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車高があっても

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第一章

                車高があっても
 その戦車、M4シャーマンを見てアメリカ軍の士官達の何人かはどうかという顔になってそれで言った。
「また高いな」
「えらく車高の高い戦車だな」
「こんな高いとすぐに見えるな」
「ああ、丸見えだろ」
「隠れられないだろ」
「ここまで高いとな」
 こう言うのだった。
「目立ってな」
「狙い撃ちにされないか」
「大丈夫かこの戦車」
「使えるのか」
「役に立つのか」
「走る棺桶にならないか」
「乗ってもいけるか」 
 こう言うのだった、しかし。
 ジョージ=パットンはこのM4が実際に動くのを確かめて笑って言った。
「よし、これはいいな」
「戦場に投入していいですか」
「このシャーマンは」
「そうしてもいいですか」
「これが一番だ」
 このシャーマンがというのだ。
「まさにな」
「車高高いですが」
「それもかなり」
「それで狙い撃ちにされそうですが」
「隠れるのもかなり難しいですが」
「それでもですか」
「そうだ、車高が高くてもな」 
 それでもというのだ。
「こいつはいいな、だからな」
「使っていきますか」
「そうしますか」
「このシャーマンを」
「こんないい戦車ないぞ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「使っていきますね」
「そうしていきますね」
「主力としてな」
 パットンはその男らしさが大きく前に出た威勢のいい顔で言った、そうしてだった。
 彼だけでなく他の多くの将軍達もシャーマンを主力で使っていくことにした、だがそれでも現場の者達はだった。
 その車高の高さから懸念して言った。
「絶対に目立つな」
「的になって仕方ないだろ」
「隠れにくいし」
「これで大丈夫か?」
「これが主力でも」
「戦争に勝てるのか」
 多くの者が懸念していた、しかし。
 シャーマンは大量に造られていった、それまでの戦車の製造技術の蓄積と造りやすさもありシャーマンは恐ろしい量が造られてだった。
 戦場に投入された、その数にはアメリカ軍の将兵達も驚いた。
「多いな」
「これだけ多いと凄いな」
「これだけの数だとな」
「どんな軍隊にも勝てるな」
「数は力だからな」
「この数は凄いぞ」
「本当にな」
 まずはその数に驚いた、しかし。
 それでもだ、やはりだった。
「車高がな」
「他の国の戦車と比べてもな」
「滅茶苦茶高いからな」
「狙い撃ちになって苦労しそうだな」
「特に車体の正面な」
「ここ狙われたら怖いな」
「どうなんだろうな」
 こうした話をしていた、そうして前線にシャーマンを出して戦ったが。
 シャーマンは長く動くことが出来た、燃費がよくそれだけ多く走ることが出来た。それはドイツ軍相手でも日本軍やイタリア軍相手でもだった。
「長く動けるっていいな」
「そうだな」
「それだけで違うな」
「しかも故障も少ないしな」
「ドイツ軍の戦車ってすぐに故障するのにな」
「そうなのにな」
「これがな」
「シャーマンは故障少ないしな」
 それでというのだ。 
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