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おっさん顔の犬

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第三章

「性格がよくて頭もよくてな」
「ちゃんと言うことも聞いて」
「あんないい子はそうそういないな」
「そうよね」
「うちに来てくれてよかったな」
「ご近所でも人気だしね」
「そうみたいだな、愛嬌があるって」
 ゴンゾウのその性格と仕草からのことだ。
「あの子は」
「だから余計にいいわ、ただお顔でね」
「言われるか」
「おじさんみたいだって」
「もうそれは仕方ないな、顔のことはな」
「言われてもね」
「ゴンゾウの責任じゃないからな」
 だからだというのだ。
「もうな」
「言っても仕方ないわね」
「ああ、だから蒼汰が言った通りにな」
「大事なのは顔じゃないわね」
「人間も犬もな」
「そうよね、私達がいつも蒼汰に言っていることだけれど」
「ゴンゾウを見て蒼汰に言われてな」
 そしてとだ、父はゴンゾウがはじめて家に来た時のことを思い出しながら妻に話した。真剣な顔になって。
「そうしてな」
「あらためてわかったわね」
「ああ、顔のことは言うものじゃなくてな」
「大事なことは中身ね」
「全く、ゴンゾウの顔を見て悪いとか言ってな」
「反省するわね」
「全くだ、これからはそんなことを言わないで」
 それでというのだ。
「蒼汰にも接していかないとな」
「本当にそうね」
 夫婦でそんな話をした、そして蒼汰は。
 ゴンゾウを散歩に連れて行っている時にクラスメイト達に会ったが彼等はゴンゾウの顔を見て言った。
「うわ、不細工な犬だな」
「おっさん顔だな」
「何だよこいつ」
「顔は問題じゃないだろ」
 だが蒼汰は彼等に言った。
「顔よくても性格悪いと駄目だろ」
「そ、そう言うのかよ」
「こいつこんなに不細工でもかも」
「それでもいいのかよ」
「だから顔が悪くてもな」
 それでもというのだ。
「性格と頭悪いと駄目だろ」
「それはな」
「そうだけれどな」
「どうもな」
「三組の大谷みたいな性格だとどんなに顔よくても嫌だろ」
 学校一の嫌われ者である、弱い者いじめが好きで告げ口をして強い相手には媚びり平気で嘘を吐きケチで底意地が悪いので皆から嫌われている。
「あいつ勉強は出来るけれどな」
「それでも自分より成績悪いと馬鹿にするしな」
「俺あいつ大嫌いだよ」
「俺もだよ」
「あんな奴誰も好きにならないだろ」
「三組じゃなくてよかったな」
「そうだよな」
 その大谷についてはクラスメイト達も同意だった。 
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