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イベリス

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第十七話 裏側のことその七

「仏様でもないとね」
「救われないの」
「そうかも知れないわ」
「だから餓鬼にはならないことね」
「絶対にね、だから気をつけてね」
「そうするわ、餓鬼にならない為には」
 どうすべきかともだ、咲は考えた。
「どうすればいいかしら」
「毎日真面目に生きて勉強して働いて」
 そうしてとだ、母は咲に話した。
「人を見て思いやりや優しさをね」
「持つことなの」
「それで人や本や世の中を見て学ぶ」
「そうすればいいの」
「そうすればね」
「餓鬼にならないのね」
「普通はね。流石に餓鬼にまでなるのはかえって難しいわ」
 そこまで堕落することはというのだ。
「普通に生きていれば」
「そこまでならないの」
「人は生きていれば経験積んで反省もして学んでもいくから」
「そこで自分を磨いていって」
「そこまで堕ちることはね」 
 流石にというのだ。
「ないわ」
「そうそうなのね」
「ならないものよ」
「そうなのね」
「ヤクザ屋さんみたいなものだから」
 そのレベルだというのだ。
「流石にそうはね」
「ならないのね」
「底を割った」
 そうしたというのだ。
「堕ち方だから」
「そうはならないのね」
「ええ、けれどなるから」
 そうはなるからというのだ。
「気をつけることはね」
「気をつけないといけないのね」
「そうよ」
 絶対にというのだ。
「いいわね」
「わかったわ」
 咲も頷いた、そして。
 咲はモコを見てそれでこうも言った。
「しかしね」
「しかし?」
「いえ、モコも若しも」
 モコを見つつ考えながら話した。
「そうした風になっていたかも知れないのね」
「繁殖犬とかよね」
「それで売れ残って」
 そうなってというのだ。
「とんでもないところに送られたり」
「捨てられたりもよね」
「なっていたかも知れないのね」
「そうよ、若しもね」
 それこそとだ、母は話した。
「そうなることはね」
「あるのね」
「そうよ、人だってね」
 犬に限らずというのだ。
「一歩間違えたらね」
「そうなるのね」
「そうよ、本当にね」
「そう思うと怖いわね」
「それも世の中なんだ」
 また父が言ってきた。
「一歩間違えたらな」
「不幸になったりするのね」
「そうだ、本当にちょっとした違いでな」
 それでというのだ。
「不幸になったりもするんだ」
「それが世の中ってことね」
「そこも怖いんだ」
 娘に真顔で話した。 
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