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不思議と謎

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第五章

「大騒ぎになってますね」
「それで教祖もな」
「前々からインチキって言われてましたね」
「言ってることが滅茶苦茶でな」
「ハルマゲドンやらノストラダムスやら」
「政党も持ってるしな」
「政界進出も目論んでいるとか」
 峰雄もこのことは知っていた。
「もう何かと」
「噂が絶えませんでしたね」
「悪いのがな」
「それで今捜査受けていて」
「実際に覚せい剤がどんどん出て来てるだろ」
「入手ルートも問題になっていますね」
「あの人その教団の幹部の奥さんでな」
 先輩は眉を曇らせたままさらに話した。
「ここでしきりに声をかけてきていたのもな」
「実は、ですか」
「勧誘だったんだよ、勧誘してな」
「そこで、ですか」
「覚醒剤打ってな」
「中毒にしてですか」
「教団から離れられない様にしていたんだよ」
 そうしていたというのだ。
「あの人自身は使っていなくてもな」
「持っていたことは事実で」
「色々やっていたからな」
「逮捕されたんですね」
「ああ、だからな」
「今うちにいないんですね」
「もう二度とうちに来ないさ」
 逮捕されたからにはというのだ。
「絶対にな」
「そうですか」
「ああ、自分も誘い受けてただろ」
「実は」
「俺もだ、お互い誘いに乗らなくてよかったな」
「そうですね」 
 峰雄は内心ぞっとするものを感じていた、本当に誘いに乗らなくてよかったと思った。そうしてだった。
 大学で昭介にこのことを話すと彼も驚いて言った。
「おい、危なかったな」
「そうだったな」
「話を聞いて胡散臭いと思ったけれどな」
「まさかな」
「あの教団の関係者だったなんてな」
「それも幹部の奥さんでな」
「覚醒剤打つとかな」
 それこそというのだ。
「男漁りよりもな」
「遥かにやばかったな」
「その人にこにこしてただろ」
「いつもな、それで俺にも声をかけてきたけれどな」
「その笑顔の裏にはな」
「とんでもない本心が隠されていたな」
「覚醒剤打ってそれで教団に入れるとかな」
 そうしたことはというのだ。 
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