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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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怖がり吸血鬼ギャスパー登場!天空の野菜畑を攻略せよ!
  第72話 それぞれの日々、最後の眷属ギャスパー登場!

 
前書き
 ギャスパーの能力の元ネタはジョジョのスタンドですが、設定を変えて非スタンド使いでも見えるようにできたり、逆に見えないようにできると自由に切り替えが出来るようにしていますのでお願いします。触れる事も出来ます。 

 
side:イッセー


「う、う~ん……今何時だぁ」
「おはようございます。イッセー先輩♡」


 気怠さを感じながら目を覚ました俺は、ふと今が何時なのか気になった。すると俺の隣から女の子の声が聞こえた。


「おはよう、小猫ちゃん」


 俺は自身の彼女であり、最愛の人に挨拶を返した。


「先に起きていたんだ」
「はい。と言っても30分ほど前ですけどね。でもお蔭で30分間先輩の寝顔を堪能できました♡ちなみに今は6時30分ですよ」
「そっか~……」


 俺は背伸びしながら肌寒さを感じた。まあそれも当然か、今俺は何も身に付けていないんだから。


「じゃあそろそろ起きて朝ご飯や弁当の用意をするか」
「なら私も手伝いますね」
「えっ、でも今日の当番は俺だろう?小猫ちゃんはもう少し寝ていたらどうだ。昨日だってそんなに寝れてないんじゃないか?」
「ふふっ、お気遣いありがとうございます。でも私はもう大丈夫ですよ。だって先輩の腕枕でぐっすり寝れましたから」
「なら一緒に作ろうか」
「はい♡」


 小猫ちゃんはそう言うとベットから体を起こそうとする。俺は慌ててシーツを彼女に被せた。



「わぷっ……どうしたんですか?」
「いや、改めてなんか恥ずかしくなってな」
「クスッ、なんですかそれ」


 小猫ちゃんも俺と同様に衣服はおろか下着すら身に付けていない状態だ。いくらその……チョメチョメした仲とはいえ恥ずかしい。


「先輩、照れているんですか?あんなにいっぱい恥ずかしいことしあったのに……」
「か、からかうな!いいから早く着替えなさい!」
「はーい♪」


 小猫ちゃんにからかわれながら俺達は着替えて一階に降りた。そして全員分の朝飯と弁当を用意していく。


「先輩、『蟹ブタ』の生姜焼きできましたよ」
「俺も『バラック』の卵をつかった卵焼きができたぜ」
「じゃあ後は『レモレタス』と『ネオトマト』をいれて完成ですね」


 テキパキと全員分のお弁当を用意した後、次は朝飯の用意を始めた。


 『ムキムキ小麦』で作った手作り食パンをこんがり焼いてバラックの卵の残りで『ジューシイタケ』、『蟹ブタ』のベーコンを中に混ぜたオムレツを作る。そして『ゴールデンにんじん』、『スプラッシュだいこん』で作ったコンソメスープを食卓に並べた。


「おはよう、イッセー君」
「小猫ちゃんもおはようございます」
「おはよう、祐斗、朱乃さん」
「おはようございます」


 最初に起きてきたのは祐斗と朱乃さんだった。学校ではイケメンと美少女で有名な二人だが、悪魔なので朝には弱いらしく若干眠そうな様子だ。でもファンが見たらギャップ萌えしそうだな。


 小猫ちゃんもそんな二人を見てクスッと笑いながら朝の挨拶を返した。


「ふわぁ……おはようございますぅ……」
「おはよう、イッセー」
「おはよう、アーシア、ゼノヴィア。イリナはどうしたんだ?」
「ああ、アイツはいくら起こそうとしても全く目を覚まさなかったからな」
「何をやってるんだ、イリナは…」


 次に食卓に来たのはアーシアとゼノヴィアだった。昨日まで旅やら宿題やらで色々忙しかったアーシアは普段より疲れた顔をしていた。


「だいじょうぶか、アーシア?」
「ちょっと眠いですぅ……」
「疲れたもんな。美味しい朝ご飯作ったからこれ食って精を付けてくれ」
「はーい……」


 ゼノヴィアに手を引かれながらふらふらと眠そうに歩くアーシアは凄く可愛らしい。


「おはよう、イッセー!」
「おはようございます、リアスさん」
「わぁっ!これがイッセーの家のご飯なのね。凄く美味しそうだわ!」
「ははっ、お口に合えばいいんですけど」
「何言ってるのよ。貴方の料理の腕は私以上でしょ?美味しいに決まってるじゃない」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。しかも今日は小猫ちゃんが手伝ってくれたのでもっと美味しいと思いますよ」
「それは楽しみね」


 魔法陣からリアスさんが現れて挨拶を交わした。彼女はこの家には住んでいないが可能な限りは全員で食事を取ることにした。一緒に食べた方が美味いからな。


「師匠!おはようございます!」
「アウッ!」
「おはよう、ルフェイ、テリー。オブ
の分の飯を作っておいたから後でもっていってやってくれ」
「はい、了解です!」


 そして今度はグルメ界からルフェイ、テリーがやってきた。テリーは俺に飛びつくと嬉しそうに顔を舐めてくる。オブは流石に体が大きすぎるので後でルフェイに飯を持って行ってもらおう。


「さて、俺はイリナを起こしてくるかな」
「私も行きます」


 俺と小猫ちゃんはイリナが眠る部屋に向かう。そして大きめの枕を抱いて幸せそうに眠るイリナを見てため息を吐いた。


「イッセーくぅん……だぁいすきぃ……」
「どんな夢を見てるやら……」
「モテモテですね、先輩」
「あはは……」


 涎を垂らしながら俺の名を呼ぶイリナにどう反応していいか頬を掻いていると、小猫ちゃんがイリナを見て可笑しそうにクスクスッと笑った。


「私はもう先輩に愛してもらったのでちゃんとイリナさん達も愛してくださいね」
「ああ、勿論だ」


 普通ならいい顔はしないはずなのに小猫ちゃんはイリナを気遣っていた。俺の恋人は寛大すぎて足を向けて眠られねぇよ。


 考えればちゃんとイリナに想いを伝えていなかったな。今度デートに誘ってちゃんと言葉にして言わないとな。


(それに黒歌もな……)


 彼女とは出会ってまだそんなに立っていないが、彼女の俺への態度を見ればどういう想いを持っているかは察することはできる。彼女ともちゃんと話をしてケジメを付けるつもりだ。


「小猫ちゃん、俺は必ず君も皆も幸せにして見せる。それが間違っていることだとしても俺は絶対に皆を離さないよ」
「ふふっ、一線を越えてから益々男らしくなりましたね。その調子で目指せ、ハーレム王ですね」
「いや、ハーレムがしたい訳じゃないんだが……」
「でもいずれはそうなるでしょう?」
「まあ結果的にはそうなるのか……」


 まあ全員を幸せにするって事はちゃんと養いつつ彼女達を満足させないといけないからな。将来結婚したら俺の時間はなくなりそうだが、彼女達を幸せにすると決めたんだ。それくらいどうって事ないぜ。


「さて、そろそろイリナさんを起こさないと」
「そうだな。おいイリナ、もう朝だぞ」


 俺はイリナの肩を掴んで揺すってみるが起きないな。子供時代の時は朝から遊びに来るくらい早起きだったのに今はそうでもないのか?


「イリナ、起きろって。もう朝だぞ」
「あっ……だめぇ……イッセーくん……それは二人きりで……」


 駄目だ、起きないな。体を揺すっても何故か顔を赤くしてモジモジし始めた。


「どうしよう、小猫ちゃん。イリナ全然起きないぞ」
「しょうがないですね。先輩、今から言う事をイリナさんにしてみてください」
「なんだ?」


 小猫ちゃんに教えてもらった事をイリナにしてみる事にする。しかしこんな事で本当に目を覚ますのだろうか。


 俺は寝ているイリナの耳元に顔を寄せるとボソッと呟く。


「イリナ、可愛いね。キスしてもいいか?」
「うん!いいよ!」


 俺がそう言うとまるで磁石に引き寄せられたかのようにイリナが起きて俺に抱き着いてきた。本当に起きたぞ、こいつ……


「あれ?もう朝なの?」
「おはようございます、イリナさん。もう朝ですよ」
「あっ、おはよう小猫ちゃん」


 イリナは俺に抱き着いたままきょろきょろと辺りを見ていたが、小猫ちゃんに声をかけられて挨拶を返した。


「イリナ、そろそろ離れてくれないか?」
「あっ!おはよう、イッセー君!あのね、さっきイッセー君にチューされる夢を見ていたの。朝起きたらイッセー君がいるなんてもしかしてアレって正夢だったのかな?」
「さあな。というか離れてくれないか?胸が当たってるぞ……」


 イリナは朱乃さんのパジャマを借りていたんだけど、彼女の豊満な胸はそれくらいでは遮断できないらしく俺の胸板で潰されていた。



「えー、もっとイッセー君とくっ付いていたいよー」
「でももう朝ご飯ですよ。早く起きないとみんなに迷惑をかけてしまいます」
「それは大変ね!早く起きないと!」


 イリナは朝ご飯と聞くと目の色を変えて部屋を出ていった。


「じゃあ私達も行きましょうか」
「そうだな」


 俺と小猫ちゃんはそんなイリナに対して呆れたように溜息を吐いて食堂に向かった。



―――――――――

――――――

―――


 食事を終えた俺達はイリナとゼノヴィアに留守番を任せて学園に向かっていた。久しぶりの学校生活に少しワクワクしているんだ。


「それでイッセー先輩が……」
「あはは、それは良かったね」


 小猫ちゃんは祐斗と俺の事で話しているようだ。


「アーシアは学校生活に慣れたかしら?」
「はい。毎日が楽しみで幸せです」


 リアスさんはアーシアに学園生活はどうかと聞いていた。彼女は何かとアーシアを気にかけてくれており妹のように思ってくれているみたいだ。


「イッセー君、ちょっといいかしら?」
「どうかしましたか、朱乃さん?」


 小猫ちゃん達の後ろを歩いていた俺に朱乃さんが声をかけてきた。


「少し貴方に聞きたいことがありましたの」
「俺に聞きたいこと?なんですか」
「もしかしたら小猫ちゃんと一線を越えてしまったのでしょうか?」
「ぶっ!?」


 朱乃さんのまさかの一言に俺は噴き出してしまった。


「どうしましたか、先輩?」
「いや、くしゃみが出そうになっただけだ……大丈夫」


 小猫ちゃん達が振り返って首を傾げていたが、俺は誤魔化した。


「もしかして早めの夏風邪ですか?気を付けてくださいね。先輩」
「ありがとうな、小猫ちゃん」


 小猫ちゃん達が再び前を見て歩き出したので俺はホッと息を吐くと朱乃さんに詰め寄った。


「あ、朱乃さん!いきなり変なことを言わないでください!」
「うふふ、ごめんなさい。でもそんなに焦るという事は事実なのかしら」
「いやいや、そんなことは……」
「実はわたくし、昨日の夜中に水を飲みに起きて一階に下りましたの。すると真夜中なのにイッセー君と小猫ちゃんがとっても恥ずかしい格好で浴室に向かっていたのを見て……」
「すみません。嘘つきました」
「よろしい♪」


 俺は即座に謝った。まさか朱乃さんが一階にいたとは……発情していたのと気分が高揚していたから気が付かなかった。


「そ、そのですね……」
「イッセー君はわたくしに手を出してくれないのかしら?恋人なのに……」


 朱乃さんはそう言って頬を膨らませた。そうだ、朱乃さんだって女の子だ。いつまでも手を出さないでいたら不安にだってなるよな。


「そんなことないですよ。俺は朱乃さんも本気で好きです。だからちゃんと責任を取ります」
「……うふふ♪イッセー君必死になって可愛いですわ」
「えっ、えっ?」


 朱乃さんは可笑しそうに笑うが俺は困惑してしまう。怒っていないのか?


「ごめんなさい、イッセー君。わたくしはイッセー君を困らせたかったわけではありませんの。寧ろ嬉しいですの、だってこれで手を出してもらえる口実が出来たのですから」


 朱乃さんは舌をペロッと出してお茶目なウィンクをした。なんて演技だ、騙されちまったぜ。


「朱乃さん、演技派ですね。見事に騙されてしまいましたよ」


 ははっ……と苦笑する俺に朱乃さんはそっと顔を近づけて……


「でも寂しくないわけじゃないんですのよ。だからちゃんと愛してくださいね……」


 ゾクッとするような笑みを浮かべた朱乃さんに俺はゴクリと唾を飲みこんで頷くことしかできなかった。


「行きましょう、イッセー君」
「……ああ、行こう。朱乃」


 俺は差し出された朱乃さん……いや朱乃の手を繋いで学園に向かった。


―――――――――

――――――

―――


「よう、イッセー!休日何してたんだ?」
「よう、松田。俺は旅行に行ってきたぜ。これはおみやげだ」
「おっ!ありがとうな、イッセー!」


 学園に着いた俺は小猫ちゃん達と別れてアーシアと一緒に自分のクラスに入る、すると松田に声をかけられて休日に何をしていたのか聞かれた。だが異世界に言っていたなどと言えないので旅行に行ったと返しておみやげを渡した。


 このおみやげはグルメタウンで買った物だが、このまま渡したらグルメタウンなどと書かれたお菓子、間違いなく追及されるのでリアスさんに認識を逸らす魔法をおみやげにかけてもらっている。松田は外国のおみやげと思い込んでいるはずだ。


「おはよう、イッセー」
「よう、元浜。これは旅行に行ったときのおみやげだ」
「旅行?もしや紫藤さんと一緒に行ったのか?」


 元浜にもおみやげを渡したのだが前にイリナと顔を合わせている為そう追求してきた。


「紫藤?誰だそりゃ?」
「イッセーの知り合いらしい。前にイッセーが休んだ時に一緒に街を歩いていたぞ。因みに巨乳の女の子だった」
「なにィ!?イッセー!お前!小猫ちゃんやアーシアちゃんがいながらそんなことしていたのか!」


 イリナの事を聞いた松田は怒りながら俺に掴みかかってきた。ぐっ、面倒くさいぞコイツ。


「あっ、兵藤。アーシアからおみやげ貰ったわよ。ありがとうね」
「桐生!助けてくれ!」


 俺はアーシアと一緒にこちらに来た桐生に助けを求めた。


「あら……んー……?」
「な、なんだよ……」


 桐生は俺の顔をジロジロ見て何やらニヤつきはじめた。なんだか嫌な予感がするぞ。


 そして松田から俺を引き離して小声で話しかけてきた。


「兵藤、アンタ……漢になったのね」
「はぁ?」


 桐生の言葉に俺は意味が分からずに首を傾げる。


「なにを言ってるんだ?」
「もー、しらばっくれちゃって。アンタ、童貞卒業したんでしょ?」
「……ッ!?」


 俺は一瞬言葉の意味を理解できなかったが、瞬時にそれを理解して顔を真っ赤に染めた。コ、コイツなんてことを……!


「桐生!お前適当な事を言ってるんじゃ……!」
「適当じゃないわよ。私の『童貞スキャナー』は的中率100%よ」
「なんじゃそりゃ!?」


 コイツもしかしてそういう系の神器を持ってるのか!?


「んで相手は誰なの?やっぱりアーシア?」
「……黙秘します」
「もしかして小猫ちゃん?それとも姫島先輩?朝あんなにべったりしてたもんねー」
「そ、それは……」


 ぐっ、朱乃さんと手をつないでいた光景を見られていたか……俺も浮かれていたから油断した。


「まあ私はアーシアを悲しませなきゃなんでもいいんだけどね。まさかアーシアとは遊びで終わらせるなんて言わないわよね?」


 そう言う桐生の目にはおふざけはなかった。もしかしたら友達としてアーシアを心配しているからこんなことを言い出したのか?


 これは誤魔化すのは無理だな。桐生は本当に拙いことは言いふらさないしここは正直に話そう。


「そんなことは言わないさ。俺はアーシアも幸せにする」
「本当に?どうやって?日本じゃ重婚は禁止よ」
「日本以外の重婚が認められている国に行って結婚する」
「養えるの?」
「詳しくは言えないが俺は働いていて稼ぎがある。信じてもらえないとは思うが……」
「ふーん……」


 桐生はそう言って俺をジッと見ていたが、ニパッと笑みを浮かべると俺から離れた。


「桐生?」
「アンタがふざけてそんなこという奴じゃないってことは理解してるつもりよ。お互いに真剣なら私はもう何も言わないわ」
「信じてくれるのか?」
「当たり前じゃない。伊達に1年からの付き合いをやってるわけじゃないわよ」


 実は桐生とは1年からの付き合いなんだ。その頃の俺は松田たちとさえ仲が良くなくて一人でいた。そんな俺に声をかけてきたのが桐生だ。


『アンタが兵藤?』
『……なにか用か?』
『そんな怖い顔しないでよ。私は桐生、クラスは違うけどアンタと同じ学年よ』
『なら俺に声をかけるのは止めた方が良い。俺は……』
『嫌われ者?』
『そうだ……』


 授業中に飯を食ったり不良をボコったりしていたので恐れられていた。それは自分の自業自得という事もあってあの頃の俺は友達を作ることを諦めていた。


『俺と一緒にいればお前も変な目で見られるぞ』
『んー。別にそれでもいいかな』
『……はっ?』
『あっ、アンタそんな顔をするんだ。意外といい顔するじゃない』


 それから何かと桐生は俺に声をかけてくるようになった。最初は鬱陶しがっていた俺も次第にそれに慣れていったんだ。


 友達という関係ではなかったが、俺は不思議と嫌じゃなかった。


「……ありがとうな、桐生」
「ふふっ、アンタのその顔、私やっぱり好きだわ」


 桐生はそう言ってニカッとはにかんだ。



―――――――――

――――――

―――


 授業を終えて放課後になった後、俺とアーシアは家庭科室に向かい料理研究部としての活動をしていた。


「そういえば料理研究部って外国のお料理を作ったりレポートを作ったりしていますがそれ以外には活動はしないのですか?」
「んー、後は学園内の部活動とかの打ち上げで料理作ったりボランティアで幼稚園とか老人ホームでお誕生日会の料理作ったりするぞ」


 例えば銃を乱射する先輩がいるアメフト部とかやたら目立たない後輩がいるバスケ部に打ち上げの料理を運んだり、下半身を露出させた園児がいる幼稚園に誕生日会のサプライズで作ったケーキを持って行ったりとかしたぞ。


「へぇー、そんなことをしていたんですか」
「後は遠月学園が主催する料理大会に部外者なのに呼ばれたりしたなー」
「遠月学園?」
「日本屈指の名門料理学園だよ。一部の人間はグルメ界でも通用するんじゃないかと思うくらいの腕を持った奴らがいるんだ」
「そ、それは凄いですね!でも何でそんな凄い学園の大会にイッセーさんが呼ばれるのですか?」


 アーシアの言う通り部外者である俺がそんな名門料理学園に呼ばれることはあり得ないんだが……


「実は旅をしている最中にそこの総師とお孫さんと出会ってしまってな。そのお孫さんがあまりにも庶民的な料理を馬鹿にするもんだからギャフンと言わせる料理を作ったんだ……グルメ界の食材使って」
「ええっ!?グルメ界の食材を使っちゃったんですか!?」
「ああ、その子神の舌と呼ばれるくらい優れた味覚をしていたから使わないと負けるかなーと思ってつい……いやぁあの頃は俺も若かった」


 その結果その子に勝つことは出来たがよっぽど癪に障ったのか相当怒ってしまったんだ。その総師さんも使った食材の事を聞いてきたけど誤魔化した。


 その代わりに遠月学園に来ないかと誘われたが断った。名門だけあって規則も厳しいし自由に行動できなくなったら困るからな。


「でもその子は俺に負けた事が気に入らないのか年に一回大会の参加資格を送ってくるんだ」
「そんなことが出来るんですか?」
「何せ総師さんのお孫さんだからな。まあ最初は少し揉めたが優勝したら寧ろ来いって学園総出で行ってくるようになった。因みに俺が取った賞っていうのはその大会の事で料理研究部が部として認められているのはこれがあるからなんだ」
「そ、そうなんですか……」


 出来ればそろそろ諦めてほしいんだよな。いい加減面倒くさくなってきたし……


「まあそんな事はアーシアが気にすることはないよ。あっ、そうだ。ちょっと早いけど学園祭で何をするか考えるか」
「去年は何をしたんですか?」
「実はその時依頼が入ってしまって欠席してしまったんだ。だから今年は出来れば人が来てくれるような出し物をしたいな」
「わ、私も頑張りますね!」


 ちょっと気が早いが学園祭は何をしようかとアーシアと一緒に話し合う。だがその最中にリアスさんから電話がかかってきた。


『あっ、イッセー。今大丈夫?』
「どうしたんですか、リアスさん」
『実は貴方に最後の眷属を紹介しようと思うの』
「話で聞いた眷属の子ですか?」


 以前から話だけは聞いていたが、リアスさんには僧侶の駒を使った最後の眷属がいるらしいんだ。でも今は訳合って封印されているらしい。


『それでどうかしら?』
「分かりました。今から旧校舎に向かいますね」
『お願いね』


 俺はリアスさんとの会話を終えるとアーシアに話をする。


「リアスさんの最後の眷属の方ですか?」
「ああ、どうやら会えるみたいなんだ。行ってみるか?」
「はい、私その方に会ってみたいです」
「じゃあ行くか」


 折角なので俺とアーシアはリアスさんの最後の眷属に会いに行くことにした。



―――――――――

――――――

―――


 俺とアーシアは旧校舎にあるオカルト研究部にやってきた。部室のある部屋に行くとリアスさんと朱乃さん、祐斗が迎えてくれた。小猫ちゃんは節乃お婆ちゃんのところに行っているので不在だ。


「いらっしゃい、イッセー、アーシア。忙しい所ごめんなさいね」
「いえ、別に気にしないでください。やることも終えたんで学園祭の出し物について話し合っていたくらいですから」
「あら、気が早いのね。でも早い内から決めていればスムーズに物事を進められるのは確かだわ」
「ところで去年はリアスさん達は何をしたんですか?」
「私達はお化け屋敷をしたわね。今年は何をしようかしら」


 学園祭についてリアスさんと話していると朱乃さんが声をかけてきた。


「リアス、学園祭について話し合うのもいいですが、そろそろギャスパー君の事をイッセー君とアーシアちゃんに話さなくてもいいのかしら?」
「そうだったわね」


 リアスさんはコホンと一息付くとギャスパーという子について説明しだした。


「イッセーとアーシアは話だけ聞いてると思うけど、私には僧侶の駒を使った眷属の子がいるのよ」
「それは知ってます。確か封印されているんですよね?」
「ええそうよ。名前はギャスパーといってその子は人間と吸血鬼のハーフなの。そして神器を宿しているの」
「神器を……」


 神器は人間にしか宿らないが人間とのハーフなら神器が宿ることもあるらしい。


「でもギャスパーは神器を制御できなかったの。いずれそれを暴走させてしまう事を恐れた過激派がギャスパーを抹殺するように言ってきたわ」
「過激派?」
「悪魔の上層部の中でも純潔悪魔に拘る派閥よ。他の種族は勿論の事、転生悪魔をも嫌悪しているわ」
「なんですかそれは?確か眷属化って悪魔の数が減ったのをどうにかしようとしてやっているんですよね?それなのにそれを批判するってアホなのですか?」


 俺は過激派なる存在に溜息を吐いた。そもそも自分たちの都合で眷属化しているのにそれを批判するって……


「貴方の言いたいことは分かるわ、イッセー。でも悪魔っていうのは吸血鬼に匹敵すると言われる位プライドが高いの。過激派はまさにそんな悪い部分を凝縮した悪魔だけで構成された組織よ」
「改めて最初に会った上級悪魔がリアスさんで良かったと思いますよ……それでギャスパーという子はどうなったんですか?」


 俺はギャスパーという子がどうなったのか気になった。何せ過激派はその子を殺せと言っていたが現在は封印で済んでいるからだ。


「私はお兄様に頼んで何とか封印という形にしてもらったわ」
「その言い方だと魔王でも過激派を完全には納得させられなかったって事ですか?」
「過激派の主要メンバーはお兄様よりはるかに長い時を生きた最古参の悪魔たちなの。上層部にも強い権力を持っていて如何にお兄様とはいえ全面的に従わせることは難しいわ」


 ふむ、魔王というのも完璧ではないんだな。


「ギャスパーは私が制御できるようになるまでは封印される事になったわ」
「その子は今どこにいるんですか?」
「旧校舎のある部屋にいるわ。夜中になれば旧校舎内限定だけど部屋から出られるようになってるし、私達も顔を出していたの」


 旧校舎にいたのか。そういえば知らない匂いを嗅いだことが何度もあったけど、それがギャスパーって子の匂いだったのかもしれないな。


「でも前にコカビエルを討伐したことで私の実力が認められたの。そして今ならギャスパーを制御出来るだろうと判断されたようなの。まあ実際はイッセーの力を借りなければ勝てなかったのだけど……ごめんなさい、イッセー」
「そんなことは気にしていませんしお互い様ですよ」


 俺も一回やられかけたし、勝てたのは俺が目覚めるまでオカルト研究部の皆が時間を稼いでくれたからだ。


「じゃあギャスパーが封印されている部屋まで案内するわね」
「えっ、もう封印は解けて外に出られるんじゃないんですか?」
「それがあの子人間不信な所があって部屋から出て来てくれないのよ」
「もしかして俺を呼んだのってギャスパーって子を外に出す為じゃ……」
「……えへ♪」


 舌をペロッと出してエヘ顔をするリアスさんに少しドキッとしたのは内緒だ。


―――――――――

――――――

―――


「ここがギャスパーのいる部屋よ」


 リアスさんが連れて来てくれた部屋のドアには『KEEP OUT!!』のテープが何重にも張られており怪しげな呪術的な刻印が刻まれていた。如何にも怪しい物を封印していますって感じだな……


「そういえばそのギャスパーっていう子の神器ってどんなモノなんですか?」
「ギャスパーの神器は『停止世界の邪眼』というの。特性はギャスパーが興奮した際にその子の視界に映っているものをすべて停止させてしまうの」
「つまり時間を停止させることが出来るって事ですか……それは強力な神器ですね」
「しかもそれだけじゃなくて停止世界の邪眼はギャスパーの意志には関係なく成長していってるの。もし神器が暴走したら世界そのものが停止してしまう恐れがあるわ」


 力を制御できずに封印されるか……俺も赤龍帝の籠手やらグルメ細胞の悪魔やら強い力を持っているから他人事には思えないな。


「更にギャスパーにはもう一つの力があるの?」
「えっ?停止世界の邪眼だけでもすごいと思うんですけどまだ何かあるんですか?」



 停止世界の邪眼だけでも凄いのにまだ力を持っているのか。益々他人事に思えなくなってきたぞ。


「何て言えばいいのかしら……まだギャスパーが封印される前の事よ。ある日私の実家に眷属を連れて行ったんだけどギャスパーの目の前を鼠が走っていったの、それに驚いて興奮したギャスパーの背中から黄色い人間みたいな何かが現れたの。その人間みたいな奴は私の屋敷を滅茶苦茶に破壊しまくったわ」
「何ですか?黄色い人間みたいな奴って……?」
「そうとしか言いようがないのよ……その人間みたいな奴は滅茶苦茶なパワーがあって小猫でも抑えられないの」
「小猫ちゃんでも抑えられないって……どんな奴なんだ、それは」


 戦車の駒を持つ小猫ちゃんでも抑えられないとは……そりゃ俺が呼ばれるわけだ。


「それじゃ開けるわね……」


 リアスさんはそう言うとテープを剥がして刻印を消した。


「イッセー……」
「ええ、任せてください」


 俺はゆっくりとドアを開けて部屋の中に入っていく。部屋の中には外国の葬儀で使われていそうな棺桶が部屋の真ん中に置かれていた。


「如何にも吸血鬼が入っていそうな棺桶だな……」


 そのまま部屋を見渡してみると部屋の隅に誰かがいた。アーシアに負けないくらいの綺麗な金髪と赤い双眸をした美少女だった。


(す、すげぇ可愛い子だな!まるで西洋人形だ……)


 俺は少女の美貌に少し目を奪われてしまう。だが俺と目が合うとその双眸に涙が浮かび上がってきた。


「あっ……あっ……」
「えっと……君がギャスパーかい?俺は……」
「こ、怖いですぅぅぅぅぅぅ!!」


 すると赤い双眸が光り輝き体に重い感覚が襲った。


(なんだ!?一瞬体が重くなったぞ!)


 俺は一瞬体が動かなくなったことに驚いていたがすぐに少女に視線を向ける。すると少女の背中から黄色い人間のような存在が現れて俺に向かって殴りかかってきた。


(ヤバッ……!)


 その瞬間俺の胸に凄まじい衝撃が走り俺は部屋の外に吹き飛ばされた。


 
 

 
後書き
 ギャ、ギャスパーですぅ……


 うぅ……何で僕があらすじなんて……いきなり怖い人が入ってきたと思ったら黄色い彼がその人をぶっ飛ばしちゃったし……もう嫌だよぅ……


 ……えっ?と、取り合えず次回予告を言え……?こ、怖いから嫌ですぅ……!


 ぐすん……言わないと終わらないなんて酷いよぅ……


 じ、次回第73話『怖がり吸血鬼登場、歓迎の焼肉と修行の場は天空の野菜畑!?』であ……あぁ……会い……うわーん!僕の事なんてほっといてくださ~い! 
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