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DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
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尽きない悩みの種

 
前書き
最近気付きましたが、女子野球は5回7点差コールドだったんですね……てっきり10点差コールドだと思ってました…… 

 
太陽が少しずつ下がり始めた夕暮れ時。グラウンドではユニフォーム姿の少女たちが声を出しながらボールを追いかけていた。

「ボールバックから!!行くよ!!」

莉子が声を出すと守備についている全員がそれに負けない声で返答する。それを聞いてから、ノッカーの陽香がサードから順番にボールを出していく。

「ふぇぇ……やっぱり先輩たちすごいね」

それをグラウンドの離れたところで見ている莉愛がそんな声を出す。他の一年生たちも声にこそ出さないものの、皆同じことを思っていた。

「そこ!!無駄話してないでやる!!」
「「「「「はい!!」」」」」

今日の教育係の先輩に注意され、慌ててボールを集める莉愛たち。今日はバットを振ってみようということで、Tバッティングを彼女たちは行っていた。

「ただの素振りにしないところが監督らしいよね」
「あの人が素振り嫌いだっただけでしょ?」

瑞姫と紗枝は今日も姿を見せていない監督に不満げな様子で話しているが、その理由がわかっているだけに文句が言えないこともわかっており、何とも言えない歯切れの悪い会話になっていた。

「ウギャッ」

専用の台にボールを乗せて、それを目の前のネットに向かって打つ練習。見ている分には簡単そうなのに、やってみると意外と打てないことがわかった一年生たちは、時おり台を叩いた痛みに顔を歪めていた。

「ボール見て打たないと怪我しちゃうよ」
「ちゃんと見てるもん!!……たぶん」

経験者の瑞姫は難なく打っていることに悔しそうな表情で答える莉愛。てっきり自分も同じようにできると思っていただけに、悔しさを滲み出させていた。
















(う~ん……)

グラウンドの外……選手たちからは見えないような位置で彼女たちの様子を見守っている人影。一瞬不審者に見えなくはないが、よく見るとそれは監督である真田だった。

(まだ一年生でバッティングが良さそうな奴はいないかなぁ……)

普通ならば近くでしっかりと選手たちの様子を見た方がいいのだろうが、今日はあえて選手たちに気付かれないように様子を見守っている真田。それは彼なりの考えがあってのことなのだろうが、どうしても不審者にしか見えないのが難点であった。

(やっぱり春から一年生を使うのは無理だとして……夏までの練習試合で試してみたいけど……)

先日のミーティングを思い出し、余計なことを言ったと思った真田。ノックに気合いが入っている姿を見ると、先輩たちのやる気を引き出すことには成功したが、逆を言えば春の大会直後にいきなり一年生を起用すれば、たちまち活気が下がってしまう可能性すらあることに気が付いていたのだ。

(使うタイミングも考えながら経験を積ませて戦力になる一年生を見つけなきゃならない……正直面倒くさいことになったな……)

やってしまったことを悔いていても意味はないが、それでも頭を使わなければならないことがすごく嫌だと言うのが表情から見て取れる。

プルルルル

「チッ……またかよ」

隣に置いておいたスマホが鳴り、誰からの電話か確認するとその表情は怒りへと変わっていた。しばらく出るか迷った後、なかなか切れないそれにタメ息をついてから出る。

「なんだよ……いつもいつもこの大事な時間帯に連絡してくるなよ」
















「とぉっ!!」

二塁ベース際の強いゴロ。それを逆シングルで掴んだ優愛はジャンピングスローで一塁に投じる。

「あぁ……」

かっこよく体を反転させながら投じたそれは、葉月の頭上を大きく越えていき、送球を受けようとしていた彼女はジャンプすることもなくそれを見送る。

「優愛ちゃんしっかり」
「えぇ!!葉月もジャンプしてよ!!」
「だって届かないもん」

ふわっとしたトーンで注意する葉月と捕球するためのチャレンジすらしてくれなかったことに不満げな優愛。この二人のやり取りを見ていた面々は、またかとタメ息を漏らした。

「優愛をセカンドに置かなきゃいけない現状を何とかしてほしい……」
「ハマれば全国でもトップクラスの二塁手なのにな……」

ノッカーの陽香とキャッチャーの莉子はチームの中心人物であるために余計に頭を抱えざるを得ない。二人とも実力はトップクラスなのに、自由すぎる性格のせいか、時折とんでもないミスを犯してしまうのが問題なのだ。

「せめてニ遊間で守備だけでもなんとかなる奴が出てくれば……」
「そうだね。夏までに出てくればいいね」

キャプテンの大きなタメ息を適当にあしらう莉子。彼女の抱く希望が厳しいものであることがわかっているならこそ、そんな素っ気ない返答になってしまうのだ。

(監督はああ言ったが、戦力になるなら一年生でも何でも使いたいが……)

グラウンドの隅で打撃練習に取り組んでいる後輩たちに目をやる。ほとんどが未経験……何人かは実績もある選手もいるが、それでも経験不足なのは否めない。

(あと3ヶ月……しかも再来週には恐らく東英との試合が待っている……何とかならないものだろうか……)

強豪校と称されているにも関わらず最後の最後で勝てないことに不満と不安が込み上げてくる。それが顔に出ている彼女を見て、莉子もまた深いタメ息をついていた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
本当は二回戦以降をやろうかと思ってましたが、主人公が出てくる場面がないとつまんないのでちょっとだけ日常を出してみました。
早めに夏に向かっていくシーンになればいいなぁ…… 
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