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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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檄文+董卓+袁紹=反董卓連合の結成(魏)







 ――――とある金髪縦ロール武将からの檄文――――

 大陸中の皆さん、ご機嫌麗しゅう。世界一美しく気高い一騎当千の武将、袁本初ですわ。名前のほどはすでに知られていることでしょう。なんといっても私は由緒正しき袁家の者。高貴な武将は自ずと名を知られるのがこの世の常と言うものです。
 さて、挨拶もこの辺にしてさっさと本題に入りましょう。もっと私の武勇伝をお聞かせしたいのですが、部下の二人が五月蠅いのでまた次回にしたいと思います。乞うご期待ですわ。
 最近、洛陽でとある輩が暴政を強いているとの噂を聞きつけましたの。無抵抗な民を虐げ、己の欲望を満たさんがために暴虐非道の限りを尽くしていると。……許せませんわね。そんなうらやまゲフンゲフン……惨たらしいことを許すわけにはいきません。決して、洛陽を手中に収めたいとかそういうわけではありませんのよ。
 その暴政の首謀者の名前ですが……董卓、と言えば皆さんにも分かるでしょうね。多少の差異はあれど、名前ぐらいは聞いたことはあるかと。えぇ、その董卓ですわ。誠に遺憾ながら、私には及ばないまでも大陸中に知れ渡っている人間です。本当、遺憾ながらですけどですわ!
 ……董卓は洛陽の民に暴政を強いています。そこで、大陸中の諸侯が結束して連合軍となり、反董卓連合として悪人をやっつけようではありませんか!
 参加不参加を問いません。ですが、自分がどう動くのが最も利があるか、よくよく考えてから行動してくださいな。……まぁおそらく、皆さん同じことを考えるでしょうけどね。
 期限は今から二回目の満月の夜まで。参加を決心した武将様方はすぐにお返事をお願いしますわ。
 それではこの辺で。いい返事、お待ちしておりますの。

 袁 本初






                 ☆





 ――――魏――――

「……なんだこりゃ?」
「何って、麗羽のバカが送ってきた檄文よ。見て分からないの?」

 いや、そういう意味じゃないっての。俺が言いたいのはなんでこんなものを寄越してきたのかってことなんだよ、華琳。
 あ、そういえば挨拶が遅れたな。俺は北郷一刀(ほんごうかずと)。ひょんなことからこの三国志もどきの世界にタイムスリップしてしまった、なんの変哲もない一般高校生さ。こんなところにいきなり連れて来られて正直焦ったけど、偶然にも華琳――――曹孟徳に拾われて、なんとか生き残っている。今では『天の御遣い』なんていう肩書までもらって順風満帆な生活だ。自警団の隊長にもなってるし、街の人からも結構受け入れられてきた。これも華琳のおかげだな。
 さて、とりあえず現状報告は終了だ。本題に戻ろう。
 最近はこれといって戦なども起こっておらず、俺は魏のみんなと一緒にそれなりに平和な生活を送っていたんだ。まぁ、桂花のヤツに軽く死ねるレベルの罵倒を浴びせかけられたり、春蘭に殺さりかけたりはしていたが、そんなものは日常茶飯事なので今更特記するほどのことでもない。……なんか慣れてきている自分がとても怖い。その内腕切り落とされても笑って済ませるようになりはしないだろうか。ないよな? さすがに。
 そんな平穏な暮らしをしていた俺達の下に、先ほど届いたこの檄文。華琳によると麗羽――――つまり袁紹からの連合軍招待状らしいが……うまく状況が掴めない。なんなんだコレは。
 俺が首をひねっているのを見かねたのか、華琳の隣で真剣に檄文を読んでいた桂花が大きく溜息をついた。彼女の特徴である猫耳フードの耳がピョコピョコ動いているのが可愛らしい。自立式か。

「アンタねぇ……この程度のことも把握できないなんて、脳味噌まで精液でいっぱいになっちゃったんじゃないの?」
「どういう意味だコラ。俺はそんなに四六時中盛ってねぇよ」
「馬鹿も休み休み言いなさい。じゃあ、夜になる度にアンタの部屋から聞こえてくる嬌声は一体なんなワケ? まさかアンタの声だとか言わないわよね――――って、想像したら吐き気がしてきたわ。おぇ」
「言いたい放題言った上にトドメまでさすんじゃねぇよ! 無駄に事実なだけに反論しにくいだろうが!」
「……ということは盛っているじゃないの。四六時中」
「うっ……」

 う、うわぁ腹立つ。腰に手を当てて勝ち誇った笑みを浮かべている桂花、すっげぇムカツク。なんだこいつ。こんなに怒りを煽る奴だったのか。

「桂花。話が一向に進まないじゃないの。一刀を虐めるのもその辺にしておきなさい」
「は、はっ! 申し訳ありませんでした、華琳様!」
「その反応の違いはどこからくるんだ……」
「身分からでしょ、当然」

 当り前じゃない、と自慢の金髪ドリルを弄りながら華琳は苦笑した。うぉ、すげぇサマになってる。やはり覇王になる人間は何をやっても貫禄が出るのか。尊敬するぜ、華琳。
 華琳は用意されたお茶を一口飲むと、俺の方を向いた。

「一刀。この戦国乱世で名を知らしめたいのが今の諸侯の現状だっていうのは、前に言ったわよね?」
「あぁ。そこそこ力を持った武将はたくさんいるから、その中で頭角を出すために名声を求めるんだよな?」
「そう、ただ待っているだけじゃ有名にはなれない。自分から行動して、たくさんの功績を立てれば立てるほど、軍の名は大陸中に知れ渡るし、有力な武将も集まるようになる。名声って言うのは、軍の生命線とも言えるわね」

 まぁ、言われてみればそうだな。日本だって戦国時代には色んな戦を乗り切った武将が有名になったんだ。織田信長とか、武田信玄とか……名声=力という方程式は、確かに理解できる。
 ……まさか、今回の手紙ってそういうことなのか?

「ふふっ、ようやく気が付いたようね」

 口元に手を当て上品に笑う。あまりにも優雅なその挙動に、俺は思わずドキッとしてしまった。綺麗、その一言に尽きる光景だ。

「つまり、この檄文は諸侯の『有名になりたい』っていう気持ちを煽っているのよ。確かに効果は見込めるわね。麗羽はバカで無能のアンポンタンだけど、大陸でも随一の名家の当主なんだもの。もしかしたら取り立ててもらえるかもしれない。それに、逆賊・董卓を討伐したともなれば、その名声は間違いなく大陸中に響き渡るでしょうね」
「……だから、諸侯はこの檄文を断るわけにはいかない、と?」
「そういうことよ」

 なるほど。ようやく理解が追いついてきた。ようするに、『有名になる可能性があるから乗り気じゃない招集にも応じておこう。要請者が取り立ててくれなくても、戦で手柄を上げればもっと軍の名が知れ渡るから参加しなくちゃ』というわけか。それは確かに参加しないわけにはいかない。自軍が豊かになるかどうかが懸かっているんだから、不参加と言う選択肢は自ずと削除される。……頭がいいなぁ。
 ……と、いうことは、

「俺達も勿論参加するのか?」
「えぇ。麗羽に良いように使われるのはアレだけど、これはまたとない好機だわ。私達が大陸を手中に収めるためには、連合軍の参加は不可欠。悩む余地なんてないわよ」
「やっぱりか。また忙しくなりそうだなぁ」
「ふふ、貴方にはまた頑張ってもらわなくちゃね、一刀」

 頑張るって言ってもねぇ。俺、庶民だし。剣道部だったけどこの世界じゃまるで歯が立たないし。ぶっちゃけ役立たずだぜ?
 しかし、華琳は優しい眼差しで俺を見つめる。その瞳にはどこか慈愛の感情が込められているようにも感じる。

「なにも戦だけが貴方の仕事じゃないわ。私達の荒ぶった気持ちを癒すのも、天の御使いとしての重要な役目なのよ? お分かり?」
「……そう、だな。戦力的にはゼロだけど、その分支援側で頑張らせてもらうよ」
「えぇ。よろしく頼むわね、御使いさん♪」

 ……まったく、綺麗な笑顔だな。
 


 
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