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仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww

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第13話

「な・・・・・・!?」

 そんなことがあるものか。あってたまるものかと、アラタは頭の中で否定し続けた。そうしなければ、今眼の前で起きている現象に、膝を屈してしまいそうになるからだ。
しかし。一人の適合者に複数のアナザーライダーの力を持ってはいけない、なんていうルールがあるかと言えば、否だ。


 一人の変身者による、複数のアナザーライダーへの変身。


 アナザーライダーへの変身といえば、アナザージオウの固有能力の一つでもある。だが、アナザージオウが他のアナザーライダーの力を使う為にはドライバーを経由しなければならないのに対し、他の変身者が使うには、アナザーウォッチを起動するだけで他のアナザーライダーへと変身が可能になる。だが、複数のアナザーウォッチを所有している者が厄介なのはそれだけではない。


――単純に、命のストックが増えるからだ。


アナザーライダーに変身する者は、アナザーウォッチを自身の魂と直接共有(ダイレクトリンク)している。致命傷を受ければ中で繋がっているアナザーウォッチの中に格納されている魂も燃え尽き、仮初の身体ごとこの世界から退場する。
 そして敗者の遺したアナザーウォッチの魂を共有するスペースに空きが生まれ、そのウォッチの所有権を譲渡もしくは強奪されることで他のアナザーウォッチに使用者の魂のバックアップが完了される。
つまり、たとえその戦闘で敗れたとしても、魂の焼却が完遂仕切る前に他のアナザーライダーへと変身することで、ゾンビの如く蘇るという理屈だ。そしてコレは1度試したが・・・・・・その能力はアナザージオウには何故か備わっていない。


複数のウォッチを同時に使いこなせる故のデメリットなのかは分からないが、ただ1つだけハッキリしている事がある。たとえ何十回、何百回、あるいは自らの命をも賭して葬ったとしても、俺一人では奴には絶対に勝てないということだ。


自分の置かれた状況を理解した途端に、一気に血の気が引いてくのを感じる。戦う意思はまだある。だけど、コイツをどうやって倒せばいいのか、まるで見当がつかない。心の中は、いつしかこれ以上奴と戦うことへの虚しさと諦念に覆われそうになっていた。


『あぁぁぁぁっっ!!!!!』


 そんな初めて相対する得体の知れないアナザーライダーに、己に纏わり付く恐怖を振り払うように、絶叫と共に手に握られた双剣を振るう。だが、アナザーウィザードは即座に左手に嵌められた指輪もどきを禍々しいベルトへと翳す。

《DEFEND PLEASE》

『あぐっ、抜けねぇ……!?』
『君も詰めが甘いねぇ……せやぁああ!!』


 どこか頼りない音と共に、目の前に巨大な岩石の壁が現れる。 常識では考えられない事象を引き起こす様は、正に魔法。 それにめり込む形で動けなくなったアナザージオウを嘲笑うかのように、アナザーウィザードは右足に炎を纏わせ、それを岩石の壁ごとアナザージオウに蹴り込んだ。

『ぐああああっ!!?』

 アナザージオウは岩石の破片ごと無様に地面を何度も転がり込み、校舎の外壁へとぶつかった所でアラタの姿へと戻る。アラタは荒い息が上がるのも構わず、這いつくばりながらアナザーウィザードを睨む。アナザーウィザードはそれが気に入らなかったのか、近づいてくかと思うと、アラタに向けてその足を振り下ろす。


『何かなぁ、その目は。全く気に入らない……ねぇ!』
「がはっ……!」
『スウォルツは君の事を高く買ってたみたいだけど……所詮はただの子供が、力を振りかざして正義の味方の真似事をしてるだけか。ま、どうでもいいけどね。君を殺すのはまた後だ』
「……っ!!」

 自分の戦ってきた意味を否定され、屈辱と怒りに胸をズタズタにされるような感覚が迸る。だけど、軽く自身の身体を踏み付けてる足でさえも振り払うことが出来ない。


 地面の砂を握りしめていた拳が開く。アナザーウィザードは既にアラタから狙いを子供達に向けてるようで、足音が遠ざかっていく。だけど身体は動かない。先程の足の重さよりもずっとずっと重い鎖が絡みついたような感覚に陥り、最早立ち上がることすら出来ない。ここまでかと、ギュッと目を瞑ろうとした時。


世界が、止まった。


「アンタ、いつまでそこで這いつくばってんの?」


身体がどんよりと重くなる感じに襲われて、瞼を開ける。そこに映っていた光景には、時間が止まったアナザーウィザードと、ヤツに対して手をかざしながら冷淡な言葉を浴びせてきた女ーーオーラが俺を見下ろしている。

「なんで、お前が」
「・・・・・・ボロボロじゃない。一旦退くわよ」

 オーラはそれだけ言うと、自身の手で掴んでアラタを支える。直後、己にのしかかっていた重圧が噓のように軽くなる。アラタはオーラを一瞥し、しかしその手を払い除けて、未だその場所で動きを止められているアナザーウィザードへと見据え、歩み始める。それを、オーラは手を掴んで引き留めようとしてくる。

「・・・・・・ちょっと。まだやる気?」
「・・・・・・ここでやらなきゃ、誰がやるんだよ」
「そんな死に体で言う言葉?バカなの?」
「なっ・・・・・・」

冷水をかけるようにバカと罵られ、アラタは血の気が収まらず食ってかかろうとするも、続けざまに放たれたオーラの言葉がそれを静止させる。


「・・・・・・いい?何があっても、生きてれば勝ちなのよ。どんなに無様な醜態を晒しても、ね。生きてれば、いつかソイツの首を掻き切るチャンスがやってくる。でも死んだらそれで終わり。アンタはそれでいいわけ?」
「・・・・・・それは」


「私はそんなの真っ平よ。死ぬわけにいかないの。あいつ等に一泡吹かせるまで、アンタにも生きてもらわないと困るのよ」
「・・・・・・お前」


淡々と自身の考えている意見を、物怖じすることなく述べるオーラ。その真剣な眼差しと、何かに対する怒り。そこから一瞬だけ垣間見た、自分を案じようとする姿勢。
彼女の意見は余りに至極真っ当で、この状況では最も最適な行動だ。だけど、それでも、と思ってしまう。自分にはやるべき事があるのだ。当事者として、既に奪ってしまった者達に対して、贖罪を背負わないといけないのだから。


オーラは迷いを示す彼の姿を見てため息をつくや・・・・・アラタの腹部、それも隙だらけの鳩尾付近を殴打する。疲弊した体に追い討ちを掛けられ、彼は思わず血混じりの唾を吐き出す。


「あぐっ・・・・・・!?」
「あんまり私の手を煩わせないで。私、アンタのそういう所気に入らない」


ぶつくさと文句を言いながら自身の体を支えるオーラ。その横顔を見たのを最後に、彼は張り詰めていた意識を失う。
動かなくなった彼の手を自身の首に掛けて、気を失っている青年の顔を横目に見ながら、オーラは1人呟く。


「ホント、手間がかかる奴」


その言葉を最後に、彼とオーラはその場から撤退していく。時間停止を行っていた元凶(オーラ)が姿を消した事により、アナザーウィザードも開放される。アナザーウィザードは辺りを見回すも、自身が先程下した人間が居ない事に気づく。どんな芸当を持ってやったのかは知らないが、所詮しっぽを巻いて逃げたとだけ。そう結論づけて再び子供達を狙おうと視線を向ける。が、既にそこに子供達の姿は無い。オマケに自分の存在に勘づいた第三勢力らがこちらに向かってくる気配にも気づいていたアナザーウィザードは、1人舌打ちをつく。


『今日の収穫は・・・・・・こんなところかな』


手のひらを開き、たゆたう3つの魂の灯火を、アナザーウィザードは歪んだ面相で眺める。それらを再び握り締めると、ベルトに手をかざす。


《TELEPORT PLEASE》
『待ってろ……真理』


アナザーウィザードの、確固とした言葉が空に溶けていく。それと同時にアナザーウィザードもその存在を消失する。


ーーー


「・・・・・・あっ!?」

持っていたお皿が手から離れ、床へと叩きつけられる。硝子が割れる音に、私は僅かばかりに悲鳴を上げる。

「怪我はないかい?」
「はい、大丈夫です。少し手が滑っただけなので」
「ならば良かった。何かあればいつでも私に言ってくれ」

ウォズさんの気遣いに、私は無事の意を示す。今日は何だか良くない日だ。今まで使ってたお皿の中でも可愛くて結構お気に入りの方だったのになあ、と思いながら、皿だった欠片を広い集めてゴミ箱へと入れていく。
ふと、窓際に視線を向ける。外の空模様も、何だか雲に覆われ始めてる。黒い雲はあっという間に外を覆うと、濁った嫌な大量の雨粒が大地に降り注ぐ。今日は曇りになるとは分かっていても、雨が降るとは天気予報では言ってなかったのに。

「あの、ウォズさん」
「何かね」
「お願いがあるんです」
 「その、―――」


 ただ偶然が重なっただけかもしれない。それでもなんだか、嫌な予感がする。まるで、彼にも良くない事が起こりそうな気がして、気が気でなかった。
 私は意を決してウォズさんにお願い事を口にする。ウォズさんは無言で私のお願い事を聞き終えると、力強く頷いて、静かな口調でそれを了承する。

「任されよう。彼の事は任せてくれ」 

 ウォズさんはそう言うと、首に巻いていたマフラーを軽く振るう。するとあろう事かマフラーは材質を変えたように滑らかに動き始め、彼を包み込むと、そのまま姿をくらました。どんな原理を用いればそうなるのかと唖然とするだけど、これでいい。

「アラタ君・・・・・・」

日は浅いながらも、一緒の屋根の下で生活している、1人の男の子。常に寄り添い、共に笑ってくれる。他人のために、何処までも手を差し伸べる温かい人。最初はお節介から彼を呼び止めたけど、何時しか私の方が彼に支えられている。けど、彼もまた、この世界を守るために戦う戦士だ。怪物が現れれば彼は死の最前線に赴かなきゃ行けないし、いつでも一緒にいられるとは限らない。かといって戦っている彼に対して、私のやれる事なんてたかが知れてる。

だから、私はこの家を守る。戦いから彼が、心を休める唯一の場所を、残す為に。それが私の戦いなんだ。

「さて、今日の晩御飯は・・・・・・」

彼が無事にまたこの家に帰ってくるのを信じて、私は夕食の支度を行うために冷蔵庫の扉を開いた。



ーーーー




「・・・・・・っ」

甘ったるい香水のような匂いに耐えきれず、ぼんやりとする目を無理やり開く。そこに映るのはやや曇が差す空──ではなく、天井。あの後、誰かによって別の場所に隔離されたらしい。

痛む体を無理矢理起こして辺りを見回すと、薄暗い部屋の中を僅かに照らすランプが置かれている。後は、自分が寝そべっているこのベッドと、物を入れるタンス、空調設備するためのクーラーが掛けられてる。この部屋は余りにもシンプルながら、どこか妖艶で、尚且つ退廃的であった。
取り敢えず部屋を出て、レジスタンスの拠点に戻らなければと思い立ち、起き上がろうとする。

「目が覚めた?」

聞き慣れた女の声が暗闇から聞こえる。そこに居るのはオーラで間違いないと身構える。しかし、暗闇から現れた彼女の姿は、俺の想像の斜め上を行くものであった。俺は棄却しそうになる思考を僅かに動かして問う。

「イヤ、あの」
「何?ああ、もしかして私の美貌に見蕩れちゃった?」
「・・・・・・なんで裸なの?」
「はぁ?このムード。この空間。そこに男と女がいたら、やる事は一つに決まってるじゃない」

これでもかと、己のあられもない裸体を見ろと言わんばかりに仁王立ちしながら言い返すオーラ。この女、相当なまでに依存症らしい。・・・・・・やはりまとも話せると聞いた俺が馬鹿であった。

「いやしないから。・・・・・・それより、あのアナザーライダーの事で聞きたいことがあるんだけど」
「そうね・・・・・・私をイかせられたら教えて上げてもいいわ」
「君って、もしかしてそれしか頭にない?」
「童貞のアンタに言われたくないわよ」

童貞じゃねーよ。と呟きかけるが、これ以上会話に生産性が無いことに気づき口を閉じる。オーラは溜息をつきベッドへと腰掛ける。暫しの沈黙を経た所で、彼女が口を開く。

「・・・・・・アンタが戦ったアナザーライダー、どうだった?」
「・・・・・・まあ、強かった。お前が見てた通りボコボコにされた。だけど、それだけじゃないって思った。アイツは多分」
「アナザーライダーの力を複数溜め込んでいる。少なくとも、3つはね」


 3つ?ヤツが使っていたのは宇宙の力を宿しフォーゼと、魔法の力を宿すウィザード。どちらも恐ろしく脅威ではあったが、それに加えて隠し球をまだ持っているという事なのか。果たしてそれらを駆使され再び相対した時、自分は今度こそ勝てるのだろうか。
不安から僅かに震えた俺の手を、オーラは何故か手を重ねてくる。それに驚き彼女へと視線を向けると、オーラは確信するように呟く。

「アンタなら大丈夫よ」
 「・・・・・・根拠は?」
 「は?ないわよそんなの」
 「はあ?」

 でも、と彼女は言葉を紡ぐ。

 「強いて言えば、女のカンってやつかしら?」
 「なんだそれ…まあ、サンキュー」

 なんだかはぐらかされた気がして納得してはいないが、こんな裸体を晒してる奴でも窮地を救ってくれた恩人ではあるし、先程の言葉も自分を鼓舞させようとしたのは何となく気づいている。そう軽い気持ちで感謝をしたつもりだったのだが、当の彼女はというと面食らったような表情を浮かべている。
 
 「……なんでそこで感謝すんのよ」
 「別に、ただお礼を言いたかったから。理由なんて、そんなもんでいいだろ」

 オーラは呆れ気味に相槌を打つと同時にベッドに腰掛けていた体を動かし、タンスの中からランジェリー、スカートスーツの順に衣服を身にまとい、先程出会った時の姿へと戻る。オーラは先程とは打って変わって淡々と言葉を口にする。



 「アナザージオウ、いいえアラタ。タイムジャッカーのオーラと一時休戦を結ぶ気はないかしら?」 
 

 
後書き
更新遅くなり申し訳ございません() 
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