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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-

作者:地水
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第3話:その名はネオライダー

 
前書き
 未知なる敵を退け、ディケイド達と小狼達はついに出会った 

 
 同じ世界を超えて旅をする小狼達と出会った士達。
怪人と戦った場所から少し離れた場所へと移動した一同は、公園にて自分達の事情を話していた。
自己紹介を既に終えた一同は、世界を超えた旅についての話に花を咲かせていた。

「なるほど、皆さんも色んな世界を旅をしているんですね」

「まあな、それほどってことでもないが」

「でも不思議、私達の他に次元の旅している人がいるなんて」

「それはこっちの台詞ですよ、サクラちゃん。いやぁ、なんだか親近感がわきます」

小狼、士、サクラ、夏海と今まで旅をしてきた事で盛り上がる四人。
その隣では黒鋼がユウスケに対し、『ライダーに関する』質問を投げかけていた。

「ところで、聞きたいんだがあの変わった姿ってのはなんなんだ?仮面ライダーとか言っていたが」

「それはな、あれは仮面ライダーって言って愛と平和と人々を守る味方なんだよ。ちなみに俺はクウガって仮面ライダーになれるんだ」

「テメェもライダーってのになれるのか」

「そうなんだよね。俺の他にも色んなライダーがいるんだ」

「へぇ、そうなんだー。士君もユウスケ君も仮面ライダーなんだねー」

ファイが二人の会話を聞いていつもの笑顔を浮かべる。
小狼達が今まで旅で怪物や人ならざる異形と戦ってきた事はあるが、仮面ライダーのような姿を変えて異形と戦う戦士は初めてだった。
圧倒的な力で退けたライダーに対し、黒鋼は関心を受けていた。
そこへモコナが名乗り上げて、はしゃいだ口調で喋りだした。

「モコナ知ってるよー!仮面ライダーは、人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!ちなみに侑子はBLACK派なの!」

「「BLACK……?」」

(……南光太郎の変身したライダーの事だな。会った事でもあるのか?)

小狼とサクラはモコナの言い出した新たなるライダーの名前を冠して首をかしげる。
その横では士はとある世界で出会った仮面ライダーBLACK……南光太郎の事を思い浮かべいた。
そこへユウスケが声を上げながら手をたたき、小狼へ訪ねる。

「あ!そういえば、小狼達みんな旅しているけども寝床はどうするんだ?何処かへ泊るのか?」

「それはこれから探そうと思ってまして」

「え、でも皆さん大丈夫ですか?その、あの人達に狙われて危ないんじゃ…」

小狼の言葉に夏海は心配そうな表情をする。
それもそうだ、先程怪人達を連れた尚樹なる奴らがいるのだ。あの執念深そうな台詞を考えるとまた狙われてもおかしくはない。
そう考えた夏海とユウスケの2人は士へ詰め寄り、彼に対して言い放つ。

「士君!」

「士!」

「なんだよお前ら雁首揃えて」

「小狼達を写真館に泊まらせてやりましょう!」

「このままほっとくには心配してしまうって!」

「ハァ、勝手にしろ……」

士はやれやれと言った感じで二人から離れると、首にかけていたカメラを構えて、小狼達の姿を撮った。
いきなりの幸運な状況に戸惑う小狼であったが、融通利かせてくれたユウスケと夏海の2人にお礼を告げた。

「あの、ありがとうございます。初めて会うおれ達にそんな事してくれて」

「いいっていいって。こういう機会は絶対ないんだから、さ!」

「そうと決まったら私の家に案内しましょう!」

にかっと笑うユウスケと新しい仲間を見つけて張り切る夏海。
そんな楽し気な様子を黒鋼は呆れた様子で、ファイは変わらず笑顔を向けていた。


―――――


同時刻。某所。
バーを思わせる空間に何人もの人達が屯していた。ある者はカウンター席で酒を嗜み、ある者は設置されたビリヤード台でキューを使いビリヤードボールを突いて遊び、ある者は欠伸をしながら再び惰眠を貪っていた。
どれも共通点は男女問わず黒服を着用している事。

そんな中、扉を開いてバーに二つの影が現れる。
一つは眼鏡をかけた黒髪の男……尚樹、本名は『鬼頭 尚樹(きどう なおき)』。
もう一人は蠍型の銀色の怪人……スコルピオワーム。
尚樹はずかずかとカウンター席に向かうと、マスターと思われる人物に対して乱暴に酒の名前を注文する。

「おい、リキュール寄こせ!」

「おいおい、鬼頭の?随分と荒れてるな」

「ああそうだよ、せっかくの獲物を取り逃がしたんだよ……スコルピオの奴に邪魔しなければな!」

隣で飲んでいた帽子を深くかぶった黒服の男性に絡まれ、イラつきながらスコルピオワームを睨み付ける。
帽子の男性はふと考える仕草をしながら、同じくスコルピオワームを見て手を叩いて思い出す。

「スコルピオ……あぁ、斬刃(きりは)の事か。お前さん、妙なところで感ずるからなぁ」

「……悪かったな。何かと性分なもので」

深いため息をついて、スコルピオワームはその姿を人の姿へと変貌させていく。
周囲の黒服と同じ黒服の姿に、紫がかった髪と紫の瞳が特徴の若い青年になると、斬刃……『紫電斬刃(しでん・きりは)』は、ビリヤード台のゲームの様子を観戦している女性の隣に立つ。
水色の髪と水色の瞳が特徴の女性が斬刃が傍にいる事に気が付くと、黄色い声で話しかけてくる。

「やーんもう、お帰りー斬刃ー!」

「おう、ただいま」

「どうだった?何処も怪我してない?尚樹の奴に変な事されなかった?」

「てっめどういう意味だ風嵐(フウラン)!」

斬刃を過度に心配する風嵐と呼ばれた女性……『水野風嵐(ミズノ・フウラン)』に怒鳴り散らす尚樹。
他の黒服たちはいつもの出来事と捉えているのか、再び飲食や遊戯を続けたりしている。

だが、再びドアが開きバーへ入ってくる者がいた。
その足音に気付いた黒服達は取りやめ食す事や遊びを取りやめ、一斉に顔を向ける。
重々しい足取りで一同の目の前に立つと、稲妻模様が入った白い仮面を被った男は鋭い目付きで見やる。

「全員いるか、ウワバミ」

「ライダー全員揃っているぜ、マスクドマンの旦那」

帽子の男性……『ウワバミ』は仮面の男……『マスクドマン』に対してそう言った。
マスクドマンは重々しい口ぶりで説明を始める。

「まずはお前達に伝えなければならないことがある。―――ディケイドがこの世界に現れた」

「なんだと……!?」

マスクドマンの言葉に対して、尚樹と始めた黒服達一同はどよめく。
ディケイド……全てのライダーを倒す仮面ライダーであり、【この世界】の秩序の根幹を揺るがしかねない存在だ。
世界を破壊する悪魔とも比喩される存在に、好き勝手やられる前にどうにか始末しなければならない。
斬刃が顎に手をのせて、少し考えた後にあの時であった"マゼンタカラー"のライダーを思い出す。

「やはりか、尚樹があったあのライダー……恐らくはとは思っていたがディケイドだったか」

「え?ディケイドに会ったの?どんなやつだった?」

「二体相手に優勢に立ってたくらいには強い……」

「いいなぁ、私も一目でいいから見たかったなぁ」

斬刃の肩に乗りかかり、強請る様に声を上げる風嵐。
そんな二人のやりとりを繰り広げている事へ気にせず、マスクドマンは話を続ける。

「ディケイドは我ら"ネオライダー"の統治を揺るがす存在を許しては置けない」

「つまり、今後の課題はディケイドの討滅でいいんですかい?マスクドマンの旦那」

マスクドマンの言葉にウワバミが疑問を持って訪ねる。
彼は頷き、再び黒服達……ネオライダーの構成員達へ言葉を投げかける。
仮面の下からでもわかる、威風堂々堂とした顔つきで言い放った。

「我らの目的はただ一つ、この混沌に融合された世界に、秩序と統治を」

「「「……」」」

「そして反抗勢力を撲滅し、真の平和を勝ち取るのだ」

「「「おおおおおおおおおお!!!!!」」」

マスクドマンの言葉に盛り上がるネオライダー達。
士気が上がるそんな中、尚樹は鼻で笑いながら心の中で思っていた。
思い浮かべるのは……あの時遭遇した、小狼達の姿。


(はっ、正義や平和がなんだ。俺は俺がやりたいことをやるだけだ)


(それにしても、あの小僧ども……次会ったらただじゃおかねえ!)


―――――


彼らを連れて一度光写真館へ戻ってきた彼らは、栄次郎が出迎えに来てくれた。

「おお、お帰りなさい三人とも。おや、お客さんかい?」

「「お邪魔します」」

「おお、なら上がっていきなさい」

士達が連れてきた見慣れない四人を栄次郎が不思議そうに見ている。そんな栄次郎へ小狼とサクラは礼儀正しく挨拶を行う。
彼らに対して栄次郎は暖かく出迎えると、小狼達四人は憩いの場と化している写真室へ通される。
そこで背景ロールに描かれている『記憶の羽根』を目にして驚いた。

「サクラ姫の羽根…!」

「え、どうかしたの小狼?」

「なるほど……大体わかった、どうやらお前達はこの絵を意味が分かるようだな」

小狼を心配そうに声をかけるユウスケの横を通り過ぎ、士は背景ロールの傍までやってくると、近くの柱にもたれかかって指で指す。
そこへサクラに抱えられたモコナがぴょんと跳ね、士の肩へと飛び乗って説明を始める。

「これサクラの羽根なの。モコナ達、これを探して旅をしてるの!」

「サクラちゃんの羽根ですか?」

「ハイ……そうです。その羽根、私の記憶なんです」

夏海に聞かれ、サクラは重々しく答える。
そうして小狼達は自分達の事情を話した。
……かつて、記憶の羽根があらゆる次元の世界にばら撒かれた事。
……それによって自分の記憶が失った事。
……自分達はそれぞれの目的で次元を超える旅をしている事。
やがて話し終えると、夏海は悲しげな表情でショックを受けていた。

「そんなサクラちゃんの記憶が、思い出が欠けてるなんて」

「みんなはサクラちゃんの羽根を探してこの世界に来たのか」

「はい、もっともこの世界に羽根があるかどうかは分からないです。それでも探します」

ユウスケは訊ね、それを聞かれたサクラは笑顔を作りながら答える。
続いて、小狼は士達へ深々と頭を下げた。

「おれ達を助けてくれてありがとうございます。でも、流石にこれ以上はご迷惑はかけません。流石におれ達だけで羽根探しはやります」

「そうだよね、話を聞いたところでオレ達の事情に突っ込ませるのも悪いしね」

「悪ぃがこっちの事情はこっちで解決する」

いきなり出会った士達をこの先に起こるかもしれない危険な目にファイと黒鋼も『協力は不要だ』とそう告げる。
士達は決して悪い人間ではないことは分かっているが、だからこそ巻き込まないために距離を置こうとしている。
そんな中、夏海が声を上げて口火を切った。


「――――待ってください!士君、私達も小狼君達の羽根探し手伝いましょう」


夏海の第一声に一同は驚愕した。
彼女は士の元へ向かうと、彼に対して勢いよく声を上げた。

「士君、小狼君達の羽根探し手伝いましょう」

「聞いてなかったのか?こいつらは必要ないって言ってるが」

「そうですけど、放っては置けないじゃないですか!」

「お人よしが過ぎるぞ。馬鹿」

「馬鹿じゃありません!」

士と夏海の口論が白熱していく。
言い争う光景に小狼とサクラはおろおろとし始め、ユウスケは「またか」と苦笑いを作る。
黒鋼はどこ吹く様子で呆れ、ファイとモコナは笑みを絶やさない。
二人が落ち着きを取り戻した頃、ふと夏海は悲しみを孕んだ言葉を吐露する。

「それに、自分の記憶を無くすって辛い事じゃないですか」

「……」

夏海の言葉に士はふと思い至った。
かつて記憶喪失だった自分と、思い出を失ったサクラを重ね合わせているのだと。
記憶を失うのは辛い、ましてや自分を誰かだと思い出す旅をしている彼女と脳裏に思い浮かんだのではないかと士は思った。
そうしてやれやれといった感じで夏海へとこう告げた。

「分かったよ、それがこの世界で俺がやるべきことならな」

「……!士君!」

「士、本当にいいのか?俺はいいけどさ」

「うるさい。男に二言はない。こうなった以上、やるだけだ」

ユウスケは士の言った事を撤回はないかと確かめる。
嘘偽りのない本当の事であると小狼の肩を掴んで笑顔を向けて喜びの表情を向ける。

「よかったな小狼!」

「ありがとうございます」

「ありゃりゃー、まあいっかー黒るん。人手は多い方がいいし、彼らの善意で受けとろうか」

「けっ、勝手にしろ。後悔しても知らねーからな」

ファイに話題を振られ、不機嫌になって黒鋼はそっぽを向く。
士は小狼の元へ近づくと、指を指しながら言い放つ。

「それにしても幸運だったな、お前ら」

「え?」

「なんてたってこの俺と出会えたんだからな。手に入れられるのは約束されたと思え」

「……士さん」

「なんだ?」

「案外、いい人なんですね。安心しました」

「ッ!?何言いだすんだお前!」

小狼の言葉に動揺する士。
その様子を見たサクラや夏海は、にこやかな笑顔を浮かべていた。

二つの旅の者達の邂逅による一日は、『サクラの羽根を探す』という同じ目的をやると決めてで終わった。
 
 

 
後書き
 どうも地水です。感想が来ないという名燃料不足でモチベーション下がってますが何とか投稿してます。

今回判明したのは一同が訪れた世界は『ネオライダーの世界』。
ネオライダーなる組織が怪人達と共に世界の裏で暗躍している世界ですが、その実情は?そしてさっそく怪しい動きを行う尚樹の姿……。

士とサクラの共通点、それは『記憶喪失』。どちらも経緯は異なりますが大切な記憶を失っているのは変わりはないです。それを照らし合わせ、夏海が協力を求めた感じです。なんだこの……夏海ちゃんヒロイン過ぎない?

次回は、多分ディケクロ組の日常回に……したいなぁ←
 
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