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兎少女

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第四章

「これからもそうしてやっていくわ」
「そうなんだな」
「そうよ、小さくてもね」
「バスケは出来るか」
「ええ、私はそう思ってるわ」
「お前自身がか、じゃあこれからも頑張っていけよ」
「それじゃあね、ただね」
 あすかは花道に自分のことは明るく話した、だが。
 ここでだ、表情を少し変えてこう言った。
「茨城って田舎ね」
「おい、何処が田舎だよ」
 花道はあすかの今の言葉にはむっとした顔で応えた。
「充分都会だろ」
「何処がよ」
「プロ野球の球団も海上自衛隊の基地も中華街もないじゃない。人も少ないし」
「だからかよ」
「田舎ね」
「茨城馬鹿にするなよ、水戸藩の地元だったんだぞ」
 花道はあすかに強い声で話した。
「御三家の一つだぞ」
「黄門様のね」
「幕末にも影響及ぼしたんだ、黄門様は日本ではじめてラーメン食って」
 そしてというのだ。
「チーズも食ったんだ、今もそのラーメン食えてな」
「茨城だとよね」
「納豆あってな」
「茨城名物ね」
「そして鮟鱇も美味いぞ」
 この魚も名物だというのだ。
「茨城を馬鹿にすると痛い目見るぞ、筑波は学園都市だしな」
「茨城は都会なのね」
「そうだ、そこは絶対に引かないからな」
「そうなの」
「ああ、茨城県民としてな」
「言うわね、まあ暫く茨城にいるから見せてもらうわ」
「気が強いな、しかしな」
 ここでだ、花道はあすかを見てこうも言った。
「兎っていう割には気が強いな」
「知らないの?兎って戦わないけれど気が強いのよ」 
 あすかは自分よりもずっと大きな花道に不敵な顔で応えた。
「そうしたものよ」
「そうだったんだな」
「兎は甘く見たら駄目よ」
「そのことお前の今の言葉でもわかったぜ」
「そうでしょ、じゃあ見せてもらうわね」
 茨城をとだ、気の強い笑みで返すあすかだった。そうしてだった。
 あすかは暫く経って茨城のあちこちを自分で歩いて見て回って茨城県が素晴らしい場所だと頷いた、だがこの時も気の強い態度で花道は彼女があらためて兎少女だと思い知った。兎は実は侮れず気の強いものだと。


兎少女   完


                 2020・9・16 
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