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猫みたいな犬

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第二章

「タリーはどう見ても犬だけれど」
「産まれた時からずっと猫と一緒にいたから」
「それも何匹の子に囲まれてだから」
 それでというのだ。
「猫みたいにね」
「暮らしているのね」
「そうよ、それでそれがタリーにとっては自然なの」
「そうなのね」
「だからこれからもね」
「タリーはローズ達となのね」
「一緒に暮らしていくのよ」
「それがタリーにとって一番幸せなのよ」
 娘に笑顔で話した、そしてだった。
「だからね」
「これからもなのね」
「この子は猫達と一緒よ」
「じゃあ私達はそのタリーとローズ達と」
「一緒よ」 
 娘に話す顔は笑顔のままだった、だが。
 父は会社から家に帰ってやれやれとなった。娘に受け継がれた太く濃い眉に茶色の太く硬い質の髪の毛に。
 一九〇近い背だ、その彼がひっくり返った椅子を見て言った。
「またタリーか」
「ワン」
「ワンじゃないよ」
 自分を見て親し気に鳴く彼にも言った。
「ひっくり返して」
「大きいからね、タリーは」
 妻も言ってきた。
「だからね」
「猫みたいに動いたらな」
「すぐにこうなるのよね」
「だからうちはタリーが行きそうな場所にものを置けないよ」
「特に割れるものはね」
「全く、ローズ達だけでも大変なのに」
 それがというのだ。
「タリーまでだから」
「というかタリーが一番ね」
「身体が大きくてやんちゃだから」
「猫みたいにね」
「困るよ、けれどそれがタリーだから」
 尻尾を振っている彼を見て言った。
「仕方ないな」
「そうね」
「これで愛嬌あるし家族に愛情持ってくれてるし」
「それじゃあね」
「ああ、じゃあご飯あげるよ」
 父はこう言ってだった。
 タリーに夕食をあげようとすると。
 するとだ、タリーは猫達と共に彼のところにやって来た。
「ワンワン」
「ニャンニャン」
「ニャウン」
「ミャオン」
「ニャンッ」
 彼の足下に皆で身体を下茂に摺り寄せてそれからご飯を食べた、そんなタリーの姿は周りの猫達と変わらなかった、そんな彼を見てだった。
 一家で猫達と共に撫でた、すると尻尾を振った。
「犬だけれどな」
「本当に猫みたいね」
「こんな子がいてもいいね」
 そんなタリーを見て話した、彼を見る目は何処までも暖かかった。


猫みたいな犬   完


                  2021・5・20 
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