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頼りない犬が護って

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第一章

                頼りない犬が護って
 平岡博夫は黒髪をやや短くしている青年だ、地元の企業で働いていて背は一七〇位で痩せて穏やかな顔立ちをしている。
 両親と共に暮らしているが両親と共に生きものが好きで数匹のハスキーと蜥蜴や亀、蛇に蛙やイモリを飼っている。
 その生きもの達が珍しくてだ。
「また観に来たよ」
「観ていい?」
「ああ、けれど触らないでくれよ」 
 平岡は家に来た地元の子供達に笑顔で話した。
「噛まれたりするしな」
「蛇もいるしね」
「だからだよね」
「その蛇毒はないけれどな」
 見ればアオダイショウだ、ケースの中にいる。
「やっぱり噛まれたら痛いしな」
「だからだよね」
「ケースの中からは出さないで」
「触ったら駄目だね」
「観てるだけならいいよ」
 子供達に笑顔で言ってだった。
 子供達が家の生きもの達を観るのもよしとした、そして。
 子供達は家のハスキー達とも遊んだ、三匹いるが彼等は雄の三兄弟で黒と白の毛並みで名前をジョン、ダンテ、カルマといった。
 三匹共大人しく人懐っこい性格で番犬だが人に吠えず子供達とも楽しく遊んでいる、平岡はそんな彼等を見て両親に話した。
「三匹共あまりね」
「番犬としてはっていうんだな」
「あまり役に立っていないっていうのね」
「うん、吠えないし」 
 人が来てもというのだ。
「あんまりにも人懐っこいから」
「まあそれでも犬はいるだけでな」
「威圧感あるからね」
「それだけで番犬になるぞ」
「だからいいでしょ」
「そうなるか、それにハスキーで」
 大型で狼によく似た姿でというのだ。
「三匹もいるから」
「いいだろ」
「番犬として充分よ」
「それもそうかな」
 両親の言葉に頷いてだった。
 広岡は納得した、だが。
 ある日両親が旅行に行った時にだ。
 いつも家のペット達を観て犬達と遊んでいる近所の子供達の中に見慣れない子供がいることに気付いて。 
 子供は女の子で黒髪を左右で赤いリボンで縛って垂らしている、小柄であどけない楚々とした顔立ちの娘だ。
 その娘を見てだ、彼は子供達に尋ねた。
「この子誰?」
「知らないよ」
「気付いたらいたんだ」
「お兄さんの親戚じゃないの?」
「違うの?」
「いや、僕も知らないよ」
 本当に知らないのでこう答えた。
「誰かな」
「わからないよ、僕も」
「一体何処の誰か」
「僕達の学校にもいないよ」
「ちょっとね」
「誰なのかな」
 平岡は考えてもわからなかった、それでだった。
 近所で親しくもらっている老人と相談すると老人はこう言った、
「最近この辺りに派手な化粧と服の若い女がこの娘連れて歩いてたぞ」
「派手な?」
「ああ、変な店にいる感じのな」
 そうしたというのだ。
「そんな女がその娘連れていたぞ」
「そうだったんですか」
「人相悪い女だった、その娘もやけに怒鳴ってた」
「じゃあまさか」
「その娘捨てたのかもな」
「育児放棄ですか」
「あんたの家に子供一杯いるから託児所とでも思ったんだろ」
 それでというのだ。 
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