位置する紛争地帯。

トレイターから光学迷彩状態のカンヘルで近くまで飛んできて、そこからは徒歩だ。

羽川翼。それが今回スカウトする人材だ。

彼女は直江津高校の制服に身を包みながら、ゴツいベルトに二丁拳銃を差している。

いつぞや渡した物だろう。

「そう。紛争地帯。学校はどうしたのよ?
君はまだ中学生なんだよ?」

「学校ですか? 今日は休日ですよ?」

「知ってるわ。でもここに来るのに3日はかかるはずよ?」

「俺たちにその時間計算は適用されませんよ。
ISやその技術を応用した艦船がありますから」

「確かに愚問だったわ。それで?一夏くんは休日に不法入国までして私に何の用なのかな?」

「不法入国は貴方も同じでしょう。
まぁ、本題です。取引しませんか?」

「取引?」

「はい取引です」

「一応、聞くだけ聞こうかな」

「では…ちょっとISと怪異に関する実験に付き合って、あと束さんに時々協力してやってください。
見返りはどこの国も所有権を持っていないしIS憲章に抵触しない最新型コアとその外装です」

「随分な大盤振る舞いだね。でもISと怪異に関する実験? 相反するように思えるんだけど?」

「普通はそうですね。数世紀は先の技術と呼ばれるISと今は忘れ去られた怪異は相反するように見える」

「相反するどころか、ISは怪異を脅かすんじゃない?」

「ええ、そうですね…。でも、ISは全てのオカルトを否定する訳じゃない」

「続けて」

「もし、魔法の発動を補助する機械があったなら?」

「まさか…!?」

「ええ、そうです。ISコアには魔法や魔術の発動を根源的原理から補助する機能があります。
白騎士よりも前に作られた、世間では誰も知らない始まりのコアの時からすでに」

「じゃぁ、ISの適正っていうのは…」

「いえ、IS自体は魔法適切が無くても乗れますよ。
ただワンオフアビリティーの発現には少なからず関わりますがね」

「それで?」

「はい。俺が知る限り…いえ、俺が関わったコアの内の五つには怪異やそれに類する物を憑依させています。
俺が貴方に協力を要請したいのは、貴方の内に眠る二つの怪異をISコアに移せないかということに加え、人は自身の他の人格を式神として制御できるのか、という実験です」

過去に蹴りをつけた事を掘り返すような真似だとはわかっているが、自身の感情を切り離し怪異化させられる人間なんぞ彼女以外に知らない。

「実験だけじゃない。貴方は天才だ。俺とは違う本物の天才…
ベクトルは違えど束さんと解り合える」

「束博士と?」

「そうです。それに束さんが所有する潜水艦にも同乗できるかもしれませんよ?」

「……………………」

「ISと大型潜水艦。忍野を探す貴方には、喉から手が出るほど欲しいのでは?」

化物語でも猫物語でもなく憑物語で持ちかけるからこそ、彼女に首を縦に振らせられるのだ。

「………わかった。協力します」

「じゃ、行こうか羽川さん」

「行くって何処に?」

「IS専用大型潜行空母伊号四〇〇型改〈初〉トレイター。我々の潜水艦にですよ」 
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