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フォース・オブ・イマジナリー

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Turn:37 チカゲの苦悩

 
前書き
ヒカルによって知らされたルカの過去
たった一つの綻びから広がっていった亀裂
同じ頃チカゲの心にも影が差していた 

 
ヴァンガードを始めて間もない頃
ルカとヒカルはよく一緒にファイトをしていた
二人ともファイトを始めた時期は同じくらい
学校でも同じクラスで仲のいい事もあり二人はヴァンガードを楽しんでいた
「団結の守護天使 ザラキエルでアタック!」
「クシナダでガード、残念でした」
「あー!持ってたの!?」

Turn:37 チカゲの苦悩

「ルカにもそんな時期があったんだな」
「ええ、あの頃は勝っても負けても二人で笑い合って、こんな風にずっとファイト出来たらって思ってました」

すべてが変わってしまったのは、二人でカードショップに行ったあの時
「私たちも混ぜてもらっていいですか」
そういってファイトしていた同学年の男子グループに声をかけたときのこと
「えーっ、弱いやつとファイトしてもつまんないよ」
一人の少年のその言葉にルカの心に影が差した

「そんなこと………」
「たまにそういう話は聞くな、そのくらいの子は自分を大きく見せたがる、ファイトの戦績が良かったりするとそういったいざこざは発生する」
「でも、それくらいなら」
「それで終われば、よかったんですけど………」

周囲の後押しもあり何とかファイトまで持っていくことはできた
だが先ほどの言葉を真に受けたルカはそのファイトに全力で臨み、その少年に完勝した
「なっ、なっ………」
「これで私たちの実力、わかってもらえました」
握手しようとルカが手を伸ばすがその少年はルカの手を振り払った
「た、たまたま勝ったくらいでいい気になんな!」
そのまま少年はデッキを持って走り去ってしまった
「る、ルカちゃん………気にしないで」
「………ったら」
何とかルカを宥めようとするヒカルだったが時すでに遅かった
「だったら、もっと強くなればいいんだよね」

「それからです、ルカちゃんがひたすら強さを求めるようになったのは」
クランを変え、驚異的な速さで実力を伸ばしていったルカ
強くなれば、認めてもらえば、そう思うルカの気持ちとは裏腹に、周囲はどんどん強くなっていくルカを恐れ始めた
「で、あのケンタというやつはその時の相手か?」
シュンの問いかけにヒカルは首を振った
「別のグループでファイトしていた子です、実力があってグループの中心にいたんですが」
「あっ、なんとなくわかった、もしかしてルカがファイトして勝った?」
ヤイバが問いかけるとヒカルはその通りだと頷いた
「それまで彼を中心に集まっていたグループは、二人が中心になっていきました」
ケンタや彼の仲間たちが加わったことで自分の考えが間違ってないと思ったルカはそのままグループに加わり、見放されないようにとさらに実力をつけようとして、今に至っていた
「そっか、ありがとうな、それでも君は、ルカから離れなかったんだな」
ヒカルの頭を優しく撫でるヤイバ
その姿に背後でヒトミがむくれていた

その日の夜、ヤイバは自室でブラスター・ブレードのカードを眺めていた
「ヤイバ、晩ご飯の準備出来たわよ」
そんな中扉をノックしてチカゲが声をかける
ヤイバもカードを戻して部屋を出る

その頃ヒトミは自宅でアリサとファイトしていた
「アタック」
「あぁー、負けたぁ」
ヒトミの勝利でファイトが終わるとなぜかヒトミがくすくすと笑い始める
「どうしたのおねえちゃん?」
「ううん、こうして家でアリサとファイトするのも楽しいなぁって」
「え?今更?」
目を丸くしたアリサを無視してカードを片付け始めるヒトミ
ふと気になったのかアリサのヴァンガードサークルに置いてあったココを手に取った
「あ、それ私の」
「ヤイバ君もこうしてルカちゃんと気軽にファイト出来たらよかったのに、そうしたら………」
「お姉ちゃん?」

「ま、しばらく大きなイベントもないし、今はゆっくりさせてもらうさ」
夕食の席でチカゲと話しながら今後について話すヤイバ
「(何もできないのかしら………私は)」
チカゲは俯きながらこぶしを握る
「お袋?箸止まってるけど?」

翌日チカゲはドラエン支部のオフィスでいつも通り仕事をしていた
そんな中マモルが知らせを持ってきた
「聞いてくれ、年度末のGクエスト、今年は我々ドラゴンエンパイアが主導することとなった」
その言葉に支部の職員たちから歓声が上がる
「開催はまだ先だがイベントを盛り上げるために準備を進めていく、アイディアがあったら持ってきてくれ」
「Gクエスト………」

同じ頃カードキャピタルではシュンとヒトミ、ヤイバとアリサでファイトが行われていた
「やっぱりきついなぁ………」
アリサのデッキの自慢の防御をなかなか突破できず苦戦しているヤイバ
シュンの方も苦戦しているようでヒトミがペンタゴナル・メイガスのスキル発動の宣言をすると頭を抱えていた
「あ、クリティカルトリガー」
「げっ!?」
そちらに気を取られているとアリサがクリティカルトリガーを引き当てたことで窮地に陥ってしまう

オフィスで仕事していたチカゲにマモルが声をかけた
「宮導君、全然休み取ってないだろう?たまには家族とゆっくりするのもいいんじゃないかな?」
「家族とゆっくり………ねぇ」
「そうだ、こんなのはどうだろう?」

海の見えるコテージへとやってきたヤイバたち
みんなで荷物を運びこんでいる
「っかし懐かしいなぁ」
引率はチカゲのほかにカムイが来ていた
というのもチカゲは運転免許を持っていないので誰かに頼まなくてはいけなかったのだ
シュンとヒトミ、アリサやタクヤ達も一緒でなかなかの大人数だということもあり荷物運びは順調に進んだ
「カムイさんはここ来たことあるんですか?」
「おう、アイチお兄さんや櫂達とな」
カムイの話にヤイバやシュンが関心を持った
「お前たちみたいにチーム組んで大会参加してた頃は、よくこうやってみんなで合宿みたいなことしたもんだ」
「これ、支部長の提案ですけど一緒に行きました?」
「ん?マモルさんもまあ、似たようなことしたことはあるけど、それ俺は行ってないやつっすね」
チカゲの問いかけに考え込みながら答えるカムイ
「そうですか………」

コテージのそばの休憩スペースのような場所で早速ファイトに興じるヤイバたち
「ブラスター・ブレードでパーフェクトライザーにアタック!」
ブラスター・ブレードの攻撃を受けたパーフェクトライザーが転倒する
「敵わないなぁ」
困ったように頬を掻くスグル
一方でヒトミもタクヤとのファイトに圧勝していた
「シュンは………お?」
カムイとファイトしていたシュンは困ったように肩を落とした
「惜しかったな、7ターン目のアタックはいい感じだったぞ」
「それでも届かなかった………俺もデッキを改良すべきか」
ヤイバやヒトミがデッキを改良して強くなっていく中シュンのデッキはあまり変化していない
「ま、合宿はまだ始まったばかりだからな、気長にやっていけばいいさ」
「そういえばお袋はどこ行ったんだ?」

チカゲはコテージのリビングでデッキを調整していた
「(私にだって出来ることはあるはず………だって、こうなったのは全部)」
一枚のカードを手にしながら険しい表情をするチカゲ
「どうしたんだお袋?そんな顔でカード見て」
「あっ、ヤイバ!?どうしたの」
「いや、カムイさんがみんなで晩飯の支度するから探して来いって」
「そう、ありがとうね、呼びに来てくれて」

カレーを作るためにみんなで手分けして作業に取り掛かる
「むぅ………」
「シュンさん大丈夫ですか」
ニンジンの皮むきに苦戦するシュン
隣で順調にこなすアリサに心配されるほどに
「あまり慣れていないからな、ヤイバだって似たような………」
「ん?なんか言ったか?」
慣れた手つきでジャガイモを切っていくヤイバにシュンは閉口する
「まあ、あたしが仕事で遅くなるときとか、ヤイバは家のお手伝い結構してくれてるからさ………はぁ~」
「チカゲさん、なんだか元気ないですね」
「え?そんなことないよ、見ての通り元気元気」
煮込む前のお肉を軽く焼いていたチカゲとヒトミだがチカゲの様子が気になるようだ
「そこの二人、雑談するのもいいけどあんまりぼーっとしてると」
「え?………うわぁぁ!?」
鍋の支度をしていたカムイの指摘で手元のフライパンから黒い煙が上がってることに気づいた二人が声を上げる

お肉が一部焦げるハプニングがあったものの無事出来上がったカレーをみんなで食べ後片付けを終える
チカゲがヤイバに声をかけようとすると
「っしゃ宮導、俺とファイトしようぜ」
「ここでもファイトかよ、なんかいつもと変わんねえなぁ」
「あんまり遅くならないようにしろよ」
先に声をかけたタクヤとファイトを始めてしまう
デッキを見つめチカゲは部屋へと下がっていく 
 

 
後書き
次回予告
「それにしてもカムイさん、3号店の方はいいんですか?」
「ああ、大丈夫大丈夫、うちは家族でやってるし、数日抜けるくらい」
「へぇ………家族で」
「俺と奥さんと一人娘、最近じゃ娘のダチもバイト入ってくれるし」

turn:38 ヤイバVSチカゲ

「そういや、一号店も元々家族経営なんだぜ」
「アットホームすぎるでしょカードキャピタル」 
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