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イベリス

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第十話 アルバイトその十

「気遣ってね」
「そのトラウマに触れないことね」
「そうよ、傷口に触れられたら痛いから」
「身体の傷口もそうだし」
「心だとね」
「尚更よね」
「そう、こんな痛いものはないから」
 それ故にというのだ。
「触れないことよ」
「それは絶対になのね」
「守ってね」
「そうするわ」
 咲もこう答えた。
「私もね」
「是非ね。それとね」
「それと?」
「今度遊びに行こうね」
 愛は微笑んでこうも言った。
「一緒にね」
「何処に行くの?」
「渋谷でもいいし」
 咲がアルバイトをするその場所でもというのだ。
「原宿でもね」
「何処でもいいのね」
「そう、渋谷にいいお店あるしね」
「どんなお店?あそこお店多いけれど」
「道玄坂に魔法のグッズ売ってるお店あるの」
 こう咲に話した。
「アクセサリーとかね」
「ああ、あそこね」
 咲はそう聞いただけでどの店かわかって応えた。
「私も知ってるわ」
「行ったことあるの、咲ちゃんも」
「ええ」
 咲もすぐに答えた。
「そのお店にはね」
「そうなのね。お店の雰囲気も素敵よね」
「ミステリアスな感じでね」
「もう如何にも魔女のお店って感じでね」
「いいわよね」
「ええ、じゃあ日曜アルバイトが終わったら」
 その時にというのだ。
「一緒にね」
「そのお店に行きましょう、あとうちにも泊まったらね」
 愛の家にというのだ。
「それもいいわね」
「パジャマパーティーするの」
「それもいいでしょ。一緒にお風呂も入ってね」
 そうしたこともしてというのだ。
「お菓子食べてジュースも飲んでお酒もね」
「そっちもなのね」
「内緒だけれどね」
 それでもとだ、愛は笑って話した。
「よかったらね」
「そうしたこともなのね」
「楽しんでいきましょう」
「ええ、じゃあ」
「また一緒に遊びましょう。カラオケも行けるし」
「部活にアルバイトもだから忙しいけれど」
「忙しいからこそ遊べるのよ」
 愛は笑ってこうも言ってきた。
「むしろね」
「忙しいからなの」
「だから遊びがいがあって」
「忙しいと余計に?」
「そうよ、学校の授業に部活にで」
「アルバイトで」
「忙しいからこそ遊びたくなって」
 そうしてというのだ。
「遊びたくなるから」
「いいのね」
「そう、だから遊びましょう」
 忙しくなるからこそというのだ。 
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