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星河の覇皇

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第七十七部第一章 二度目の嵐の前その十九

「そうして送っているだけだけれど」
「送らない日もある位だ」
「しかし本国も何も言ってこない」
「我々がサハラにいればそれでいいからね」
 各国政府もこうした考えだ、とかく連合各国は連合の外にある国のことは敵であるエウロパ以外は無関心なのだ。
「だからね」
「極論すればね」
「その通りだね」
「ここに向かう際もそう言われたし」
「サハラにさえいればいい」
「それだけで充分だと」
「情報はネットを見ても手に入るしね」
 サハラのそれもというのだ。
「各国の内部事情もね」
「連合の中では重要ではないからね」
「特にね」
「サハラのことは」
「本当に」
「そんな風だから」
 それでというのだ。
「我々はね」
「暇だね」
「本国も何も求めてこないし」
「只の留守番でいい」
「そんな風だから」
 何しろアラビア語を喋ることも読み書きが出来なくとも給料を貰えるというだけで大使に募集した無職の青年が面接の場で即座に採用と言われる位だ、この青年はそれでサハラで大使としてずっと暮らして一財産を得るまで給料を貯め込み一生を過ごした程だ。
「我々はね」
「大使館でも暇で」
「君はその間ゲームをしている」
「そうしているのだね」
「そうさ、それは本国にとってもね」
 大使はさらに話した。
「どうでもいいことの様だね」
「勤務時間中は大使館にいればいい」
「それだけだね」
「私もそうだがね」
「私もだよ」
「今は会談中だがね」
 そうした名目で談笑をしているが表向きそうならそれでいいのだ。
「まあサハラの状況については」
「オムダーマン国防省は多忙」
「二十四時間勤務が続いている」
「本国にはそう連絡しよう」
「それだけだ」
「今日の仕事はそれで終わりだしね」
「帰ってメールを送ればいい」
 イスラム教国の大使はまた言った。
「これでね、そして送れば」
「ゲームだね」
「君はそのゲームをするんだね」
「そうするんだね」
「そうさ、そしてね」
 そのうえでというのだった。
「今日も儲けるさ」
「バーのマスターとして」
「来る客達に美味い酒を飲ませて」
「そうするんだね」
「ああ、昨日はジントニックが売れた」
 このカクテルがというのだ。
「今日はどの酒が売れるか楽しみだ」
「今日はモヒートか?」
「それともスクリュードライバーか」
「それを考えるのも面白いな」
「今日はどの酒が売れるかということも」
 連合各国の大使は気楽にこうした談笑を楽しんでいた、彼等は至って呑気なものだった。それは戦場に行っている観戦武官達よりも遥かにだった。
 その観戦武官達は戦場が見えるだが戦禍が及ばない様な場所に待機し続けていた、そのうえで両軍の到着を待っているが。
 連合軍中央政府軍の者達が一番多かった。しかし。
 彼等もだ、両軍が来るまでは呑気なものであった。下士官や兵達も実に落ち着いていた。 
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