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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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檄文+董卓+袁紹=反董卓連合の結成(蜀・呉)




 ――――劉備軍拠点(後の蜀)――――


「悪いことをした董卓さんを、みんなで懲らしめましょう、か……」
「どうしますか? 桃香様」

 書状の文面を読みながら顔を険しくする桃香様に私は出来るだけ真面目な雰囲気を纏うようにして話しかける。心なしか、表情の暗さに相成ってご自慢の桃色長髪がくすんでいるようにも見えるが……これはいけないな。すぐに侍女を手配して手入れしてもらわなければ。領主たるもの、身なりはきちんとしておかなければならない。ましてや今は駆け出しもいいところの地位にあるのだから、尚更だ。
 ……おっと、自己紹介が遅れたな。私は関雲長。桃香様――――劉備様の義妹にあたる関係だ。過去に行った桃園の誓いによって、私と桃香様、張飛――――鈴々は義姉妹の契りを結んだのだが、国を治める領主という立場上、私はこうやって桃香様には敬語を使わせてもらっている。桃香様ご自身は別に敬語なんて使わなくてもいいと考えてらっしゃるようだが……私は断固として容認できない。民に領主の偉大さを見せつけなければならないのだから、こういう細かいところから気を付けておく必要がある。桃香様は領主でありながら、そういうところは自覚をお持ちでないのですから……まったく、世話の焼ける姉だ。
 桃香様が持っている檄文を背後からこっそり読む。……はぁ、また袁紹の自分勝手な暴走か……あの高飛車女はいい加減身の程を弁えた方がいいのではないか? そろそろやめておかないと、曹操あたりに殲滅されるぞ。

「私としては、参加する方がよろしいと思います。差出人が袁紹ということに少々嫌悪感を覚えますが、これはまたとない好機です。これに参加して手柄を上げれば、我が劉備軍の名声は大陸中に広まり、さらに高い地位を確かなものにするでしょう。おそらく、朱里も同じ考えだと思います」
「う~ん、そうなんだけどさぁ……ちょっと、引っかかるところがあるというか……」
「引っかかる?」

 桃香様の勘はよく当たる。まるで戦術経験も知識もないのに、それなりに戦場を駆け抜けて来られたのは偏にその予知能力とも言える勘のおかげだったりもする。普通は眉唾物だが、私達はそれなりに桃香様の直感を重要視してきた。……だから、私はあえて会話を止める。
 桃香様はしばらくうんうんと唸ると、少しづつではあるが言葉を漏らしていく。

「えーとさ……この、董卓さんって人のことなんだけど……」
「はい。手紙によると、洛陽を支配下に置き、悪政を強いて民を苦しめているということですが……それが、どうかしたのですか?」
「その『悪政を強いた』っていう部分なんだ。袁紹さんはこう言っているけど……これって、本当に間違いじゃないのかな?」
「は、間違い?」
「うん」

 そう言うと桃香様はいきなり立ち上がり、備え付けの棚から湯飲みを取り出した。そのまま流れるようにお茶を入れていく。そ、そのようなことを領主がわざわざする必要はありませんのに……。

「はい、愛紗ちゃん」
「あ、恐縮です」

 だが、どうせ言っても聞かないだろうからあえて流しておく。まぁ、こういうところが桃香様の美徳なんだろう。領主らしからぬ優しさが、民達に好かれている最大の理由なのだと私は思っている。
 桃香様はお茶を持ったまま再び椅子に座ると、私の方を見つめながら言った。

「これはあくまでも私の推測だから、軽い気持ちで聞いてね」
「はぁ……わかりました」
「えっと、董卓さんは悪政を強いて民衆を苦しめているって話だったけど、私はそうは思わないんだ。だって、洛陽って大陸でも有数の大都市だよ? そんなおっきな街が支配されて滅茶苦茶な目に遭っているっていうなら、もっと早くから大袈裟に広まっているはず。でも、私達は袁紹さんからのお手紙で初めてそのことを知った……普通に考えて、これは袁紹さんの自作自演だと思うんだ」
「なるほど……袁紹が董卓の地位に嫉妬して、嘘の事実を書いた檄文を送ったと……」
「本当かどうかは分からないけどね」

 苦笑交じりに言う桃香様だったが、私は腕を組んで今言われたことを思い返していた。ふむ……確かに一理あるな。洛陽を治めているというのは、ある意味これ以上ない箔だ。揚州などと比べてもその差は歴然。大陸一の都市を統べる者というのは、同時に大陸一の実力者ということになるのだ。袁紹は、その地位を欲しがっている。……改めて考えてみると、意外にもしっくりくるものがあった。まぁ、納得できる理由の七割は袁紹の評判の悪さから来ているんだがな。やはり人間たるもの風評には気をつけねばならない。私も『黒髪の山賊狩り』とかいう二つ名でとおっている身だが……会う度に『期待外れ』と言われてしまうのは何故なんだろうか。私はそんなに女らしくないか!
 
「愛紗ちゃん? なんか顔が怖いけど……どうしたの?」
「はっ! あ、いえ! なんでもありませんので心配なさらないでください!」
「ふぅん……なんともないなら、いいけど」

 この程度で動揺してしまうとは、私もまだまだ修行が足りないな。もっと精神を鍛えねば。
 
「結局、どうするんですか?」
「連合には参加するよ。董卓さんとも戦う。……でも、その悪評が嘘のものだったなら、全力で匿いに行くからね!」
「え……? あの、それはいろいろとマズいことになるような気が……」

 もしバレたら周囲の武将たちからタコ殴りにされるのではないだろうか。裏切り者になっているわけだし。曹操なんかが攻めてきたら勝てる気がしないぞ……。
 しかし、一度決意を固めた桃香様が意見を変えるわけがない。普段通りの強い意志の籠った瞳で私を見つめ、まるで子供が駄々をこねるように騒ぎ出した。

「文句なんて受け付けないからね! 私は助けに行く。行くったら行くの!」
「……はぁ。わかりました。朱里にもそう伝えておきます」
「うん! ありがとー、愛紗ちゃん♪」

 途端に、にぱぁっと明るい笑みを見せる桃香様。毎度毎度、これは演技なのではないかと思ってしまうんだが……この笑顔を見ていると、疑う気持ちも萎えてくるな。やはり、桃香様はお優しい。
 
「それでは、失礼します」
「お疲れ様~♪」

 桃香様の間延びした声を最後に部屋を出る。さて、軍師の二人に報告に行くとするかな。

「……しかし、また私がドヤされるのだろうな……」

 中間管理職の辛さをひしひしと感じながら、私は朱里達の下へと歩みを進めた。





                  ☆





 ――――呉――――


「反董卓連合に参加されたし、ねぇ……」
「袁紹の奴もとんでもないことを思いつくものだな」

 雪蓮が面倒くさそうに読んでいる檄文を隣で眺めながら、私――――周公瑾は大きく溜息をついた。
 相変わらずあの駄目領主は何を考えているのかさっぱりわからんな……雪蓮や雹霞とは大違いだ。もうちょっと私の予想通りに動いてくれてもバチは当たらんだろうに。
 しかし、これは逆に好機でもある。この連合に参加して手柄を立てれば、我らはさらに力をつけることが出、軍の規模も大きくなる。そうすればやっと悲願の打倒袁術を果たすことができるかもしれない。
 ま、連合への参加は決定事項だな。後で穏にも伝えておこう。
 その旨を伝えると、雪蓮は大きく伸びをする。

「あ~、また戦かぁ~」
「どうしたんだ、お前らしくもない。戦はお前の楽しみじゃなかったのか?」
「そうなんだけどさぁ……なーんか物足りないというか……」

 髪の毛をくるくると弄りながら、雪蓮は再び溜息をつく。珍しいこともあるものだ。三度の飯より戦が好きな雪蓮らしくない。最近はあの馬鹿の影響もあって多少丸くなってきてはいるが、好戦的な性格は治っていないはずだ。
 雪蓮は円卓にぐでーと身体を伸ばす。

「みっともないぞ、雪蓮」
「もぉ~、冥琳のマジメェ~! 少しくらいのんびりしてもいいでしょぉ!」
「自室で休めばいいだろう。ここは城内だが、人目に付く庭なんだ。王が王らしい行動をしていない場面なんて見せるわけにはいかないだろう?」
「ぶー。いいじゃない別に……私は私の道を行くの! 勝利は私の為にあるの!」
「やめろ、その決め台詞は色々なところから文句を言われそうだ」

 ん? なんかいきなり不思議な思考に囚われてしまったな。疲れているのか? 負担を減らすために雪蓮の仕事を増やしておこう。
 王らしさなど微塵もない雪蓮を眺めているときだった。

「冥琳様! 伝令があります!」
「明命か。どうした?」
「はっ! 各地に赴かせていた間諜の一人より、重要情報が送られてきました!」

 赤っぽい色の布服に刀を携えた少女――――明命が慌てた様子でこちらへ走ってくる。聞いたところ、重要情報ということだが……どんな内容なんだ?

「はい! えっと……そ、孫瑜様の所在が掴めたようです!」
「え!? ホント!? どこ!? 雹霞はどこにいるの!?」

 先ほどまでのぐったりが嘘のように手をつき立ち上がる雪蓮。驚く気持ちはわかるし私も驚いているが……明命の胸倉を掴んで血相を変えるのはやめろ。だんだんと顔から血の気が失せていってるから。そのままだと明命が死んでしまう。

「あ、ごめん」
「ぷはぁっ! ……こ、これも家臣の務めです……」
「いや、そこまで阿呆な務めはないからな?」

 あんまり従順すぎるのも考え物だ。
 場が落ち着いたのを見計らい、再び明命に尋ねる。

「それで? あの馬鹿は今どこにいるの?」
「伝令によると……洛陽にいるそうです」
『…………は?』

 一瞬、明命の言っている意味が分からなかった。え、洛陽? 洛陽って言ったか? 明命……。
 私達の心中を知ってか知らずか、明命はニコニコしながら言葉を並べていく。 

「ずいぶんと大きい街にいるみたいですねー。なんか董卓軍で客将として生活しているみたいですよ? 民衆にもそれなりに慕われていたそうです。いやー、孫瑜様らしいですねー」
「……え、えぇ、そうね……」
「……あの馬鹿……またややこしいことを……」

 二人して頭を抱える。なんだ? あいつは自殺志願者か? なんでわざわざ騒動の渦中に自分から飛び込んでいくんだ雹霞……。
 太陽のような笑顔で雹霞賛美を続ける明命を尻目に、私達はこれから起こる嵐の予感にただただ頭を痛めるしかなかった。

 ……あの天災男、今度会ったら絶対に痛めつけてやる。






 
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