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バリヨン

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第四章

「かえって貰えるものは少ない」
「そうなりますか」
「そのことがわかりました、まあ悪いものを貰わなかっただけ」
「よしとされますか」
「そう考えています」
 こう泉に話した、そして。
 泉が尾崎にこのことを話すと尾崎はこう言った。
「それは前田さんが確かに欲が深くてもな」
「道を踏み外していないので」
「バリヨンも悪いものは与えなかった」
「松脂としたのですね」
「松脂は松脂でいいものだ」
「売れば儲かりますし」
「何かと使えるし魔除けでもある」
 こう泉に話した。
「あれはあれでいいものだ」
「はい、松脂は魔除けとして実にいいものです」
 泉は師に確かな声で答えた。
「あれは」
「妖怪を書いているとわかるな」
「よく」
「そうだ、若し前田さんが道を踏み外していたらな」
「松脂どころではないですね」
「果たしてどうなっていたか、だがあの人は確かに欲が深い」
 この欠点はあるというのだ。
「だからな」
「バリヨンも小判は渡さなかったのですね」
「人は人を見るが」
「妖怪もですね」
「そうだ、しかし松脂でも悪いと思わない前田さんはな」
 その彼はというと。
「それはそれで立派だな」
「左様ですね」
「儲ける手段にしてご自身でも欲が深いとわかっておられる」
「それはそれで、ですね」
「立派なことだ」
「人として」
「そう思う」 
 尾崎は泉に話した、そしてだった。
 泉に今度は前田を入れて三人で飲むことを提案した、泉も頷き前田も話を聞いて快諾した。明治の頃に実際にあった話である。


バリヨン   完


                2020・11・14 
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