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盲導犬への待遇

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第二章

「それなのに」
「移動が危険なエスカレーターでもそうしていたわ」
「何て酷いことを」
「キカもそれで、でしょ」
「うん、わかったよ」
 目が見えなくても感覚でだ。
「エスカレーターに行きたくないってね」
「そうよね」
「そして基本外出もね」
「そうした目に遭うからよ」
「当然だね、犬にも心があるから」
「いつもそんなことされるなら」
「そうなって当然だよ」
 例えそれが訓練されている盲導犬でもというのだ。
「本当にね」
「そうね、それでだけれど」
 妻は夫に話した。
「協会の協力で出来たことだし」
「このことをだね」
「協会にもお話してね」
 そうしてというのだ。
「皆にわかってもらいましょう」
「視覚障害者ひいては障害者への偏見の事実と」
「心無い人の盲導犬への行為をね」
「その二つの現実をだね」
「知ってもらいましょう」
「そうだね、正直嫌になったよ」
 夫はこれまで以上に項垂れて言った。
「人間の悪意がこんなに世の中に満ちていて」
「それこんなに醜いってわかって」
「嫌になったよ、けれどそうしたことがこれで少しでも減るなら」
「それならよね」
「世の中に知ってもらおう」
「そうしましょう」
 夫婦でこう話して協会にこの録画を渡した、協会側もこの事実に驚き世に伝えた。
 そうしてこの二つの問題はイギリスにおいて話題となり多くの人が行動や考えをあらため反省し自分を律することにもなった。
 エンバーはそのことを聞いて妻に話した。
「こうしたことがあって少しずつね」
「世の中はよくなるわね」
「そうだね、キカもハーネスも大変だったね」
 今自分の傍にいる二匹の気配を感じながら言った、ハーネスは今は家で預かって次の人の目になる番を待っているのだ。
「本当に」
「そうね、けれど偏見や迫害が少しでもましになるのなら」
「それだけでもよかったね」
「そういうことね、じゃあこれからね」 
 妻は夫にあらためて言った。
「二匹にご飯をあげるわ」
「宜しく頼むよ」
「ええ、貴方達ご飯よ」
「ワン」
「ワンワン」
 二匹は彼女の言葉に笑顔で尻尾を振って応えた、辛い思いをした彼等だが今も護るべき人の傍にいる。そしてその目にもなっていた。


盲導犬への待遇   完


                 2021・4・22 
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