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おっちょこちょいのかよちゃん

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160 正しき仏法の説き手、玄奘

 
前書き
《前回》
 アブー・アブドゥッラーに苦戦するさり達に清正という男が助太刀に現れる。そして蘇我氏の稲目と馬子の念仏を上手く攻略できずにいたかよ子は杖を取られかけられる。だが、一人の僧侶がかよ子を防御する。その僧侶は一体・・・!? 

 
 かよ子はその場に現れた一人の僧侶に目を向ける。
「あ、あの人は・・・!?」
「貴様・・・、平和主義の人間か?」
「その通りです。貴方達の思う仏法はまさに外道。正しき仏の使い道ではない」
 僧侶は持っていた杖で地面を突く。
「本当の仏法と言う物を知りなさい!」
「な、何を舐めたマネを!我々の仏法こそ完璧なのだ!!南無阿弥陀仏・・・」
 稲目と馬子は結界を張って己を護ろうとしたが、結界が出せなかった。
「貴方達は唐の国、いえ、貴方達が『死ぬ前』の頃は隋と言いましたか、そこから教わった仏法を更に間違えて解釈しただけ。私は仏の生まれた地、天竺(てんじく)まで言って本当の仏法とは何かを学んできたのです。貴方達が結界を張れなかったのは私の出す仏法の能力(ちから)に対抗する事ができなかった、つまり正しい仏法の使い方ではないのです」
 僧侶はかよ子達の方に目を向けた。
「貴女ですね、杖の所有者は?今、この二人を倒す好機です!」
「うん!」
 かよ子は杖から火薬を出現させて攻撃した。しかし、弾かれる。
「あれ?」
「貴女は今、この二人を狙って撃ちましたね?それでは効果がありません。彼らの持つ道具を狙わなければ!」
「あ、そうだった!!」
 かよ子はおっちょこちょいをやってしまったと思いながらも、稲目と馬子が持つ能力を行使する道具を火薬を投げて破壊した。機械が粉々に砕けた。
「し、しまった!!」
「父上、ここは退却を!!南無阿弥・・・」
「させません!!」
 僧侶は数珠を取り出した。稲目と馬子は金縛りにあったように動けなくなる。
(今だ!!)
 かよ子はそう思い、火薬を馬子と稲目の方に投げた。

 姿を消して攻防するアブー・アブドゥッラーに苦戦していたさり達は清正の加勢によって形成逆転の好機を得た。清正がアブー・アブドゥッラーの機械目掛けて槍を投げた。
「そんな手が通じるか・・・」
 アブー・アブドゥッラーは姿を消して撹乱を図った。しかし、機械がバキッと壊れる音がした。
「何!?」
「我の空間の槍は姿を消しても避ける事はできない。だから貴様の能力でくらます事ができなかったのだ」
 そして清正はもう一本槍を出して地面に突き刺した。
「これは時の槍。これでお前は動けぬ。今だ!お主ら!」
「よっしゃ!」
「うん!」
 さりは護符で出したレーザーガンを撃ち尾藤はボールを蹴り、もと子は緑に変化した玉で熱風を出して攻撃した。そしてさきこのルビーが光る。自分の「時間」を止められたアブー・アブドゥッラーは動けぬままやられて、光となり消滅した。
「これでやっつけられたのね・・・」
「いかにも。お主ら、よくぞ健闘された」
「ああ、そうやな」
 さりは以前戦ったネロよりも強敵だったと個人的に感想した。

 かよ子は爆弾攻撃で稲目と馬子を圧倒する。以前、彼らに杖を奪われた事の恨みもあって3、4発も投げた。
「おおおーーー!!」
 稲目も、馬子は爆撃に苦しむ。そして二人は光となって消滅した。
「やっつけた・・・」
「お疲れ様です。よくやりましたね、『杖の所有者』」
「あ、はい、あ、みんなが・・・」
 かよ子は稲目と馬子の攻撃で動けない皆を見る。
「大丈夫です。私が解きましょう」
 僧侶は杖を振り回した。その時、次郎長達は起き上がる事ができ、大野達は普通に動けるようになり、友蔵は何があったとばかりに起き上がった。
「は、儂はどうなったんじゃ!?まる子、まる子お〜!大丈夫か!?」
「大丈夫だよ、おじいちゃん、あの人が助けてくれたんだよ」
「おお!?」
 友蔵は僧侶を見た。
「ありがとうございます!貴方はもしや、仏様ですか?これはどうも、ありがたい、ありがたい。これで儂も孫も命が助かりました。どうもありがとうございます、ありがとうございます・・・」
 僧侶は大袈裟に感謝する友蔵に苦笑した。
「いえ、私は仏ではなく、玄奘(げんじょう)と言う者です」
「そうか、げんじょうという仏様であったか!」
 友蔵は勘違いし続けた。
「それより、あの二人はどうなったんじゃ?」
「それなら、この杖の所有者が成敗されました」
「いや、成敗だなんて・・・。でも玄奘さんがいなきゃ勝てなかったよ・・・」
 かよ子は謙虚に答えた。
「そうだ、玄奘さん、正しい仏法を学んだってどういう事?」
 玄奘は説明を始めた。
「そうですね、私は唐の国にいたのですが、私は自分が学ぶ仏法が本当に正しいのかと思い、国の法を犯して出国したのです」
「トー?どこじゃ?」
 友蔵が聞いた。
「今の中国ですよ」
 椎名が答える。
「私は仏の生まれた地と言われる天竺へ向かい、本当の仏法を学ぼうとしたのです。しかし、その道は険しく、幾度も死にかける目に遭いました」
「テンジク?なんじゃ、そんな国どこにあるんじゃ?」
「おじいさん、天竺ってのは今のインドの事ですよ」
 椎名は再び解説した。
「インド?なら、飛行機や電車を使えば楽に行けるではないか!」
「あのねえ、玄奘が生きてた頃は1400年も前の事ですよ。日本は飛鳥時代です。そんな時代に電車も飛行機もある訳ないでしょうが!おじいさん、少し黙っててくれますか?」
 椎名は友蔵に呆れるように怒った。玄奘は話を続ける。
「そして長い歳月を経てようやく天竺に到着する事ができ、私はその地の法典を読み、これが本当の仏法だと確信する事ができました。それらを祖国に持ち帰り、広めようと思い、唐に戻る決心をつけたのです」
「でも法を犯して国を出たから何か処罰とかはなかったの?」
「ええ、私が帰国した頃には唐の情勢は変わっていましたので、寧ろその情報の編纂(へんさん)を頼まれました」
「そっか・・・。だから正しい仏法の能力(ちから)を使って馬子や稲目達を倒せたんだね」
「いえ、私は支援をしたまで。実際に倒したのは杖の所有者、貴女ですよ」
「おお、かよちゃん、やるねえ〜」
「オイラ、こんな凄いお坊さんに助けて貰って良かったと思うブー!そうでなきゃオイラ達全滅だったブー!」
 ブー太郎は玄奘を称賛した。
「ありがとうございます」

 その頃、紂王の屋敷では妲己が機械の不具合が起きているという情報を得ていた。
「紂王様、赤軍とやらから支給された機械に所々不具合が発生しているとか」
「そうだな。それに幾人かこちらの世界の人間が倒されておる。決してこの地には入らせないように気をつけよ」
「はい」
 妲己はいつ敵が襲撃し、「あの少年」を取り返しに来るか、懸念しなければならなかった。しかし、仮に奪還できたとしてもその少年が有り難く思うかは不明だが・・・。 
 

 
後書き
次回は・・・
「羽根の強化」
 藤木を奪還する為に先へ進もうとするかよ子達に対して玄奘はかよ子の羽根を見てある事を施そうとする。そしてとある屋敷では「ある少年」は不自由なく楽しい生活を送っていたのであった・・・!! 
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