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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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並行世界のクリスマス2020

 
前書き
ギリギリセーフ!!

ってなわけで、クリスちゃん誕生日おめでとう!!
なんか誕生日の要素が前半で終わってる気がするけど、祝ってるしセーフ……だよね?

とりあえず、何とか間に合わせました。
それではどうぞー! 

 
「これで……よし。クリス先輩、そっちは?」
「こっちもオッケー」
「じゃあ、これで完成……かな」

ホッと一息つきながら、響とクリスは完成したケーキを眺める。

夜からのパーティーに向けて用意したブッシュ・ド・ノエルは、甘いチョコレートクリームと真っ赤なイチゴで綺麗に飾り付けられていた。

「響、おつかれさま。クリス先輩も、ありがとうございます」
「ううん、これくらいなんでもないよ」

未来からティーカップを受け取り、響は息を吹きかけながらそれを傾ける。
出来たてのホットココアは、少しずつ響の身体を温めていく。

「未来ちゃんも、お料理の仕込み終わったの?」
「はい。後は焼き上がるのを待つだけです」
「未来もおつかれ」
「ありがとう」

3人でココアを飲みながら、それぞれの進捗を報告し合う。

部屋は既に飾り付けを終えており、あとは約束の時間に料理を並べるだけだ。

「それにしても、クリス先輩の誕生日がクリスマスと近いって聞いた時は驚いたよね」
「もしかして、『クリス』って名前はそこが由来……?」
「クリスって名前の由来は、元々、聖書から引用されたものなんだって。だから、これは偶然。パパとママは、私が産まれる前から、この名前に決めてたんだって」
「偶然にしては、狙ったようなタイミング……。なんだか、面白いですね」
「外国の人の名前にも、由来があるんですね」

感心する響と未来に、クリスはクスッと微笑む。

背が低く、よく歳下に間違われる彼女にとって、こうして先輩らしい事が出来ている時間は嬉しくあり、楽しいものなのだ。

「この話、クラスの皆にもウケてるの。良かったら、他のファーストネームの由来とか、聞きたい?」
「面白そう……お願いできますか?」
「チキンが焼き上がるのはまだまだ先だし。わたしも聞いてみたいです」
「うん。じゃあ、まずは……」

可愛い後輩2人に囲まれ、先輩と慕われる。

この時間こそが、2人からのプレゼントだ。
そう感じながらクリスは、鶏肉の焼けるいい匂いが漂ってくるまで、後輩達と語らい続けるのであった。



『メリークリスマス!!』

6つのコップが音を鳴らし、6つの声が聖夜を言祝ぐ。

「そして誕生日おめでとう、クリス」
「「「「おめでとう!!」」」」

乾杯の次は破裂音。クラッカーからの紙吹雪が宙を舞う。
今宵の主役、雪の音の少女は照れくさそうに、頬を羽織った衣服と同じ色へと染めた。

「みんな、ありがと……。祝ってくれて、嬉しい」
「俺からも、ありがとう。クリスの誕生日をこんなに沢山の友達から祝われて、俺も嬉しいよ」

我が事のように喜ぶ純。その顔は言うまでもなく笑顔だ。

「でも先輩、クリスマスと誕生日を一緒に祝われて、嫌じゃないんですか?」

クリスマスと誕生日が近い者達に多い悩みを、疑問として呟く翔。

だが、クリスは首を横に振った。

「正確には、クリスマスの3日後だから。クリスマスは、友達と一緒に、皆で祝って、誕生日は、家族だけで祝う。毎年、そんな流れだったよ」
「なるほど。じゃあ、クリス先輩にとってクリスマスって?」
「皆と過ごせる楽しい日、かな。誕生日と合わせたら2日も楽しい日が続いてるから、私は大好きだよ」
「雪音、今の顔はとても可愛らしかったぞ」

カメラの音に振り向くと、スマホを横に構えた翼が捉えた一瞬をLINEのグループに共有するところであった。
彼女の格好もまた、女性用のサンタ服である。

綺麗に取られた写真には、楽しそうに笑うクリスが写っていた。

「つ、翼先輩!いつから構えてたんですか!?」
「可愛い弟と義妹の尊い一瞬を逃さないよう、撮影は常に一瞬で行えるように訓練している。その成果だな」
「翼さん、そういうの、才能の無駄遣いって言うんじゃない?」

驚くクリスにドヤ顔で語る翼へと、響は呆れた顔で苦笑いを向ける。

「イベント事には記録係も必要だろう?そして私は招待された立場であり、この中で最年長だ。皆との尊き一瞬をカメラに収める事の、何が問題なのだ?」
「それはそうですけど……撮影する前に言えばいいじゃないですか」
「それでは一瞬を捉えられないのだ。それに立花、一言かければお前は素直に応じてくれるのか?」
「うっ……それは、その……」

普段、翼にカメラを向けられるのは、翔と一緒にいる時だ。
一声かけられようものなら、響は翔の陰に隠れるであろう事など想像に容易い。

姉としてはどうしても、可愛い弟が未来の義妹とイチャイチャしている瞬間をカメラに収めたいのである。

そこで翼が磨いたのが、高速撮影術だった。

居合の如き素早さでスマホを取り出しカメラを起動。そして対象に気づかれる前に、一番尊い瞬間を切り取る。

その身を剣と鍛えた翼だからこその撮影術である。

「まあまあ、いいじゃないか。僕は今日の可愛い響さんを、ちゃんと写真に残しておきたい。姉さんなら安心して撮影を任せられるもんね」
「……翔がそう言うなら」
「うむ。ほら、もう少しこちらに顔を向けてくれ。撮るぞ……はい、チーズ」

翔に抱き寄せられ、響は真っ赤になる。
ミニスカツンデレサンタな響の写真は、翔のフォルダにしっかり保存される事となったのであった。

「でも、こうして大勢で祝うクリスマスって、久し振りかも……」

未来はポソリと呟き、直後慌てて口を塞ぐ。
その言葉を聞き逃さなかった翔は、その意図に気が付き、腕に抱いた響の顔を見る。

「……そう……だね……。あの頃は、色々あったから……」
「響……ごめん」

やってしまった、と肩を落とす未来。
俯いた響の表情から、全員がそれを察していた。

2年前、ライブ会場の惨劇。
周囲からは謂れのない迫害を受け、家族がバラバラになり、陽だまりである未来も引っ越してしまった響には、祝日や誕生日への関心さえ薄れるほどの辛かった時期。

響の辛い記憶を呼び覚ましてしまったと、未来は後悔した。

──だが、今の彼女には彼がいる。

「響さん」
「翔……?」

翔は響の手を包むように握ると、顔を上げた彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「大丈夫。響さんはもう、一人じゃないよ?」
「……あ……」

翔につられて周りを見回す響。

「立花」

そこには、将来的には義姉になる、頼りになる先輩がいて。

「響ちゃん」
「立花」

可愛い先輩と、その恋人である翔の親友がいて。

「響」

戻って来てくれた陽だまりがいて。

「ほらね?」

そして、優しく抱き締めてくれる、木陰のような彼がいる。

2年前までとは違う。
今の彼女にはこんなにも、手を繋いでくれる人達がいるのだ。



「みんな……」

目頭が熱い。溢れてきそうになるそれを、見られたくないとは思わなかった。

そっと、右肩に手が置かれる。
わたしはそれに答えるように、彼の腰へと手を回した。

「ほら、料理冷めちゃうよ?」
「そうだよ。早く食べて、ケーキ切ろう?ね?」
「楽しい時間は、まだまだ、これから」
「プレゼント交換とかあるし、トランプも用意してるぜ!」
「涙はこのハンカチで拭きなさい。折角のクリスマスに、涙は合わないわよ?」
「うん……みんな……ありがと……」

皆優しくて、あったかい。

今、わたし……すごく幸せだ……。

どうしよう……瞼の裏から溢れ出してる気持ちが、止まってくれそうにない……。

……今なら、素直に言える気がする。

「翔……」
「なんだい、響さん?」

いつもは恥ずかしくて、中々言葉には出来ないけれど……。

伝えられる時に伝えないと、勿体ないよね。

「……大好き」
「……ぼっ、僕も……大好き……だよ……」

翔の顔が、耳まで真っ赤になる。
ホント、不意打ちには弱いよね……可愛い。

今夜くらいは、最初っから素直に甘えてもいいかも……。

「未来も、ありがとう。また、未来とクリスマスを祝えて嬉しい」
「響……」

また来年も、そのまた次の年も……翔と、未来と、皆と一緒に過ごしたいな……。

……さて。いつまでも暗い気持ちじゃ、クリスマスを楽しめないもんね。

ここからはリフレッシュして、皆でワイワイやろう。

「クリス先輩、仕切り直してよ」
「……え?わ、私が!?」
「今日の主役、先輩なんだから」
「えーっと、じゃあ……こほん」

一つ咳払いして、クリス先輩は自分のコップを掲げる。

「みんな、改めてもう一度、聖夜を祝おう!せーのっ……」

翼さんに合わせて、皆がコップを掲げる。

そして部屋には再び、今宵を言祝ぐ言葉が響き渡った。

『メリークリスマス!!』 
 

 
後書き
クリスちゃんの誕生日+グレのクリスマス、を一緒にやろうとしたらこうなりました。後悔なんて、あるわけない!!

改めましてクリスちゃん、お誕生日おめでとう!!
そしてグレ!!来年こそは幸せになってくれ!!


あと熊さん、今回もありがとうございます!!
相変わらず作者をも殺す尊さ投げやがって……( ´ཫ` )

今回で今年は書き納めかな?下手したら書き納めとしてまた1話増えるかもしれないけど。
それでは皆さん、また次回!! 
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