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それから 本町絢と水島基は  結末

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6-⑺

 4月の末、新入部員の歓迎会を行った。今年は、慎二が頑張ったせいか、女子4人、男子2人が入部していた。女子のうち2人は、完全に慎二がうまく言って誘い込んだ未経験者だ。教育学部の仲のいい二人組らしい。

 当然、入学式の時に声を掛けてきていた高野美咲も居た。美波の横に座って話込んでいる。その隣には、長崎宏美、手足が長くて背の高い女の子で、背泳ぎなんだけれど、こっちも高校の時に、県下では上位の成績だったらしい。

 慎二は、自分が誘った二人の横で、面白おかしく講義の先生の話をしていた。このふたりも確かに手足が長く、高校の時は、軟式テニスをやっていたというけど、慎二の話に魔がさして入部したと言っていた。

 そんな様子を、横目でチラチラと気にしている美波を、僕は見た。あれから、僕は慎二に美波のことについての結果を聞いていなかった。僕自身も、この時は、まだ慎二という人間をよく理解できていなかった。

 3年の先輩は6人居るけれど、実力的に慎二と美波のふたりがスバ抜けているものだから、この二人にクラブは引っ張られている。4年生はもう出てこない。葵と僕は、そんな先輩の間を継いでまわったりしていた。葵は、彼氏募集中ということらしいが、まだ、居ない。割ときれいだし、性格も明るくていい子なんだけど・・。隣の部屋は、今年はバレーボール部で、男子女子合同だから、盛り上がっている。何の調子か、時折、歓声が聞こえてくる。

 この時、突然、慎二が

「みんな聞いてくれ、俺は、バタフライに絞って、今年、ジャパンオープンに挑戦しようと思ってるんだ。美波と一緒に。
それで、大学対抗で弾みをつけて、前期の試験があって、日程厳しいが、国公立大学選手権にも行くつもりだ」

「私、そんなこと聞いてないわよ」

「すまん 美波にはこれから話そうと思ってた」

「なによ それっ この人はね 良い奴なんだけど、調子いいから、そのつもりで相手しとかなきゃダメよ」と、慎二のとなりの女の子ふたりに向かって言っていた。

今年の部長の(みどり)先輩が

「慎二君はチャラ男ぽいけど、実行力あるし、結構、信頼できるよ」と、持ち上げていた。彼女は、水泳部で初めての女性部長に、押されてなったんだ。僕等4人とも、彼女を押した。

「慎二先輩って、やさしいんですよ 部長が居ない時、私等にかまってくれて、親切に教えてくれていますよ」と、中河原舞野が、慎二に寄り添うように言ってきた。

「慎二は、ダメよ 去年まで、会館のカフェでも平気で、女の子だけのテーブルに寄って行って、話しかけて、知り合いになったりして、顔広いんだから 不思議と教育学部の間でも人気あるんだよね でも、本人がそれ以上近づかないんだから」と、葵が責めるような言い方をしていた。

「葵 そんな言い方ないだろー 可愛い顔して、 同期の仲じゃあないか」

「その言い方がチャラくて、騙されるんだよね 私は、慣れたけど」と、笑いながら、葵も少し酔ってきているみたいだ。

「葵ちゃん 平泳ぎ、頑張ってね 顧問の菅原先生が言っていたんだけど、今年の大学対抗にメドレーリレーを提案しているんだって 今年は、宏美ちゃんが入って、葵ちゃんが平泳ぎにまわつて、美咲ちゃんも伸びるだろうし、そうしたら、美波が自由形で私より早ければ、その4人でトップに立てるって 男子も慎二君が引っ張ってくれるだろうし」と、碧先輩が切り出したけど

「部長 私 バタフライで ずーとやってきているし」

「わかっているわよ でも、美波ちやん、自由形も私と変わらないじゃあない とにかく、3人で競い合って、一番いいメンバーで リレーだから相性もあるしね 美咲には個人に専念してもらうかも知れないし 総得点で優勝したいって言ってたわよ 先生」

「あの先生 普段は何にも言わないくせして、そんなこと考えてるんだ じゃぁ、ここに出てきて、みんなに言えばいいのにね」

「そーだよね でも、今年、美咲ちゃんと宏美ちゃんが入ったので、火が着いちゃったみたい」

「美波 頑張ってみようよ 私も頑張るから」と葵が、美波に向かって言った

「そうだよね 頑張って、やってみるか」と美波は言っていたけど、男子からは声が出なかった。慎二以外は自信ないんだから。 



 
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