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第三章 リベン珠
  第26話 ダサかっこいい的な何か:前編

 月の洞窟を抜けてた先で二人に待っていたのは、開けた光景と大規模な谷であった。
 その光景を前にして、二人は意を決して言い合う。
「深い谷ですけど……降りていかないと行けませんよね」
「そういう事です。目的の場所へ行くためには避けては通れませんよ」
 このように、二人の意見は一致するのだった。目も眩むような深い谷であるが、ここを進まない事には『ある者』の元へは辿り着けないのである。
 ここに二人の答えは決まったのだった。後はそれを行動に移すのみである。
 二人は、谷への道のりである、細く危なっかしい道を辿りながら、谷を下へ下へと降りていったのである。
「ここは……危ないですね」
「ええ、でも引力は地上や月の都と比べて低いから、万が一の事があっても対処出来るでしょう」
「それはそうですね」
 そう、勇美は今まで感じていた違和感の正体をここで確信に至るのだった。どうりで体が軽いと思っていたら、それは引力の問題であったという事なのであった。
 慣れ親しんだ地上の引力とは違うもの。だが、今勇美はこの状況を楽しむ事にしたのだ。この身の軽さは中々経験出来ないが故に、味わっておかなければ損だというものであるからだ。
 そうこうしている内に、二人は危なげながらも、どうにか無事に谷の底まで辿り着いたのであった。
「ふう……着きましたね」
「ええ、目的地まであと一息ですよ、頑張って下さい」
 この後は鈴仙の案内の元に従って行けばいい。だから、これで一安心だろうと勇美は思うのだった。
 だが、世の中というのはそううまくいかないものなのであった。勇美が肩の力を抜こうとしている所で、上空からこんな声が掛かって来たのだった。
「さあ、やっちゃいなさい!」
 その声に勇美は「?」と首を傾げた。そしておもむろに上空へと顔を向けて……彼女は今の状況を知ってしまったのである。
 上空には空を飛ぶ何者かがいた。そして、その者の右手に握られているのは。
「松明……?」
 それが勇美が確認出来た事であった。その者の手には、月面にはどう考えても不釣り合いである、洞窟内等の暗闇を照らす道具である松明が握られていたのだった。
 だが、それは今の状況においてメインの問題となる事ではなかったのだ。一番の問題……。それは上空には無数の妖精が飛び交っていた事である。
「あ……あれってさっき鈴仙さんが洞窟で倒した妖精さんのお仲間って事ですよね?」
「どうやらそのようですね」
 勇美の指摘に、鈴仙も同意見だと示した。そして、ただそれらは空を飛んでいてくれるだけで済んでくれる事はないだろうと二人は直感したのだった。
 空を飛ぶ何者かが、右手に持った松明の炎をたぎらせると、それを合図にしたかのように妖精達は、さも当然と言わんばかりに勇美達の元へ目掛けて飛び掛かって来たのだった。
 勿論、遊んで欲しくてじゃれに来るような微笑ましい光景ではなかったのだった。彼女らは当然のようにエネルギー弾発射というおまけ付きの元飛んで来ていたのだから。
「来た!」
「そのようですね、これはまずいですよ!」
 二人も今の状況が危機迫る事だという事はすぐに分かるのだった。彼女達はその攻撃をかわしながら、早急に対策を練るのだった。
 応戦するにも、敵の数が余りにも多いのである。故にまともに正面から立ち向かうのはこの場合愚策と言えるだろう。
 かと言って、このまま無視して目的の場所へ行ける程、今の猛攻は生ぬるいものではなかったのだった。
 さてどうしたものか。そう考えている内に、特有の感覚に優れた長い耳を持つ鈴仙があるものを発見したのだった。彼女のその耳は決して飾りではないという事であろう。
「勇美さん、こっちです!」
「鈴仙さん?」
 勇美を促す鈴仙に、一体どうしたのかと彼女は思いつつも、今はなりふり構わずに鈴仙に従うのが一番得策だろうと思い、深く考えずに勇美は従うのだった。
 そうして勇美は促しながら走る鈴仙の後を必死に着いていったのである。
 そして、気付けば二人は……谷に存在する洞窟の前に来ていたのだった。
「はあ……はあ……。また洞窟ですか」
「ええ、私としても芸がないとは思いますが、ここは格好の事は気にしていては元も子もなくなるでしょう」
「そうですよね。背に腹は変えられないって言いますしね」
 この洞窟を今は避難場所として利用するしかない。些か先程から使い古したような手段であるとは思いつつも、二人はここを活用する選択肢を選ぶのだった。
「逃げに出たのね。でも、私からは逃げられないわよ」
 洞窟の中へと向かった二人の背後から、そんな声が聞こえた。

◇ ◇ ◇

 そして、二人は妖精達の攻撃をかい潜って洞窟の中へと一時避難をしたのだった。ここで体勢を立て直したり、敵の攻撃が止むのを待ったりという作戦を練る事が出来るだろう。
 二人は一頻り洞窟の内部まで侵入したと感じた所で、勇美はここで切り札を切る事にしたのである。それは無論、今まで彼女達のピンチを幾度となく切り抜けさせて来た、ブラックカイザーその者であるのだ。
 その力の発動の為に、勇美は皇跳流から譲り受けた友情の証、アバドンズジェネレーターを自分の分身たるマックスに取り込ませたのである。
 そして、いつものようにマックスは頼もしい黒塗りの機械の騎士、ブラックカイザーへと変貌をしたのだった。
 だが、今の状況を少しでも優位にする為にはこれでは足りないのである。ここで、勇美は頼りになる自分の仲間へと呼び掛ける。
「鈴仙さん、お願いします」
「はい、任されました♪」
 勇美に言われた鈴仙は、お安いご用と言わんばかりに、彼女の持ち味である狂気の瞳の力を発動する。
 勿論、彼女自身にではない。例によって鈴仙は、勇美の分身たるブラックカイザーの元で自身の力を発揮したのだった。
「【暗視「ルナティックナイトアイズ」】」
 その力の名を勇美は宣言した。それによりブラックカイザーの元に鈴仙の力が反映される。
 鈴仙が発動したのは、狂気の瞳による夜目の効果である。その効果をブラックカイザーのアイサンサーに投影したのだ。
 それにより、ブラックカイザーには暗闇でも周りの様子がよく見える暗視の性能が付加されたのである。
 勿論、その効果は本体である勇美にも反映されている。彼女自身の視界も今では暗闇でもよく見渡せている状態なのである。
 そして、狂気の瞳の持ち主である鈴仙にも暗視の効果は当然現れている。つまり、今のこの場にいる二人は洞窟内における視界の心配は不要となっているとう事であった。
 この選択肢を勇美が選んだのには理由があった。
 それは、確かに敵のボスと思わしき存在は「私からは逃げられない」と言ったのだ。その事から勇美は、そのボスが自ら赴く事を予想したのであった。
 そう、勇美はその存在と戦う事を選んだという事である。確かに敵の攻撃を避ける為にここまで逃げて来た訳だが、それは敵との戦いを放棄したという事ではなかったのだ。
 そもそも、勇美は少なくともこの異変を解決するまでは逃げないと心に決めたのである。
 勿論、避けられる戦いはするべきではないものだ。だが、今の状況では敵に背を向けて進めはしないと考えるのが妥当だろう。故に勇美の答えは決まっていたのだった。
 だが、ここで勇美は謝っておかなければならないと思うのだった。それは他でもない、鈴仙に対してである。
「鈴仙さん、ごめんなさいね」
「何がですか?」
 心当たりのない事を勇美から言われて、鈴仙は何事かと首を傾げる。
「それは、こうして今『私の決心』にあなたを巻き込んでしまっている事ですよ」
 成る程、そう思って鈴仙は聞いていた。しかし、ここで彼女は首を横に振りながら言った。
「気にしないで下さい。この事は私の為にもなるのですから」
 そう言って鈴仙は言い始めた。曰く、自分も今までのように逃げてばかりではいられないのだと。だからこうして今、敵に立ち向かおうと思うのだと。
「だから、寧ろ好都合という訳です。だから勇美さんは気に病む事はないという事ですよ」
「そう言ってもらえると有り難いですね。それじゃあ、私と地獄の果てまでお付き合い下さい♪」
「望む所です♪」
 そう言って二人は微笑み合うと、敵を迎え打つ為に別々に動くべく、ここで解散するのだった。
 その光景を見ながら、今この場所に侵入して来た者は思うのだった。
「あの二人、仲が良くていいなあ。まるで『ご主人様』と『ご友人様』みたいで」
 そう呟くと、その者はクスリと笑みを零した後に続き、
「あの二人も地獄に立ち向かう覚悟を見せた事だし、こっちも『本場』の地獄ってモノを見せてあげないとね♪」

◇ ◇ ◇

 洞窟内で鈴仙と解散した勇美は、今洞窟の中程まで向かった所である。ブラックカイザーの探知能力が敵の存在を察しているが為に、それをおびき出して迎え打つ算段である。
 そうして、一旦敵との距離を十分に取った勇美は、物陰に隠れて一息つくのだった。
「やっぱり、こんな洞窟で一人で行動ってのは心細いものがあるよねぇ……」
 そう独りごちながら勇美は些かこの作戦が良かったのかと顧みていた。だが、その思いを勇美は振り切る事にする。
「ううん、二人でこの作戦がベストだって決めたんだから、後はそれを信じるだけだよ」
 勇美はそう自分自身に言い聞かせるように言葉を発した。
 その後は、勇美は呼吸を整えて冷静になり、敵の動向を陰から伺っていた。
 そして、敵の動向はすぐ分かる事となる。何故なら敵は手に持った松明で洞窟の中を照らしながら進んで来たのだから。
 敵のその様子を見ながら勇美は思った、「ここは先手必勝だ」と。
 思い立ったが吉日、彼女なすぐに行動に出る事にしたのだ。いつもの通り、プレアデスガンの出番である。
 だが、今回は『いつも』とは様相が違うのであった。何せ切り札であるブラックカイザーを繰り出しているのだ。故に戦略の幅も広がるというものである。
 その状況を勇美が活かして生み出した戦術が、プレアデスガンの二丁拳銃というものだったという事だ。
「いっけえ~! 【星連弾「プレアデスツインブレット」】!!」
 そう言うや否や、勇美は二丁拳銃装備のブラックカイザーに陰からの攻撃を命じたのである。それに応える形で、彼は両手の銃の引き金を引いていったのだった。
 それにより、単純計算で普段の星弾よりも攻撃力が倍の射撃が行われていったのである。これには敵も堪ったものではなかったようだ。
「きゃっ!」
 敵は避けきれない程の星々の弾を浴びて、思わず悲鳴をあげてしまった。この事から、敵は得体の知れない存在であろうとも、確かに攻撃は通用する事は窺えるのだった。
 だが、今の攻撃で本格的に敵を怒らせてしまったのも事実だったようだ。
「……やったわね」
 そう怒気を声に含ませながらその者は呟いていた。
 そして、この瞬間勇美は敵の掲げる松明の明かりのお陰で、漸く謎のヴェールに包まれていた敵の外観をここで知る事が出来た。
 その者は金髪で、背には半透明の羽根が存在していた。その事と数多の妖精に命令を下していた事から判断して、彼女も妖精……そしてそれらの首魁と考えられるだろう。
 敵の種族はここで判明した。だが、勇美は他に彼女に対して目を引く要素を感じていたのだった。
 それは妖精である事以前に目が行く所であろう。彼女の服装は、胴部と脚部が一体の全身タイツという突飛な出で立ちであったのだ。
 それだけでもやや奇抜と言えるだろうが、他の幻想少女はもっと特異な格好をしている者もいるが故に、そこまで話題にもならないだろう。
 だが、彼女は他の者の追従を許さないと言い切っていいだろう様相であったのだ。それは、そのタイツのデザインがアメリカの国旗である星条旗を模したような思い切ったものだったのだ。
 更に、頭には道化師のような横縞模様の二股の帽子を被っている事が彼女の雰囲気の『濃さ』に一役買っているのであった。
 それらの彼女の様相を見て、勇美は色々思うのだった。
(何か……例えば『らんらんるー』とか、はたまた今流行りの『カーモンベイビー』とかいうワードが出て来そうだねぇ……)
 そう思いながら勇美には思考の泥沼に嵌まりかねない事実が頭に浮かんで来たのである。──妖精の世界にも、アメリカの文化って浸透しているのだろうか、と。
 そんなしょうもない事を勇美が考えている中で、そのアメリカ妖精は言葉を発した。
「よくも、このクラウンピース様に痛手を負わせてくれたわね。この鬱憤は晴らさせてもらうわよ」
 そう言って妖精──クラウンピースはスペルカードを取り出したのである。タイツを身に纏っているが為に服にはしまう所がないので、頭の帽子の中から。
「敵は星を使ったんだから、あたいもこれで行かせてもらうわよ」
 クラウンピースはそう言いながらスペルカードの宣言をする。
「【獄符「スターアンドストライプ」】」
 その宣言により、彼女の体から複数の星形のエネルギーが飛び出したかと思うと、それらが横に一直線に整列するように並んだ。
 すると、その星形のエネルギーから直線上にレーザーが射出されていったのであった。それも、星は複数あるが為に、そこには正に縞模様が描かれているような光景だった。
 勿論、それらの縞レーザーが向かう先は、クラウンピースが気配を感じた勇美に対してである。
 遂にレーザーは勇美のいた所を貫いたのである。しかし……。
「あれ……?」
 クラウンピースは首を傾げた。確かに自分は気配のする方向に向けてレーザーを発射した筈であった。だが、現状は誰もいない岩壁を抉るに終わってしまったのである。
「くぅっ……うまく逃げたか」
 彼女はそう苦々しげに呟いた。だが、彼女は妖精である。故に物事を後に引きずらずに考える事が出来るのだ。逆に言うと物事を余り後先考えずにまず行動してしまうというものであるが。
「まあいいか、逃げたんなら、もう一人の方に当たれば」
 そう言ってクラウンピースは勇美の側から離れていった。
(……)
 その様子を勇美は、聞き耳を立てながら慎重に見据えていたのだった。そして、クラウンピースに気付かれなかった種明かしをそっと自分自身にした。
(【隠符「ステルスハイド」】……)
 それは、韋駄天と大黒様の力を用いて行った、迷彩効果をもたらすスペルであった。これにより、勇美とブラックカイザーは見事に敵から自分達の事を隠すのに成功したという訳である。
 勇美の方は、ひとまずこれで安心であろう。だが、彼女は今の自分のやるべき事を忘れてはいなかったのだった。
(鈴仙さん……敵はクラウンピースさんっていいます。そして、そっちに向かいました)

◇ ◇ ◇

 そのメッセージを鈴仙は自前のその大きな耳で受け止めていたのだった。先程のそれは、勇美の思考をブラックカイザーに送り、そこから信号にして鈴仙に届くようにしたのである。
(勇美さん、分かったわ。こっちは任せて)
 鈴仙はそう勇美にメッセージを送り返すと、今の状況に集中するのだった。
 敵は松明の明かりを元に光を頼りに探っている現状。そして、自分は狂気の瞳の力で暗闇でも状況を把握する事が出来る。つまり、幾分自分の方に分があるというもののようだ。
 だが、ここで油断は出来ないだろう。先程の勇美の知らせから、敵のスペルカードの威力は高い事が窺えるからだ。
 他にスペルカードを使う妖精と言えば、氷の妖精であるチルノだが、今の話から察するにクラウンピースはチルノよりもそのスペックが遙かに上回ると考えていいだろう。
 何より月面であれ程の数多の妖精を統率していたのだ。故にその実力というものは得てして知るべきだろう。
 そう鈴仙が思考を巡らせている間にも、敵はこちらに近付いてくるのだった。松明の明かりがこちらに向かっているのが分かる。
(来た)
 そうと分かれば先手必勝というものだろう。鈴仙も勇美と同じように、やられる前にやる戦法と取ろうとしたのだ。
 だが、それを敵は許しはしなかったようである。
「さっきは相手に先に攻撃を許したからうまく逃げられたけど、今度はこっちから攻撃すればどうかな~?」
 そう言ってクラウンピースはにんまりと笑うと、再度スペルカードを取り出すのだった。──無論頭の帽子の中から。
「【獄符「グレイスインフェルノ」】♪」
 スペル宣言を聞きながら鈴仙は思った。──この妖精は意外と賢いと。これではどこぞの氷精のようにその頭の弱さを付け入って反撃の隙を狙うのは難しいだろうと。
 だが、いつまでもそう思ってもいられないだろう。敵が先に仕掛けて来たのだから、こちらはそれに対処しなければならないというものである。
 鈴仙がそう考えている所に、クラウンピースは手に持った松明を高らかに振りかざしたのである。
 するとどうだろうか。そこから燃えさかる紅蓮の炎が放出されていったのだった。そして、その炎は地を這うように洞窟の床を突き進んでいったのである。
 その炎は一頻り放出され、気付けば辺り床は炎で埋め尽くされた箇所ばかりになっていたのであった。
(これで逃げ場をなくすつもり……?)
 鈴仙はそう思った。やはりこういう知恵が回る辺り、チルノと同じに考えてはいけないだろうと。
 だが、その鈴仙の読みを遙かに上回る行動をクラウンピースは取るのだった。
「そして、これも喰らっちゃいなさい!」
 言うとクラウンピースは松明を振ると、そこから火球を発射した。
 周りが炎で包まれている中でのその行動。一見その攻撃は炎に阻まれて通りづらいと思われたのだが、それは違ったようだ。
 何と、火球が近付くと周りの炎はそれにかするような絶妙な動きを見せて、火球を避けていったのである。まるで火球の通り道を作ってあげるかのように。
 更に、周りの炎が火球に纏わり付き、その威力に相乗していったのだ。これにより単純計算で火球の威力が上がったのである。
 相手の足止めをしつつ、それに阻まれないどころか、逆に威力向上に繋がる攻撃をする。非常にトリッキーで対処のし辛い攻撃と言えよう。
 だが、相手は戦闘訓練を受け、その後も鍛錬を欠かさなかった鈴仙・優曇華院・イナバなのである。故に彼女はその変則的な攻撃に臆する事なく立ち向かったのだ。
「面白い攻撃をしますね。でも甘いですよ」
 そう言って鈴仙は、狂気の瞳の力を発したのである。すると、例の如く火球の軌道が変化されていき、鈴仙のいる所からかけ離れたあらぬ方向へと飛んでいったのだ。
 そして、火球は岩壁にぶつかるとその場で爆ぜてそこに穴を開けてしまったのである。そこから、その威力を計り知る事が出来るであろう。
「えっ!?」
 これにはクラウンピースは驚いてしまった。足止めの炎に阻まれる事なく直進出来るという理に適った火球攻撃を、それをものともせずに対処してしまう相手の力量には驚きを隠せなかったのだ。
 だが、妖精としても格の違う彼女。驚きはしたが、直ぐに平静を取り戻して言った。
「やるわね。でも、周りの炎はどうするの? これがある限り、あなたは自由に行動出来ないわよ」
 それが問題なのである。いくら火球の軌道を変えられるといっても、鈴仙は今足下を這う炎に阻まれて思うように身動きが取れない状態なのだ。故に、今の分はクラウンピースにあると言えるのだった。 
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