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星河の覇皇

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第七十七部第二章 第二次国境会戦その四

「それもいい、だからだ」
「今のお食事で、ですか」
「問題ない」
「そうですか」
「私も戦場にいる、それならだ」
「将兵と同じものをですか」
「口にすべきだ、戦場にいるとだ」
 まさにというのだ。
「誰もが同じものを口にすべきだな」
「それが戦争というものですね」
「オムダーマン軍の伝統だ、我々はエウロパ軍とは違う」
 この軍隊とはというのだ。
「士官だから兵士だからといって食事を分けない」
「その点は連合と同じですね」
「ムハンマドもそうだった」
 イスラム教の開祖であるこの人物もというのだ。
「彼は贅沢であったか」
「いえ、質素でした」
「そうだったな」
「戦場にいる時は兵達と同じものを口にしていました」
「私も同じだ、私はムハンマドではないが」
 彼の様に偉大ではないともだ、アッディーンは言葉の中に入れていた。ムハンマドはイスラム社会においてそこまでの位置にいる。伊達にイスラム教を開いた訳ではない。
「しかしだ」
「ムハンマドの様にですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「将兵達と同じものを食べる」
「そうされるのですね」
「私は入隊した時からそうだったしな」
 一軍人として戦っていた時からというのだ。
「だからな」
「今もですね」
「このことを何とも思っていない」
「そうですか」
「だからこのままでいい」 
 レーションを開きその中の野菜を煮たものを口にしつつの言葉だ。香辛料が実に利いていてサハラ好みの味になっている。
「気遣いは無用だ」
「それでは」
「しかし。これが出来るのは私が大統領だからか」
「皇帝になりますと」
「どうしてもか」
「はい、実際大統領もです」
 参謀は難しい顔で述べた。
「主に身辺の警護の為に」
「食事は特別なものをか」
「口にされることが多いです」
「私も普段は毒見を受けた料理を口にしているが」
「それはやはりです」
「毒か」
「はい、その心配がありますので」
 だからだというのだ。
「どうしてもです」
「特別に作った料理でだな」 
 例えその内容が質素でもだ。
「専属のシェフによる」
「はい、そのうえで」
「食べるものだな」
「若し閣下に何かあれば」
 間違っても毒殺される様なことがあればというのだ。
「恐ろしいことになりますので」
「そうだな、レーションなら安全だと思うが」
「確かに。しかし皇帝になられますと」
「尚更か」
「身辺の警護はです」
 この時はというのだ。
「余計にです」
「厳重になるからか」
「同じ国家元首でも違います」
 大統領と皇帝ではというのだ。 
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