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夢幻水滸伝

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第百八十三話 星の者達の成長その十五

 そしてその試合状況を見て一同に笑って話した。
「巨人相手に二十五対零、何と七回までヒット一本に抑えてるわ」
「おお、いつも通りやな」
 全員その試合状況に喜んだが中里は明るく笑って言った。
「圧倒的やな」
「ああ、こっちは打って打って打ちまくってな」
「相手打線は完全に抑えてるな」
「特に巨人相手にな」
「ええことや」
「確か巨人は今百イニング無得点ですわね」
 エカチェリーナも明るく笑って言ってきた。
「そして二十連敗中で」
「そや、連敗記録更新してるわ」
「本当に巨人は弱いですわね」
「もうそうなったわ、そして巨人が弱いとな」 
 どうかとだ、中里はエカチェリーナにも笑って話した。
「その負け見て皆元気が出てな」
「頑張りますね」
「勉強に仕事に、それで日本もよおなって」
「世界にも影響していますね」
「弱い巨人最高や」
 中里は巨人のことも話した。
「このまま勝率一割台チーム打率も一割台でな」
「防御率は二桁で、ですわね」
「そしてエラーシーズン二百でな」
「いって欲しいですわね」
「こう言うしな、巨人には無様な負けがよく似合う」
「確か太宰治でしたわね」
「富岳百景で富士には月見草がよく似合うって言うてたけどな」 
 この作品での有名な一文である。
「巨人にはや」
「無様な負けがよく似合いますね」
「まさにその通りや、太宰もしっかりとした倫理観あったし」
 偽善を特に嫌ったことで知られている、その為戦争が終わり急に平和や戦争反対だったと主張する人達に激しい嫌悪を見せていた。
「巨人は嫌ったと思うわ」
「左様ですわね」
「巨人みたいなチームが一番人気やったことはほんま恥や」
 巨人軍、大鵬、卵焼きという言葉があった。昭和三十年代の子供の好きなもの三つだ。マスメディアの喧伝で悪が正義になることの証左の一つである。
「戦後日本の倫理の崩壊の象徴や」
「あの様な悪が正義とは」
「ほんまあかんかった、けどな」
「今は、ですわね」
「巨人はあの調子でな」
「悪事が広く知れ渡って」
「ああ、人気もダントツ最下位や」
 観客動員数は何と三十万を割っている、グッズは売れない。
「そうなったわ」
「よいことですわね」
「ああ、ほんま巨人は弱いに限る」
「それが人類の為ですわね」
「心からそう思うわ」
 中里は笑顔で言い切った、そうしてだった。
 みっくちゅじゅーすを飲んだ、関西の飲みものには阪神の味があった。一同はそれからもプールでの飲食と会合を楽しんだ。そして閉園時間になるまで遊んだ。


第百八十三話   完


               2020・10・23 
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