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戦国異伝供書

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第百二十話 三州奪還その三

「薩摩隼人の攻め方じゃ」
「ですな、駆けつつ鉄砲も放ちます」
「これは織田家とは違います」
「あの家はそうしては使いませぬ」
「いざとなれば鉄砲隊が座り込んでな」
 そのうえでというのだ。
「後詰になり鉄砲を撃つ」
「自分は死ぬが他の者は逃げられる」
「そうしても使いまするな」
「死兵となっても」
「薩摩隼人は死ぬのを恐れぬ」
 戦でそうなることをだ、それもまた薩摩隼人の強さの理由の一つだ。そうした命懸けの肝試しもよく行う程だ。
「だからそうしたこともする、では鉄砲もな」
「この度も多く持って行きましょう」
「そして前に駆けつつ放ち」
「切り込むこともですな」
「する、では用意が整い次第出陣じゃ」
 義久は最後にこう言ってだった。
 弟達だけでなく自身も出陣の用意をした、それが整い明日出陣となった日に彼は弟達を集め酒を飲んだ。
 酒は焼酎だ、それを飲みつつ言うのだった。
「肝はよいのう」
「豚の肝もですな」
 義弘は焼いたそれを食いつつ応えた。
「またよしですな」
「うむ、他の国では獣は食わずな」
「豚もですな」
「それで肝はな」
 それはというのだ。
「魚のそれも食わぬという」
「そうですな、しかし当家は」
「こうしてじゃ」
「豚の肝を食い」
「獣の肝もな」
 これもというのだ。
「食う」
「この様にして」
「この美味さを知らぬとはな」
「勿体ないことですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「こんなに美味いのにな」
「ですな、では我等は」
「今はこうして食おうぞ」
 豚の肝をというのだ。
「肴にしてな」
「肝はよいものです」
 歳久もその肝を食いつつ言う。
「ただ美味いだけでなく」
「滋養もな」
「ありますので」
 だからだというのだ。
「食うことはよいことです」
「左様じゃな」
「毒があると言う者が他の国にはおるそうですが」
「それは誤りじゃ」
「ありませぬ」
 毒はというのだ。
「肝には」
「迷信であるな」
「迷信は信じるものではありませぬ」
「まずはことを確かめてな」
「嘘か真か知ることです」
「それが大事であるな」
「鉄砲も何かと言われていましたが」
 本朝に入った時はというのだ。
「しかし」
「それでもであるな」
「使えばです」
「あれだけ強い武器もない」
「そうは」
「弾を込めるのに時間がかかりまた雨では使えぬとです」
 家久はその鉄砲について具体的に述べた。 
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