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愚か者達は自白する

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第二章

 その後の食事となったがここで親戚の一人、夫婦と同じ年頃の女の人が二人に尋ねた。
「ふわりちゃんどうしたの?法事にもいつも連れて来たけれど」
「ああ、あのトイプードルの女の子な」
「凄く可愛いワンちゃんよね」
「性格も穏やかで人懐っこくて愛嬌があって」
「賢くていい娘だな」
「あの娘どうしたの?」
「捨てたわよ」 
 妻が答えた。
「五月蠅くて仕方なかったから」
「もう朝から晩まで吠えて」
 夫も語った、二人共邪魔者を捨てた顔だった。
「子供が生まれたばかりなのに」
「私も落ち着かないし赤ちゃんも寝られないし」
 それでというのだ。
「もういらなくなったから」
「それで保健所に連れて行きました」
「まあ引き取ってもらったし」
「いいですよね」
「おい、お前等今何て言った」
 五十代の男の人が二人に怒った顔で言った。
「捨てたのか」
「だって子育てに邪魔ですから」
「性格が変わったんで」
「もういらないですから」
「何か問題がありますか?」
「あんた達自分達の娘って言ってた娘保健所に捨てたの」
 聞いた女の人も嫌悪の顔になっていた。
「保健所ってどういうところか知ってるわよね」
「殺処分ですよね」
「それが何か」
「娘にそうするのね」
 その人の顔は怒りの色を秒単位に増加させていっていた、そして。
 他の親戚達も二人を嫌悪の顔で見ていた、そうして言うのだった。
「子供の頃から飽きっぽかったけれど」
「あれだけ可愛がった犬を保健所にかよ」
「幾ら何でも酷過ぎるでしょ」
「人間の子供出来たらぽいって」
「生きものは最期まで面倒見るものだろ」
「いらないって何よ」
「性格変わったってどうしてか考えるだろ」 
 誰もが二人を嫌悪の目で見ていた。
「そういえば子供生まれて急にケージに入れてたな」
「今思えばそれがおかしかったな」
「ふわりちゃんが幾ら鳴いても無視してたし」
「散歩も行ってなかったんじゃないの?」
「それじゃあ犬も鳴くだろ」
「無視されて散歩にも連れて行かないんじゃ」
「犬は散歩絶対に必要でしょ」
「それしないってこと自体おかしいよな」
 今度はそうした話になった。
「子供の世話で忙しかったとか言うなよ」
「そんな問題じゃないでしょ」
「どっちもしてこそだろ」
「そもそも犬は鳴くし」
「トイプードルは元々鳴く種類だし」
「あんないい娘が鳴くってかなりの理由があってだろうし」
「そんなの買う時に説明聞いただろ」
「しかも保健所に捨てるって」
 またこのことが言われた。
「命何だと思ってるんだ」
「殺されていい?」
「それも家族だ娘だって可愛がっていたのに」
「邪魔だからポイね」
「人間としてどうなの?」
「本当に最低だな」
「というかふわりちゃん誰に貰われたんだ」
「俺が引き取った」
 ここで文太が親戚達に話した。
「こいつ等が捨てたって聞いてすぐにな」
「ああ、そうしたんだ」
「文太さんが拾ってくれたんですね」
「文太さんのとこなら大丈夫か」
「奥さんも息子さんもいるし」
「もう安心ね」
「俺も女房も息子もこいつ等とは違う」
 文太は二人を睨みながら話した。 
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