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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第11幕)

(グランバニア城)
ピエッサSIDE

魔道人員輸送車(バス)を降り、城内へ入る。
私は顔パスで王家のプライベートエリアまで入れるが、陛下はアイリーンの事を警備の兵に伝えてくれてたらしく、彼女も問題なく奥へと進む事が出来た。

目的の娯楽室は、グランバニア城3階……王家のプライベートエリアの奥で、城門からかなり遠い。
宰相閣下から聞いた話では、元々この城に娯楽室は無かったらしい。だが陛下のピアノ演奏姿を見たい王妃陛下が、珍しく我が儘を言って作らせたそうだ。私でも我が儘を言うお方じゃないと知ってるので、本当に珍しい事だ。

そのような事等が理由なのか、兎も角遠い。
そして防音対策はバッチリだ。
娯楽室と言う名前だが、ほぼ音楽室なのも頷ける。

娯楽室へと続く長い廊下には、宮廷画家の方々が描いた陛下や王妃陛下、そして一応宰相閣下等とかの絵が飾られている。プロが書くだけあって本当に上手いと思うが、宰相閣下の絵だけ美化が入ってる気がするのは何故だろう?
因みに陛下の絵の前に来る度にアイリーンが立ち止まるから、中々目的地に近付けない。



さて、やっと娯楽室に到着した。普段だったら城門から10分位なのだが、今日は“何故だが”20分近くかかった。
宰相閣下の絵の前を通り過ぎる瞬間、ボソッと『この絵に需要があんの?』と聞こえた気がしたが、気のせいとして無視しよう。

さて……娯楽室前に着いたが、この部屋は防音対策の為、特殊な造りになっている。
と言っても大した事では無い。芸高校(芸術高等学校)の音楽室も全て同じ造りになってる。簡単に言えば二重扉だ。

最初の扉(外扉と言う)を入ると、3メートルくらいの短い廊下があり、その先に次の扉(内扉と言う)がある。
外扉も内扉もそれなりに防音効果はあるが、二重にする事によって娯楽室内の音は完全に漏れる事は無くなる。

ただ先程も言ったが、それぞれの扉の防音効果はそれなりなので、室内で大きな音で演奏してれば外扉を通った時点で仄かに室内の音が聞こえてくる。
そして何故だか今日は室内からバイオリンの音が聞こえてきた。

バイオリンなんか今まで無かったし、誰が演奏してるのか気になって慌てて内扉を開けて中に入る……と、そこには陛下が古びたバイオリンを辿々しく弾いていた。
流石の陛下もバイオリンは苦手なのか、お世辞にも上手とは言い難い。

「……お? いらっしゃい。早かったね」
「も、申し訳ございません……お待たせしてしまった様で!」
私達の入室に気付いた陛下は、演奏の手を止めて眩しいくらいの笑顔で我々を向かい入れてくれた。

「待ってないよ。昨日手に入れたバイオリンの練習をしてただけだから」
「“昨日手に入れた”と言う事は、陛下はバイオリンを弾くのはまだ初心者ですか?」
私も気になった一言だったが、アイリーンが代わりに聞いてくれた。

「うん。今朝方に君らの学校へ行ってバイオリンの先生に教科書を貰って、午前中は謁見しながら教科書を読んで、午後から仕事サボって練習してた。ゴメンね、耳障りな音を聞かせちゃって」
「とんでもございません。何でしたら練習のお手伝いを致しますよ」

「お! アイリーンちゃんはバイオリンも出来るんだ?」
「作詞作曲以外なら音楽関連は天才ですから(笑)」
言うなぁ……陛下を前にしても。

「どっかの宰相みたいな物言いだけど、その時が来たらお願いするよ」
「是非♥」
何処かの宰相って何所の宰相だ? 知り合いっぽいなぁ……アイリーン、解ってるのかな?

「それで陛下。昨日バイオリンを入手されたようですが、今回のアイリーンへのオファーと関係があるのですか?」
「ああ……う~ん……直接は関係ない。まぁ序でだから仕事の内容を話すね」

「あ、でしたら私は席を外した方が良いのでは?」
「いや、これも序でだからピエッサちゃんも聞いといてよ。今後の為の注意事項もあるから」
出来れば面倒事には関わりたくないのだが……





「……と言う訳で、ラインハット王国の田舎にある村の教会を復興する手伝いをアイリーンちゃんにお願いしたい」
「なるほど……内政干渉になるかもしれないから、グランバニア王家は直接関わってない事にするのですね」

「うん。それに伴い、今後注意して欲しい事がある」
「「今後?」」
陛下のお言葉に台詞をハモらせる私達。

「ちょっと待ってね」
そう言うと陛下は懐から瓶底の様な眼鏡と付けひげを取り出し、それらを整ったお顔に装着した。 ……変相……かしら?

「この状態の僕を見たら『陛下』とか『王様』とか『リュカ様』とか呼んじゃダメね。後ろ姿だけ見て“陛下”とか呼んじゃって、正面から見たらコレだったら、速攻で人違いだった事を大声でアピールして。この男“プーサン”って名前なんだけど、グランバニア国王と混同する事は最大級の不敬罪になるからホント注意してね」

「なるほど……王家が関わってないのですから、プーサンさんが陛下で在る訳が無いですね」
「そういう事」
あぁ……私でも理解出来た。

「そう言えば、昨日バイオリンを入手なさった経緯が解らないままなのですが?」
「うん、それ! 実は愚痴を聞いて欲しかったのはそこなのですよ!」
アイリーンが興味本位なのか、質問したら愚痴を聞く事になった。

「仕事内容の説明でも言ったけど、昨日のうちにピアノが欲しかった訳さ。そこに居たラインハットの王にも何とかならないか聞いたけど、アイツってばヘッポコだからさ……全然役に立たなかった訳さ!」

「は、はぁ……」
「それは何というか……」
他国の王様をヘッポコと評され言葉に詰まる私達。

「でねぇ……本当は頼りたく無かったんだけど、背に腹は代えられないって事で、ハゲマンに頼る事にしたの」
「ハ、ハゲマン……?」
知らない人名が出てきた。

ピエッサSIDE END



 
 

 
後書き
宰相閣下の描かれた絵って
制作者は誰だろう? 
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