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鹿との絆

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第二章

「アルバートって名前をつけてるんだ」
「そうなの」
 ファーレンがステーキを食べつつ応えた。
「その子は」
「ああ、ふらってうちに来てな」
「それで私に懐いて」
 アーサーの妻のエリザベスが言ってきた、長い金髪で緑の目である、はっきりとした顔立ちでスタイルがいい。
「いつもついて回ってきていたの」
「きていた?」
「急に来なくなって」
 エリザベスはファーレンに話した。
「それでどうしたのかしらって思っていたら」
「夫婦でドライブに出てな」
 またアーサーが言ってきた。
「近所の茂みで見掛けて車を停めて」
「私が車の窓からアルバート!?って呼んだら来たの」
「それからまたうちに来る様になったんだ」
「二年位来なくなっていたけれど」
 それがというのだ。
「来てくれて」
「その時からまたなんだ」
「こうして一緒にいる様になったんだ」
「いつもね」
「不思議なものだな」
 ワンはここまで聞いて言った。
「急に来なくなってまた来て」
「そうね、またいつも一緒にいる様になったって」
「不思議だな」
「二年の間何をしていたのかしら」
「それはわからないけれどな」
 アーサーはワンの夫婦にサラダを食べつつ応えた。
「けれどアルバートはまたな」
「私達が農作業をしてると来る様になって」
「こうして日中はいつも一緒にいるんだ」
「ご飯も一緒よ。じゃあアルバート今からご飯を出すわね」
「ヒヒン」
 アルバートはエリザベスの言葉に嬉しそうに鳴いて応えた、そして出されたご飯を嬉しそうに食べた。
 その彼を見ながらワンは妻と話した。
「鹿は可愛い生きものだな」
「そうね」
 妻は夫のその言葉に笑顔で応えた。
「見ていると」
「そして一緒にいるとな」
「驚かされたりもするけれど」
「俺みたいにな」
 道にいた子鹿のことを思い出しながら妻に応えた。
「そうしたこともあるけれどな」
「けれどね」
「ああ、野生の中にいても人懐っこくて」
「何処か愛嬌のあるな」
「可愛い生きものね」
「だから森の管理人としてな」
 ワンはさらに言った。
「これからも鹿が森にいられる様にな」
「頑張っていくのね」
「そうするな」
 アルバートを見てこれまで見てきた鹿達を思いだしながら妻に約束した、そうしてアーサーの夫婦とアルバートについて話していった、その話は彼そして鹿の魅力がさらにわかる実に楽しいものだった。


鹿との絆   完


                2021・6・17 
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