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歪んだ世界の中で

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第六話 明らかな変化その十一

「千春がいつも皆に言ってるね」
「わかりました。では遠井様をこれから」
「おもてなしすればいいのですね」
「うん。そうして」
 その笑顔で言う千春だった。
「千春と一緒に幸せになりたいから」
「ではその様に」
「おもてなしさせてもらいます」
 こうしてだった。千春はだ。
 希望を家の者達に紹介した。そしてだ。
 希望にもだ。こう話したのだった。
「千春の家族だよ」
「この人達が」
「そう、家族だよ」
 まさにそれだというのだ。
「宜しくね」
「宜しくお願いします」
 希望もだ。彼等に対して頭を下げた。挨拶をしたのだ。
 挨拶をしてからだ。そのうえでだった。
 彼等にだ。こう言ったのだった。
「あの、それで僕は」
「はい、遠井希望様ですね」
「千春お嬢様の大切な方ですね」
「大切な方って」
 この表現にだ。希望はだ。
 戸惑いを覚えて困惑した顔になった。しかしだ。
 ここで千春がだ。笑顔で希望に言ってきたのだ。
「ううん。そうだよ」
「僕は千春ちゃんの大切な人なんだ」
「だって。恋人だから」
 恋人、まさにそれだというのだ。
「人の世界のね。それだからね」
「だから大切な人なんだ」
「そうだよ。だからだよ」
 邪気のない笑顔でだ。それで言ったのである。
「千春は希望の大切な人なんだよ」
「それでなんだ」
「そう。そういう人だよ」
 こう言って引かない千春だった。
「だからそんなに困ることはないんだよ」
「そうなんだ」
「そう。そんな顔しないでね」
 それでだというのだ。
「皆にも普通にね」
「普通に?」
「お友達になってね」
「僕がこの人達と」
「そう。千春は恋人であの人は一番の親友で」
 真人、その彼の話もする千春だった。
「それでお家の皆はね」
「僕の友達に」
「お友達って一人だけでいいんじゃないわよね」
「うん。僕はずっと友井君しか友達はいなかったけれど」
 だがそれでもだとだ。希望は千春に答える。
「他の人は何人も友達がいるよ」
「そうよね。それじゃあね」
「この人達と。僕が友達に」
「なってくれる?」
 千春は純粋な微笑みを希望に向けて彼に話す。
「そうしてくれる?皆と」
「いいんだね。そうして」
「うん、そうして」
「それでこの人達と」
「幸せになって」
 こう言ってだ。そうしてだった。
 千春の背中にだ。その右手にそっと手をやった。その手を受けてだ。
 希望もだ。顔をあげてだ。そのうえでだった。 
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