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星河の覇皇

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第七十七部第四章 二度目の引き分けその五

「案ずるな、至近だ」
「命中していない」
「そうだというのですね」
「そうだ、当たっていないのだ」
 平然とした顔と言葉で言うのだった。
「ならばだ」
「どうということはない」
「そうだというのですね」
「そうだ、それでは驚くことはない」
 全く、というのだ。
「そうだな」
「サハラの軍人であるならば」
「これ位で驚いてはなりませんね」
「戦場ではこれ位のことは普通のこと」
「だからこそ」
「私は撤退はするが逃げることはしない」
 臆病風に吹かれて敵に背を向けることはないというのだ、撤退は戦略戦術だが逃走はまた違うものなのだ。
「渡しもまたマムルークだからな」
「だからですね」
「マムルークは逃げはしない」
「そうしたものだからこそ」
「主席閣下もですね」
「逃げることはしませんね」
「そして怯えることもない」
 敵からの攻撃そして死の恐怖にというのだ。
「それは諸君等も同じだな」
「我等もサハラの軍人です」
「マムルークです」
 即座にだ、幕僚達も答えた。
「それならばです」
「あの程度で怯えることはありません」
「当たっていないのです」
「それならば」
「この艦が沈むことはない」
 シャイターンは豪語さえした。
「艦長も他の乗員達も極めて優秀だ」
「だからですね」
「攻撃を避けてくれますね」
「常に前線にいても」
「そうしてくれますね」
「損害は受ける」
 このことは仕方がなかった、戦場に常にいては総大将といえど傷を受ける。あのアレクサンドロスも重傷を負ったことがある。
「しかしだ」
「沈むことはですね」
「決してないですね」
「そうしたことはしない」
「それだけの艦長ですね」
「信じることだ」
 艦長そして乗員達をというのだ。
「若し信じられないならな」
「このシャハラザードを降りよ」
「そして戦場から去れ」
「そう言われるのですね」
「その通りだ。そうするのだ」
 シャイターンは戦場の采配を見ていた、そろそろまた列の交代の時期だと見ていた。そう見つつ言うのだった。
「いいな」
「わかりました」
「ではですね」
「我々はですね」
「このままですね」
「私の助けをすることだ、ではまたな」
 ここでまた言ったシャイターンだった。
「戦列の交代だ」
「次は第十三、第十四、第十五、第十六ですね」
「各艦隊ですね」
「そうだ、だが第十四艦隊は今の段階でだ」
 この艦隊の状況、三次元モニターに映るそれを見ての言葉だ。
「損害が七割か」
「相当な損害ですね」
「先程の戦闘での損害です」
「修理を急がせていますが」
「順調とは言い難いです」
「そうだな、しかしだ」
 損害が目立つ、それでもというのだ。 
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