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盲導犬への待遇

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第一章

               盲導犬への待遇
 イギリスの首都ロンドン在住の獣医アミット=パテル堂々たる体格で口の周りが黒い髭で覆われた彼は円錐角膜症という病気になり何度も手術を受けたにもかかわらず失明してしまった。それでキカというラブラドールレトリバーの雄の盲導犬の彼のサポートを受けて日常生活を送ることになったが。
「大変だよ」
「やっぱりそうよね」
「うん、目が見えなくなるとね」
 妻のシーマ、砂色のソバージュをかけたロングヘアで水色の目に顎の先が尖った面長の顔に一六四位のすらりとした背の妻に話した。
「何とかとね」
「大変よね」
「目が見えないことも大変だけれど」
 夫は妻にさらに話した。
「それ以上に、周りが冷たいね」
「目が見えない人に」
「うん、何かしてくれして欲しいとは言わないけれど」
 それでもというのだ。
「わかるんだ、皆僕からそっぽを向いてキカにもね」
 盲導犬である彼にもというのだ。
「冷たいね」
「そんなになの」
「うん、目が見てもわかるよ」
 妻に悲しい顔で話した。
「そのことが。そして多分僕が考えている以上にね」
「大変なのね」
「そうだと思うよ」 
 こう妻に話した。
「キカはね」
「そんなになのね」
「僕はわからないけれど」
 目の見えない自分にはというのだ。
「けれどね」
「そうなのね、じゃあね」
「じゃあ?」
「そのことを確かめてみない?」
 妻は夫にこう提案した。
「一度ね」
「そうしてみるか」
「ええ、キカとは別の子にカメラ付けて」
 そうしてというのだ。
「実際どうか録画してチェックしてみましょう」
「その録画は君が観てだね」
「貴方にお話するわ」
「じゃあそれでね」
「やってみましょう」
 こう話してだった。
 妻はキカと同じ種類の盲導犬、色は茶色のハーネスという子にカメラを付けてみて夫と共に街を歩かせた、これは盲導犬の協会の協力もあった。
 そして録画を観た後で妻は夫に沈み切った声で話した。
「こうしたことだったの」
「酷いね」
 夫もその話を聞いて項垂れた。
「それはまた」
「ええ、私も観てね」
「絶望したんだね」
「貴方もよね」
「そうなったよ、確かに冷たい空気は感じたけれど」
「邪険に。邪魔にされているって」
「それは感じていたけれど」
 それでもというのだ。
「まさかね」
「貴方も冷たいいえ悪意の目で見られていて」
「偏見に満ちた」
「目が見えないなら外に出るなってね」
「そうした感じで僕を観ていて」
「舌打ちをする人もいて」
 彼を見てというのだ。
「それどころかね」
「犬に対してもだね」
「露骨に嫌そうに見てね」
 盲導犬までもというのだ。
「中には踏んだり蹴ったりね」
「こづいたりだね」
「そんなことをする人もいたわ」
「盲導犬は訓練で声をあげない様になっているんだ」
 例え何をされてもだ。 
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