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愚か者達は自白する

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第一章

                愚か者達は自白する
 この時国崎洋介は家を出る準備をしながら両親に難しい顔で言っていた。
「あの人達も来るんだよな」
「絶対にな」 
 父の文太は息子に即答で答えた。
「出て来るぞ」
「そうだよな」
「お前もそれはわかってるだろ」
「けれどな」
 それでもとだ、彼は父に言った。
「正直言ってな」
「顔を合わせるのが嫌か」
「かなりな」
 そうだというのだ。
「ふわりのことがあるからな」
「そうだろうな」
「親父は平気かよ」
「平気だよ」 
 父の返事ははっきりしたものだった。
「全くな」
「凄い度胸だな」
「それどころかわくわくしてるさ」
「何でだよ」
「行けばわかる」
 法事にというのだ。
「そうしたらな」
「俺凄く嫌だけれどな」
「そうか、それは母さんもか」
「ええ、私もね」
 由里子は息子を見ながら夫に答えた、眉を曇らせて。
「今日はね」
「まずは無視しろ」
「そのつもりだけれど」
「俺もそうする、しかしな」
「楽しみにしているのね」
「これから起こることについてな」
 洋介の言葉は微動だにしていなかった、そんな感じの言葉だった。
「そうなっている」
「一体何が起こるのかしら」
「馬鹿が馬鹿をやる」 
 こう妻に答えた。
「そうなるとだけ言っておく」
「馬鹿っていうと」
「行けばわかる、あとふわりはな」
「ええ、ケージの中に入れておいて」
「帰ったらな」
 その時にというのだ。
「散歩に行くな」
「夕方のね」
「その時いい時間だろうからな」
 だからだというのだ。
「いいな」
「それじゃあね」
「今日は俺が散歩行くよ」
 洋介が言ってきた、ふわりが家に来て一ヶ月程経つが彼は自分の仕事が休みの日は夕方絶対に彼女の散歩に行っている。外出する時は朝に行く様にしている程だ。
「それでいいな」
「ええ、じゃあお願いするわね」
「ご飯もあげるな」
 ふわりのそれをというのだ。
「そうするからな」
「ああ、ふわりお前にも懐いているしな」 
 父は息子の言葉に微笑んで賛成の意を述べた。
「それだったらな」
「行って来るな」
「車には気をつけてな」
 こうした会話もしてだった、ふわりにはケージに入ってもらった。だがわざとケージの扉は開けておいた。賢い彼女はケージを開けておいても決まった時間か家族が帰って来て玄関に来ないと出て来ないからだ。
 戸締りはして三人で家を出て父が運転する車で法事がある本家に行った、そこには親戚一同が集まっていて。
 あの夫婦もいた、夫婦は自分達の赤子を連れていて妻が抱いていたが。
 三人とはお互い無視をした、洋介は二人を睨んだが二人も睨み返していた。だが法事はつつがなく終わり。 
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