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不思議と謎

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第二章

 人と接する様になった、するとだった。
 確かに人の本音はわかりにくかった、その一つ一つが。それで峰雄は大学の友人であり後藤昭介に言った。
「人間って難しいな」
「一体どうしたんだ?」
「いや、人間の心ってわかりにくいな」
 こう昭介に言った、彼の面長で小さな目の顔を見ながら。昭介は峰雄より背はやや低くて痩せている。黒髪は短くしている。
「本当に」
「そうか?」
「ああ、お前俺が今何を考えているか全部わかるか」
「わかるのはお前が話していることだけだな」
 昭介はあっさりと答えた。
「それだけだな」
「そうだよな」
「お前が心の中で何を考えているかなんてな」
 それこそというのだ。
「わからないさ」
「そうだよな」
「お前もわからないだろ」
 逆にだ。昭介は峰雄に聞いた。
「俺が心の中でどう思っているか」
「ああ、言っていることだけだ」
「例えば俺が今日の昼何食いたいと思ってるかわからないよな」
「オムライスか?」
 何となくだ、峰雄はこの料理を出した。
「それか?」
「ラーメンだよ」
「全然違うな」
「そうだろ、やっぱりな」
「人は他人の心はわからないか」
「そうだよ、どうしてもな」
 それはというのだ。
「わかるものじゃないさ」
「そうだよな」
「若し全部わかるって言う人がいたらな」
「テレパシーが出来る超能力者か、か」
「思い上がりレベルで勘違いしてる人かな」
「詐欺師か」
「そんな手合いだよ」
 まさにというのだ。
「だから人の心ってのはな」
「お前もわからないって言うんだな」
「ああ、そうな」
 昭介は峰雄にはっきりと言い切った、峰雄は昭介の言葉にもそうだろうと頷いた。そのうえで大学でもアパートでもアルバイトでも過ごしていたが。
 ある日アルバイト先の四条の大きな本屋で働いている時に新しくアルバイトではなくパートで入った、色香漂う女性に声をかけられた、その女性はというと。
 右目の付け根に黒子があり黒髪は長く光沢があり胸はかなり大きい。ウエストはくびれていてスカートはいつも短く脚は実に奇麗だ。背は一六五程である。やや面長で顎は少し尖っている。唇は紅で小さい。
 その彼女が峰雄に艶やかな声で囁く様に言ってきた。
「ねえ、今度お仕事が終わったらね」
「はい、夜ですね」
「いいお店知ってるのよ」
 こう峰雄に言ってきた。
「だからね」
「それで、ですか」
「一緒に行かない?」
「一緒っていいますと」
「晩ご飯一緒に食べない?」
 峰雄を誘う様にじっと見て言ってきた。
「そうしない?」
「そうしていいですか」
「ええ、どうかしら」
「ああ、今夜は」
 美人に誘われて峰雄も悪い気はしなかった、むしろ是非一緒に行きたかった。だがそれでもであった。 
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